「F-X (航空自衛隊)」の版間の差分
F-X2007年2月25日 (日) 10:38 (UTC)の版より分割 |
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2007年2月25日 (日) 10:41時点における版
F-Xまたは、FX(えふえっくす)とは、Fighter-Xの略称で、日本航空自衛隊の次期戦闘機導入計画を指す略語。あくまで計画・概念を指す語であって特定の機種を指す語ではないから、機種が選定され導入が始められれば計画はその機種の名で呼ばれ、その次に導入する戦闘機の計画・概念が新たなF-Xとなる。そのため、F-X計画には現在のところ以下の4つが存在する。
第1次F-X
ノースアメリカン F-86の代替となる戦闘機を導入する計画。ロッキード F-104C/D改とグラマン G-98J-11(F11Fの改造型)との争いになったが、前者をF-104Jとして採用した。
第2次F-X
ロッキード/三菱 F-104J/DJの後継となり、未だ残っていたノースアメリカン F-86の代替となる戦闘機を導入する計画。マグダネルダグラス F-4E改、ロッキード CL1010-2(F-104の発展型)、サーブ 37 ビゲン、ダッソー ミラージュF1の争いになったが、F-4E改をF-4EJとして採用した。
第3次F-X
マグダネルダグラス/三菱 F-4EJの後継となり、未だ残っていたロッキード/三菱 F-104J/DJの代替となる戦闘機を導入する計画。マグダネルダグラス F-15C/D改、グラマン F-14、ゼネラルダイナミクス YF-16、ノースロップ YF-17、ダッソー ミラージュF1、サーブ 37 ビゲン、パナビア トーネードADVの争いになったが、F-15C/D改をF-15J/DJとして採用した。
以上第3次までのF-Xでは、いくつかの騒動あるいは汚職疑惑(F-104J/DJ採用の逆転劇やダグラス・グラマン事件)がありながらも、結局は候補機の中で一番性能が高く、米軍でも運用しており有事の際の補給を受けやすい機種を採用してきた。また、いずれの機種も導入前半の数~数十機は完成機購入やノックダウン生産で調達されたものの、すぐに日本国内の航空機産業によるライセンス生産に移行した。生産が進行するにつれて徐々に国産化率が高められていき、国内航空機産業の技術向上と生産基盤維持に大きな貢献を果たした。3機種ともにライセンス生産の主契約企業は三菱重工業であったが、エンジンのライセンス生産をした石川島播磨重工はじめ、日本航空機産業におけるほぼすべての企業が何らかの形で生産にかかわっていた。
次期F-X
マグダネルダグラス/三菱 F-15J/DJの後継となり、直接には2008年度中に廃棄がはじまるマグダネルダグラス/三菱 F-4EJ改の代替となる戦闘機を導入する計画。平成21年度までの中期防衛計画中にF-X7機分の予算が要求されている。
周辺諸国にSu-27などのF-15と同水準の第4世代機が拡散しつつある防衛環境にあって現在FI任務についているF-4EJ改を代替する機体であるから、要撃任務の能力が高いことが第一の要求であるが、当然時代の趨勢といえるマルチロール化もある程度要求されているものと思われる。
F-22Aラプター、ラファール、F/A-18E/F、ユーロファイター、F-15FX、F-35らをF-Xの候補として挙げ、調査を行っているとされている。
2007/2/14の時事通信社の報道では、調査対象6機種の内、14日までに質問書に回答のあった米・英のメーカーに対し、2月中にも調査員を現地に派遣する方針を固めたとのことである。対象はF/A-18(米), F-15FX(米), ユーロファイター(英)の3機種。もちろん、質問書に回答があったことと導入されることとは別の事象であり、現時点で回答が無いことと導入されないこともまた別の事象である。
なお、各候補機について、以下のようなメリット・デメリット等が指摘されている。
回答のあった機種
- F-15Eを対空戦闘重視に再設計し、高機動化した機体。ボーイング社より提案中。6機の中で最もデメリットが少ない。
- F-15DJと外形はほぼ同じだが、改造によって内部構造にほとんど共通点はなくなっている。ゆえ、ライセンス生産前に完成機の分解調査を行う必要がある。
- F-15シリーズそのものがF-22の登場で近々型落ちになる可能性もある。F-15自体も世代的には比較的古い。
- F-15Eは戦闘爆撃機であり、機体重量の増加等、F-15Jに比べ導入するメリットがあるか、という問題がある(とは言え戦闘爆撃機として改造された機体故、機体重量の増加は仕方の無い事ではあるが、対Gに関しては7Gから9Gに引き上げられており、エンジンもF-15より高性能のものを搭載している為重量の面ではさほど問題にはならない)。
- 韓国同様、精密爆撃を支援する「精密映像位置提供地形情報(DPPDB)」というソフトウェアが輸出規制に引っかかる為爆撃制度が落ちる可能性がある。また、輸出規制にかかる品目を国産品で代用できるかも疑問視されている。
- アメリカでは空対空に特化させたF-15Fの構想もあったがパイロット負担軽減の観点で中止されている為、日本で導入してもパイロットには大きな負担となると考えられる。
- 第4.5世代機。亜音速域で良好な運動性を持つ。最新アビオニクスが搭載されている。
- F/A-18C/Dが諸コストの高さでFSX商戦で敗れている。
- 導入経験のない艦載機であり、航空自衛隊の機体として扱うには不要な装備がある(これもコストの高さの一因になっている)。
- 加速性能・航続性能について問題があり、要撃機としては不向きと言われている。
- 他機種と比べ騒音がとてつもなく大きい(アメリカでも訴訟に発展)。
- 欧州の4.5世代機。日本でのライセンス生産のほか、国産機器(アビオニクス等)を搭載するための改造が許可される、という話がある。国産機器が搭載できることはアメリカ機にあるアメリカ製機器のコストの高さやアメリカ側の輸出規制に依存しないという意味ではアメリカ機よりは有利とも取れる。
- これまで空自に導入経験のない欧州機であり、整備面などで不安が残る。しかし、アビオニクス等については国産品が使用できる為、後述のラファールよりは有利とも言える。
- 性能面で、今後航空優勢を維持できるかに疑問が残る。但し、アフターバーナーなしの超音速飛行対応を謳っているのはこの機種だけである。
回答のなかった機種
- 第5世代機。F-22以外の他機に比べ、ステルス性が高い(と言われている)。
- ステルス性を維持した状態では中距離空対空ミサイルを2発しか搭載出来ず、数の劣勢をカバーしきれない可能性がある。
- 2009年度までとなる中期防衛計画に間に合わない。また、そもそも開発計画に参加していないため、購入するためには、開発計画に参加した国への配備が終了した後(2010年代後半?)になる。
- 開発の遅れにより、価格は当初より高騰中である。また、国際共同開発であるため、F-22以上にライセンス生産の可能性は低い。
- フランスの4.5世代機。元々は前述のユーロファイターをフランスが諸事情から蹴って独自開発した機種である。
- ユーロファイターと違い、国産機器搭載許可が出されていない。
- ユーロファイター同様、これまで空自に導入経験のない欧州機であり、整備面などで不安が残る。
- 同じく性能面で、今後航空優勢を維持できるかに疑問が残る。
展望
日本の特殊な防衛事情のため、航空自衛隊の採用する要撃戦闘機には他国の戦闘機を圧倒するレベルの戦闘力が要求される。日本の周辺国では、第4世代戦闘機の配備が進んできており、ロシアや中国ではSu-27、Su-30や、韓国においてはF-15Eの韓国版、F-15Kの配備が始まっている。日本のF-15Jと同世代の戦闘機が周辺国に配備されたことにより、F-Xではそれらの戦闘機を圧倒できる性能を持つ戦闘機、第5世代戦闘機が必須になると思われる。 しかし、本命のF-22はアメリカ上院議会で輸出許可が一度却下されており、非常に苦しい状況となっている。また、国内ではF-2支援戦闘機の生産が減数となり、生産を行っている三菱では、F-Xで決定された機体のライセンス生産が行えない場合、これまで継続して戦闘機の生産を行ってきた部署が浮いてしまうことになり、国内産業にも視点を向けなければならない。
これらの事情を踏まえ、今回のF-X選定は、どの機体に決まるかまったく予想のつかない状態となっている。
参考項目
- P-X (航空機) - 次期固定翼哨戒機(Patrol aircraft-eXperimental)
- C-X (輸送機) - 次期輸送機(Cargo aircraft-eXperimental)
- TK-X - 次期主力戦車
- 心神 (航空機)- 防衛省技術研究本部による、先進技術実証機