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[[画像:Cans_of_beer_on_Japanese_discount_store.jpg|thumbnail|240px|[[ディスカウントストア]]に並ぶ発泡酒]] |
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'''発泡酒'''(はっぽうしゅ)とは、[[日本]]の[[酒税法]]で定義されている[[酒|酒類]]の一つ。日本の酒税法では、[[ビール]]と発泡酒は区別して[[#定義|定義]]されており、例として[[麦芽]]・[[ホップ]]・[[水]]を原料として[[発酵]]させても、「定められた副原料以外を用いる場合」はビールと認められず発泡酒に分類される<ref name="tanoteigi"/>。本項では、日本で |
'''発泡酒'''(はっぽうしゅ)とは、[[日本]]の[[酒税法]]で定義されている[[酒|酒類]]の一つ。日本の酒税法では、[[ビール]]と発泡酒は区別して[[#定義|定義]]されており、例として[[麦芽]]・[[ホップ]]・[[水]]を原料として[[発酵]]させても、「定められた副原料以外を用いる場合」はビールと認められず発泡酒に分類される<ref name="tanoteigi"/>。本項では、日本で1990年代以降に展開されている低税率系発泡酒を中心に解説する。 |
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発泡酒市場は1994年以降の市場形成以来[[2000年代]]前半までシェア拡大したことで、ビールの売り上げが減少傾向となり、[[アルコール飲料]]の売れ筋商品となっていたが、2度の[[酒税]]改正や[[第三のビール]]の登場による割安感の低下、ビール会社の事業方針変化などの要因により、2000年代後半以降の市場は縮小化している<ref name="sankeibiz20120218-1"/>。 |
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アルコール飲料の中で、日本の税制に影響された内容や副材料を極端に多用した内容から、日本独自のビール類似アルコール飲料であり<ref name="ookusa2004">{{Cite book|和書|title=ビール・地ビール・発泡酒|author=大草昭|url=http://books.google.co.jp/books?id=wItKq6gJxfYC&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false|accessdate=2012-05-13|publisher=[[文芸社]]|date=2004-08|id=ISBN 978-4835582948|pages=8ページ|chapter=はじめに}}</ref>、日本国外メディアでは '''low malt beer''' や '''happoshu''' と紹介されることもある。 |
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⚫ | 発泡酒にて「生」の定義は、ビールの「生」([[生ビール]])の定義と同様に『熱処理をしていないもの』が該当する<ref>[http://www.excite.co.jp/News/bit/00091149415173.html そもそも生ビールの「生」って何?] - エキサイトニュース 2006年6月7日</ref><ref>{{PDFlink|[http://www.jp-ta.jp/pdf/meeting/002/070718repo.pdf 商標法第3条第2項についての判断 「本生事件」]}} 日本商標協会判決研究部会 報告資料 2007年7月18日</ref>。表示に関して「ビールの表示に関する公正競争規約」<ref>{{PDFlink|[http://www.jfftc.org/cgi-bin/data/bunsyo/B-1.pdf ビールの表示に関する公正競争規約]}}</ref>に該当せず他に規約がないため、「生」商品でもビールのような「熱処理していない」旨(「非熱処理」等)の表記は行なわれていない。 |
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[[地ビール]]の発泡酒版である「地発泡酒」も存在する<ref>例として |
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* [http://www.kitasangyo.com/BEER/Brewery_Map/MAP.html 地ビール・地発泡酒醸造所リスト] |
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* [http://www.konishi.co.jp/html/fujiyama/beernet/map/kanto/koedo.html 日本全国地ビールマップ / 小江戸ビールが飲めるお店] - [[小西酒造]]、[http://www.coedobrewery.com/ 小江戸ブルワリー] |
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* [http://www.seino-beer.jp/ 地発泡酒の西濃ブルワリー] |
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* [http://kibidote.jp/free/brewery 吉備土手下麦酒醸造所] |
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* [http://www.bentenkaku.jp/kankou/narukonokaze.html 地発泡酒「鳴子の風」] |
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*[http://www.elpaso.co.jp/beer-factory/beerfactory.html ランチョ・エルパソ:帯広ビール]<br/>など。</ref>。 |
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=== 広義 === |
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広義では「[[炭酸ガス]]を含んだ酒」という意味がある<ref name="kotobank">[http://kotobank.jp/word/%E7%99%BA%E6%B3%A1%E9%85%92 発泡酒] - [[コトバンク]]</ref>。具体的には、ビール類似アルコール飲料(現在でいう[[第三のビール]])<ref name="ookusa2004"/>、[[シャンパン]]などの[[スパークリングワイン]]<ref name="kotobank"/>を指す場合にも用いられる事がある。 |
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== 定義 == |
== 定義 == |
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[[酒税法]]第3条によると、酒類は「[[ビール]]」「[[リキュール]]」「雑酒」など17種類に分類され<ref name="tanoteigi">他の主な酒類の定義は以下のようになっている。 |
[[酒税法]]第3条によると、酒類は「[[ビール]]」「[[リキュール]]」「雑酒」など17種類に分類され<ref name="tanoteigi">他の主な酒類の定義は [http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8e%f0%90%c5%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S28HO006&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 酒税法第3条] にて以下のようになっている。 |
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*ビール |
*ビール |
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**[[麦芽]]、[[ホップ]]及び[[水]]を原料として発酵させたもの。 |
**[[麦芽]]、[[ホップ]]及び[[水]]を原料として発酵させたもの。 |
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; 発泡酒 |
; 発泡酒 |
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* 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(同法第3条第7号から第17号までに掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く)で発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る)をいう。 |
* 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(同法第3条第7号から第17号までに掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く)で発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る)をいう。 |
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==== 税率 ==== |
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== 歴史・背景 == |
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ビールの売り上げが減少傾向にあるのに対し、発泡酒市場は登場以来[[2000年代]]後期まで拡大し[[アルコール飲料]]の売れ筋商品でもあったが、2度の[[酒税]]改正や[[第三のビール]]が登場した影響で、[[チューハイ]]などに比べ、割安感が薄くなっている。 |
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=== 戦前から1960年代 === |
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[[戦前]]では、[[1932年]](昭和7年)に余剰米対策として[[大蔵省]][[醸造試験所]]でライスビールの研究が行われたが、市販化には至らなかった<ref name="nrib">{{PDFlink|[http://www.nrib.go.jp/sake/pdf/SakeNo09.pdf 造り方と商品知識 / 雑酒:発泡酒・第3のビール]}} - お酒のはなし([[独立行政法人]][[酒類総合研究所]])第9号 2006年3月29日</ref>。 |
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⚫ | [[太平洋戦争]]中、ビールは戦意を高揚するための重要な戦略物資であったが、戦況の悪化に伴い食糧不足が逼迫し、ビールの原材料となる大麦や米の供給不足が顕著化した<ref name="ookusa2004-a">{{Cite book|和書|title=ビール・地ビール・発泡酒|author=大草昭|url=http://books.google.co.jp/books?id=wItKq6gJxfYC&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false|accessdate=2012-05-05|publisher=[[文芸社]]|date=2004-08|id=ISBN 978-4835582948|pages=62〜63ページ|chapter=第二章 発泡酒創世記とそのルネッサンス}}</ref>。このような時代背景もあって大麦の使用量を減らした<ref name="nrib"/>、もしくは使用しないビール風の酒類「麦酒類似飲料」の製造開発を軍部は依頼し、農芸化学を専門とする[[大学]]や[[大日本麦酒]]などの産業関連研究機関を中心に研究が行われた<ref name="ookusa2004-a"/>。この原材料は甘藷([[サツマイモ]])と[[ホップ]]であり、現在でいう「第三のビール」に相当するものであった<ref name="ookusa2004-a"/><ref name="kanagawa">[http://www7a.biglobe.ne.jp/~souou/rekishi.html 神奈川における酒造の歴史「戦後の神奈川の酒造」発泡酒]</ref>。 |
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税制にあわせて製造されるアルコール飲料としては日本独自であり、海外メディアでは '''low malt beer''' や '''happoshu''' と紹介されることもある。 |
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戦後も食糧不足が続き[[食糧管理法]]によりビールの製造も統制が行われたため、原材料で麦芽の使用が認められなかったことから、麦芽を使わない「合成ビール」と呼称されるビール類似の酒類開発が行われ、新規企業の太洋醸造が当時自由販売化していたイモと[[ホップ]]を使用したイモ・ビールの試験醸造を申請して認可され、1950年(昭和25年)から新発売され、日本の市販発泡酒第1号となったが、1年程度で終売した<ref name="nrib"/><ref name="ookusa2004-b">{{Cite book|和書|title=ビール・地ビール・発泡酒|author=大草昭|url=http://books.google.co.jp/books?id=wItKq6gJxfYC&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false|accessdate=2012-05-05|publisher=[[文芸社]]|date=2004-08|id=ISBN 978-4835582948|pages=73〜77ページ|chapter=第二章 発泡酒創世記とそのルネッサンス}}</ref>。[[1952年]](昭和27年)、麦芽の原料になる大麦が統制緩和されたが、一部企業は原材料としての使用は引き続き制限されたまま<ref name="ookusa2004-b"/>で、同年の合成ビールに関する特許は大日本麦酒以外にも12件登録されており、名称は「合成麦酒」「即製麦酒様飲料」「ビールの素」「麦酒代用飲料」が用いられていた<ref name="ookusa2004-c">{{Cite book|和書|title=ビール・地ビール・発泡酒|author=大草昭|url=http://books.google.co.jp/books?id=wItKq6gJxfYC&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false|accessdate=2012-05-05|publisher=[[文芸社]]|date=2004-08|id=ISBN 978-4835582948|pages=69〜70ページ|chapter=第二章 発泡酒創世記とそのルネッサンス}}</ref>。1950年代における、発泡酒の一般的な呼称は「合成ビール」「模擬ビール」「模造ビール」「原材料名+ビール(一例:イモ・ビール)」など、複数存在した<ref name="ookusa2004-d">{{Cite book|和書|title=ビール・地ビール・発泡酒|author=大草昭|url=http://books.google.co.jp/books?id=wItKq6gJxfYC&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false|accessdate=2012-05-13|publisher=[[文芸社]]|date=2004-08|id=ISBN 978-4835582948|pages=83〜84ページ|chapter=第二章 発泡酒創世記とそのルネッサンス}}</ref>。1950年代前半から後半にかけて「ビーヤ」「ビール」の名を用いたビール風味の酒・飲料が複数存在し、引き続きイモを原料とした酒「イモ・ビール」、合成麦酒製造方法で作った酒「ファミリー・ドリンク・ビール」「クイック・ビール」「即席ビール」、[[果実酒]]にホップと[[炭酸ガス]]を加えた酒「ミュンヘンビール」「リンゴビール」、[[焼酎]]割りを前提とした[[清涼飲料水]]「新ビール・ミックス」などがあった<ref name="ookusa2004-c"/>。[[1953年]](昭和28年)、発泡酒に一定量までの麦芽の使用が認められるようになったこと、ビールの需要増加と焼酎と合成清酒の需要減退、ビールよりも参入コストと税金が少なく抑えられる利点があった事により、参入障壁の高いビールを避けて発泡酒に参入する企業が現れた<ref name="kanagawa"/><ref name="ookusa2004-d"/>。[[1950年代]]から1960年代に複数社から、この種の酒が製造・販売されていた。しかし、多くの会社は数年で撤退し、[[協和発酵キリン|協和醱酵工業(現・協和発酵キリン)]]は[[1960年]]に発泡酒「ラビー」を発売して当初は好調であったが冬になると出荷が激減し<ref name="ookusa2004-f">{{Cite book|和書|title=ビール・地ビール・発泡酒|author=大草昭|url=http://books.google.co.jp/books?id=wItKq6gJxfYC&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false|accessdate=2012-05-13|publisher=[[文芸社]]|date=2004-08|id=ISBN 978-4835582948|pages=73ページ|chapter=第二章 発泡酒創世記とそのルネッサンス}}</ref>、ライナービヤーは1959年11月14日に既存ビール会社からビールと紛らわしいと[[不正競争防止法]]で訴えられ、1965年6月4日に[[最高裁判所]]の判決で既存ビール会社が勝訴したことから事実上販売を差し止められた<ref>[http://www.chosakai.or.jp/intell/pat/contents65/6506.htm 特許ニュース 昭和40年6月分目次(IP&Sニューズ)]</ref><ref name="ookusa2004-e">{{Cite book|和書|title=ビール・地ビール・発泡酒|author=大草昭|url=http://books.google.co.jp/books?id=wItKq6gJxfYC&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q&f=false|accessdate=2012-05-13|publisher=[[文芸社]]|date=2004-08|id=ISBN 978-4835582948|pages=88〜89ページ|chapter=第二章 発泡酒創世記とそのルネッサンス}}</ref>。また、[[1957年]]([[昭和]]32年)にビール業界に宝酒造が参入したが苦戦、[[1967年]](昭和42年)にビール事業から撤退<ref>[http://www.nipponstyle.jp/column/nttr/column_14.html ニッポンスタイル 第14回 黄金色に賭けた夢 ~「タカラビール」~]</ref>。1964年には[[サントリー]]が発泡酒事業ではなくビール事業に参入し、日本のビール庫出数量は1000万石を突破してビール各社が品質・販売数量を競争する時代に突入した<ref name="ookusa2004-e"/>。これらの要因などから「ビールに対抗して発泡酒を売るのは難しい」と考えられ発泡酒事業ブームは終了し、発泡酒は酒税法で定義されているものの長期間参入する企業が無い状況が続き、醸造タイプの商品は1990年代中盤まで途絶え、休眠状態のジャンルとなってしまう<ref name="kanagawa"/><ref name="ookusa2004-e"/>。 |
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⚫ | 発泡酒にて「生」の定義は、ビールの「生」([[生ビール]])の定義と同様に『熱処理をしていないもの』が該当する<ref>[http://www.excite.co.jp/News/bit/00091149415173.html そもそも生ビールの「生」って何?] エキサイトニュース 2006年6月7日</ref><ref>{{PDFlink|[http://www.jp-ta.jp/pdf/meeting/002/070718repo.pdf 商標法第3条第2項についての判断 「本生事件」]}} 日本商標協会判決研究部会 報告資料 2007年7月18日</ref> |
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=== 1980年代 === |
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⚫ | 発泡酒で醸造タイプは長期間途絶えたが、混合タイプは既存メーカーから僅かに商品化された。[[1983年]](昭和58年)に[[アサヒビール]]が発売した「[[アサヒビール#過去に存在した商品|Be]]」はビールと[[ジュース]]を混合した発泡酒で、[[カクテル]]の様に色がついていたことや、アルコール度数が2%だったこともあり「ビールタイプのライトカクテル」として発売された。ピンク・グリーン・パープルの3色に染められた[[ネコ]]が白いグランドピアノの前で戯れるCMが当時話題を呼んだ。[[1986年]](昭和61年)に[[サッポロビール]]が[[東海四県]]限定で「ビヤカクテル バンブー」を発売。しかし、両商品とも短期間で販売終了した<ref name="kanagawa"/>。 |
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⚫ | [[1984年]](昭和59年)にサントリーが発売した「[[サントリー#チューハイ(一部ブランド名のみ)|ビーハイ]]」はその名の通りビールを焼酎で割ったもの<ref name="bp20090420">[http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090420/147756/?P=4 こだわりのビール事業で活路を見出した サントリーの「やってみなはれ」経営〔4〕] [[日経BP]]ネット 2009年4月20日</ref>で、今日でいう「[[第三のビール#リキュール(発泡性)(1)に分類されるもの|第三のビール:リキュール(発泡性)(1)]]」(もしくは「第四のビール」)のルーツ的な商品であったが、成果が出ず製造販売中止となった<ref name="bp20090420"/>。 |
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=== 1990年代から2000年代中盤 === |
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戦後、発泡酒に一定量までの麦芽の使用が認められるようになったことや、ビールよりも参入コストと税金が少なく抑えられる利点があった事により、参入障壁の高いビールを避けて発泡酒に参入する企業が現れた<ref name="kanagawa"/>。[[1950年代]]には数社から、この種の酒が製造・販売されていた。しかし、多くの会社は数年で撤退し、ライナービヤーは既存ビール会社からビールと紛らわしいと[[不正競争防止法]]で訴えられ、事実上販売を差し止められた<ref>[http://www.chosakai.or.jp/intell/pat/contents65/6506.htm 特許ニュース 昭和40年6月分目次(IP&Sニューズ)]より</ref>。また、[[1957年]]([[昭和]]32年)にビール業界に宝酒造が参入したが苦戦、[[1967年]](昭和42年)にビール事業から撤退<ref>[http://www.nipponstyle.jp/column/nttr/column_14.html ニッポンスタイル 第14回 黄金色に賭けた夢 ~「タカラビール」~]より</ref>。これらの要因などから発泡酒で成功を収めるのは難しいと考えられ、発泡酒は酒税法で定義されているものの長期間参入する企業が無い状況が続き、休眠状態のジャンルとなってしまう<ref name="kanagawa"/>。 |
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⚫ | [[1989年]]([[平成]]元年)に酒類販売免許が緩和され、大型[[ディスカウントストア|ディスカウント店]]でビールを扱うことができるようになった。これによりこれまでの小売店での[[希望小売価格]]での購入が減り、大店舗間での低価格競争が起こった。それらの競争は、卸売業者や生産メーカーへの値下げ要望となったのだが、そもそもビールはその小売価格のうち46.5%が税金で占められ、値下げは難しい商品であった([[1990年代]]前半における日本国産ビールの一般的な価格は225円前後<ref name="sanken">{{PDFlink|[http://www.waseda.jp/sanken/publication/working/wp/WP2008-001.pdf プレミアム戦略による成熟市場への挑戦]}} - [[早稲田大学]]産業経営研究所 ワーキングペーパー 2008年度 第1号</ref><ref name="mizkos">{{PDFlink|[http://mizkos.jp/otsuka.pdf ビール業界における、発泡酒・新ジャンルの競争]}} - 水越康介([[首都大学東京]])私的市場戦略研究室</ref>)。また、日本国産ビールの値下げが難しいため、日本国外の安い輸入ビールを取り扱う店が急増し、日本国内の大手ビール会社は危機感を募らせていた。 |
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この状況に対し、日本国内のビール会社は価格と内容で対抗出来る商品の開発が急務であり<ref>[http://www.attax.co.jp/column/detail/00395.html 変化しながら生き残る商品] - プロトピックス 2009年9月号</ref>、麦芽使用量を抑えた酒類の研究・開発が進められていた<ref name="suntory-history">[http://www.suntory.co.jp/company/research/history/frontier.html 研究開発100年の歴史:やってみなはれ精神が生み出したフロンティア製品] - [[サントリー]]</ref><ref>[http://www.kirin.co.jp/brands/TR/history/index.html 淡麗ヒストリー 1994-1998] - KIRIN</ref>。当時の酒税法では麦芽の比率が67%(3分の2)以上のものをビール、それ未満は「雑酒 - 発泡酒」の区分けで、ビールに比べ税率は低い条件になっていた<ref name="mizkos"/><ref name="suntory-history"/><ref name="syouhyou">[http://shohyo.shinketsu.jp/originaltext/tm/1192273.html 商標審決公報 不服2008-4257 商願2007- 36439拒絶査定不服審判事件(確定日:2009年1月15日)] - 商標審決データベース</ref>。1990年代前半においてシェアが5%台と大苦戦していた[[サントリー]]は打開策として発泡酒の税率の低さに注目し、過去20年行われた低麦芽比率における発泡酒醸造の研究を活かし、日本人の嗜好に合う味と価格面でも支持を得るような新商品の開発を具体化させ<ref name="sanken"/><ref name="suntory-history"/>、麦芽比率の低下による香味への影響を原料・酵母・醸造技術で解決して商品化に至った<ref name="suntory-history"/>。 |
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[[1994年]](平成6年)10月<ref name="suntory20010821">[http://www.suntory.co.jp/news/2001/7978.html 2001年秋「マグナム感謝祭 キャッシュバックキャンペーン」実施] - サントリー 2001年8月21日</ref>に麦芽率を65%に抑え低価格(350ml缶、[[希望小売価格]]180円、税別)を実現させた発泡酒「ホップス」をサントリーが発売して順調な滑り出しをみせ<ref name="suntory-history"/><ref>[http://news.nissyoku.co.jp/Contents/urn/newsml/nissyoku.co.jp/19941226/nss-7809-0057/1 主力好調のビール4社 サントリー=「ホップス」で飛躍] - 日本食糧新聞 1994年12月26日</ref>、発泡酒市場を形成する起点となった<ref name="suntory-history"/>。翌1995年5月には [[サッポロビール]]が麦芽比率25%未満で更に低価格(350ml缶、希望小売価格160円、税別)の「ドラフティ」を新発売し、品薄になって増産体制を整えるほどの売上となり<ref name="nissyoku19950621">[http://news.nissyoku.co.jp/Contents/urn/newsml/nissyoku.co.jp/19950621/nss-7884-0024/1 サッポロビール、「ドラフティ」全国展開を完了] - 日本食糧新聞 1995年6月21日</ref>、発泡酒は本格的な競争が開始された<ref name="mizkos"/>。 |
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⚫ | [[1984年]](昭和59年)にサントリーが発売した「[[サントリー#チューハイ(一部ブランド名のみ)|ビーハイ]]」はその名の通りビールを |
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当時は「節税ビール」<ref name="syouhyou"/>や「麦芽アルコール飲料」<ref name="nissyoku19950621"/>とも呼ばれ、味はビールと比べ小異<ref name="syouhyou"/>や劣ると評されながらも低価格が功を奏し、発泡酒の売り上げは好調だったが、同時にビールの売上や商品構成比率が低下した<ref name="mizkos"/>。政府は[[1996年]](平成8年)秋、酒税を改訂、麦芽率50%以上の発泡酒の税率をビールと同じとした。発泡酒をねらい打ちにした改訂で、商品開発を行う企業努力を無視した行為だと大手ビールメーカーは反発した。サントリーは秋の酒税法変更に対し麦芽使用率を低減しながら技術革新で乗り越え、麦芽使用率を25%未満にした「スーパーホップス」を1996年5月28日から市場に投入して低価格(350ml缶、[[希望小売価格]]145円、税別)に対応した<ref name="suntory-history"/><ref>[http://www.suntory.co.jp/news/1998/7123/7123-6.html スーパーホップス商品概要] - サントリー 1997年12月1日</ref>。 |
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また、国産ビールの値下げが難しいため、海外の安い輸入ビールを取り扱う店が急増し、大手ビール企業は危機感を募らせていた。 |
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⚫ | [[1998年]](平成10年)には、[[麒麟麦酒|キリンビール]]の発泡酒初参入となる「[[麒麟淡麗〈生〉]]」を発売、同年の発泡酒市場のシェア50%以上を占める大ヒット商品となり<ref>[http://www.kirin.co.jp/company/news/2009/0108_01.html 「麒麟淡麗〈生〉」が1998年の発売以来、累計販売本数で2百億本を突破!] - KIRIN 2009年1月8日</ref>、同時に発泡酒市場は大きく拡大した<ref name="keio-mita">{{PDFlink|[http://seminar.econ.keio.ac.jp/kawai/mitaron/mitaron2003.pdf ビール産業における広告効果の分析]}} - |
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ここでビールを値下げする可能性の一つとして、各社で研究が進められていた(とされる)のが発泡酒である。 |
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[[慶應義塾大学]][[経済学部]] 河井啓希研究会5期生 平成15年度[[三田祭]]論文</ref>。 |
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当時の酒税法では麦芽の比率が66.7%(3分の2)以上のものをビール、それ未満は発泡酒とし、ビールと比べると税率が大幅に安く定められていた。 |
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⚫ | [[2001年]](平成13年)、[[アサヒビール]]が発泡酒市場初参入となる「本生」(現[[アサヒ本生ドラフト]])を発売。アサヒビールはこれまで「ビールのまがいものである発泡酒は発売しない」と表明してきたが、その間毎年のように新発売したビール新製品が不振であったことから方針転換し、当時成長過程にあった発泡酒市場への参入を決め、理由として「発泡酒カテゴリーが成立したから」と説明している<ref>[http://www.nikkeibp.co.jp/archives/124/124251.html アサヒビール参入で発泡酒戦線さらに熱く] - [[日経BP|日経BPネット]] 2001年2月28日</ref>。 |
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その流れの中で、[[1994年]](平成6年)に[[サントリー]]が麦芽率を65%におさえた発泡酒「ホップス」を販売し、低価格を実現させた。翌年には [[サッポロビール]]が麦芽比率25%未満の「ドラフティー」を発売、さらなる低価格に設定したことで、発泡酒は本格的な競争が開始されることになる。 |
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[[2000年代]]初旬は「健康志向」の機運が高まっていたことで<ref name="mizkos"/><ref name="kirin20020809">{{PDFlink|[http://www.kirinholdings.co.jp/irinfo/event/explain/pdf/2002_pre.pdf キリンビール株式会社 2002年中間決算説明会]}} - KIRIN 2002年8月9日</ref>、サントリーは発泡酒で初めて「カロリーオフ」「ダイエット」をテーマにし、味とカロリーオフの両立を実現した「[[ダイエット生]]」を2001年10月10日に発売、カロリーオフカテゴリーの初回出荷数で過去最高値を記録し、食品ヒット大賞を受賞した<ref>[http://news.nissyoku.co.jp/Contents/urn/newsml/nissyoku.co.jp/20020205/nss-8962-0022/1 食品ヒット大賞特集:優秀ヒット賞=ダイエット<生>(サントリー)] - 日本食糧新聞 2002年2月5日</ref>。2002年4月に発売された麒麟麦酒「[[麒麟淡麗〈生〉|淡麗グリーンラベル]]」は、日本の食品業界で過去に多数発売されたが、いずれも主流には至らず「成功しないカテゴリー」が[[定説]]となっていたライト商品のカテゴリーに該当し先行きが懸念された<ref name="Stock">[http://www.stockweather.co.jp/sw/news/2002/1205/ta209.html 5日キリンが続伸、プリン体カットした発泡酒発売] - Stock Weather 2002年12月5日</ref><ref name="nissyoku20030225">[http://news.nissyoku.co.jp/Contents/urn/newsml/nissyoku.co.jp/20030225/nss-9129-0013/1 食品ヒット大賞特集:優秀ヒット賞=淡麗グリーンラベル(キリンビール)] - 日本食糧新聞 2003年2月25日</ref>。しかし、当初計画比約3.3倍の1310万ケースを販売し、同年の発泡酒新製品で圧倒的な売上で、ライト商品カテゴリーの定説を覆し初めて成功を収め、食品ヒット大賞を受賞した<ref name="Stock"/><ref name="nissyoku20030225"/>。2002年には各社から健康志向に合わせた商品が発売され、発泡酒に「機能性」という市場が創造され定着したことで、特徴のひとつとなった<ref name="mizkos"/><ref name="sankeibiz20120218-3">[http://www.sankeibiz.jp/business/news/120218/bsc1202180502008-n3.htm 発泡酒“落日”、薄れる存在 第3・ノンアル台頭で販売量3分の1に (3/3)] - Sankeibiz 2012年2月18日</ref>。 |
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当時は「節税ビール」と呼ばれ、味はビールと比べ小異<ref name="syouhyou">[http://shohyo.shinketsu.jp/originaltext/tm/1192273.html 商標審決公報 不服2008-4257 商願2007- 36439拒絶査定不服審判事件(確定日:2009年1月15日)] 商標審決データベース</ref>や劣ると評されながらも低価格が功を奏し、発泡酒の売り上げは好調だったが、ビールの売り上げが低下したため、政府は[[1996年]](平成8年)秋、酒税を改訂、麦芽率50%以上の発泡酒の税率をビールと同じとした。発泡酒をねらい打ちにした改訂で、商品開発を行う企業努力を無視した行為だと大手ビールメーカーは反発した。 |
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[[2002年]](平成14年)、麒麟麦酒が2月27日に新発売した発泡酒「極生」は飲みやすさと買いやすさを追求し、テレビCM無し、容器・パッケージ簡素化などの販売コストを圧縮したことで350ml缶の希望小売価格を135円とし、通常の発泡酒に比べ10円安く設定した<ref name="kirin20020809"/><ref>[http://www.kirin.co.jp/company/news/01/d/020109a_1.html 〜発泡酒ならではの「飲みやすさ」と「買いやすさ」を極めた、シンプルな生〜「キリン 極生〈ゴクナマ〉」新発売] - KIRIN 2002年1月9日</ref><ref name="bp20020312">[http://www.nikkeibp.co.jp/archives/173/173489.html 発泡酒、早くも熱い10円戦争] - 日経BPネット 2002年3月12日</ref>。これに他社も追従して一部商品の価格を変更したり、ビールメーカーの[[リベート]]が加熱したことで、値引き競争の泥沼化と乱売合戦が展開され<ref name="sanken"/><ref name="mizkos"/><ref name="bp20020312"/>、ビール会社の大きな経営課題となっていた<ref name="kirin20020809"/>。同年におけるビール類(ビール・発泡酒)市場シェアで発泡酒は37.2%を占め全盛期を迎えていた<ref name="sankeibiz20120218-1">[http://www.sankeibiz.jp/business/news/120218/bsc1202180502008-n1.htm 発泡酒“落日”、薄れる存在 第3・ノンアル台頭で販売量3分の1に (1/3)] - Sankeibiz 2012年2月18日</ref><ref name="asahi20120129">[http://www.asahi.com/food/news/TKY201101280595.html 発泡酒の元祖サントリー、新商品出しません 社長が表明] - 朝日新聞 2012年1月29日</ref>。 |
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サントリーは秋の酒税法変更に対し、麦芽使用率を25%未満にした「スーパーホップス」を同年5月から市場に投入している。 |
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[[2003年]](平成15年)、4月のビール類(ビール・発泡酒)市場シェアで発泡酒は48.2%と月単位シェアで過去最高を記録し、5月1日から酒税法が改正され発泡酒は増税され<ref>[http://news.nissyoku.co.jp/Contents/urn/newsml/nissyoku.co.jp/20030519/nss-9163-0011/1 国産ビール・発泡酒4月分課税出荷数量、発泡酒シェア過去最高に] - 日本食糧新聞 2003年5月19日</ref>、商品価格に反映されて10円の値上げとなった。この改正が要因となり、さらなる安い税率のアルコール飲料の研究・開発を活かし、[[第三のビール]]の商品化に至った<ref>その第三のビールも[[2006年]](平成18年)に税率を上げられている。</ref>。また、発泡酒の増税によって2002年から激化していた値引き競争が緩和し、更に2005年のビールメーカーによるリベート見直し、ビール産業企業の方針転換(価格から価値へ、量から質へ、シェアから利益へ)などの要因によって、発泡酒の値引き競争・乱売時代は終焉を迎えた<ref name="sanken"/>。 |
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=== 2000年代後半以降の市場縮小 === |
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⚫ | [[2001年]](平成13年)、[[アサヒビール]]が発泡酒市場初参入となる「本生」(現[[アサヒ本生ドラフト]])を発売。アサヒビールはこれまで「ビールのまがいものである発泡酒は発売しない」と表明してきたが、その間毎年のように新発売したビール新製品が不振であったことから方針転換し、当時成長過程にあった発泡酒市場への参入を決め、理由として「発泡酒カテゴリーが成立したから」と説明している<ref>[http://www.nikkeibp.co.jp/archives/124/124251.html アサヒビール参入で発泡酒戦線さらに熱く] [[日経BP|日経BPネット]] 2001年2月28日</ref>。 |
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2000年代後半以降、ビール類における発泡酒のシェアは年々低下している<ref name="sankeibiz20120218-1"/><ref>[http://digital.asahi.com/articles/TKY201201170661.html 家飲み増えてビール離れ 11年出荷、初の半数割れ] - 朝日新聞 2012年1月18日</ref>。要因として、ビール類で低価格商品が細分化して需要が第三のビールに移行したことや、ビール各社が利益率の高いノンアルコール[[ビールテイスト飲料]]などに力を注いでいるなどの影響が挙げられている<ref name="sankeibiz20120218-1"/><ref name="sankeibiz20120218-3"/>。 |
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[[2003年]](平成15年)、酒税法がさらに改正され発泡酒は10円の値上げとなる。この改正が要因となり、さらなる安い税率のアルコール飲料の研究から[[第三のビール]]が開発される事となる。その第三のビールも[[2006年]](平成18年)に税率を上げられている。 |
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[[2009年]]6月2日に新発売した「豊か〈生〉」<ref>[http://www.suntory.co.jp/news/2009/10394.html 玄米を使用した新発泡酒「豊か〈生〉」発売] - サントリー 2009年4月7日</ref>は、サントリーの発泡酒で最後のレギュラー新商品となり、同社はこれ以降レギュラー商品では新商品を出していない<ref name="asahi20120129"/>。 |
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[[2010年]](平成22年) |
[[2010年]](平成22年)の発泡酒におけるメーカー別シェアは[[麒麟麦酒|キリンビール]]が66.2%で首位であった<ref>[http://www.kirin.co.jp/company/salesdata/2010/nenkan.html 2010年年間ビール・発泡酒・新ジャンル課税発表ヘッドライン] - キリンビール・販売状況</ref>。 |
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2011年(平成23年)、アサヒ・サントリー・サッポロの3社は発泡酒事業を縮小の方針を打ち出した<ref name="asahi20120129"/><ref name="yomi20110117">第3のビール登場で発泡酒離れ 大手3社生産縮小へ キリンは好調な「淡麗」に経営資源を積極投入 - 読売新聞 2011年1月17日</ref>。ただし、撤退に関しては否定の見解を示しており、理由として「各ブランドが一定の固定客を持っており、販促費をかけなくてもある程度は売れる」という状況が挙げられている<ref name="sankeibiz20120218-2">[http://www.sankeibiz.jp/business/news/120218/bsc1202180502008-n2.htm 発泡酒“落日”、薄れる存在 第3・ノンアル台頭で販売量3分の1に (2/3)] - Sankeibiz 2012年2月18日</ref>。この中で、サントリーは売れ行きの状況次第によって発泡酒の製造停止を視野に入れており、2011年の販売計画は前年比58%減で<ref name="asahi20120129"/>、2012年3月中旬には「[[ダイエット生]]」の製造を終了<ref>{{Cite web|url=http://www.suntory.co.jp/beer/diet/index.html?fromid=top_fla|title=ダイエット生|work=発泡酒|publisher=[[サントリー]]|accessdate=2012-05-13|quote=ダイエット<生>については、3月中旬製造分をもちまして出荷終了となっております。}}</ref>など、実際に発泡酒事業を縮小化している。 |
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それに対しキリンは淡麗ブランドが好調で、麒麟淡麗〈生〉はビール類全体のランクで第4位であることや、淡麗グリーンラベルは機能性カテゴリーの定番商品で知名度・イメージが高いことなどから、経営資源を発泡酒に積極投入するとしている<ref name="sankeibiz20120218-3"/><ref name="yomi20110117"/><ref name="sankeibiz20120218-2"/><ref>[http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz08q1/568280/ 健康志向のビール系飲料、知名度トップは「キリン淡麗グリーンラベル] - 日経BPネット 2008年4月15日</ref>。 2011年におけるビール類(ビール・発泡酒・第三のビール)市場シェアで発泡酒は15.4%であった<ref name="sankeibiz20120218-1"/>。 |
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一般的な発泡酒の麦芽比率は25%未満 |
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== 主要銘柄== |
== 主要銘柄== |
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[[2012年]](平成24年)[[5月]]時点の現行商品。過去の商品については、各社項目にある過去商品節を参照。 |
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{| class="wikitable" style="font-size:80%; width:80%; " |
{| class="wikitable" style="font-size:80%; width:80%; " |
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!メーカー!!商品名!!原料!!nowrap|アルコール分!!備考 |
!メーカー!!商品名!!原料!!nowrap|麦芽比率!!アルコール分!!備考 |
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|rowspan="4" |キリンビール||[[麒麟淡麗〈生〉]]<ref>[http://www.kirin.co.jp/brands/TR/product/ 麒麟淡麗〈生〉]、キリンビール。</ref>||麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類||5.5%|| |
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|rowspan="4" |キリンビール||[[麒麟淡麗〈生〉]]<ref>[http://www.kirin.co.jp/brands/TR/product/ 麒麟淡麗〈生〉] - キリンビール</ref>||麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類||25%未満||5.5%||業務用樽生有 |
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|淡麗 |
|淡麗グリーンラベル<ref>[http://www.kirin.co.jp/brands/greenlabel/index.html 淡麗グリーンラベル] - キリンビール</ref>||麦芽、ホップ、大麦、糖類||25%未満||4.5%|| |
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|淡麗W<ref>[http://www.kirin.co.jp/brands/tanreiw/outline/ 淡麗W] - キリンビール</ref>||麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類、赤ワインエキス、香料、カラメル色素||25%未満||5.5%||旧・淡麗アルファ |
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|麒麟ZERO<ref>[http://www.kirin.co.jp/brands/kirinzero/index.html 麒麟ZERO] - キリンビール</ref>||麦芽、ホップ、糖類、大豆たんぱく、酵母エキス||25%未満||3%|| |
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|アサヒ本生 |
|rowspan="3" |アサヒビール||[[アサヒ本生ドラフト]]<ref>[http://www.asahibeer.co.jp/products/beer/hon-nama/ アサヒ本生ドラフト] - アサヒビール</ref>||麦芽、ホップ、大麦、大麦エキス、米、コーン、スターチ、糖類||25%未満||5.5%||旧・アサヒ本生 |
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|アサヒ本生アクアブルー<ref>[http://www.asahibeer.co.jp/products/beer/hon-nama_aquablue/ アサヒ本生アクアブルー] - アサヒビール</ref>||麦芽、ホップ、大麦、大麦エキス、スターチ、糖類、酵母エキス、海藻エキス ||25%未満||5%||旧・アサヒ本生オフタイム |
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|[[アサヒスタイルフリー]]<ref>[http://www.asahibeer.co.jp/products/beer/stylefree/ アサヒスタイルフリー] - アサヒビール</ref>||麦芽、ホップ、糖類、カラメル色素、酵母エキス、大豆ペプチド ||25%未満||4%|| |
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|rowspan="1" nowrap|サッポロビール ||[[北海道生搾り|サッポロ北海道生搾りみがき麦]]<ref>[http://www.sapporobeer.jp/product/l-malt/namashibori/index.html サッポロ北海道生搾りみがき麦] - サッポロビール</ref>||麦芽、ホップ、大麦、糖類||25%未満||5.5%||業務用樽生有 |
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|rowspan="1" |サントリー||[[MDゴールデンドライ]]<ref name=suntry>[http://products.suntory.co.jp/beer/ingredient.html 栄養成分一覧] - サントリー</ref>||麦芽、ホップ、大麦、糖類||25%未満||6%|| |
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|[[ダイエット生|ダイエット<生>]]クリアテイスト<ref name=suntry/>||麦芽、ホップ、大麦、糖類、酸味料、クエン酸K、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)、苦味料||3.5%|| |
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|rowspan="1" |オリオンビール||麦職人<ref>[http://www.orionbeer.co.jp/brand/mugi/index.html 麦職人] |
|rowspan="1" |オリオンビール||麦職人<ref>[http://www.orionbeer.co.jp/brand/mugi/index.html 麦職人] - オリオンビール</ref>||麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類||25%未満||5.5%||業務用樽生有 |
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2012年5月13日 (日) 01:05時点における版
発泡酒(はっぽうしゅ)とは、日本の酒税法で定義されている酒類の一つ。日本の酒税法では、ビールと発泡酒は区別して定義されており、例として麦芽・ホップ・水を原料として発酵させても、「定められた副原料以外を用いる場合」はビールと認められず発泡酒に分類される[1]。本項では、日本で1990年代以降に展開されている低税率系発泡酒を中心に解説する。
概要
1990年代中盤以降日本で展開されている発泡酒は、主に麦芽比率の低いビール(ローモルトビール)の一種、またはビール風アルコール飲料である。通常のビールに比べると低価格だが、味が薄い、苦みが足りない等の、「ひと味足りない」といった評価が多い。一方、女性やアルコールを嗜まない層ではビールほど重くなくあっさりしていて飲みやすいという評価もされている。
また、麦、水、ホップと定められた副原料以外のものを使用したビールも日本では発泡酒に分類される。そのため、スパイスやハーブを用いたビールや、果実や果汁を用いるフルーツビールも「発泡酒」と区分される。
発泡酒市場は1994年以降の市場形成以来2000年代前半までシェア拡大したことで、ビールの売り上げが減少傾向となり、アルコール飲料の売れ筋商品となっていたが、2度の酒税改正や第三のビールの登場による割安感の低下、ビール会社の事業方針変化などの要因により、2000年代後半以降の市場は縮小化している[2]。
新ジャンルのビール風味アルコール飲料『第三のビール』において「リキュール(発泡性)(1)」では原材料として発泡酒が使用され、それに小麦または大麦を原料の一部に使用したスピリッツを加える製法となっている[3]。
アルコール飲料の中で、日本の税制に影響された内容や副材料を極端に多用した内容から、日本独自のビール類似アルコール飲料であり[4]、日本国外メディアでは low malt beer や happoshu と紹介されることもある。
発泡酒にて「生」の定義は、ビールの「生」(生ビール)の定義と同様に『熱処理をしていないもの』が該当する[5][6]。表示に関して「ビールの表示に関する公正競争規約」[7]に該当せず他に規約がないため、「生」商品でもビールのような「熱処理していない」旨(「非熱処理」等)の表記は行なわれていない。
広義
広義では「炭酸ガスを含んだ酒」という意味がある[9]。具体的には、ビール類似アルコール飲料(現在でいう第三のビール)[4]、シャンパンなどのスパークリングワイン[9]を指す場合にも用いられる事がある。
定義
酒税法第3条によると、酒類は「ビール」「リキュール」「雑酒」など17種類に分類され[1]、発泡酒には以下の定義となっている。
- 発泡酒
- 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(同法第3条第7号から第17号までに掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く)で発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る)をいう。
税率
税制上区分は麦芽比率によって「50%以上」「50%未満〜25%以上」「25%未満」の3種。一般的な発泡酒の麦芽比率は「25%未満」が主流である。麦芽比率「50%以上」の発泡酒の税率はビールと同率である[3]。
2006年(平成18年)5月1日以降のもの[3]。金額は1リットルあたり。
- 発泡酒
- 麦芽比率50%以上 - 220円
- 50%未満 25%以上 - 178.125円
- 25%未満 - 134.25円
歴史・背景
日本での発泡酒の誕生には、時代背景による一種の対処法、参入障壁の高いビール製造、高いビールの税率、1989年(平成元年)以来のビールの低価格競争が主な要因としてあげられる。
戦前から1960年代
戦前では、1932年(昭和7年)に余剰米対策として大蔵省醸造試験所でライスビールの研究が行われたが、市販化には至らなかった[10]。
太平洋戦争中、ビールは戦意を高揚するための重要な戦略物資であったが、戦況の悪化に伴い食糧不足が逼迫し、ビールの原材料となる大麦や米の供給不足が顕著化した[11]。このような時代背景もあって大麦の使用量を減らした[10]、もしくは使用しないビール風の酒類「麦酒類似飲料」の製造開発を軍部は依頼し、農芸化学を専門とする大学や大日本麦酒などの産業関連研究機関を中心に研究が行われた[11]。この原材料は甘藷(サツマイモ)とホップであり、現在でいう「第三のビール」に相当するものであった[11][12]。
戦後も食糧不足が続き食糧管理法によりビールの製造も統制が行われたため、原材料で麦芽の使用が認められなかったことから、麦芽を使わない「合成ビール」と呼称されるビール類似の酒類開発が行われ、新規企業の太洋醸造が当時自由販売化していたイモとホップを使用したイモ・ビールの試験醸造を申請して認可され、1950年(昭和25年)から新発売され、日本の市販発泡酒第1号となったが、1年程度で終売した[10][13]。1952年(昭和27年)、麦芽の原料になる大麦が統制緩和されたが、一部企業は原材料としての使用は引き続き制限されたまま[13]で、同年の合成ビールに関する特許は大日本麦酒以外にも12件登録されており、名称は「合成麦酒」「即製麦酒様飲料」「ビールの素」「麦酒代用飲料」が用いられていた[14]。1950年代における、発泡酒の一般的な呼称は「合成ビール」「模擬ビール」「模造ビール」「原材料名+ビール(一例:イモ・ビール)」など、複数存在した[15]。1950年代前半から後半にかけて「ビーヤ」「ビール」の名を用いたビール風味の酒・飲料が複数存在し、引き続きイモを原料とした酒「イモ・ビール」、合成麦酒製造方法で作った酒「ファミリー・ドリンク・ビール」「クイック・ビール」「即席ビール」、果実酒にホップと炭酸ガスを加えた酒「ミュンヘンビール」「リンゴビール」、焼酎割りを前提とした清涼飲料水「新ビール・ミックス」などがあった[14]。1953年(昭和28年)、発泡酒に一定量までの麦芽の使用が認められるようになったこと、ビールの需要増加と焼酎と合成清酒の需要減退、ビールよりも参入コストと税金が少なく抑えられる利点があった事により、参入障壁の高いビールを避けて発泡酒に参入する企業が現れた[12][15]。1950年代から1960年代に複数社から、この種の酒が製造・販売されていた。しかし、多くの会社は数年で撤退し、協和醱酵工業(現・協和発酵キリン)は1960年に発泡酒「ラビー」を発売して当初は好調であったが冬になると出荷が激減し[16]、ライナービヤーは1959年11月14日に既存ビール会社からビールと紛らわしいと不正競争防止法で訴えられ、1965年6月4日に最高裁判所の判決で既存ビール会社が勝訴したことから事実上販売を差し止められた[17][18]。また、1957年(昭和32年)にビール業界に宝酒造が参入したが苦戦、1967年(昭和42年)にビール事業から撤退[19]。1964年にはサントリーが発泡酒事業ではなくビール事業に参入し、日本のビール庫出数量は1000万石を突破してビール各社が品質・販売数量を競争する時代に突入した[18]。これらの要因などから「ビールに対抗して発泡酒を売るのは難しい」と考えられ発泡酒事業ブームは終了し、発泡酒は酒税法で定義されているものの長期間参入する企業が無い状況が続き、醸造タイプの商品は1990年代中盤まで途絶え、休眠状態のジャンルとなってしまう[12][18]。
1980年代
発泡酒で醸造タイプは長期間途絶えたが、混合タイプは既存メーカーから僅かに商品化された。1983年(昭和58年)にアサヒビールが発売した「Be」はビールとジュースを混合した発泡酒で、カクテルの様に色がついていたことや、アルコール度数が2%だったこともあり「ビールタイプのライトカクテル」として発売された。ピンク・グリーン・パープルの3色に染められたネコが白いグランドピアノの前で戯れるCMが当時話題を呼んだ。1986年(昭和61年)にサッポロビールが東海四県限定で「ビヤカクテル バンブー」を発売。しかし、両商品とも短期間で販売終了した[12]。
1984年(昭和59年)にサントリーが発売した「ビーハイ」はその名の通りビールを焼酎で割ったもの[20]で、今日でいう「第三のビール:リキュール(発泡性)(1)」(もしくは「第四のビール」)のルーツ的な商品であったが、成果が出ず製造販売中止となった[20]。
1990年代から2000年代中盤
1989年(平成元年)に酒類販売免許が緩和され、大型ディスカウント店でビールを扱うことができるようになった。これによりこれまでの小売店での希望小売価格での購入が減り、大店舗間での低価格競争が起こった。それらの競争は、卸売業者や生産メーカーへの値下げ要望となったのだが、そもそもビールはその小売価格のうち46.5%が税金で占められ、値下げは難しい商品であった(1990年代前半における日本国産ビールの一般的な価格は225円前後[21][22])。また、日本国産ビールの値下げが難しいため、日本国外の安い輸入ビールを取り扱う店が急増し、日本国内の大手ビール会社は危機感を募らせていた。
この状況に対し、日本国内のビール会社は価格と内容で対抗出来る商品の開発が急務であり[23]、麦芽使用量を抑えた酒類の研究・開発が進められていた[24][25]。当時の酒税法では麦芽の比率が67%(3分の2)以上のものをビール、それ未満は「雑酒 - 発泡酒」の区分けで、ビールに比べ税率は低い条件になっていた[22][24][26]。1990年代前半においてシェアが5%台と大苦戦していたサントリーは打開策として発泡酒の税率の低さに注目し、過去20年行われた低麦芽比率における発泡酒醸造の研究を活かし、日本人の嗜好に合う味と価格面でも支持を得るような新商品の開発を具体化させ[21][24]、麦芽比率の低下による香味への影響を原料・酵母・醸造技術で解決して商品化に至った[24]。
1994年(平成6年)10月[27]に麦芽率を65%に抑え低価格(350ml缶、希望小売価格180円、税別)を実現させた発泡酒「ホップス」をサントリーが発売して順調な滑り出しをみせ[24][28]、発泡酒市場を形成する起点となった[24]。翌1995年5月には サッポロビールが麦芽比率25%未満で更に低価格(350ml缶、希望小売価格160円、税別)の「ドラフティ」を新発売し、品薄になって増産体制を整えるほどの売上となり[29]、発泡酒は本格的な競争が開始された[22]。
当時は「節税ビール」[26]や「麦芽アルコール飲料」[29]とも呼ばれ、味はビールと比べ小異[26]や劣ると評されながらも低価格が功を奏し、発泡酒の売り上げは好調だったが、同時にビールの売上や商品構成比率が低下した[22]。政府は1996年(平成8年)秋、酒税を改訂、麦芽率50%以上の発泡酒の税率をビールと同じとした。発泡酒をねらい打ちにした改訂で、商品開発を行う企業努力を無視した行為だと大手ビールメーカーは反発した。サントリーは秋の酒税法変更に対し麦芽使用率を低減しながら技術革新で乗り越え、麦芽使用率を25%未満にした「スーパーホップス」を1996年5月28日から市場に投入して低価格(350ml缶、希望小売価格145円、税別)に対応した[24][30]。
1998年(平成10年)には、キリンビールの発泡酒初参入となる「麒麟淡麗〈生〉」を発売、同年の発泡酒市場のシェア50%以上を占める大ヒット商品となり[31]、同時に発泡酒市場は大きく拡大した[32]。
2001年(平成13年)、アサヒビールが発泡酒市場初参入となる「本生」(現アサヒ本生ドラフト)を発売。アサヒビールはこれまで「ビールのまがいものである発泡酒は発売しない」と表明してきたが、その間毎年のように新発売したビール新製品が不振であったことから方針転換し、当時成長過程にあった発泡酒市場への参入を決め、理由として「発泡酒カテゴリーが成立したから」と説明している[33]。
2000年代初旬は「健康志向」の機運が高まっていたことで[22][34]、サントリーは発泡酒で初めて「カロリーオフ」「ダイエット」をテーマにし、味とカロリーオフの両立を実現した「ダイエット生」を2001年10月10日に発売、カロリーオフカテゴリーの初回出荷数で過去最高値を記録し、食品ヒット大賞を受賞した[35]。2002年4月に発売された麒麟麦酒「淡麗グリーンラベル」は、日本の食品業界で過去に多数発売されたが、いずれも主流には至らず「成功しないカテゴリー」が定説となっていたライト商品のカテゴリーに該当し先行きが懸念された[36][37]。しかし、当初計画比約3.3倍の1310万ケースを販売し、同年の発泡酒新製品で圧倒的な売上で、ライト商品カテゴリーの定説を覆し初めて成功を収め、食品ヒット大賞を受賞した[36][37]。2002年には各社から健康志向に合わせた商品が発売され、発泡酒に「機能性」という市場が創造され定着したことで、特徴のひとつとなった[22][38]。
2002年(平成14年)、麒麟麦酒が2月27日に新発売した発泡酒「極生」は飲みやすさと買いやすさを追求し、テレビCM無し、容器・パッケージ簡素化などの販売コストを圧縮したことで350ml缶の希望小売価格を135円とし、通常の発泡酒に比べ10円安く設定した[34][39][40]。これに他社も追従して一部商品の価格を変更したり、ビールメーカーのリベートが加熱したことで、値引き競争の泥沼化と乱売合戦が展開され[21][22][40]、ビール会社の大きな経営課題となっていた[34]。同年におけるビール類(ビール・発泡酒)市場シェアで発泡酒は37.2%を占め全盛期を迎えていた[2][41]。
2003年(平成15年)、4月のビール類(ビール・発泡酒)市場シェアで発泡酒は48.2%と月単位シェアで過去最高を記録し、5月1日から酒税法が改正され発泡酒は増税され[42]、商品価格に反映されて10円の値上げとなった。この改正が要因となり、さらなる安い税率のアルコール飲料の研究・開発を活かし、第三のビールの商品化に至った[43]。また、発泡酒の増税によって2002年から激化していた値引き競争が緩和し、更に2005年のビールメーカーによるリベート見直し、ビール産業企業の方針転換(価格から価値へ、量から質へ、シェアから利益へ)などの要因によって、発泡酒の値引き競争・乱売時代は終焉を迎えた[21]。
2000年代後半以降の市場縮小
2000年代後半以降、ビール類における発泡酒のシェアは年々低下している[2][44]。要因として、ビール類で低価格商品が細分化して需要が第三のビールに移行したことや、ビール各社が利益率の高いノンアルコールビールテイスト飲料などに力を注いでいるなどの影響が挙げられている[2][38]。
2008年(平成20年)の出荷量は第三のビールに抜かれ、ビール類における構成比で初めて最下位となった[45]。
2009年6月2日に新発売した「豊か〈生〉」[46]は、サントリーの発泡酒で最後のレギュラー新商品となり、同社はこれ以降レギュラー商品では新商品を出していない[41]。
2010年(平成22年)の発泡酒におけるメーカー別シェアはキリンビールが66.2%で首位であった[47]。
2011年(平成23年)、アサヒ・サントリー・サッポロの3社は発泡酒事業を縮小の方針を打ち出した[41][48]。ただし、撤退に関しては否定の見解を示しており、理由として「各ブランドが一定の固定客を持っており、販促費をかけなくてもある程度は売れる」という状況が挙げられている[49]。この中で、サントリーは売れ行きの状況次第によって発泡酒の製造停止を視野に入れており、2011年の販売計画は前年比58%減で[41]、2012年3月中旬には「ダイエット生」の製造を終了[50]など、実際に発泡酒事業を縮小化している。
それに対しキリンは淡麗ブランドが好調で、麒麟淡麗〈生〉はビール類全体のランクで第4位であることや、淡麗グリーンラベルは機能性カテゴリーの定番商品で知名度・イメージが高いことなどから、経営資源を発泡酒に積極投入するとしている[38][48][49][51]。 2011年におけるビール類(ビール・発泡酒・第三のビール)市場シェアで発泡酒は15.4%であった[2]。
主要銘柄
2012年(平成24年)5月時点の現行商品。過去の商品については、各社項目にある過去商品節を参照。
メーカー | 商品名 | 原料 | 麦芽比率 | アルコール分 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
キリンビール | 麒麟淡麗〈生〉[52] | 麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類 | 25%未満 | 5.5% | 業務用樽生有 |
淡麗グリーンラベル[53] | 麦芽、ホップ、大麦、糖類 | 25%未満 | 4.5% | ||
淡麗W[54] | 麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類、赤ワインエキス、香料、カラメル色素 | 25%未満 | 5.5% | 旧・淡麗アルファ | |
麒麟ZERO[55] | 麦芽、ホップ、糖類、大豆たんぱく、酵母エキス | 25%未満 | 3% | ||
アサヒビール | アサヒ本生ドラフト[56] | 麦芽、ホップ、大麦、大麦エキス、米、コーン、スターチ、糖類 | 25%未満 | 5.5% | 旧・アサヒ本生 |
アサヒ本生アクアブルー[57] | 麦芽、ホップ、大麦、大麦エキス、スターチ、糖類、酵母エキス、海藻エキス | 25%未満 | 5% | 旧・アサヒ本生オフタイム | |
アサヒスタイルフリー[58] | 麦芽、ホップ、糖類、カラメル色素、酵母エキス、大豆ペプチド | 25%未満 | 4% | ||
サッポロビール | サッポロ北海道生搾りみがき麦[59] | 麦芽、ホップ、大麦、糖類 | 25%未満 | 5.5% | 業務用樽生有 |
サントリー | MDゴールデンドライ[60] | 麦芽、ホップ、大麦、糖類 | 25%未満 | 6% | |
オリオンビール | 麦職人[61] | 麦芽、ホップ、大麦、米、コーン、スターチ、糖類 | 25%未満 | 5.5% | 業務用樽生有 |
脚注
- ^ a b 他の主な酒類の定義は 酒税法第3条 にて以下のようになっている。
- ビール
- リキュール
- 酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの(酒税法第3条第7号から第19号までに掲げる酒類、同法第2条第1項に規定する溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のもの及びその性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものを除く)をいう。
- その他の醸造酒
- 穀類、糖類その他の物品を原料として発酵させた酒類(同法第3条第7号から第18号までに掲げる酒類その他政令で定めるものを除く)でアルコール分が20度未満のもの(エキス分が2度以上のものに限る)をいう。
- 雑酒
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- ^ 商標法第3条第2項についての判断 「本生事件」 (PDF) 日本商標協会判決研究部会 報告資料 2007年7月18日
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- ^ 例として
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- ^ 国産ビール・発泡酒4月分課税出荷数量、発泡酒シェア過去最高に - 日本食糧新聞 2003年5月19日
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- ^ 出荷量過去最低でも全社営業増益 2008年のビール市場と2009年の展望 - J-marketing.net(JMR生活総合研究所)2009年2月
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- ^ 麒麟淡麗〈生〉 - キリンビール
- ^ 淡麗グリーンラベル - キリンビール
- ^ 淡麗W - キリンビール
- ^ 麒麟ZERO - キリンビール
- ^ アサヒ本生ドラフト - アサヒビール
- ^ アサヒ本生アクアブルー - アサヒビール
- ^ アサヒスタイルフリー - アサヒビール
- ^ サッポロ北海道生搾りみがき麦 - サッポロビール
- ^ 栄養成分一覧 - サントリー
- ^ 麦職人 - オリオンビール
外部リンク
- 発泡酒の税制を考える会
- 酒税法 - 法令データ提供システム
- お酒についてのQ&A(国税庁公式サイト)