「ツインターボ」の版間の差分
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[[image:Nissan RB26DETT 001.JPG|thumb|240px|right|ツインターボ仕様のエンジン<br />([[RB26DETT]] '02 JGTC用 FR仕様)]] |
{{混同|ツインスクロールターボ|ツインチャージャー}} |
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[[image:Nissan RB26DETT 001.JPG|thumb|240px|right|ツインターボ仕様のエンジン<br />([[日産・RB26DETT]] '02 JGTC用 FR仕様)]] |
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'''ツインターボ'''(Twin Turbo Charging)は、[[自動車]]の[[エンジン]] |
'''ツインターボ'''(Twin Turbo Charging)は、[[自動車]]の[[エンジン]]において、[[ターボチャージャー]]を2基用いる[[過給機]]構成の呼称である。低速域<ref group="注釈">エンジン回転数の正式名称はエンジン回転速度。 JIS B 0108-1による。</ref>の[[トルク]]改善、[[ターボラグ]]改善ならびに出力向上を両立させる手段のひとつとして用いられる。[[ドイツ語]]や[[イタリア語]]、[[フランス語]]などでは'''Bi-turbo'''(ビターボ、ビトゥルボ)と称する。 |
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日本の[[自動車技術会]]「自動車技術ハンドブック」において、[[#シーケンシャルターボ|シーケンシャルターボ]]はツインターボに含まれていない{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=103}}が、「シーケンシャルツインターボ」とも呼ばれる{{Sfn|GP企画センター|2003|p=127}}ため、本項で扱う。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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低速トルクおよびターボラグ改善には小型のタービンが有効であるが、高回転域で排圧の上昇とバイパスする排気ガス量の増大によって、ポンピングロスの増加とタービン効率の低下が起こり、エンジン出力が低下してしまう{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=103}}。これを改善するため、小型のターボチャージャーを二つ設置するアイデアが生まれた。 |
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競技用エンジンで特性を決める際、過給機を複数設けたほうが都合の良い場合に採用される。ターボチャージャーを1機用いた場合よりも効率的に過給を得ることができ、出力が向上する。 |
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レイアウトとしては、エンジンからの排気管を[[排気干渉]]が少なくなるよう二系統にまとめ、それぞれに小型のターボチャージャーを取り付ける{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=103}}。これにより、排気ガス流量が少ない低回転域では排気干渉の減少からシリンダー内のガス掃気効率が向上する{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=103}}。また、動圧過給を積極的に利用しタービン入力エネルギーを増大させられるのでタービン回転の立ち上がりが早くなる{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=103}}。さらに、同一性能を発揮する1基のターボチャージャーに対し、小型のターボチャージャーを使用することで回転体の慣性モーメントを低減できるので、ターボラグが低減できる{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=103}}。 |
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市販車の場合は、[[V型エンジン|V型]]や[[水平対向エンジン|水平対向型]]など、両バンクの排気系が離れている場合に採用例が多い。[[ブガッティ・ヴェイロン]]のようにクアッドターボ(4機装着)の例もある。 |
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3気筒ずつの排気を合流させると排気干渉が低減できる直列6気筒エンジンや{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=103}}、[[V型エンジン|V型]]、[[水平対向エンジン|水平対向]]の6気筒エンジンのように片バンクの排気タイミングが等間隔で排気干渉が少なくなるレイアウトの場合に採用例が多い。W型16気筒の[[ブガッティ・ヴェイロン]]は4基のターボを搭載している(クアッドターボ)が、片バンク8気筒分の排気を4気筒ずつに分離してターボチャージャーへ導入しており<ref>{{Cite web|url=http://www.rsportscars.com/bugatti/2006-bugatti-veyron-164/pictures/2547 |title=2006 Bugatti Veyron 16.4 Pictures |website=RSPORTSCARS.COM |accessdate=2012年1月2日}}</ref>、これも排気干渉低減を狙ったものである。 |
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その他、商品性を高める目的で各社こぞって採用した時期もあったが、付加装備が多く、シングルターボ(ターボチャージャーを1機のみ用いる構成)に比べ、性能面での利点は少ない。また、[[燃費]]も[[自然吸気]]やシングルターボに比べて劣るため、現在では一部の車種が採用するに留まる。 |
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なお、[[クロスプレーン]]タイプのクランクシャフトを使用するV8エンジンの場合、片バンクの排気をそのまままとめると排気が不等間隔でターボチャージャーに流入することになる。これを解消するには左右のバンクを跨いで排気系を取り回す必要があるが、排気管が複雑になるなどデメリットが大きくなってしまうため、やむなく片バンクずつ排気をまとめているものが多い。ところが、BMWはS63B44で排気ポートをバンク内側にするレイアウトとし、さらに特殊な排気系を用いることでそれぞれのターボチャージャーに等間隔で排気ガスが流入するようにしている。S63B44のベースで、バンクごとに排気をまとめているN63B44に対して、ツインスクロールターボの採用なども相まってトルクは約13 %(600 N・mから680 N・mに)向上している{{Sfn|MFi|2011|pp=30-31}}。 |
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== 種類 == |
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[[画像:ツインカムターボTOYOTAマークⅡ.jpg|thumbnail|240px|[[トヨタ・マークII]]のツインターボ]] |
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=== 常時ツインターボ === |
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一般的なツインターボの形態。[[気筒]]の配列に応じて直列または並列配置される。直列エンジンの場合は直列、V型・水平対向型の場合は各バンクへ並列に配置されることが多い。 |
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* エンジンルーム内での効率的なパイピングなどから、1機のターボチャージャーへ吸排気パイプを集約しにくい場合に採用される。 |
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* 大径シングルターボではエンジン出力特性が急峻・唐突となりがちなため、ターボチャージャーへの要求能力を2機に分散し、それぞれのターボチャージャーを小型化することで、エンジン低回転での排気ガスでも十分作動する、穏やかで滑らかなエンジン出力特性を得るために用いられる。 |
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== 採用例 == |
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=== シーケンシャル・ツインターボ === |
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=== 日本 === |
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エンジンの回転数に応じ大小2つのターボチャージャーを使い分けることでターボラグの低減、低回転からの過給効果を目的としたシステムである。低回転では小容量のターボチャージャーを使用し低回転域のトルクの確保、ターボラグの回避、中高回転では大容量のターボチャージャーを用いて高出力を狙う。2機のターボを「順次駆動」するさまからシーケンシャルの名がある。シーケンシャル・ターボは自動車の様な負荷変動の多いエンジンに向いているが、2つのターボの制御は難しく上手に制御しなければ有効性は発揮されない。その為、排気ガスの量やエンジンの回転数、エンジンの状態等をモニタした上で2つのターボの動作を制御する必要からエンジン及びターボの電子制御が不可欠となる。 |
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日本車のガソリンエンジンにおいては、トヨタの直列6気筒エンジンの[[トヨタ・G型エンジン (2代目)|1G-GTEU]]、[[トヨタ・1JZ-GTE|第1世代の1JZ-GTE]]、[[トヨタ・JZエンジン|2JZ-GTE]]や日産の[[日産・RB26DETT|RB26DETT]]などの直列6気筒エンジンや、日産の[[日産・VGエンジン|VG30DETT]]や三菱の6G72、6A12、6A13などのV6エンジンに採用されていたが、2002年の排出ガス規制強化でガソリンターボエンジンが激減した際にツインターボ搭載車は消滅した。その後、2007年に発売された[[日産・GT-R]]用のV6エンジン[[日産・VR38DETT|VR38DETT]]にてツインターボエンジンが復活している。 |
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ディーゼルエンジンでは、[[三菱ふそう]]、旧[[UDトラックス|日産ディーゼル]]、[[日野自動車|日野]]においては[[牽引自動車|重量物運搬用トレーラーヘッド]]や[[観光バス]]、[[ダンプカー]]や[[冬季作業車両|除雪トラック]]等の特に高負荷な領域を集中的に使用する車型において設定が行われていた。また、[[トヨタ自動車|トヨタ]]では、[[トヨタ・ランドクルーザー#ヘビー系|ランドクルーザー70]]および[[トヨタ・ランドクルーザー#200系(2007年 - 2021年)|200]]の輸出仕様車でツインターボの[[トヨタ・VDエンジン|1VD-FTV]]を採用している。 |
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乗用車用ガソリンエンジンでは[[1987年]]の[[ポルシェ・959]]での採用が初であるとされる。日本車では[[1990年]]の[[マツダ・コスモ|ユーノス・コスモ]]が初である。後にトヨタやスバルも採用したが、シーケンシャルツインターボとは名乗らなかった。現在では、シングルターボでも応答性や低回転域のトルクを実現できる軽量タービンや[[ツインスクロールターボ|ツインスクロールタービン]]が登場し、採用している車種はほとんどない。 |
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=== 日本国外 === |
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デメリットとしては、低回転域と高回転域のタービンの仕事域が明確に分かれている為、低→高の切り変わり時点のブースト落ちがメーカーによっては顕著になる。また、タービンが2基必要で高価になり、制御機構が複雑でトラブルが多発するなどがある。 |
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日本国外の自動車メーカーにおいても6気筒以上のエンジンにツインターボが組み合わされる例が多い{{Sfn|MFi|2011}}。 |
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BMWでは直列6気筒のN54B30や、V型8気筒のN63B44、V型12気筒のN74B60に採用している。特にX5MとX6Mに搭載されるS63B44は前述の通り2基のツインスクロールターボをVバンクの間に搭載する独特なレイアウトになっている。 |
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== 搭載される主な車種 == |
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* [[ポルシェ・911#996型(1998年~2005年)|ポルシェ・911]](996型) |
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* [[メルセデス・ベンツ SLクラス]] SL600 |
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* [[メルセデス・ベンツ Sクラス]] S600L |
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* [[マイバッハ#新・マイバッハ|マイバッハ]] 57/62 |
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* [[BMW・3シリーズ#5代目(2005年-)E90/E91/E92|BMW・335i]](セダン/クーペ/カブリオレ/ツーリング) |
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* [[BMW・1シリーズ#初代(2004年-)E87|BMW・135i]] クーペ |
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* [[日産・GT-R]] |
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* [[いすゞ・フォワード]](2010年-) [[いすゞ・H系エンジン|4HK1エンジン搭載車]] |
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* [[いすゞ・エルフ]](2011年-) 4JJ1エンジン搭載車 |
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* [[いすゞ・エルガミオ]](2011年-) 4HK1エンジン搭載車 |
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* [[マクラーレン・MP4-12C]] |
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メルセデス・ベンツではV型8気筒のM278やV型12気筒のM275、M285に採用例がある。 |
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== 過去に採用された車種 == |
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* [[トヨタ・アリスト]] |
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* [[トヨタ・スープラ]] |
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* [[トヨタ・ソアラ]] |
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* [[トヨタ・マークII]] |
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* [[トヨタ・チェイサー]] |
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* [[トヨタ・クレスタ]] |
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* [[日産・スカイライン#8代目(R32型、1989年-1993年)|日産・スカイライン]] GT-R |
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* [[日産・フェアレディZ#4代目(Z32型、1989-2000年)|日産・フェアレディZ]] |
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* [[日産ディーゼル・ビッグサム]] |
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* [[三菱・GTO]] |
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* [[三菱・ギャラン]] VR-4 |
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* [[三菱・レグナム]] VR-4 |
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* [[三菱ふそう・スーパーグレート]](トラクター) |
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* [[日野・スーパードルフィン|日野スーパードルフィン・プロフィア・テラヴィー]](トラクター) |
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* [[日野・セレガ#グランビュー(P-RY638AA)|日野・グランビュー]] |
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* [[スバル・レガシィ#2代目BD・BG型(1993年10月-1998年6月)|スバル・レガシィ]] |
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* [[マツダ・RX-7#3代目・FD3S型(1991-2002年)|マツダ・RX-7]] |
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* [[Hennessey Viper Venom 1000 Twin Turbo]] Hennessey Performance Engineeringによる改造車(コンプリートカー) |
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ポルシェでは水平対向6気筒のMA170S、M96/70Sにおいて、[[可変ノズルターボ|可変容量ターボ]]の一種であるVGターボを左右バンクに1基ずつ搭載している。 |
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== 脚注 == |
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<div class="references-small"><references /></div> |
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ジャガーではV型6気筒ディーゼルターボのAJD-V6(Gen.III)にVGツインターボが採用されている。 |
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{{DEFAULTSORT:ついんたあほ}} |
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[[Category:自動車エンジン技術]] |
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フォードはV型8気筒からのダウンサイジングであるEcoBoostの3.5 L V型6気筒エンジンにツインターボを採用している。 |
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{{Car-stub}} |
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フォルクスワーゲングループでは前述のW型16気筒エンジンWR16にて、ツインターボを2基組み合わせたクアッドターボが採用されている。また、ディーゼルエンジンではV型6気筒、V型8気筒、V型12気筒の各[[TDI (自動車)|TDI]]エンジンにて片バンクに1基ずつVGターボを配置しツインターボとしている。 |
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[[en:Twin-turbo]] |
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[[nl:Biturbo]] |
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== シーケンシャルターボ == |
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[[pt:Twin turbo]] |
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[[画像:ツインカムターボTOYOTAマークⅡ.jpg|thumbnail|240px|[[トヨタ・マークII]]のツインターボ(並列タイプのシーケンシャルターボ)]] |
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[[sk:Twin-turbo]] |
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'''シーケンシャルターボ'''は、エンジンの作動状態によって2基のターボチャージャーを使い分けるものである{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。前述のツインターボと同様に2基のターボチャージャーを使用するため、'''シーケンシャルツインターボ'''とも呼ばれる{{Sfn|GP企画センター|2003|p=127}}。シーケンシャルターボは直列タイプと並列タイプの2種類に分けられる。 |
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直列タイプでは小型のターボチャージャーと大型のターボチャージャーを直列につなげて使用する{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。排気側はエンジン、小型ターボ、大型ターボの順に直列につながっており、小型ターボをバイパスする経路が設置される。吸気側のレイアウトは大型ターボ、小型ターボ、エンジンの順に直列につながり、排気側と同様に小型ターボをバイパスする経路がある{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。エンジン回転数が低く排気ガス流量が少ない領域では、全排気ガスを小型ターボへ集中させてターボラグを少なくし、低速トルクを確保する。エンジン回転数が上昇し、排気ガス量が増加してきたところで徐々にバイパスバルブを開き、小型ターボをバイパスさせて大型ターボへ排気ガスを導入する{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。バイパスバルブが開くに従い、小型ターボのタービン前後圧力差は小さくなるため、以降の過給は大型ターボのみが受け持つ{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。なお、このとき小型ターボのコンプレッサーが抵抗になるため、吸気側のバイパスバルブを開き小型ターボは吸気側でもバイパスされる。 |
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並列タイプは1つ目のターボチャージャー(プライマリーターボ)と2つ目のターボチャージャー(セカンダリーターボ)が並列に設置される{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。排気側ではどちらか片方のターボに[[ウェイストゲートバルブ|ウェイストゲート]]が設置され、セカンダリーターボ上流には排気ガス導入を制御する切換えバルブが設置される{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}{{Sfn|GP企画センター|2003|p=128}}。吸気側ではセカンダリーターボに、コンプレッサーを通過した吸気を再循環させるリリーフバルブがあり、プライマリーターボ側の吸気管との接合前に切換えバルブが設置される{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。エンジンの低回転領域では直列タイプと同様に全排気ガスをプライマリーターボに導き過給圧を得るが、中高速域では吸排気の切換えバルブを開きプライマリー、セカンダリーの二つのターボで過給を行う{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。 |
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いずれのタイプもエンジンの作動状態に合わせて2基のターボチャージャーの作動状態を切り替える必要があるため、電子制御が必須となる。また、切換え時にトルクの段差が生じやすいため、この制御が課題になっている{{Sfn|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005|p=104}}。 |
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=== シーケンシャルターボの採用例 === |
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乗用車用ガソリンエンジンへのシーケンシャルターボ適用は[[1987年]]の[[ポルシェ・959]]が初の事例であるとされる。日本車では[[1990年]]の[[マツダ・コスモ|ユーノス・コスモ]]用20B-REW、[[マツダ・13B型エンジン|13B]]-REWが初である。後に[[トヨタ・スープラ]]などの[[トヨタ・JZエンジン|2JZ-GTE]]や、2代目[[スバル・レガシィ]]の[[スバル・EJ20|EJ20]]でも採用された。なお、トヨタは「2ウェイツインターボ」<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/data/automotive_business/products_technology/technology_development/engines/details_window.html |title=トヨタ企業サイト|トヨタ自動車75年史|技術開発|エンジン |publisher=トヨタ自動車 |accessdate=2020-02-06}}</ref>、富士重工業(現:[[SUBARU]])は「2ステージターボ」<ref>{{Cite press release|和書|url=https://www.subaru.co.jp/news/archives/98_4_6/06_17_a.html |title=スバル レガシィ ワゴンシリーズをフルモデルチェンジ『新世紀レガシィ』を発売 |publisher=富士重工業 |date=1998年6月17日 |accessdate=2020-02-06}}</ref>と呼称していた。 |
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後にポルシェはシーケンシャルターボの採用を取りやめ、[[ポルシェ・997|997型911]]から可変容量ターボの一種であるVGターボを片バンクに1基ずつ使用したツインターボで、低速トルクおよびターボラグの改善と出力向上を得ている。日本車においては2002年の排出ガス規制強化により、マツダはロータリーエンジンへのターボチャージャー搭載を取りやめ、富士重工業は4代目レガシィから低速トルク向上のため[[ツインスクロールターボ]](ツインエントリーターボ)に変更し、ターボチャージャーは1基のみになっている。 |
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ガソリンエンジンにおけるシーケンシャルターボの採用は少なくなっているが、ディーゼルエンジンでは[[BMW]]がバリアブル・ツインターボと呼ばれる直列タイプをN47D20T0に採用し、メルセデスのOM651も直列タイプであるボルグワーナーのR2S(Regulated 2-Stage Turbocharging)<ref>{{Cite web|url=http://www.3k-warner.de/products/r2s.aspx |title=Regulated 2-stage turbocharging(R2S<sup>TM</sup>) |publisher=BorgWarner Turbo Systems |accessdate=2012年1月3日閲覧}}</ref>を採用、[[フィアット]]も1.9 マルチジェットツインターボに直列タイプのTST(Two Stage Turbo)を、[[ヒョンデ]]も直列4気筒のU2 1.7およびR 2.2に直列タイプの2ステージターボを採用している{{Sfn|MFi|2011}}。 |
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日本国内メーカーでは[[いすゞ自動車|いすゞ]]が[[いすゞ・ギガ|ギガ]]において6NX1エンジンに、[[いすゞ・エルフ|エルフ]]において[[いすゞ・J系エンジン|4JJ1エンジン]]に、[[いすゞ・フォワード|フォワード]]や[[いすゞ・エルガ|エルガ]]において[[いすゞ・H系エンジン|4HK1-TC*]]において2ステージターボを採用している。[[三菱ふそうトラック・バス|三菱ふそう]]も、[[三菱ふそう・スーパーグレート|スーパーグレート]]や[[三菱ふそう・エアロエース|エアロエース]]に搭載される排気量7.7 Lの[[三菱ふそう・6S系エンジン|6S10エンジン]]で2ステージターボを採用している。また、マツダは[[マツダ・SKYACTIV-D#SKYACTIV-D 2.2|SKYACTIV-D2.2]]と称して圧縮比を14程度まで低減した排気量2.2 Lのディーゼルエンジンに2ステージターボを採用し、初採用車となった[[マツダ・CX-5|CX-5]]以降の設定のある車両に搭載している。 |
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=== シーケンシャルターボの動作 === |
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ここでは1990年に発売された[[マツダ・コスモ|ユーノス・コスモ]]の20B-REW、13B-REWに搭載された並列タイプのシーケンシャルターボの動作を例として挙げる。 |
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このシステムの特徴は、セカンダリーターボの過給圧立ち上がりをスムーズにする「予回転方式」が採用されたことにある{{Sfn|GP企画センター|2003|p=127}}。また、プライマリーターボには低速レスポンス重視のインパクトタービンブレードを、セカンダリーターボには高流量時に通気抵抗の小さいハイフロー型をそれぞれ採用している{{Sfn|GP企画センター|2003|p=127}}。 |
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レイアウトはほぼ前述の並列タイプの通りで、セカンダリーターボへの排気導入部に設置される切換えバルブが大小二つになっており、それぞれマツダは「ターボメインコントロールバルブ」、「ターボプリコントロールバルブ」と名付けている{{Sfn|GP企画センター|2003|p=129}}。また同様に、セカンダリーターボ吸気側のリリーフバルブは「過給リリーフバルブ」、プライマリー、セカンダリーの吸気合流部の切換えバルブは「過給コントロールバルブ」と呼んでいる{{Sfn|GP企画センター|2003|p=129}}。 |
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まず、エンジン回転数が低い領域では全てのバルブが閉じられており、排気ガスはプライマリーターボに集中して流れ、エンジンの低速トルクを増強する{{Sfn|GP企画センター|2003|p=129}}。プライマリーターボが設定過給圧に到達した後、ターボプリコントロールバルブを開き、セカンダリーターボを約8万rpmに保つ{{Sfn|GP企画センター|2003|p=129}}。このとき、過給コントロールバルブは閉じているためセカンダリーターボの過給圧はエンジンには加わらない{{Sfn|GP企画センター|2003|p=129}}。このままだとサージングによりコンプレッサーが破損してしまうため、過給リリーフバルブを開くことでコンプレッサ内を一定の圧力に保ちサージングが起きないようにしている{{Sfn|GP企画センター|2003|p=129}}。この状態ではプライマリーターボのみの作動から二つのターボでの並列過給に切換えるにはセカンダリーターボの回転数が足りないため、並列過給への移行直前に過給リリーフバルブを閉じて(短時間のあいだサージング状態に陥ること許容した上で)セカンダリーターボの回転を12万rpm程度まで加速させる{{Sfn|GP企画センター|2003|p=130}}。その後、ターボメインコントロールバルブと過給コントロールバルブを開き、プライマリーターボにセカンダリーターボの過給を加えた中高速域の過給モードへスムーズに移行する{{Sfn|GP企画センター|2003|p=130}}。 |
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なお直列タイプの場合、制御バルブは小型ターボの吸排気バイパスバルブの二つだけなので、制御は並列タイプよりも単純になる。 |
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== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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=== 出典 === |
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{{Reflist}} |
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== 参考資料 == |
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*{{Cite book|和書 |
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|editor = 自動車技術ハンドブック編集委員会 |
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|title = 自動車技術ハンドブック |
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|edition = 改訂版第4分冊 |
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|date = 2005-07 |
|||
|publisher = 自動車技術会 |
|||
|isbn = 4-915219-43-7 |
|||
|page = 103 |
|||
|ref={{Sfnref|自動車技術ハンドブック編集委員会|2005}} |
|||
}} |
|||
*{{Cite book|和書 |
|||
|editor = GP企画センター |
|||
|year = 2003 |
|||
|title = マツダ・ロータリーエンジンの歴史 |
|||
|publisher = グランプリ出版 |
|||
|page = 127 |
|||
|isbn = 4-87687-242-2 |
|||
|ref={{Sfnref|GP企画センター|2003}} |
|||
}} |
|||
*{{Cite magazine|和書|title=World Engine Databook 2011-2012 |magazine=Motor Fan illustrated 特別編集 ワールド・エンジン・データブック 2011-2012 |publisher=三栄書房 |year=2011 |ISBN=978-4-7796-1336-4 |ref={{Sfnref|MFi|2011}}}} |
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{{DEFAULTSORT:ついんたあほ}} |
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[[Category:ターボチャージャー]] |
2024年12月9日 (月) 03:43時点における最新版
ツインターボ(Twin Turbo Charging)は、自動車のエンジンにおいて、ターボチャージャーを2基用いる過給機構成の呼称である。低速域[注釈 1]のトルク改善、ターボラグ改善ならびに出力向上を両立させる手段のひとつとして用いられる。ドイツ語やイタリア語、フランス語などではBi-turbo(ビターボ、ビトゥルボ)と称する。
日本の自動車技術会「自動車技術ハンドブック」において、シーケンシャルターボはツインターボに含まれていない[1]が、「シーケンシャルツインターボ」とも呼ばれる[2]ため、本項で扱う。
概要
[編集]低速トルクおよびターボラグ改善には小型のタービンが有効であるが、高回転域で排圧の上昇とバイパスする排気ガス量の増大によって、ポンピングロスの増加とタービン効率の低下が起こり、エンジン出力が低下してしまう[1]。これを改善するため、小型のターボチャージャーを二つ設置するアイデアが生まれた。
レイアウトとしては、エンジンからの排気管を排気干渉が少なくなるよう二系統にまとめ、それぞれに小型のターボチャージャーを取り付ける[1]。これにより、排気ガス流量が少ない低回転域では排気干渉の減少からシリンダー内のガス掃気効率が向上する[1]。また、動圧過給を積極的に利用しタービン入力エネルギーを増大させられるのでタービン回転の立ち上がりが早くなる[1]。さらに、同一性能を発揮する1基のターボチャージャーに対し、小型のターボチャージャーを使用することで回転体の慣性モーメントを低減できるので、ターボラグが低減できる[1]。
3気筒ずつの排気を合流させると排気干渉が低減できる直列6気筒エンジンや[1]、V型、水平対向の6気筒エンジンのように片バンクの排気タイミングが等間隔で排気干渉が少なくなるレイアウトの場合に採用例が多い。W型16気筒のブガッティ・ヴェイロンは4基のターボを搭載している(クアッドターボ)が、片バンク8気筒分の排気を4気筒ずつに分離してターボチャージャーへ導入しており[3]、これも排気干渉低減を狙ったものである。
なお、クロスプレーンタイプのクランクシャフトを使用するV8エンジンの場合、片バンクの排気をそのまままとめると排気が不等間隔でターボチャージャーに流入することになる。これを解消するには左右のバンクを跨いで排気系を取り回す必要があるが、排気管が複雑になるなどデメリットが大きくなってしまうため、やむなく片バンクずつ排気をまとめているものが多い。ところが、BMWはS63B44で排気ポートをバンク内側にするレイアウトとし、さらに特殊な排気系を用いることでそれぞれのターボチャージャーに等間隔で排気ガスが流入するようにしている。S63B44のベースで、バンクごとに排気をまとめているN63B44に対して、ツインスクロールターボの採用なども相まってトルクは約13 %(600 N・mから680 N・mに)向上している[4]。
採用例
[編集]日本
[編集]日本車のガソリンエンジンにおいては、トヨタの直列6気筒エンジンの1G-GTEU、第1世代の1JZ-GTE、2JZ-GTEや日産のRB26DETTなどの直列6気筒エンジンや、日産のVG30DETTや三菱の6G72、6A12、6A13などのV6エンジンに採用されていたが、2002年の排出ガス規制強化でガソリンターボエンジンが激減した際にツインターボ搭載車は消滅した。その後、2007年に発売された日産・GT-R用のV6エンジンVR38DETTにてツインターボエンジンが復活している。
ディーゼルエンジンでは、三菱ふそう、旧日産ディーゼル、日野においては重量物運搬用トレーラーヘッドや観光バス、ダンプカーや除雪トラック等の特に高負荷な領域を集中的に使用する車型において設定が行われていた。また、トヨタでは、ランドクルーザー70および200の輸出仕様車でツインターボの1VD-FTVを採用している。
日本国外
[編集]日本国外の自動車メーカーにおいても6気筒以上のエンジンにツインターボが組み合わされる例が多い[5]。
BMWでは直列6気筒のN54B30や、V型8気筒のN63B44、V型12気筒のN74B60に採用している。特にX5MとX6Mに搭載されるS63B44は前述の通り2基のツインスクロールターボをVバンクの間に搭載する独特なレイアウトになっている。
メルセデス・ベンツではV型8気筒のM278やV型12気筒のM275、M285に採用例がある。
ポルシェでは水平対向6気筒のMA170S、M96/70Sにおいて、可変容量ターボの一種であるVGターボを左右バンクに1基ずつ搭載している。
ジャガーではV型6気筒ディーゼルターボのAJD-V6(Gen.III)にVGツインターボが採用されている。
フォードはV型8気筒からのダウンサイジングであるEcoBoostの3.5 L V型6気筒エンジンにツインターボを採用している。
フォルクスワーゲングループでは前述のW型16気筒エンジンWR16にて、ツインターボを2基組み合わせたクアッドターボが採用されている。また、ディーゼルエンジンではV型6気筒、V型8気筒、V型12気筒の各TDIエンジンにて片バンクに1基ずつVGターボを配置しツインターボとしている。
シーケンシャルターボ
[編集]シーケンシャルターボは、エンジンの作動状態によって2基のターボチャージャーを使い分けるものである[6]。前述のツインターボと同様に2基のターボチャージャーを使用するため、シーケンシャルツインターボとも呼ばれる[2]。シーケンシャルターボは直列タイプと並列タイプの2種類に分けられる。
直列タイプでは小型のターボチャージャーと大型のターボチャージャーを直列につなげて使用する[6]。排気側はエンジン、小型ターボ、大型ターボの順に直列につながっており、小型ターボをバイパスする経路が設置される。吸気側のレイアウトは大型ターボ、小型ターボ、エンジンの順に直列につながり、排気側と同様に小型ターボをバイパスする経路がある[6]。エンジン回転数が低く排気ガス流量が少ない領域では、全排気ガスを小型ターボへ集中させてターボラグを少なくし、低速トルクを確保する。エンジン回転数が上昇し、排気ガス量が増加してきたところで徐々にバイパスバルブを開き、小型ターボをバイパスさせて大型ターボへ排気ガスを導入する[6]。バイパスバルブが開くに従い、小型ターボのタービン前後圧力差は小さくなるため、以降の過給は大型ターボのみが受け持つ[6]。なお、このとき小型ターボのコンプレッサーが抵抗になるため、吸気側のバイパスバルブを開き小型ターボは吸気側でもバイパスされる。
並列タイプは1つ目のターボチャージャー(プライマリーターボ)と2つ目のターボチャージャー(セカンダリーターボ)が並列に設置される[6]。排気側ではどちらか片方のターボにウェイストゲートが設置され、セカンダリーターボ上流には排気ガス導入を制御する切換えバルブが設置される[6][7]。吸気側ではセカンダリーターボに、コンプレッサーを通過した吸気を再循環させるリリーフバルブがあり、プライマリーターボ側の吸気管との接合前に切換えバルブが設置される[6]。エンジンの低回転領域では直列タイプと同様に全排気ガスをプライマリーターボに導き過給圧を得るが、中高速域では吸排気の切換えバルブを開きプライマリー、セカンダリーの二つのターボで過給を行う[6]。
いずれのタイプもエンジンの作動状態に合わせて2基のターボチャージャーの作動状態を切り替える必要があるため、電子制御が必須となる。また、切換え時にトルクの段差が生じやすいため、この制御が課題になっている[6]。
シーケンシャルターボの採用例
[編集]乗用車用ガソリンエンジンへのシーケンシャルターボ適用は1987年のポルシェ・959が初の事例であるとされる。日本車では1990年のユーノス・コスモ用20B-REW、13B-REWが初である。後にトヨタ・スープラなどの2JZ-GTEや、2代目スバル・レガシィのEJ20でも採用された。なお、トヨタは「2ウェイツインターボ」[8]、富士重工業(現:SUBARU)は「2ステージターボ」[9]と呼称していた。
後にポルシェはシーケンシャルターボの採用を取りやめ、997型911から可変容量ターボの一種であるVGターボを片バンクに1基ずつ使用したツインターボで、低速トルクおよびターボラグの改善と出力向上を得ている。日本車においては2002年の排出ガス規制強化により、マツダはロータリーエンジンへのターボチャージャー搭載を取りやめ、富士重工業は4代目レガシィから低速トルク向上のためツインスクロールターボ(ツインエントリーターボ)に変更し、ターボチャージャーは1基のみになっている。
ガソリンエンジンにおけるシーケンシャルターボの採用は少なくなっているが、ディーゼルエンジンではBMWがバリアブル・ツインターボと呼ばれる直列タイプをN47D20T0に採用し、メルセデスのOM651も直列タイプであるボルグワーナーのR2S(Regulated 2-Stage Turbocharging)[10]を採用、フィアットも1.9 マルチジェットツインターボに直列タイプのTST(Two Stage Turbo)を、ヒョンデも直列4気筒のU2 1.7およびR 2.2に直列タイプの2ステージターボを採用している[5]。
日本国内メーカーではいすゞがギガにおいて6NX1エンジンに、エルフにおいて4JJ1エンジンに、フォワードやエルガにおいて4HK1-TC*において2ステージターボを採用している。三菱ふそうも、スーパーグレートやエアロエースに搭載される排気量7.7 Lの6S10エンジンで2ステージターボを採用している。また、マツダはSKYACTIV-D2.2と称して圧縮比を14程度まで低減した排気量2.2 Lのディーゼルエンジンに2ステージターボを採用し、初採用車となったCX-5以降の設定のある車両に搭載している。
シーケンシャルターボの動作
[編集]ここでは1990年に発売されたユーノス・コスモの20B-REW、13B-REWに搭載された並列タイプのシーケンシャルターボの動作を例として挙げる。
このシステムの特徴は、セカンダリーターボの過給圧立ち上がりをスムーズにする「予回転方式」が採用されたことにある[2]。また、プライマリーターボには低速レスポンス重視のインパクトタービンブレードを、セカンダリーターボには高流量時に通気抵抗の小さいハイフロー型をそれぞれ採用している[2]。
レイアウトはほぼ前述の並列タイプの通りで、セカンダリーターボへの排気導入部に設置される切換えバルブが大小二つになっており、それぞれマツダは「ターボメインコントロールバルブ」、「ターボプリコントロールバルブ」と名付けている[11]。また同様に、セカンダリーターボ吸気側のリリーフバルブは「過給リリーフバルブ」、プライマリー、セカンダリーの吸気合流部の切換えバルブは「過給コントロールバルブ」と呼んでいる[11]。
まず、エンジン回転数が低い領域では全てのバルブが閉じられており、排気ガスはプライマリーターボに集中して流れ、エンジンの低速トルクを増強する[11]。プライマリーターボが設定過給圧に到達した後、ターボプリコントロールバルブを開き、セカンダリーターボを約8万rpmに保つ[11]。このとき、過給コントロールバルブは閉じているためセカンダリーターボの過給圧はエンジンには加わらない[11]。このままだとサージングによりコンプレッサーが破損してしまうため、過給リリーフバルブを開くことでコンプレッサ内を一定の圧力に保ちサージングが起きないようにしている[11]。この状態ではプライマリーターボのみの作動から二つのターボでの並列過給に切換えるにはセカンダリーターボの回転数が足りないため、並列過給への移行直前に過給リリーフバルブを閉じて(短時間のあいだサージング状態に陥ること許容した上で)セカンダリーターボの回転を12万rpm程度まで加速させる[12]。その後、ターボメインコントロールバルブと過給コントロールバルブを開き、プライマリーターボにセカンダリーターボの過給を加えた中高速域の過給モードへスムーズに移行する[12]。
なお直列タイプの場合、制御バルブは小型ターボの吸排気バイパスバルブの二つだけなので、制御は並列タイプよりも単純になる。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ エンジン回転数の正式名称はエンジン回転速度。 JIS B 0108-1による。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g 自動車技術ハンドブック編集委員会 2005, p. 103.
- ^ a b c d GP企画センター 2003, p. 127.
- ^ “2006 Bugatti Veyron 16.4 Pictures”. RSPORTSCARS.COM. 2012年1月2日閲覧。
- ^ MFi 2011, pp. 30–31.
- ^ a b MFi 2011.
- ^ a b c d e f g h i j 自動車技術ハンドブック編集委員会 2005, p. 104.
- ^ GP企画センター 2003, p. 128.
- ^ “トヨタ企業サイト|トヨタ自動車75年史|技術開発|エンジン”. トヨタ自動車. 2020年2月6日閲覧。
- ^ 『スバル レガシィ ワゴンシリーズをフルモデルチェンジ『新世紀レガシィ』を発売』(プレスリリース)富士重工業、1998年6月17日 。2020年2月6日閲覧。
- ^ “Regulated 2-stage turbocharging(R2STM)”. BorgWarner Turbo Systems. 2012年1月3日閲覧閲覧。
- ^ a b c d e f GP企画センター 2003, p. 129.
- ^ a b GP企画センター 2003, p. 130.
参考資料
[編集]- 自動車技術ハンドブック編集委員会 編『自動車技術ハンドブック』(改訂版第4分冊)自動車技術会、2005年7月、103頁。ISBN 4-915219-43-7。
- GP企画センター 編『マツダ・ロータリーエンジンの歴史』グランプリ出版、2003年、127頁。ISBN 4-87687-242-2。
- 「World Engine Databook 2011-2012」『Motor Fan illustrated 特別編集 ワールド・エンジン・データブック 2011-2012』、三栄書房、2011年、ISBN 978-4-7796-1336-4。