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「爆買い」の版間の差分

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日本では[[2013年]]12月に[[観光庁]]により「外国人旅行者向け消費税免税制度の改正」が発表され、地域への外国人観光客の誘客に向けた取り組みがはじまった<ref name="kanko131213">{{Cite web|url=http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000197.html|title=日本でのショッピングの魅力向上と、地域への外国人観光客の誘客に取り組みます。|publisher=[[観光庁]]|date=2013-12-13|accessdate=2015-09-30}}</ref>。平成26年度税制改正において訪日外国人旅行者向け消費税免税制度の改正が行われた<ref name="hakusho2015-56">観光白書(2015年)56ページ</ref>。従来、免税対象品目は[[家電機器]]、[[装身具|装飾品]]、[[被服|衣類]]、[[靴]]、[[鞄]]等に限られていたが、免税販売の対象ではなかった消耗品(食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品)について、一定の不正防止措置を講ずることを前提に免税対象とした<ref name="hakusho2015-56"/>。2014年(平成26年)10月より施行された<ref name="hakusho2015-56"/>。また、同年度の税制改正では、様式の弾力化及び手続の簡素化も行われ、「購入記録票」及び「購入者誓約書」は、特定の様式を定めず、記載すべき事項を記載していればよいこととなった<ref name="hakusho2015-56"/>。訪日外国人旅行者の急増や上述のような消費税免税制度の改正により、2014年(平成26 年)に入り免税店の店舗数が急増し、4月1日時点では5777店であったが、2015年(平成27年)4月1日時点では約3倍の1万8779店(対前年比225.1パーセント増)となった<ref name="hakusho2015-56"/>。
日本では[[2013年]]12月に[[観光庁]]により「外国人旅行者向け消費税免税制度の改正」が発表され、地域への外国人観光客の誘客に向けた取り組みがはじまった<ref name="kanko131213">{{Cite web|url=http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000197.html|title=日本でのショッピングの魅力向上と、地域への外国人観光客の誘客に取り組みます。|publisher=[[観光庁]]|date=2013-12-13|accessdate=2015-09-30}}</ref>。平成26年度税制改正において訪日外国人旅行者向け消費税免税制度の改正が行われた<ref name="hakusho2015-56">観光白書(2015年)56ページ</ref>。従来、免税対象品目は[[家電機器]]、[[装身具|装飾品]]、[[被服|衣類]]、[[靴]]、[[鞄]]等に限られていたが、免税販売の対象ではなかった消耗品(食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品)について、一定の不正防止措置を講ずることを前提に免税対象とした<ref name="hakusho2015-56"/>。2014年(平成26年)10月より施行された<ref name="hakusho2015-56"/>。また、同年度の税制改正では、様式の弾力化及び手続の簡素化も行われ、「購入記録票」及び「購入者誓約書」は、特定の様式を定めず、記載すべき事項を記載していればよいこととなった<ref name="hakusho2015-56"/>。訪日外国人旅行者の急増や上述のような消費税免税制度の改正により、2014年(平成26 年)に入り免税店の店舗数が急増し、4月1日時点では5777店であったが、2015年(平成27年)4月1日時点では約3倍の1万8779店(対前年比225.1パーセント増)となった<ref name="hakusho2015-56"/>。

== 日本経済への影響 ==
=== 観光庁の「訪日外国人消費動向調査」からみる「爆買い」 ===
[[観光庁]]の「訪日外国人動向調査」は、日本全国の空港や港から帰国のために出国する約1万人の外国人に、聞き取り調査を行うものである<ref name="asahi20151016">朝日新聞2015年10月16日朝刊「読み解き暮らしの指標第5回ー訪日客の消費額、どのくらい?」</ref>。調査は3カ月ごとに集計される<ref name="asahi20151016"/>。

2015年4月から6月期の集計によると、客1人が使った金額は平均で約18万円だった<ref name="asahi20151016"/>。ただし、観光客の出身の国や地域により使い道が大きく異なる<ref name="asahi20151016"/>。観光目的で来た人だけをみると、中国人の支出額は、28万160円で、最も多い<ref name="asahi20151016"/>。内訳は、宿泊費が18パーセント(平均宿泊日数5.6泊)、飲食費が13パーセント、買い物が61パーセント;約17万円を使う<ref name="asahi20151016"/>。[[オーストラリア]]人の支出額が、27万3069円で中国人に迫る<ref name="asahi20151016"/>。内訳は、滞在日数が長いだけに(平均12.2泊)宿泊費が40パーセントを占め、買い物は15パーセント;額にして約4万円だけだった<ref name="asahi20151016"/>。[[台湾]]人や[[韓国]]人も客数は多いが、中国ほどの買い物志向は見られない<ref name="asahi20151016"/>。台湾人は、客1人あたり支出額が14万7003円で、買い物の支出割合は44パーセントであった<ref name="asahi20151016"/>。同じく韓国人は7万445円であった。「爆買い」は中国人ならではの行動と言える<ref name="asahi20151016"/>。

この傾向は、上述「訪日外国人消費動向調査」のうち、訪日する国・地域別の訪日動機の調査からも明らかである<ref name="hakusho2015-44">観光白書(2015年)44ページ</ref>。以下は、2015年版の『観光白書』掲載の2014年度のデータである<ref name="hakusho2015-44"/>。国・地域ごとに訪日の動機を聞き、その種類の割合をみて、ショッピングの割合が多かった順に並べると以下の順になった<ref name="hakusho2015-44"/>。ショッピングを動機に挙げた人が一番多かったタイからの訪日客であり、その74.1パーセントが、ショッピングを訪日の動機として挙げた<ref name="hakusho2015-44"/>。これに続くのが香港からの訪日客であり、69.6パーセントであった<ref name="hakusho2015-44"/>。中国からの訪日客は、68.0パーセントの訪日客がショッピングを訪日の動機として挙げている<ref name="hakusho2015-44"/>。ちなみに、ショッピングを訪日の動機に挙げる割合が多い順に、台湾;66.9パーセント、シンガポール;59.1パーセント、ベトナム;58.2パーセント、マレーシア;57.5パーセント、フィリピン;51.9パーセント、インドネシア;50.0パーセントとなり、アジアからの訪日客はショッピングを動機として挙げることが多い<ref name="hakusho2015-44"/>。

旅行者が使ったお金の合計は、1人当たりの平均支出額に人数をかけて算出する<ref name="asahi20151016"/>。2014年に日本に来た外国人は日本政府観光局の調べによると約1341万人であった<ref name="asahi20151016"/>。免税で買える商品の種類が増え、外国人からみれば円安で割安に旅行できることもあり、前年より3割増加している<ref name="asahi20151016"/>。消費額の合計も、2013年の1.4倍となり、支出額の合計は約2兆円となり、過去最高を記録した<ref name="asahi20151016"/>。2015年には、中国人の入国ビザが緩和され、中国人訪日客が前年の2倍以上のペースで増加し、来日来日外国人全体でも1.5倍に増加した<ref name="asahi20151016"/>。それにつれ消費額も増加し、2015年11月の時点でこのままのペースで行けば、年間の消費額は3兆円規模になると予想された<ref name="asahi20151016"/>。この金額は、日本の国内総生産(GDP)の総額の約5000兆円のうち0.6パーセントを占めることになる<ref name="asahi20151016"/>。販売額では全国の百貨店販売額である約6兆8000億円、ドラッグストアの販売額である約4兆8000億円に迫る規模である<ref name="asahi20151016"/>。「日本経済にとって無視できない水準であり、外国人の消費が(日本経済の)下支えになっている」と永井知美(東レ経営研究所)は話した<ref name="asahi20151016"/>。

2015年10月21日観光庁は、同年7月から9月期の「訪日外国人消費動向調査」を発表した<ref name="nikkei20151022">日経新聞2015年10月22日朝刊「訪日消費年3兆円超へ」</ref>。この四半期の消費額は前年同期比82パーセント増の1兆9000億円となり、四半期としてはじめて1兆円の大台にのった<ref name="nikkei20151022"/>。訪日客も534万人と最高を記録し、1人当たり支出額も前年同期比18パーセント増加した<ref name="nikkei20151022"/>。中国人客は7月から9月の四半期調査では、前年同期比19パーセント増の28万円を支出し、このうち14万円を買い物代にあてた<ref name="nikkei20151022"/>。観光・レジャー目的の中国人の日本での宿泊日数は平均6.1泊となり、前年同期の5.7泊から拡大した<ref name="nikkei20151022"/>。旅行期間の長期化が1人あたりの消費の増加につながったとみられる<ref name="nikkei20151022"/>。

=== 百貨店の免税品売上増加(全国・2015年中間決算) ===
主要百貨店4社の2015年度中間決算(3月から8月)では、訪日中国人らの「爆買い」により高級品がよく売れ、3社が前年同期より売り上げを伸ばしている<ref name="asahi20151010">朝日新聞2015年10月10日朝刊第9面「百貨店3社売上増 中間決算免税品「爆買い」効果」</ref>。

[[J.フロントリテイリング]]傘下の[[大丸松坂屋]]は、外国人の多い[[東京]]や[[大阪]]・[[心斎橋]]の店舗が好調で前年同期比1.4パーセント増えた<ref name="asahi20151010"/>。免税品の売上高は、一部地方店を除き前年同期比の4.5倍の181億円で、年間250億円の目標を350億円に引き上げた。中国の景気減速で訪日客の減少も懸念されているが、山本良一同社社長は「流れは急に変わらないだろう」と話した<ref name="asahi20151010"/>。

[[高島屋]]は、国内の売り上げ高が0.3パーセント増え、大阪店では免税品が4倍以上売れた<ref name="asahi20151010"/>。免税品の売上高は上半期で144億円に達し、前年通期(2014年3月から2015年2月)140億円を既に上回った<ref name="asahi20151010"/>。

[[松屋 (百貨店)|松屋]]は売上高が23.7パーセント増え、特に主力の[[銀座]]店では売上高全体に占める免税品のシェアが、前年は8パーセントに過ぎなかったのが、今年度は25パーセントに達した。銀座は訪日客のほか、富裕層も多く客単価は2割上がった<ref name="asahi20151010"/>。

[[そごう・西武]]の売り上げは、地方店の不振が響き全体としては3パーセントの減だったが、[[池袋]]本店や[[渋谷]]店など都市部の店は数字を伸ばしている<ref name="asahi20151010"/>。

品目別に爆買いの効果を見てみると、銀座松屋は化粧品の売り上げが対前年同期(2014年3月から8月、以下同じ)60パーセント増、宝飾品・時計が前年同期比50パーセント増、高島屋新宿店では、宝飾品・時計が前年同期比23パーセント増、高級ブランド品が前年同期比15パーセント増、西武池袋店では化粧品が前年同期比30パーセント増、大丸松坂屋では全店で時計が前年同期比25パーセント増だった<ref name="asahi20151010"/>。

=== 東京証券取引所第1部上場企業2015年9月期中間決算 ===
[[東京証券取引所]]第1部に上場する企業の2015年9月中間決算は、円安と訪日外国人客の消費に支えられ、[[経常利益]]と[[純利益]]の合計はともに中間期として過去最高になる見通しである<ref name="asahi20151107">朝日新聞2015年11月7日朝刊第3面「上場企業最高益へ 9月期中間決算 円安・「爆買い」支え」</ref>。[[SMBC日興証券]]が11月5日までに発表を終えた東証第1部上場の3月期決算企業のうち金融を除く751社について集計したところ、4〜9月期の売上高は前年に比べ4.3パーセント増の176兆9,000億円、経常利益は15.1増の15兆6,000億円、純利益は16.7パーセント増の10兆2,000億円だった<ref name="asahi20151107"/>。経常利益と純利益は9月中間期としては過去最高を更新する見込みである<ref name="asahi20151107"/>。好業績の主因は円安と「爆買い」に象徴される外国人客の旺盛な消費である<ref name="asahi20151107"/>。特に2014年は[[消費税]]増税の反動減で苦しんだ小売業は経常利益47.7パーセント増を記録した<ref name="asahi20151107"/>。

=== 白物家電と爆買い ===
日本電機工業会によると、2015年の白物家電の国内出荷額は前年比2.8パーセント減の2兆2042億円にとどまり、2年連続の前年割れとなった<ref name="asahi20160126m7">朝日新聞2016年1月26日朝刊第7面「白物家電出荷額前年比2.8パーセント減 爆買い?炊飯器や理美容機器は好調」</ref>。これは2014年の消費税増税による反動減が2015年4月まで続いたことと同年が天候不順でエアコンなどの主要製品の販売が伸び悩んだことが原因であるとされる<ref name="asahi20160126m7"/>。その中でもジャー炊飯器は11.0パーセント増の1262億円、ヘアードライヤー37.1パーセント増、電動歯ブラシが26.7パーセント増26.7パーセント増、電機シェーバーは18.6パーセント増といずれも前年実績を上回った<ref name="asahi20160126m7"/>。担当者は「外国人観光客がお土産として持ち帰っていることが影響している」と分析している<ref name="asahi20160126m7"/>。

=== 訪日外国人客による消費と経済統計 ===
政府が国内総生産(GDP)を計算する際には、訪日外国人客が日本でモノを買ったりサービスを利用したりすることを「外需」と位置付け、個人消費ではなく輸出の一部として計上している<ref name="nikkei20151022"/>。2010年代の日本の輸出額は70兆円から80兆円程度で推移している<ref name="nikkei20151022"/>。2015年度の訪日外国人客消費が3兆円規模になると予想されるので、訪日外国人客の消費たる「爆買い」が輸出の4パーセント余りを占めることになり、輸出不振の一部を補う構図になるとも予想される<ref name="nikkei20151022"/>。
[[財務省]]が2015年11月10日発表した2015年上半期(4月から9月)の国際収支(速報)によると、貿易や投資による日本と海外のお金の出入りを示す「経常収支」は、8兆6,938億円だった<ref name="asahi20151110e">朝日新聞2015年11月10日夕刊第1面「経常黒字8.6兆円 15年度上半期 震災後最大に」</ref>。[[円安]]などで黒字幅は2014年度上半期の4.3倍に膨らみ、[[東日本大震災]]以降、半期としては最大となった<ref name="asahi20151110e"/>。経常収支のうち、輸出額から輸入額を差し引いた「[[貿易収支]]」は4,197億円の赤字だった<ref name="asahi20151110e"/>。9半期連続の貿易赤字だが、原油輸入額の減少などで赤字幅は最小だった<ref name="asahi20151110e"/>。貿易赤字を補ったのが日本企業の海外での稼ぎや、訪日外国人による消費の急増である<ref name="asahi20151110e"/>。訪日外国人旅行者の急増によって、旅行者による国内外の収支を示す「旅行収支」も、半期としては過去最大の6,085億円の黒字となった<ref name="asahi20151110e"/>。すなわち、以下の構造が見て取れる<ref name="asahi20151111mA">朝日新聞2015年11月11日朝刊第6面「海外子会社・投資で稼ぎ 今年度上半期経常黒字8.6兆円」</ref>。「経常収支」の黒字は、円安で膨らむ企業の海外でのもうけがその主因であり、震災前には日本からの輸出でも黒字を稼ぎだしていたときとは様変わりした<ref name="asahi20151111mA"/>。2010年度下半期は経常黒字の約4割を貿易収支の黒字が占めていたのに対し、2015年上半期は4,197億円の赤字である。貿易収支に変わって経常黒字を支えるのは、海外子会社や海外投資からの配当や利子など企業の海外での稼ぎを示す「第1次所得収支」の黒字である<ref name="asahi20151111mA"/>。同年度の上半期は10兆8,342億円で、この5年間で約6割伸びた<ref name="asahi20151111mA"/>。その一方で、日本からの輸出は伸び悩む<ref name="asahi20151111mA"/>。SMBC日興証券の宮前耕也氏は「先進国の企業が海外進出し、輸出が減る構造変化は今後も進む。訪日外国人の増加で将来的にはサービス収支がもう一つの柱になる」とみる<ref name="asahi20151111mA"/>。

2016年2月8日財務省は2015年度の国際収支(速報)を発表した<ref name="asahi20160208e3">朝日新聞2016年2月8日夕刊第3面「経常黒字、5年ぶり増 16兆円 原油安貿易赤字減」</ref>。それによると貿易や投資による日本と海外のお金の出入りを示す「経常収支」の黒字は前年の6.3倍の16兆6413億円であり、5年ぶりに経常黒字が増加した<ref name="asahi20160208e3"/>。東日本大震災後、火力発電用の燃料輸入の増加で貿易赤字は拡大を続けていたが、2015年は原油価格(ドル建ての輸入単価)が2014年に比して47.7パーセント下落したため、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字幅は6434億円となった<ref name="asahi20160208e3"/>。2014年の貿易赤字が10兆4016億円であり、16分の1になっている。日本企業の海外での稼ぎも好調であり、海外子会社から日本の本社に還元される利益などを反映する第1次所得収支の黒字は20兆7767億円(前年比2兆6563億円増で過去最大)となった<ref name="asahi20160208e3"/>。海外子会社から入る「知的財産権等使用料」も2兆4034億円と過去最大の黒字となった<ref name="asahi20160208e3"/>。外国人の「爆買い」も経常黒字増加に寄与した<ref name="asahi20160208e3"/>。円安の影響で、日本を訪れた外国人は前年比47.1パーセント増の1973万人と過去最高を記録した<ref name="asahi20160208e3"/>。旅行者によるお金の出入りを示す旅行収支は、2014年が441億円の赤字だったが、2015年度は一転1兆1217億円の黒字となり、1962年以来の黒字を記録した<ref name="asahi20160208e3"/>。

2015年11月10日に内閣府が発表した、10月の景気ウォッチャー調査によれば、景気の現状を示す指数が48.2であり、9月から比べて0.7ポイント上昇した<ref name="asahi20151111mB">朝日新聞2015年11月11日朝刊第6面「10月の街の景況感、上昇」</ref>。上昇は3カ月ぶりであり、外国人観光客による消費の増加などが改善につながったとされる<ref name="asahi20151111mB"/>。景気ウォッチャー調査とは、商店主やタクシー運転手などに景気の実感を尋ねる調査である<ref name="asahi20151111mB"/>。

=== 「爆買い」と物流大手企業の動き ===
物流大手各社は、人口減が続く日本国内では、貨物輸送も大きな伸びが望めないため、アジアでの宅配事業などを強化すべく、2016年ごろから他の会社との提携を模索し始めた<ref name="asahi20160407m9">朝日新聞2016年4月7日朝刊第9面「物流大手 アジアで勝負 ヤマトや日通、提携次々」</ref>。とりわけ中国では、日本製の家電製品や化粧品、ベビー用品などの人気が高まっており、貨物取扱量の増加が確実視されている<ref name="asahi20160407m9"/>。[[ヤマトホールディングス]]傘下のヤマトグローバルロジスティックスジャパン(YGL)は2016年4月6日に、中国インターネット通販大手の京東商城と提携すると発表した<ref name="asahi20160407m9"/>。京東が運営するサイトでは、2015年に専ら日本の商品を扱うコーナーを設け、日本企業に出品を募っている<ref name="asahi20160407m9"/>。YGLはこのサイトの指定業者として、日本の企業からの中国の購入者の自宅までの配送を担う。日本企業から京東への出品も促す<ref name="asahi20160407m9"/>。[[日本通運]]も2015年10月から、中国の宅配大手と提携して、通販サイトで販売した日本の商品を、宅配するサービスを始めた<ref name="asahi20160407m9"/>。日通は日本から中国の倉庫までの輸送を担当し、購入者の自宅までの宅配は現地企業に任せる<ref name="asahi20160407m9"/>。[[日本郵政]]は、訪日外国人客による爆買い商品に目をつけた<ref name="asahi20160407m9"/>。コンビニ大手の[[ファミリーマート]]と提携し、訪日外国人客が日本で買ったお土産を日本国内のファミリーマートから発送すると、帰国後の国・地域にあるファミリーマートで受け取れるというサービスを始めた<ref name="asahi20160407m9"/>。約3000店のファミリーマートが存在する台湾でのサービスを想定している<ref name="asahi20160407m9"/>。

=== 百貨店業界の2016年2月期決算 ===
国内の百貨店事業は、2016年2月期決算において、訪日外国人客向けの免税品販売が増え、大丸松坂屋、高島屋、そごう・西武の3社とも売上高が前年を上回った<ref name="asahi20160413m8">朝日新聞2016年4月13日朝刊第9面「百貨店大手3社が増収 免税品好調 衣料品は不振 2月期決算」</ref>。大丸松坂屋を運営するJフロントリテイリングの百貨店事業は、売上高が前年比0.4パーセント増、営業利益が24.1パーセント増となり、なかでも免税品の売上高が23.4パーセント増の338億円と目立っている<ref name="asahi20160413m8"/>。訪日客らが多く訪れた東京、札幌、大阪(梅田。心斎橋)の4店舗が好調であった<ref name="asahi20160413m8"/>。ただし、訪日外国人客のリピーターが増えるにつれて、消耗品などの単価の安い商品が売れる傾向にある<ref name="asahi20160413m8"/>。同社の山本良一社長は、「爆買いから、買い方が変わってきており、変化を捉える必要がある」と話した<ref name="asahi20160413m8"/>。高島屋の売上高は1.4パーセント増となった<ref name="asahi20160413m8"/>。免税品が前年の2倍以上に増えた<ref name="asahi20160413m8"/>。同社では、今後[[消費税]]などの税金がかからない空港型免税店を展開する予定である<ref name="asahi20160413m8"/>。

=== 「体験型」へのシフト ===
観光庁がまとめた2015年10月から12月の中国人観光客の支出は、1人あたりの買い物代が16万円とほかの国の観光客に比べて突出して高く、前年度に比べ3万円ほど増え、「爆買い」意欲が旺盛であることを示す<ref name="asahi20160206e11">朝日新聞2016年2月6日夕刊第11面「爆買い進化形 美容・カラオケ…体験型人気」</ref>。一方で、「娯楽・サービス」かける費用も5609円と、2014年に比べ4倍近くまで伸びているという<ref name="asahi20160206e11"/>。2016年2月の春節期には、「爆買い」だけでなく、美容やカラオケといった体験型の施設が人気である<ref name="asahi20160206e11"/>。東京・銀座の美容皮膚科では、2015年中国語のホームページを作ったところ、中国人客が一気に増えた<ref name="asahi20160206e11"/>。1回の平均単価は50万円であり、日本人の5倍という<ref name="asahi20160206e11"/>。同じく銀座の美容室でも2015年5月ごろから外国人観光客が増え始め、中国・台湾などを中心に、多いときは週20人ほどという<ref name="asahi20160206e11"/>。カラオケも人気スポットであり、2015年12月[[シダックス]]が家電量販店最大手のビックカメラと組んで、東京新宿・歌舞伎町に、訪日外国人向けの施設をオープンさせた<ref name="asahi20160206e11"/>。ビル1階と地下に免税店が入り、2階から10階が「レストランカラオケ店」となっており、外国人を案内するコンシェルジュも配置した<ref name="asahi20160206e11"/>。
また、居酒屋チェーン大手のワタミでは、2015年11月東京・[[六本木]]に外国人団体ツアー客専用の居酒屋をオープンさせた<ref name="asahi20160206e11"/>。焼き鳥や天ぷら、すしなどの和食を中心に提供し、駄菓子のつかみ取りや浴衣や法被を着ての写真撮影、すしを握る体験型イベントを開催している<ref name="asahi20160206e11"/>。
こうした、体験型へのシフトは、それまで「爆買い」需要を取り込んできた百貨店業界も着目し、東京・池袋の西武池袋店でも、2016年2月の数日限定だが、着物での写真撮影ができる無料コーナーをつくった<ref name="asahi20160206e11"/>。来日2回目のリピーター客をターゲットとするもので、「商品だけでなく体験や文化を楽しめるようにしてアピールしたい」と担当者は話した<ref name="asahi20160206e11"/>。2016年の春節商戦にあっても、百貨店などの販売は好調だったが、その中身は様変わりしている<ref name="nikkei20160217m3B>日本経済新聞(2016年2月17日)朝刊3面「爆買い様変わり 日用品人気、客単価は下落」</ref>。売れ筋はバッグなど高級ブランド品から日本製の化粧品など日用品へ移り、客単価は下落した<ref name="nikkei20160217m3B/>。自分が欲しい物をじっくり見定めたり、地方へ足を延ばしたりする人が目立つ<ref name="nikkei20160217m3B/>。訪問先は東京や大阪以外が増えてきた<ref name="nikkei20160217m3B/>。[[JTB]]によると、2016年の行先は「地域分散化も目立つ」<ref name="nikkei20160217m3B/>。同社の予約サイトでは、[[白川郷]]がある[[岐阜県]]や、[[長野県]]で春節シーズンの宿泊予約人数が昨年の3倍以上にのぼった<ref name="nikkei20160217m3B/>。買い物だけでなく、地方での体験を求める人も多いようだ<ref name="nikkei20160217m3B/>。

=== 宿泊施設に見る変化 ===
愛知県[[稲沢市]]にある元[[ラブホテル]]は、5年前の半分ほどに利用客が減っていたので、打開策として2015年11月中国人ツアー客専門ホテルに模様替えした<ref name="asahi20160206e11"/>。中国系旅行業者と提携し、中国人従業員を雇い、30ある客室の半分をダブルからツインに変えた<ref name="asahi20160206e11"/>。ツアー客が西洋の城を模した外観を前に記念写真を撮るなどし、屋上に光るヤシのネオンが好評を博するなどしたようだ<ref name="asahi20160206e11"/>。[[名神高速道路]]沿いにあり、関西、関東、北陸などに行きやすい立地が受けて、2016年2月は連日30人から40人の予約が入ったという<ref name="asahi20160206e11"/>。「平日でも部屋が埋まるのはありがたい」とは、経営者である60歳の男性の話である<ref name="asahi20160206e11"/>。中国人訪日客を期待しての宿泊施設側の対応例としては、中国の商業施設運営会社である「上海豫園旅遊商城」が2015年11月に北海道のリゾート施設である「星野リゾートトマム」(北海道占冠村)の全株式を183億円で買収したことがある<ref name="asahi20151112m9">朝日新聞2015年11月12日朝刊第9面「星野リゾートトマム 中国企業が買収 北海道の施設 海外客に人気」</ref>。

=== 2015年以降の中国人観光客の動向と「爆買い」 ===
[[2016年]]4月20日日本政府観光局の発表によると、2015年度に訪日した外国人旅行客数は、約2136万人であり初めて2000万人を超えた<ref name="nikkei20160421m2">日本経済新聞2016年4月21日朝刊第2面「訪日客、2000万人突破 15年度、初の大台3月は201万人」</ref>。アジアを中心に訪日客が増え2014年度と比べ46パーセント伸びている<ref name="nikkei20160421m2"/>。2015年度の訪日客の内訳をみると中国、韓国、台湾、香港の4か国・地域からの訪日客数で全体の7割超を占める<ref name="nikkei20160421m2"/>。

2016年の初売りで正月3が日にあった初売りは、訪日外国人の「爆買い」も追い風に前年を上回る売り上げとなった店が多かった<ref name="asahi20160104m4">朝日新聞2016年1月4日朝刊第4面「初売り好調 爆買い健在」</ref>。売り場には新年から訪日外国人客の姿が目立ち、免税手続きの件数は、西武池袋店が前年比8割増加、松屋銀座も3割増えた<ref name="asahi20160104m4"/>。家電量販大手のビックカメラは、「爆買い」需要を取り込むため、全国の主要店で訪日客向けの福袋を初めて用意した<ref name="asahi20160104m4"/>。美顔器セットなどが中国人に人気で、売り切れが続出した<ref name="asahi20160104m4"/>。

2016年2月16日に日本政府観光局が発表した同年1月の訪日観光客数は推計値で185万1000人となり前年同月比で52パーセント増加となり、単月では、2015年7月の191万8000人に次ぐ過去2番目の高水準を記録した(2016年2月時点)<ref name="nikkei20160217m3">日本経済新聞(2016年2月17日)朝刊第3面「訪日客好調 1月52%増 中国、人民元安でも2.1倍」</ref>。増加の最大要因は中国からの訪日客であり、中国株安や人民元安の逆風要因のもかかわらず、前年同月比で2.1倍を記録した<ref name="nikkei20160217m3"/>。春節に関連した学校休暇が1月20日から始まり、家族旅行が増加したことも理由である<ref name="nikkei20160217m3"/>。ただし「爆買い」の内容は様変わりしはじめた<ref name="nikkei20160217m3"/>。売れ筋はバックなど高級ブランド品や炊飯器から、日本製化粧品や菓子類などの日用品へ移り、客単価は下落した<ref name="nikkei20160217m3"/>。自分が欲しいものをじっくり見定めたり、地方へ足を伸ばしたりする人も目立つようになった<ref name="nikkei20160217m3"/>。

2016年3月16日の日本政府観光局が発表した同年2月の訪日外国人数(推計値)は189万人であり、前年同月比で36パーセント増えた<ref name="nikkei20160317m2">日本経済新聞2016年3月17日朝刊第2面「訪日客、円高でも高水準 2月189万人、中国がけん引」</ref>。中国人訪日客数が49万8000人となり前年同月比で39パーセント増加し全体を引っ張った<ref name="nikkei20160317m2"/>。人民元安・円高の逆風にもかかわらずビザ緩和と消費税の免税制度拡充でアジアを中心に買い物目的などの訪日客が増えている<ref name="nikkei20160317m2"/>。為替の[[人民元]]安・円高に加え中国株の株安により中国人観光客の購買力低下が心配されていたが、2016年春現在では訪日客が増える勢いは衰えていないという<ref name="nikkei20160317m2"/>。同年2月の統計数字を百貨店の売上高からみると、百貨店の免税品の売上高は、前年同月比で18.7パーセントの増加となった<ref name="asahi20160401m8">朝日新聞2016年4月1日朝刊第8面「街で買い物、出国まで持ち運び不要 空港型免税店が続々」</ref>。ただし、バックや時計などの高額品を含む一般物品はわずか1.0パーセントの増加にとどまり、1人当たりの購買単価では15.6パーセントの減少を示した<ref name="asahi20160401m8"/><ref name="asahi20160402m6">朝日新聞2016年4月2日朝刊第6面「海外減速 輸出産業を直撃 日銀短観 鉄鋼・機械足踏み 訪日客消費にも陰り」</ref>。百貨店業界関係者は、「高額品をすでに購入したリピーター客の関心が、上述体験型のサービスや観光に移っている」と分析している<ref name="asahi20160401m8"/><ref name="asahi20160402m6"/>。このため百貨店側も対策を迫られており、例えば高島屋新宿店では、同年3月に訪日客らが人力車に乗れるサービスを始めた<ref name="asahi20160401m8"/>。

2016年4月20日に日本政府観光局の発表した2016年3月の訪日客数は、前年同期比で32パーセント増の201万人となり、単月としては過去最高を記録した<ref name="nikkei20160421m2"/>。観光庁がまとめた消費動向調査によると、2016年1月から3月までの訪日客の旅行消費額は9305億円と2015年同期と比べ32パーセント増えた<ref name="nikkei20160421m2"/>。中国からの訪日客の旅行消費額が3901億円と4割超を占める<ref name="nikkei20160421m2"/>。中国人の「爆買い」は地方へも及んでいる<ref name="nikkei20160421m2"/>。ただし、1月から3月の訪日客の1人あたりの旅行消費額は約16万2000円となり、2015年同期比ではマイナスに転じた。とくに中国人訪日客の旅行消費額は平均26万円とない11パーセント減となった<ref name="nikkei20160421m2"/>。人民元に対し円高が進んだためであるが、中国では海外で買った商品を中国国内に持ち込む際に課税する関税も引き上げており、影響の広がりを懸念する声がある<ref name="nikkei20160421m2"/>。

== 地域経済に与える影響 ==
=== 訪日外国人客による消費が個人消費にもたらす効果(近畿圏・2014年秋) ===
[[日本銀行]]大阪支店は、2014年10月に「訪日外国人客による消費が近畿の個人消費にもたらす効果について」というレポートを発表した。それによると、近畿圏([[大阪府]]・[[京都府]]・[[兵庫県]]・[[滋賀県]]・[[奈良県]]・[[和歌山県]])においては、来日する外国人数、外国人宿泊者数が関東・全国平均より高いペースで増加しており、インバウンド需要の効果を強く受けている<ref name="jobosaka">日銀大阪支店(2014年)</ref>。この背景には、訪日ビザの発給条件の緩和・免税措置の拡大や円安の要素がある。[[近畿圏]]固有の要素としては、[[関西国際空港]]が、日本最大の[[LCC]](格安航空会社)乗り入れ空港であることが挙げられる<ref name="jobosaka"/>。近畿圏を訪れる訪日外国人の特徴をみると、大阪を中心に「買い物」を好む「東アジア」・「東南アジア」方面からの観光客が目立つ<ref name="jobosaka"/>。消費増税の影響が残る中で、百貨店や家電量販店などの売り上げの下支え効果があるとしている<ref name="jobosaka"/>。今後も、LCC発着便数の増加や訪日ビザの緩和がのまれているほか、免税品目の拡大に伴う効果の持続も期待されており、訪日外国人客による関連需要は持続すると、日銀同支店はみている<ref name="jobosaka"/>。

=== 福岡市と爆買い ===
2015年12月6日、[[福岡]]・[[博多港]]に[[上海]]を母港とする全長348メートルのアジア最大の[[クルーズ船]]「[[クァンタム・オブ・ザ・シーズ]]」を含む2隻の船から7000人の中国人観光客が上陸した<ref name="asahi20151210m">朝日新聞2015年12月10日朝刊第1面「(特集)戦後70年 エピローグ第5回 豊かさ峠過ぎた今」</ref>。182台のバスに分乗し、[[大宰府]]や[[キャナルシティ博多]]、免税店などを巡った<ref name="asahi20151210m"/>。買物袋には、[[美顔パック]]や血圧計、[[ルイ・ヴィトン]]のバッグ、[[ガンダム]]のプラモデル、日本土産の定番である炊飯器や箱買いの紙おむつが入っていた<ref name="asahi20151210m"/>。中国大陸に近い福岡は爆買いの最前線と言われる<ref name="asahi20151210m"/>。2015年のクルーズ船の入港は予定を含めて264隻となり、2014年の2倍以上を記録した。翌2016年の接岸予約は2015年12月の段階で、400隻となった<ref name="asahi20151210m"/>。訪日クルーズ客は2015年に100万人超を記録した<ref name="asahi20151210m"/>。「マーケットが動いてやってくる」との感想は、[[高島宗一郎]]・福岡市長のものである<ref name="asahi20151210m"/>。

=== 神奈川県の取り組み ===
2014年度に[[神奈川県]]を訪れた外国人旅行客は約165万人であり、このうち中国からの観光客は52万人だった<ref name="asahi20151225sagamino">朝日新聞2015年12月25日朝刊神奈川さがみ野面「爆買い客呼べクーポン作戦 県内恩恵実感薄く」</ref>。しかし、都内ほどには外国人による消費の勢いが神奈川県内には届いていないと県は分析している<ref name="asahi20151225sagamino"/>。そのため県は三井海上火災保険と協定を結び、同社が中国人観光客向けに県内企業の割引クーポンを発行し、同社がこの企業のクーポンを中国人向け旅行サイトで提供する<ref name="asahi20151225sagamino"/>。中国人観光客はクーポンをスマートフォンなどにダウンロードし、県内の店舗にて、飲食店の割引やお茶の体験、記念品を受け取るなどのサービスを受ける事ができるようにするという<ref name="asahi20151225sagamino"/>。

=== 銀座や大阪の空港型免税店 ===
2016年1月27日、羽田空港の旅客ターミナルビルを運営する[[日本空港ビルディング]]と三越伊勢丹ホールディングスなどは2016年1月27日、三越銀座店の8階全フロアを使って空港型免税店を開業させた<ref name="nikkei20160127">日本経済新聞2016年1月27日朝刊第13面「空港型の免税店 三越伊勢丹公開」</ref><ref name="asahi20160329e13">朝日新聞2016年3月29日夕刊第13面「変わる銀座 生き抜く老舗 外国人客狙う大型施設出店へ 31日に東急プラザ銀座開店、免税店は国内最大級」</ref>。3300平方メートルの売り場に高級ブランド品や伝統工芸品などを幅広くそろえる<ref name="nikkei20160127"/>。買い物するには成田空港または羽田空港からの出国予定を確認できる航空券などとパスポートを提示する必要がある<ref name="nikkei20160127"/>。[[数寄屋橋]]交差点の角に立つ東急プラザ銀座の8階と9階には同じく空港型免税店の「ロッテ免税店銀座」が開店した<ref name="asahi20160329e13"/>。約4400平方メートルの売り場面積は、本州最大規模である<ref name="asahi20160329e13"/>。外国人旅行客は、商品を空港で出国する際に受け取れるため、買った商品を空港まで持ち運ばなくて済むのが利点である<ref name="asahi20160329e13"/>。空港型免税店に関しては、大阪市でも、韓国のロッテグループ傘下のロッテ免税店JAPANが新関西国際空港株式会社と組んで運営する空港型免税店を2017年度にビックカメラなんば店に開店させる予定である<ref name="nikkei20160203">日本経済新聞2016年2月3日朝刊第13面「大阪に空港型免税店 韓国ロッテ、関空と組む」</ref>。

=== 爆買いと基準地価上昇 ===
「爆買い」が盛んな東京・銀座<ref name="nikkei20160323m1">日本経済新聞2016年3月23日朝刊第1面「公示地価8年ぶり上昇」</ref><ref name="nikkei20160322">{{Cite news | url = http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS20H2D_S6A320C1000000/ | title = 公示地価、最高は銀座「山野楽器」 1平方メートル4千万円 | newspaper = [[日本経済新聞]] | date = 2016-03-22 | accessdate = 2016-03-25 }}</ref>や大阪・[[心斎橋]]<ref name="nikkei20160323m3">日本経済新聞2016年3月23日朝刊第3面「訪日客・再開発地価けん引」</ref><ref name="nikkei20160323b">{{Cite news | url = http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H03_S6A320C1EA2000/ | title = 訪日客や再開発、地価押し上げ 地方観光地も恩恵 | newspaper = [[日本経済新聞]] | date = 2016-03-23 | accessdate = 2016-03-25 }}</ref>では地価が急激に上昇している<ref name="nikkei20160322"/><ref name="nikkei20160323b"/>。外国人観光客の消費で店舗やホテルの収益が改善し、テナントの賃料が上がり、商業地の地価を押し上げた<ref name="nikkei20160323m1"/>。

2016年3月22日に[[国土交通省]]が発表した同年1月1日現在の[[基準地価]]によると、東京中央区の銀座4丁目「[[山野楽器]]銀座本店前」で1平方メートル当たり4010万円と過去最高を記録した<ref name="nikkei20160323m1"/><ref name="nikkei20160322"/>。大阪・[[心斎橋]]は、商業地の地価上昇率で銀座を抑えて首位(45.1パーセントの上昇)となった<ref name="nikkei20160323m3"/><ref name="nikkei20160323b"/>。

大丸の旗艦店である心斎橋店では2016年2月期の免税品売上高が前の期に比べ2倍以上になった<ref name="nikkei20160323m3"/><ref name="nikkei20160323b"/>。ラオックスが同社における最大級となる免税店を2月に開業するなどし、訪日客の増加を目論んだ投資が続いている<ref name="nikkei20160323m3"/><ref name="nikkei20160323b"/>。

== 空港と爆買い ==
=== 静岡空港と中国人観光客 ===
かつて利用客が少なく低迷していた[[静岡空港]]が、2015年に中国人観光客で賑わうようになった<ref name="asahi20151123m">朝日新聞2015年11月23日朝刊第35面「静岡空港に中国特需 定期路線1年で1から14に・搭乗数5割増」</ref>。2015年の10月上旬、空港ロビーには炊飯器などの荷物を抱えた中国人団体客は、静岡空港経由で北海道、東京などを回ったという<ref name="asahi20151123m"/>。その中の一人[[武漢市]]から来た会社員女性は、北海道や東京の洋菓子、美容用品や虫よけなどの薬品を詰め込んだはち切れそうな袋を手にしていたという。添乗員の話では、「[[秋葉原]]の電気街と静岡・[[御殿場]]の[[御殿場プレミアム・アウトレット|アウトレットモール]]が(中国人に)喜ばれた。」という<ref name="asahi20151123m"/>。[[2009年]]開港の同空港は搭乗者数が年間50万人から55万人程度で推移したあと、2011年から2013年度は年間搭乗者数40万人となり、目標の年間搭乗者数70万人を大幅に下回り、毎年度約4億円から5億円の赤字が続いていた<ref name="asahi20151123m"/>。中国との定期便は2014年までは1路線に過ぎなかったが、2015年になると最大14路線と急増した<ref name="asahi20151123m"/>。[[法務省]]の出入国管理統計によると、今年8月までに同空港を利用した中国人出入国者数は、20万496人を記録した<ref name="asahi20151123m"/>。この数字は、国内空港中6位で、地方空港中1位となる<ref name="asahi20151123m"/>。今年度の同空港の搭乗者数は7カ月で45万人近い数字に達し、前年同期約30万人に比して、約5割増しである<ref name="asahi20151123m"/>。中国の航空会社が静岡空港を選ぶのは、離着陸の枠が空いていたことと、東京・名古屋・大阪を結ぶ『ゴールデンルート』の中間に位置し、東にも西にも行きやすいというその立地条件である<ref name="asahi20151123m"/>。また外国人に人気のある[[富士山]]が間近に見えるのも魅力の一つという<ref name="asahi20151123m"/>。

=== 羽田空港に家電量販店 ===
[[東京国際空港|羽田空港]]のビルを管理・運営する日本空港ビルディングと家電量販大手の[[ビックカメラ]]は2015年12月17日に、羽田空港国際線ターミナルに訪日客向けの家電量販店を共同で出展すると発表した<ref name="asahi20151218m">朝日新聞2015年12月18日朝刊第11面「羽田空港に家電量販店 ビックカメラ「爆買い」狙う」</ref>。中国人観光客などが帰国前に大量の家電を「爆買い」するのを取り込むねらいである<ref name="asahi20151218m"/>。2016年春に両者が出資する新会社を立ち上げ同年夏までに開店する予定である<ref name="asahi20151218m"/>。炊飯器やドライヤーなどの家電や日用品など1万点をそろえ、消費税の免税手続きもする<ref name="asahi20151218m"/>。インターネットで発注した商品を、帰国直前に受け取ることもできるようにする予定である<ref name="asahi20151218m"/>。

== 訪日外国人購入履歴活用 ==
観光庁は、2016年度から訪日外国人にもっと買物をしてもらおうと、外国人の買物に関するデータを集めて活用すると発表した<ref name="asahi20151223">朝日新聞2015年12月23日朝刊「爆買い拡大へ国が情報収集 観光庁小売店に還元」</ref>。免税品の購入履歴をもとに売れ筋などを分析し、小売店にも還元して[[マーケティング]]や品揃えの参考にしてもらう考えである<ref name="asahi20151223"/>。このため2016年予算案に、管理用サーバーなどを整備するための費用を数億円盛り込む。免税品店に登録されている店は約3万店あるが、このうち半数以上は買物履歴を電子化しているとみられ、このデータをリアルタイムで取り込む方向である<ref name="asahi20151223"/>。

家電量販店や大型免税店などでは、すでに自社で独自に集めたデータを分析し、品揃えに役立てている。比較的小さな店の多い地方にも訪日外国人が増えている<ref name="asahi20151223"/>。地方にある小さな店でも「売れ筋情報」を知ることができれば品揃えがよくなり、もっと売れるようになり、訪日外国人の「爆買い」の恩恵が行き渡ると観光庁はみている<ref name="asahi20151223"/>。2016年4月以降、集めたデータの扱い方や、小売店に情報を提供する場合に有償にするかどうかなどを検討する<ref name="asahi20151223"/>。購入履歴は旅行者が持つパスポートと結びつけられるため、個人情報保護のあり方も課題となる可能性もある<ref name="asahi20151223"/>。


== 爆買いの対象となる人気商品 ==
== 爆買いの対象となる人気商品 ==
爆買いの定番商品であり、中国人観光客に「四宝」と呼ばれているのは「[[炊飯器]]」「[[魔法瓶]]」「[[温水洗浄便座]]」「セラミック[[包丁]]」である<ref name="nikkei150905">{{Cite news |title=四宝とイナゴ――「爆買い」の関連語たち。|newspaper=日経ビジネスオンライン|date=2015-09-05|author= もりひろし|url=http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216653/090300010/|accessdate=2015-10-02}}</ref>。多くの中国人が日本で「爆買い」している日本製の電気釜は、2016年3月6日、[[全国人民代表大会]]の広東省代表団分科会で言及されたと朝日新聞によって報ぜられた<ref name="asahi20160307e2">朝日新聞(2016年3月7日)夕刊第2面「めざせ「日本の電気釜」全人代で企業に訴え」</ref>。言及したのは中国の新興スマートフォンメーカー[[小米科技]](シャオミー)の雷軍・最高経営責任者である<ref name="asahi20160307e2"/>。雷氏は、「日本の電気釜は確かによくできている」と日本製の電気釜の例を挙げ、中国の製造業の品質向上を促した<ref name="asahi20160307e2"/>。その他に、[[医薬品]]や[[化粧品]]も人気となっている<ref name="nikkei150905" />。
爆買いの定番商品であり、中国人観光客に「四宝」と呼ばれているのは「[[炊飯器]]」「[[魔法瓶]]」「[[温水洗浄便座]]」「セラミック[[包丁]]」である<ref name="nikkei150905">{{Cite news |title=四宝とイナゴ――「爆買い」の関連語たち。|newspaper=日経ビジネスオンライン|date=2015-09-05|author= もりひろし|url=http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216653/090300010/|accessdate=2015-10-02}}</ref>。多くの中国人が日本で「爆買い」している日本製の電気釜は、2016年3月6日、[[全国人民代表大会]]の広東省代表団分科会で言及されたと朝日新聞によって報ぜられた<ref name="asahi20160307e2">朝日新聞(2016年3月7日)夕刊第2面「めざせ「日本の電気釜」全人代で企業に訴え」</ref>。言及したのは中国の新興スマートフォンメーカー[[小米科技]](シャオミー)の雷軍・最高経営責任者である<ref name="asahi20160307e2"/>。雷氏は、「日本の電気釜は確かによくできている」と日本製の電気釜の例を挙げ、中国の製造業の品質向上を促した<ref name="asahi20160307e2"/>。その他に、[[医薬品]]や[[化粧品]]も人気となっている<ref name="nikkei150905" />。

爆買いの対象として変わったところとして、岩手県の「[[南部鉄器]]」で知られる鉄瓶がある<ref name="nikkei20160217m7">日本経済新聞(2016年4月7日)夕刊第1面「「爆買い」ここにも 中国中間層に厚み」</ref>。[[2010年]]の[[上海万博]]で紹介され、白湯と[[プーアール茶]]の相性のよさから中国人富裕層の人気を呼んだ<ref name="nikkei20160217m7"/>。岩手県によると2014年に中国本土と香港向けの輸出額は約1億7000万円であり、2010年の2.6倍の増加となり、3年連続して1億円を超えた<ref name="nikkei20160217m7"/>。中国切手も売れている<ref name="nikkei20160217m7"/>。特に[[文化革命]]期の中国切手は、当時切手収集が禁止されていたこともあり発行枚数が少なく、この時期に発行された切手は中国人収集家の間では貴重品として人気が高い<ref name="nikkei20160217m7"/>。この時期、中国出張に出かけた日本人収集家が買い求めた当時の切手が、日本の切手商に多く出回るようになり、これらを中国人収集家が来日して買い集めている<ref name="nikkei20160217m7"/>。1セット80万円もする希少品もある<ref name="nikkei20160217m7"/>。東京・港区にある新橋スタンプ商会の担当者の話によると、「高額でも売れる。最近は仕入れ価格も上昇傾向にある。」という<ref name="nikkei20160217m7"/>。


[[ファイル:大丸化粧品店さん (5536388092).jpg|thumb|「爆買い」の定番商品である化粧品]]
[[ファイル:大丸化粧品店さん (5536388092).jpg|thumb|「爆買い」の定番商品である化粧品]]
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2013年ごろから日本製の紙おむつに対する「爆買い」が顕著になり始めた<ref name="asahi20160312e4">朝日新聞(2016年3月12日)夕刊第4面「(シリーズ)あのとき、それから テープ型紙おむつ登場 軽く薄く安く 育児の定番に」</ref>。2016年現在、日本の紙おむつの需要は子供用と大人用合わせて2000億円市場となっているが、子供用の需要は安定し、大人用の需要が拡大している<ref name="asahi20160312e4"/>。そのなかで子供用に「爆買い」の影響がみられるという<ref name="asahi20160312e4"/>。
2013年ごろから日本製の紙おむつに対する「爆買い」が顕著になり始めた<ref name="asahi20160312e4">朝日新聞(2016年3月12日)夕刊第4面「(シリーズ)あのとき、それから テープ型紙おむつ登場 軽く薄く安く 育児の定番に」</ref>。2016年現在、日本の紙おむつの需要は子供用と大人用合わせて2000億円市場となっているが、子供用の需要は安定し、大人用の需要が拡大している<ref name="asahi20160312e4"/>。そのなかで子供用に「爆買い」の影響がみられるという<ref name="asahi20160312e4"/>。


爆買いの対象として変わったところでは、岩手県の「[[南部鉄器]]」で知られる鉄瓶がある<ref name="nikkei20160217m7">日本経済新聞(2016年4月7日)夕刊第1面「「爆買い」ここにも 中国中間層に厚み」</ref>。[[2010年]]の[[上海万博]]で紹介され、白湯と[[プーアール茶]]の相性のよさから中国人富裕層の人気を呼んだ<ref name="nikkei20160217m7"/>。岩手県によると2014年に中国本土と香港向けの輸出額は約1億7000万円であり、2010年の2.6倍の増加となり、3年連続して1億円を超えた<ref name="nikkei20160217m7"/>。中国切手も売れている<ref name="nikkei20160217m7"/>。特に[[文化革命]]期の中国切手は、当時切手収集が禁止されていたこともあり発行枚数が少なく、この時期に発行された切手は中国人収集家の間では貴重品として人気が高い<ref name="nikkei20160217m7"/>。この時期、中国出張に出かけた日本人収集家が買い求めた当時の切手が、日本の切手商に多く出回るようになり、これらを中国人収集家が来日して買い集めている<ref name="nikkei20160217m7"/>。1セット80万円もする希少品もある<ref name="nikkei20160217m7"/>。東京・港区にある新橋スタンプ商会の担当者の話によると、「高額でも売れる。最近は仕入れ価格も上昇傾向にある。」という<ref name="nikkei20160217m7"/>。
== 日本以外でみられる「爆買い」の例 ==
日本以外でみられる爆買いの例として、[[韓国]]においても、中国人観光客らに対する化粧品の販売・輸出が好調である<ref name="asahi20151028">朝日新聞2015年10月28日朝刊第10面「K(韓国)ビューティー お肌の世界戦略 化粧品『爆買い』中国客戻る」</ref>。[[ソウル特別市|ソウル]]中心部の[[明洞]]の通称「コスメ・ロード」では、[[中東呼吸器症候群]](MERS)問題が深刻化した2015年6月ごろ観光客が激減したが、同年10月には中国人観光客が戻ってきて、化粧品を「爆買い」していると報じられている<ref name="asahi20151028"/>。韓国化粧品業界のターゲットは、中国人爆買い観光客のみではない<ref name="asahi20151028"/>。中国市場での販売拡大に向け、ビジネスを強化している<ref name="asahi20151028"/>。同年4月にソウル市内の韓国最大級の美容展覧会が開かれ、中国の化粧品販売業者との間で保湿用の馬油クリーム2万個を販売するといったような「大型商談」をいくつもまとめた韓国企業もあったという<ref name="asahi20151028"/>。


== 言葉の歴史 ==
[[2009年]]11月11日中国ネット通販最大手の[[アリババ・グループ]]がネット上で割引をする商戦を始めたことをきっかけに、毎年11月11日は、中国の[[ネット通販]]でもっとも「爆買い」の起こる日になった<ref name="asahi20151112-9">朝日新聞2015年11月12日「11・11ネットで爆買い 中国アリババ、夕方までに売り上げ1.4兆円」</ref>。2015年11月11日の同グループの売り上げは午後5時30分の時点で719億元(1.4兆円)になったと同社より発表された<ref name="asahi20151112-9"/>。業界2位の「京東」や3位の「蘇寧易購」も、売り上げが2014年の3〜4倍に達した模様である<ref name="asahi20151112-9"/>。中国のネット消費の勢いを象徴する日となっている<ref name="asahi20151112-9"/>。アリババ・グループ傘下の部ループで取引された額(流通総額)は、終日で912億元(約1.8兆円)と発表された<ref name="asahi20151113-9">朝日新聞2015年11月13日「11・11だけで1.8兆円取引」</ref>。大幅な割引を機に、ネットを通じて国内外の商品を買い集める消費意欲の強さが示された<ref name="asahi20151113-9"/>。さらなる爆買いへの期待も大きく、日本の[[経済産業省]]は、中国人らがネット通販で日本から買う額は、[[2018年]]には1兆3,000億円を超えると試算する<ref name="asahi20151112-9"/>。
「爆買い」という言葉は、新聞記事などでは2015年の春節のころより桁違いに使われるようになった<ref name="nikkei150822">{{Cite news |title=「爆笑」から「爆買い」までの90年史|newspaper=日経ビジネスオンライン|date=2015-08-22|author= もりひろし|url=http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216653/081800008/|accessdate=2015-10-02}}</ref>が、テレビではそれ以前より使われていた。そもそも中国人が大量に商品を購入する行動は[[2008年]]ごろより目立ってきており、[[2009年]]には『[[FNNスーパーニュース]]』([[フジテレビジョン|フジテレビ]])9月9日放送「スーパー特報/旋風拡大ニッポン“爆買い”現場中国人団体ツアーを追え」で「爆買い」という言葉が登場している<ref name="nikkei150829">{{Cite news |title=テレビは「爆買い」をどう伝えたのか?|newspaper=日経ビジネスオンライン|date=2015-08-29|author= もりひろし|url=http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216653/082800009/|accessdate=2015-10-02}}</ref>。なお、個人ブログには「爆買い」という言葉がそれ以前からあったことが確認されている<ref name="nikkei150829" />。その後、[[2010年]]に『[[NNN Newsリアルタイム]]』([[日本テレビ放送網|日本テレビ]])1月12日放送で「密着! 中国人観光客現金飛び交う“爆買いツアー”」が、『スーパーJチャンネル』([[テレビ朝日]])7月5日放送で「中国人が大挙来日! 美術品“爆買い”ツアーで現金飛び交う」が放映されており、以後も定期的な報道が見られる<ref name="nikkei150829"/>。


== 他の「爆買い」の例 ==
2015年9月23日には、[[中国共産党]]の[[習近平]][[中国共産党中央委員会総書記|総書記]]がアメリカ[[ボーイング]]社の工場を訪れ、旅客機300機の発注で合意したことが「爆買い」として報じられた<ref name="mainichi150924">{{Cite web|archiveurl=http://web.archive.org/web/20150924045644/http://mainichi.jp/select/news/20150924k0000e030187000c.html|archivedate=2015-09-24|url=http://mainichi.jp/select/news/20150924k0000e030187000c.html|title=中国習氏訪米:「爆買い」展開…旅客機300機4.5兆円|publisher=[[毎日新聞]]|date=2015-09-24|accessdate=2016-02-04}}</ref><ref name="zakzak151204">{{Cite news|url=http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150925/frn1509251140001-n1.htm|title=習主席、札束訪米も市場は冷ややか ボーイング300機「爆買い」評価されず|newspaper=[[夕刊フジ|ZAKZAK]]|date=2015-09-25|accessdate=2016-02-04}}</ref>。
[[ファイル:羽衣チョーク (16917641829).jpg|thumb|羽衣チョーク]]
「爆買い」の言葉は、中国資本による日本の[[都市|都市部]]での[[不動産投資]]にも使われている。大量ではないものの現金で支払われる大きな買い物であることからそう呼ばれた。円安により[[シンガポール]]や[[香港]]、[[ロンドン]]などの他の都市と比べて割安感が増したのと、圧倒的な新築物件の多さが魅力となっている。また、[[東京]]や[[大阪]]などへの購入者のためのツアーも組まれている<ref name="bloom150703">{{Cite news|url=http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLT6TX6K50YC01.html|title=中国マネー爆買い、都心マンション高騰に一役-庶民には高根の花 (2)|newspaper=[[ブルームバーグ]]|date=2015-07-03|accessdate=2015-09-30}}</ref>。
2015年4月30日放送[[日本放送協会|NHK]]『[[所さん!大変ですよ]]』では、「文房具“爆買い”騒動の謎」と題し、品質が高く使い勝手のよい[[チョーク]]を製造していた[[羽衣文具]]の廃業が公表されたことが発端となり、2014年10月に日本各地でチョークの爆買い騒動が起きたと報じられた。国内で備品として確保しようとする[[教育機関]]・[[教員]]による[[買い占め]]が相次いだだけでなく、[[スタンフォード大学]]の{{仮リンク|ブライアン・コンラッド|en|Brian Conrad}}教授を中心とした[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[数学者]]約200人で1トンのチョークの在庫を共同購入した<ref name="data150430">{{Cite web|url=http://datazoo.jp/tv/%E6%89%80%E3%81%95%E3%82%93%EF%BC%81%E5%A4%A7%E5%A4%89%E3%81%A7%E3%81%99%E3%82%88/852477|title=所さん!大変ですよ - 2015/04/30(木)放送|publisher=TVでた蔵|accessdate=2015-10-02}}</ref><ref name="keio150504">{{Cite web|url=http://arx.appi.keio.ac.jp/2015/05/04/%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%AF-%E3%80%8C%E7%88%86%E8%B2%B7%E3%81%84%E3%80%8D-%E9%A8%92%E5%8B%95%E3%81%AE%E8%AC%8E/|title=チョーク 「爆買い」 騒動の謎|author=足立修一|publisher=[[慶應義塾大学]]理工学部 物理情報工学科 足立研究室|date=2015-05-04|accessdate=2015-10-02}}</ref>。


日本以外でみられる爆買いの例として、[[韓国]]においても、中国人観光客らに対する化粧品の販売・輸出が好調である<ref name="asahi20151028">朝日新聞2015年10月28日朝刊第10面「K(韓国)ビューティー お肌の世界戦略 化粧品『爆買い』中国客戻る」</ref>。[[ソウル特別市|ソウル]]中心部の[[明洞]]の通称「コスメ・ロード」では、[[中東呼吸器症候群]](MERS)問題が深刻化した2015年6月ごろ観光客が激減したが、同年10月には中国人観光客が戻ってきて、化粧品を「爆買い」していると報じられている<ref name="asahi20151028"/>。韓国化粧品業界のターゲットは、中国人爆買い観光客のみではない<ref name="asahi20151028"/>。中国市場での販売拡大に向け、ビジネスを強化している<ref name="asahi20151028"/>。同年4月にソウル市内の韓国最大級の美容展覧会が開かれ、中国の化粧品販売業者との間で保湿用の馬油クリーム2万個を販売するといったような「大型商談」をいくつもまとめた韓国企業もあったという<ref name="asahi20151028"/>。
== ネット通販への展開 ==
日本を訪れる中国人観光客が、炊飯器などを「爆買い」している理由は、日本の[[家電量販店]]の品ぞろえの良さにある<ref name="asahi20151205m-10">朝日新聞2015年12月5日「中国ネット家電通販参入へ ビックカメラ、地元大手と提携」</ref>。中国の量販店でも日本の家電は買えるが、品ぞろえが限られている。そのため中国人観光客が、中国にはないモデルの炊飯器などを「爆買い」している状況にある<ref name="asahi20151205m-10"/>。そのため[[ビックカメラ]]は2015年12月内にも中国の家電量販店大手の「2強」の一つである[[国美電器]]と提携し、中国でのネット通販に参入する<ref name="asahi20151205m-10"/>。中国では販売されていない日本製の小型家電およそ450点を国美のサイトに出し、日本製家電をより安く買えるようにする<ref name="asahi20151205m-10"/>。訪日客への知名度アップも目指す<ref name="asahi20151205m-10"/>。「国美在線」は会員が1億2000万人おり、その中にビックカメラが専用サイトを設ける。ほかの通販サイトに比べ、国美の物流網を利用するためコストが抑えられ、中国の消費者はより安く日本製の家電が手に入るようになる<ref name="asahi20151205m-10"/>。ビックカメラはまた、日本の店頭での「爆買い」の売れ筋情報を店頭で把握し、中国での通販事業に生かす予定である<ref name="asahi20151205m-10"/>。
なお、「2強」のもう一つの大手・[[蘇寧雲商集団]]の通販サイトには2014年7月に、傘下の[[ラオックス]]が出店していた<ref name="asahi20151205m-10"/>。


2015年9月23日には、[[中国共産党]]の[[習近平]][[中国共産党中央委員会総書記|総書記]]がアメリカ[[ボーイング]]社の工場を訪れ、旅客機300機の発注で合意したことが「爆買い」として報じられた<ref name="mainichi150924">{{Cite web|archiveurl=http://web.archive.org/web/20150924045644/http://mainichi.jp/select/news/20150924k0000e030187000c.html|archivedate=2015-09-24|url=http://mainichi.jp/select/news/20150924k0000e030187000c.html|title=中国習氏訪米:「爆買い」展開…旅客機300機4.5兆円|publisher=[[毎日新聞]]|date=2015-09-24|accessdate=2016-02-04}}</ref><ref name="zakzak151204">{{Cite news|url=http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150925/frn1509251140001-n1.htm|title=習主席、札束訪米も市場は冷ややか ボーイング300機「爆買い」評価されず|newspaper=[[夕刊フジ|ZAKZAK]]|date=2015-09-25|accessdate=2016-02-04}}</ref>。
ネット通販で日本から買い物をする中国人が増えており、経済産業省の推計によると市場規模は8000億円を超えており、中国人が日本を訪れて買い物をした金額に並ぶ勢いとなっている<ref name="asahi20160520em6>朝日聞2016年5月20日(東京第13版)第5面「爆買い「ネットにも商機」中国アリババ、日本で出店勧誘」</ref>。2016年3月期の流通総額が約52兆円に達し、アメリカ・ウォルマート・ストアーズの売り上げを上回る「世界最大の流通企業」ともいわれる中国ネット通販企業であるアリババは、このネット上の「爆買い」に着目した<ref name="asahi20160520em6/>。中国市場に関心をもつ日本企業が同社のサイトに出店するように勧誘を始めた<ref name="asahi20160520em6/>。中国で人気がある日本製品は、電気炊飯器や自動洗浄便座といった電気製品から、健康食品や化粧品、医薬品などにすそ野が広がりつつある<ref name="asahi20160520em6/>。こうした製品の購入については継続的に買われる傾向があるため、中国人による訪日観光旅行での買い物にとどまらずに、国際的なネット通販に拡大する余地が広がっている<ref name="asahi20160520em6/>。「収入が増えたのに国内で買える商品の質がそれに見合っていない」というのが中国の消費者の不満であり、ネット上での爆買いの成長の原動力になっている<ref name="asahi20160520em6/>。アリババ幹部も「ニセモノも多い中国国内の流通企業に対する不信感が、外国製品の購入に駆り立てている」と分析する<ref name="asahi20160520em6/>。一方で中国政府は、これまで通常の貿易に比べて簡素だったネット通販に関する税制や規制の整備に2016年春以降乗り出す構えである<ref name="asahi20160520em6/>。この動きに対しては、当のネット通販業界からは、「国内産業を保護するため、ネット通販での購入に対する増税や、輸入に関する規制の強化の制度が導入されるのではないか」との不安の声も上がっている<ref name="asahi20160520em6/>。


== 諸問題 ==
== 諸問題 ==

=== 受け入れ側の諸課題 ===
=== 受け入れ側の諸課題 ===
免税店や高級ブランド品が並ぶ銀座・中央通りでは、中国人観光客による「爆買い」客の利用する観光バスの路上駐車が問題になっている<ref name="asahi20151210e1">朝日新聞2015年12月10日夕刊第1面「銀座で爆買い 路駐バスの列 外国人客迎え「通行の邪魔」苦情</ref>。この地域を受け持つ築地署には2014年3月頃から「通行の邪魔」という苦情が寄せられるようになった<ref name="asahi20151210e1"/>。警察でもバスに対して注意することもあるが、周辺をぐるりと回って元の位置に戻ってくるという<ref name="asahi20151210e1"/>。「近くに駐車場もないし、乗降場所もないし、仕方がない」というのはバスの運転手の弁である<ref name="asahi20151210e1"/>。予定時間内に戻って来ない客が多いのも駐車時間が長引く理由の一つであるとも話した<ref name="asahi20151210e1"/>。一方で、大丸松坂屋百貨店などで作る組合が進める銀座6丁目再開発計画では、観光バス乗降場の建設を計画するが、バス駐車場の建設の計画はない<ref name="asahi20151210e1"/>。地元の町会・商店会などでつくる全銀座会の関係者は「これからもっと多くの外国人を迎えるというのなら、国や都は駐車場などの整備を進めてほしい」と訴える<ref name="asahi20151210e1"/>。都内屈指の観光地浅草寺では、台東区が4か所で観光バス57台分の駐車場や待機場を有料で貸し出しているが、区交通対策課の担当者は、「昼間は満車の状態が続き、駐車場は足りていない」と話した<ref name="asahi20151210e1"/>。また同区は浅草寺周辺の観光バスの乗降場所を2か所に限定しているが、そのうちの一つである区民会館前での乗降場での1日平均利用台数は、2011年度は83.0台だったが、2013年度では101.5台に増えた<ref name="asahi20151210e1"/>。また、秋葉原周辺でも観光バスに関する苦情がここ1、2年で増えている<ref name="asahi20151210e1"/>。
免税店や高級ブランド品が並ぶ銀座・中央通りでは、中国人観光客による「爆買い」客の利用する観光バスの路上駐車が問題になっている<ref name="asahi20151210e1">朝日新聞2015年12月10日夕刊第1面「銀座で爆買い 路駐バスの列 外国人客迎え「通行の邪魔」苦情</ref>。この地域を受け持つ築地署には2014年3月頃から「通行の邪魔」という苦情が寄せられるようになった<ref name="asahi20151210e1"/>。警察でもバスに対して注意することもあるが、周辺をぐるりと回って元の位置に戻ってくるという<ref name="asahi20151210e1"/>。「近くに駐車場もないし、乗降場所もないし、仕方がない」というのはバスの運転手の弁である<ref name="asahi20151210e1"/>。予定時間内に戻って来ない客が多いのも駐車時間が長引く理由の一つであるとも話した<ref name="asahi20151210e1"/>。一方で、大丸松坂屋百貨店などで作る組合が進める銀座6丁目再開発計画では、観光バス乗降場の建設を計画するが、バス駐車場の建設の計画はない<ref name="asahi20151210e1"/>。地元の町会・商店会などでつくる全銀座会の関係者は「これからもっと多くの外国人を迎えるというのなら、国や都は駐車場などの整備を進めてほしい」と訴える<ref name="asahi20151210e1"/>。都内屈指の観光地浅草寺では、台東区が4か所で観光バス57台分の駐車場や待機場を有料で貸し出しているが、区交通対策課の担当者は、「昼間は満車の状態が続き、駐車場は足りていない」と話した<ref name="asahi20151210e1"/>。また同区は浅草寺周辺の観光バスの乗降場所を2か所に限定しているが、そのうちの一つである区民会館前での乗降場での1日平均利用台数は、2011年度は83.0台だったが、2013年度では101.5台に増えた<ref name="asahi20151210e1"/>。また、秋葉原周辺でも観光バスに関する苦情がここ1、2年で増えている<ref name="asahi20151210e1"/>。
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=== 紙おむつをめぐる事件等 ===
=== 紙おむつをめぐる事件等 ===
[[2012年]]頃からドラッグストアなどの[[おむつ#使い捨ておむつ(紙おむつ)|紙おむつ]]コーナーで、人気商品<ref>特に[[花王]]製品の「メリーズ」シリーズが爆買いの対象製品となる傾向が強い。</ref>に対し一人あたりの購入数を制限する貼紙が目立つようになった。背景には「中国製は恐い。信用できる日本製がほしい<ref>ただし、「メリーズ」シリーズを発売している花王によると、中国工場で製造した物と日本国内の工場で製造した物は素材や製造過程に違いは無く、全く同じ品物であると証言している。</ref>」という本国での不安に便乗し、転売による収益を目当てにした[[在留カード#中長期在留者|中長期在留者]]の中国人グループの存在があるとされている<ref name="sannkei141027">{{Cite news|url=http://www.sankei.com/west/news/141027/wst1410270001-n1.html|title=消えた「メリーズ」…中国人買い占め、転売で〝ボロもうけ〟 ついに捜査のメス|newspaper=産経新聞|date=2014-10-27|accessdate=2015-10-03}}</ref><ref name="tospo151107">{{Cite news|url=http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/467951/|title=“中国二人っ子”日本直撃 紙おむつ爆買いさらに増加か|newspaper=[[東京スポーツ]]|date=2015-11-07|accessdate=2016-02-06}}</ref>。これについては、短期滞在の旅行者としてではなく就労ビザで日本に滞在しながら、[[在留資格]]外活動を行ったとして[[出入国管理及び難民認定法|出入国管理法]]違反で検挙・[[強制送還]]された例もある<ref name="tospo151107"/><ref name="zakzak150625">{{Cite news|url=http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20150625/zsp1506251129002-n1.htm|title=在日中国人への取り締まり強化で日本人に追い風|newspaper=ZAKZAK|date=2015-06-25|accessdate=2016-02-06}}</ref><ref name="sanspo150809">{{Cite news|url=http://www.sanspo.com/geino/news/20150809/tro15080905020001-n3.html|title=ホームセンターで家族総出…紙おむつ爆買いで中国人7人ら乱闘|newspaper=[[サンケイスポーツ]]|date=2015-08-09|accessdate=2016-02-06}}</ref>。なお、[[西日本新聞]]の取材によると中国と距離的に近い[[福岡市]]には少なくとも30の「爆買い代行業」が存在し、一部には事業所開設に必要な在留資格の不適切な取得が疑われるケースもあるという
[[2012年]]頃からドラッグストアなどの[[おむつ#使い捨ておむつ(紙おむつ)|紙おむつ]]コーナーで、人気商品<ref>特に[[花王]]製品の「メリーズ」シリーズが爆買いの対象製品となる傾向が強い。</ref>に対し一人あたりの購入数を制限する貼紙が目立つようになった。背景には「中国製は恐い。信用できる日本製がほしい<ref>ただし、「メリーズ」シリーズを発売している花王によると、中国工場で製造した物と日本国内の工場で製造した物は素材や製造過程に違いは無く、全く同じ品物であると証言している。{{要出典|date=2016-07-30}}</ref>」という本国での不安に便乗し、転売による収益を目当てにした[[在留カード#中長期在留者|中長期在留者]]の中国人グループの存在があるとされている<ref name="sannkei141027">{{Cite news|url=http://www.sankei.com/west/news/141027/wst1410270001-n1.html|title=消えた「メリーズ」…中国人買い占め、転売で〝ボロもうけ〟 ついに捜査のメス|newspaper=産経新聞|date=2014-10-27|accessdate=2015-10-03}}</ref><ref name="tospo151107">{{Cite news|url=http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/467951/|title=“中国二人っ子”日本直撃 紙おむつ爆買いさらに増加か|newspaper=[[東京スポーツ]]|date=2015-11-07|accessdate=2016-02-06}}</ref>。これについては、短期滞在の旅行者としてではなく就労ビザで日本に滞在しながら、[[在留資格]]外活動を行ったとして[[出入国管理及び難民認定法|出入国管理法]]違反で検挙・[[強制送還]]された例もある<ref name="tospo151107"/><ref name="zakzak150625">{{Cite news|url=http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20150625/zsp1506251129002-n1.htm|title=在日中国人への取り締まり強化で日本人に追い風|newspaper=ZAKZAK|date=2015-06-25|accessdate=2016-02-06}}</ref><ref name="sanspo150809">{{Cite news|url=http://www.sanspo.com/geino/news/20150809/tro15080905020001-n3.html|title=ホームセンターで家族総出…紙おむつ爆買いで中国人7人ら乱闘|newspaper=[[サンケイスポーツ]]|date=2015-08-09|accessdate=2016-02-06}}</ref>。なお、[[西日本新聞]]の取材によると中国と距離的に近い[[福岡市]]には少なくとも30の「爆買い代行業」が存在し、一部には事業所開設に必要な在留資格の不適切な取得が疑われるケースもあるという
<ref name="nishinippon160103">{{Cite news|url=http://qbiz.jp/article/77893/1/?utm_campaign=nnp_article&utm_souce=nnp&utm_medium=nnp_web|title=爆買い代行業、福岡市に30業者超|newspaper=[[西日本新聞]]|date=2016-01-03|accessdate=2016-02-06}}</ref>。
<ref name="nishinippon160103">{{Cite news|url=http://qbiz.jp/article/77893/1/?utm_campaign=nnp_article&utm_souce=nnp&utm_medium=nnp_web|title=爆買い代行業、福岡市に30業者超|newspaper=[[西日本新聞]]|date=2016-01-03|accessdate=2016-02-06}}</ref>。


また、紙おむつに関する爆買いでは、日本に生活の拠点を置く中国人らによる争いも目立ち始めており、2015年8月に神戸市[[垂水区]]のホームセンターにて、日本人の配偶者1人を含む7人による乱闘騒ぎがあったほか<ref name="sanspo150809"/><ref name="sannkei150808">{{Cite news|url=http://www.sankei.com/west/news/150808/wst1508080051-n1.html|title=紙おむつ爆買いめぐり中国人ら乱闘 数人けが 以前同じ売り場で口論した客同士が鉢合わせ|newspaper=産経新聞|date=2015-08-13|accessdate=2015-10-03}}</ref>、同年7月に京都府[[城陽市]]のディスカウントストアで起きた、中国出身の日本人2人を含む8人による乱闘では、同年9月に傷害容疑で<ref name="sanspo150809"/><ref name="sankei150915">{{Cite news|url=http://www.sankei.com/west/news/150915/wst1509150005-n1.html|title=ヨソの国に来て何やってんの? 爆買い中国人グループ あきれた紙おむつ争奪乱闘劇|newspaper=産経新聞|date=2015-09-15|accessdate=2015-10-03}}</ref>、2016年1月には[[和歌山市]]のベビー用品店にて、客の1人が手提げカバンで店長の顔を殴ったとして暴行容疑で<ref name="sankei160121">{{Cite news|url=http://www.sankei.com/west/news/160121/wst1601210009-n1.html|title=また紙おむつ爆買いトラブル…中国籍の女が手提げカバンで店長殴り逮捕 和歌山|newspaper=産経新聞|date=2016-01-21|accessdate=2016-02-06}}</ref>、それぞれ逮捕者が出たと[[産経新聞]]が報じている。中国人の爆買いに難色を示す店舗も出始めており、販売の拒否または数量制限の説明をすると満足する数量を購入できないことから店員に対する暴行や、店舗に対する嫌がらせを行なうといった犯罪も問題になっている<ref>[http://www.sankei.com/west/news/141027/wst1410270001-n3.html 〝ブローカー〟多数出現] ''産経WEST'' 2015年1月4日閲覧。</ref>。
また、紙おむつに関する爆買いでは、日本に生活の拠点を置く中国人らによる争いも目立ち始めており、2015年8月に神戸市[[垂水区]]のホームセンターにて、日本人の配偶者1人を含む7人による乱闘騒ぎがあったほか<ref name="sanspo150809"/><ref name="sannkei150808">{{Cite news|url=http://www.sankei.com/west/news/150808/wst1508080051-n1.html|title=紙おむつ爆買いめぐり中国人ら乱闘 数人けが 以前同じ売り場で口論した客同士が鉢合わせ|newspaper=産経新聞|date=2015-08-13|accessdate=2015-10-03}}</ref>、同年7月に京都府[[城陽市]]のディスカウントストアで起きた、中国出身の日本人2人を含む8人による乱闘では、同年9月に傷害容疑で<ref name="sanspo150809"/><ref name="sankei150915">{{Cite news|url=http://www.sankei.com/west/news/150915/wst1509150005-n1.html|title=ヨソの国に来て何やってんの? 爆買い中国人グループ あきれた紙おむつ争奪乱闘劇|newspaper=産経新聞|date=2015-09-15|accessdate=2015-10-03}}</ref>、2016年1月には[[和歌山市]]のベビー用品店にて、客の1人が手提げカバンで店長の顔を殴ったとして暴行容疑で<ref name="sankei160121">{{Cite news|url=http://www.sankei.com/west/news/160121/wst1601210009-n1.html|title=また紙おむつ爆買いトラブル…中国籍の女が手提げカバンで店長殴り逮捕 和歌山|newspaper=産経新聞|date=2016-01-21|accessdate=2016-02-06}}</ref>、それぞれ逮捕者が出たと[[産経新聞]]が報じている。中国人の爆買いに難色を示す店舗も出始めており、販売の拒否または数量制限の説明をすると満足する数量を購入できないことから店員に対する暴行や、店舗に対する嫌がらせを行なうといった犯罪も問題になっている<ref>[http://www.sankei.com/west/news/141027/wst1410270001-n3.html 〝ブローカー〟多数出現] ''産経WEST'' 2015年1月4日閲覧。</ref>。

=== 悪質なボッタクリ免税店 ===
2010年以降、日本での爆買い需要の増加に伴い、韓国人および中国人経営者による悪質な免税店が増加している。主に挙げられている問題は、相場より数倍高く売るボッタクリである。通常のドラッグストアでは数千円で売られている品が、こうした免税店では数倍の値段で売られたり、健康食品を医薬品と偽るケースが相次いでいる。これらの免税店は、旅行会社やツアーガイド、バス会社と結託して、ツアー客が行ける場所を厳格に定めているケースが多い。もちろん買い物する場所と時間も厳しく定めており、行き先が買い物となれば必ずボッタクリ免税店に連れられ、ツアー客はそこで買い物せざる得ない状況に迫られる。多くのツアー客は、確認する時間も与えられず、相場よりはるかに割高な商品の購入を迫られている。

いわゆる日本に訪れた中国人観光客が、中国人の経営する店で、中国製のボッタクリ偽商品を買っていくという全貌を表している。そのため日本へ旅行したら騙されたと気づき、二度と日本には行かないという中国人旅行者が増えている<ref>[http://www.recordchina.co.jp/a140305.html 「日本は法治国家のはずなのに…」、中国人観光客らをだます免税店に対策なし、被害者は増える一方―中国メディア]</ref>。

;問題が指摘されている免税店一覧
* [[JTC免税店]] (楽一免税店)
* [[Alexander&Sun]]

== 言葉の歴史 ==
「爆買い」という言葉は、新聞記事などでは2015年の春節のころより桁違いに使われるようになった<ref name="nikkei150822">{{Cite news |title=「爆笑」から「爆買い」までの90年史|newspaper=日経ビジネスオンライン|date=2015-08-22|author= もりひろし|url=http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216653/081800008/|accessdate=2015-10-02}}</ref>が、テレビではそれ以前より使われていた。そもそも中国人が大量に商品を購入する行動は[[2008年]]ごろより目立ってきており、[[2009年]]には『[[FNNスーパーニュース]]』([[フジテレビジョン|フジテレビ]])9月9日放送「スーパー特報/旋風拡大ニッポン“爆買い”現場中国人団体ツアーを追え」で「爆買い」という言葉が登場している<ref name="nikkei150829">{{Cite news |title=テレビは「爆買い」をどう伝えたのか?|newspaper=日経ビジネスオンライン|date=2015-08-29|author= もりひろし|url=http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216653/082800009/|accessdate=2015-10-02}}</ref>。なお、個人ブログには「爆買い」という言葉がそれ以前からあったことが確認されている<ref name="nikkei150829" />。その後、[[2010年]]に『[[NNN Newsリアルタイム]]』([[日本テレビ放送網|日本テレビ]])1月12日放送で「密着! 中国人観光客現金飛び交う“爆買いツアー”」が、『スーパーJチャンネル』([[テレビ朝日]])7月5日放送で「中国人が大挙来日! 美術品“爆買い”ツアーで現金飛び交う」が放映されており、以後も定期的な報道が見られる<ref name="nikkei150829"/>。
[[ファイル:羽衣チョーク (16917641829).jpg|thumb|羽衣チョーク]]
「爆買い」の言葉は、中国資本による日本の[[都市|都市部]]での[[不動産投資]]にも使われている。大量ではないものの現金で支払われる大きな買い物であることからそう呼ばれた。円安により[[シンガポール]]や[[香港]]、[[ロンドン]]などの他の都市と比べて割安感が増したのと、圧倒的な新築物件の多さが魅力となっている。また、[[東京]]や[[大阪]]などへの購入者のためのツアーも組まれている<ref name="bloom150703">{{Cite news|url=http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLT6TX6K50YC01.html|title=中国マネー爆買い、都心マンション高騰に一役-庶民には高根の花 (2)|newspaper=[[ブルームバーグ]]|date=2015-07-03|accessdate=2015-09-30}}</ref>。
2015年4月30日放送[[日本放送協会|NHK]]『[[所さん!大変ですよ]]』では、「文房具“爆買い”騒動の謎」と題し、品質が高く使い勝手のよい[[チョーク]]を製造していた[[羽衣文具]]の廃業が公表されたことが発端となり、2014年10月に日本各地でチョークの爆買い騒動が起きたと報じられた。国内で備品として確保しようとする[[教育機関]]・[[教員]]による[[買い占め]]が相次いだだけでなく、[[スタンフォード大学]]の{{仮リンク|ブライアン・コンラッド|en|Brian Conrad}}教授を中心とした[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[数学者]]約200人で1トンのチョークの在庫を共同購入した<ref name="data150430">{{Cite web|url=http://datazoo.jp/tv/%E6%89%80%E3%81%95%E3%82%93%EF%BC%81%E5%A4%A7%E5%A4%89%E3%81%A7%E3%81%99%E3%82%88/852477|title=所さん!大変ですよ - 2015/04/30(木)放送|publisher=TVでた蔵|accessdate=2015-10-02}}</ref><ref name="keio150504">{{Cite web|url=http://arx.appi.keio.ac.jp/2015/05/04/%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%AF-%E3%80%8C%E7%88%86%E8%B2%B7%E3%81%84%E3%80%8D-%E9%A8%92%E5%8B%95%E3%81%AE%E8%AC%8E/|title=チョーク 「爆買い」 騒動の謎|author=足立修一|publisher=[[慶應義塾大学]]理工学部 物理情報工学科 足立研究室|date=2015-05-04|accessdate=2015-10-02}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2016年7月29日 (金) 16:11時点における版

爆買い
各種表記
繁体字 爆買
簡体字 爆买
拼音 bào mǎi
発音: バオマイ
日本語読み: ばくがい
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爆買い(ばくがい)とは、一度に大量に買うことを表す俗語である[1][2][3]。主に来日した中国人観光客が大量に商品を購買することに用いられ、2014年頃までに定着した[1][4][5]2015年2月の春節休暇に中国人観光客が日本を訪れ高額商品から日用品まで様々な商品を大量に買い込む様子を「爆買い」と表現して、多くの日本メディアが取り上げた[6]。中国側のメディアによれば春節期間中、日本を訪れた中国人観光客は45万人にのぼり、消費額は66億元(1140億円)を記録し、日本企業にとってビジネスチャンスとなっている[6][7][8][9]。この用語は2015年ユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に選出された[10]。中国語表記は、繁体字: 爆買; 簡体字: 爆买; 繁体字: 爆買; 拼音: bào mǎi; ウェード式: pao maiである[11]

爆買いの要因

中国人の爆買いを支えている要因は大きく分けて3つある。一つは「元高円安」、一つは「日本製品の品質・性能への信頼」、一つは「中華人民共和国税制に起因する内外価格差」である。中国の現在の税制では、ある特定の日本製品を中国で買うよりも、日本で買って持ち帰ったほうが大幅に安くなること(例えば化粧品などは半値くらいになる場合がある。)と日本が免税品の対象を拡大したことである。さらには中国人特有の気質として、転売目的や家族親戚以外の他人へ渡す目的も多いと推測されている[12][13][14]。これらの代理購入・代理購買を中国語では、繁体字: 代購; 簡体字: 代购; 繁体字: 代購; 拼音: dài gòu; ウェード式: tai kouと表記する[11]

日本では2013年12月に観光庁により「外国人旅行者向け消費税免税制度の改正」が発表され、地域への外国人観光客の誘客に向けた取り組みがはじまった[15]。平成26年度税制改正において訪日外国人旅行者向け消費税免税制度の改正が行われた[16]。従来、免税対象品目は家電機器装飾品衣類等に限られていたが、免税販売の対象ではなかった消耗品(食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品)について、一定の不正防止措置を講ずることを前提に免税対象とした[16]。2014年(平成26年)10月より施行された[16]。また、同年度の税制改正では、様式の弾力化及び手続の簡素化も行われ、「購入記録票」及び「購入者誓約書」は、特定の様式を定めず、記載すべき事項を記載していればよいこととなった[16]。訪日外国人旅行者の急増や上述のような消費税免税制度の改正により、2014年(平成26 年)に入り免税店の店舗数が急増し、4月1日時点では5777店であったが、2015年(平成27年)4月1日時点では約3倍の1万8779店(対前年比225.1パーセント増)となった[16]

爆買いの対象となる人気商品

爆買いの定番商品であり、中国人観光客に「四宝」と呼ばれているのは「炊飯器」「魔法瓶」「温水洗浄便座」「セラミック包丁」である[17]。多くの中国人が日本で「爆買い」している日本製の電気釜は、2016年3月6日、全国人民代表大会の広東省代表団分科会で言及されたと朝日新聞によって報ぜられた[18]。言及したのは中国の新興スマートフォンメーカー小米科技(シャオミー)の雷軍・最高経営責任者である[18]。雷氏は、「日本の電気釜は確かによくできている」と日本製の電気釜の例を挙げ、中国の製造業の品質向上を促した[18]。その他に、医薬品化粧品も人気となっている[17]

「爆買い」の定番商品である化粧品

日本人の顔立ちをもとに開発されてきた国内向けの化粧品は、繊細な色づかいや目元を大きく見せる点などで優れており、顔立ちの似ている他のアジアの国でも「カワイイ」と人気が高まっている。化粧品が免税の対象に加わったことは外国人観光客による大量買いにつながった[19]。化粧品以外にもドラッグストアで売られている物の多くが人気を集めている。日本に滞在中の中国人留学生などが本国へ情報発信しながら、「代理爆買い」と呼ばれる買い物を請け負うサービスを始め、注文のあった商品をまとめ買いする姿が夜の新宿を中心に目立つようになった[20]

2013年ごろから日本製の紙おむつに対する「爆買い」が顕著になり始めた[21]。2016年現在、日本の紙おむつの需要は子供用と大人用合わせて2000億円市場となっているが、子供用の需要は安定し、大人用の需要が拡大している[21]。そのなかで子供用に「爆買い」の影響がみられるという[21]

爆買いの対象として変わったところでは、岩手県の「南部鉄器」で知られる鉄瓶がある[22]2010年上海万博で紹介され、白湯とプーアール茶の相性のよさから中国人富裕層の人気を呼んだ[22]。岩手県によると2014年に中国本土と香港向けの輸出額は約1億7000万円であり、2010年の2.6倍の増加となり、3年連続して1億円を超えた[22]。中国切手も売れている[22]。特に文化革命期の中国切手は、当時切手収集が禁止されていたこともあり発行枚数が少なく、この時期に発行された切手は中国人収集家の間では貴重品として人気が高い[22]。この時期、中国出張に出かけた日本人収集家が買い求めた当時の切手が、日本の切手商に多く出回るようになり、これらを中国人収集家が来日して買い集めている[22]。1セット80万円もする希少品もある[22]。東京・港区にある新橋スタンプ商会の担当者の話によると、「高額でも売れる。最近は仕入れ価格も上昇傾向にある。」という[22]

言葉の歴史

「爆買い」という言葉は、新聞記事などでは2015年の春節のころより桁違いに使われるようになった[23]が、テレビではそれ以前より使われていた。そもそも中国人が大量に商品を購入する行動は2008年ごろより目立ってきており、2009年には『FNNスーパーニュース』(フジテレビ)9月9日放送「スーパー特報/旋風拡大ニッポン“爆買い”現場中国人団体ツアーを追え」で「爆買い」という言葉が登場している[24]。なお、個人ブログには「爆買い」という言葉がそれ以前からあったことが確認されている[24]。その後、2010年に『NNN Newsリアルタイム』(日本テレビ)1月12日放送で「密着! 中国人観光客現金飛び交う“爆買いツアー”」が、『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日)7月5日放送で「中国人が大挙来日! 美術品“爆買い”ツアーで現金飛び交う」が放映されており、以後も定期的な報道が見られる[24]

他の「爆買い」の例

羽衣チョーク

「爆買い」の言葉は、中国資本による日本の都市部での不動産投資にも使われている。大量ではないものの現金で支払われる大きな買い物であることからそう呼ばれた。円安によりシンガポール香港ロンドンなどの他の都市と比べて割安感が増したのと、圧倒的な新築物件の多さが魅力となっている。また、東京大阪などへの購入者のためのツアーも組まれている[25]。 2015年4月30日放送NHK所さん!大変ですよ』では、「文房具“爆買い”騒動の謎」と題し、品質が高く使い勝手のよいチョークを製造していた羽衣文具の廃業が公表されたことが発端となり、2014年10月に日本各地でチョークの爆買い騒動が起きたと報じられた。国内で備品として確保しようとする教育機関教員による買い占めが相次いだだけでなく、スタンフォード大学ブライアン・コンラッド教授を中心としたアメリカ数学者約200人で1トンのチョークの在庫を共同購入した[26][27]

日本以外でみられる爆買いの例として、韓国においても、中国人観光客らに対する化粧品の販売・輸出が好調である[28]ソウル中心部の明洞の通称「コスメ・ロード」では、中東呼吸器症候群(MERS)問題が深刻化した2015年6月ごろ観光客が激減したが、同年10月には中国人観光客が戻ってきて、化粧品を「爆買い」していると報じられている[28]。韓国化粧品業界のターゲットは、中国人爆買い観光客のみではない[28]。中国市場での販売拡大に向け、ビジネスを強化している[28]。同年4月にソウル市内の韓国最大級の美容展覧会が開かれ、中国の化粧品販売業者との間で保湿用の馬油クリーム2万個を販売するといったような「大型商談」をいくつもまとめた韓国企業もあったという[28]

2015年9月23日には、中国共産党習近平総書記がアメリカボーイング社の工場を訪れ、旅客機300機の発注で合意したことが「爆買い」として報じられた[29][30]

諸問題

受け入れ側の諸課題

免税店や高級ブランド品が並ぶ銀座・中央通りでは、中国人観光客による「爆買い」客の利用する観光バスの路上駐車が問題になっている[31]。この地域を受け持つ築地署には2014年3月頃から「通行の邪魔」という苦情が寄せられるようになった[31]。警察でもバスに対して注意することもあるが、周辺をぐるりと回って元の位置に戻ってくるという[31]。「近くに駐車場もないし、乗降場所もないし、仕方がない」というのはバスの運転手の弁である[31]。予定時間内に戻って来ない客が多いのも駐車時間が長引く理由の一つであるとも話した[31]。一方で、大丸松坂屋百貨店などで作る組合が進める銀座6丁目再開発計画では、観光バス乗降場の建設を計画するが、バス駐車場の建設の計画はない[31]。地元の町会・商店会などでつくる全銀座会の関係者は「これからもっと多くの外国人を迎えるというのなら、国や都は駐車場などの整備を進めてほしい」と訴える[31]。都内屈指の観光地浅草寺では、台東区が4か所で観光バス57台分の駐車場や待機場を有料で貸し出しているが、区交通対策課の担当者は、「昼間は満車の状態が続き、駐車場は足りていない」と話した[31]。また同区は浅草寺周辺の観光バスの乗降場所を2か所に限定しているが、そのうちの一つである区民会館前での乗降場での1日平均利用台数は、2011年度は83.0台だったが、2013年度では101.5台に増えた[31]。また、秋葉原周辺でも観光バスに関する苦情がここ1、2年で増えている[31]

日本を訪れる外国人観光客が急激に増えているのに伴い、国家資格である通訳案内士が不足に陥っているのにつけこんで、怪しげな健康食品を大量購入させようとしたり、誤解に基づく日本の歴史や文化を紹介したりするような、無資格通訳案内士が横行していると報じられている。これに対し日本政府・国土交通省は、「旅行者の満足度を低下させるだけではなく、日本の信頼や印象形成にも悪い影響を及ぼす」として、中国当局と連携しながら実態の把握に向けた調査の準備に取り掛かった[32]

また、2014年当時に増加中の中国人客の対応にあたって、中国人留学生を雇い入れ「週28時間の法定上限時間を超えて働かせた」として、法人のラオックスおよび同社の中国人社長が2015年12月25日までに不法就労容疑で書類送検された。なお、この事件では同容疑で「大阪道頓堀店」の元店長ら店関係者3人と中国人留学生4人が逮捕、11人が書類送検されている[33][34]

中国国家外国為替管理局英語版は2015年10月1日までに、「銀聯カード」による海外での外貨引き出し上限額を2016年1月1日より、1枚当たり1日1万元から1年間で最高10万元までに規制すると発表した。政府幹部らが汚職で得た人民元を海外で資金洗浄したり、人民元安の進行を見込んだ富裕層らが海外へ資金を流出させたりするのを防ぐ狙いがあるものの、中国人観光客による爆買いにも影響すると見られている[35]

紙おむつをめぐる事件等

2012年頃からドラッグストアなどの紙おむつコーナーで、人気商品[36]に対し一人あたりの購入数を制限する貼紙が目立つようになった。背景には「中国製は恐い。信用できる日本製がほしい[37]」という本国での不安に便乗し、転売による収益を目当てにした中長期在留者の中国人グループの存在があるとされている[38][39]。これについては、短期滞在の旅行者としてではなく就労ビザで日本に滞在しながら、在留資格外活動を行ったとして出入国管理法違反で検挙・強制送還された例もある[39][40][41]。なお、西日本新聞の取材によると中国と距離的に近い福岡市には少なくとも30の「爆買い代行業」が存在し、一部には事業所開設に必要な在留資格の不適切な取得が疑われるケースもあるという [42]

また、紙おむつに関する爆買いでは、日本に生活の拠点を置く中国人らによる争いも目立ち始めており、2015年8月に神戸市垂水区のホームセンターにて、日本人の配偶者1人を含む7人による乱闘騒ぎがあったほか[41][43]、同年7月に京都府城陽市のディスカウントストアで起きた、中国出身の日本人2人を含む8人による乱闘では、同年9月に傷害容疑で[41][44]、2016年1月には和歌山市のベビー用品店にて、客の1人が手提げカバンで店長の顔を殴ったとして暴行容疑で[45]、それぞれ逮捕者が出たと産経新聞が報じている。中国人の爆買いに難色を示す店舗も出始めており、販売の拒否または数量制限の説明をすると満足する数量を購入できないことから店員に対する暴行や、店舗に対する嫌がらせを行なうといった犯罪も問題になっている[46]

脚注

  1. ^ a b 爆買い(ばくがい)とは”. コトバンク. 2015年10月11日閲覧。
  2. ^ “「爆買い」「大人買い」英語で言うと?”. 読売新聞. (2006年4月9日). オリジナルの2015年9月30日時点におけるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20150930123121/http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/learning/english/20150402-OYT8T50161.html 2015年10月11日閲覧。 
  3. ^ “日本政府観光局 「食」で外国人を地方へ”. NHK. (2015年9月30日). オリジナルの2015年9月30日時点におけるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20150929234225/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150930/k10010252601000.html 2015年10月12日閲覧。 
  4. ^ “総額2200億円!中国人旅行者の”爆買い””. 東洋経済新報社. (2014年11月23日). http://toyokeizai.net/articles/-/54031 2015年9月29日閲覧。 
  5. ^ “平均45万円! 中国人旅行者が「爆買い」するアイテム”. 日刊ゲンダイ. (2014年12月18日). http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/155833 2015年9月29日閲覧。 
  6. ^ a b 菊池(2015年)147ページ
  7. ^ “春節「爆買い」1140億円 商戦をデータでひもとく”. 日本経済新聞. (2015年3月2日). http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83747080X20C15A2X1G000/ 2015年9月29日閲覧。 
  8. ^ “便座まで爆買いする中国人の“日本製信仰”(上) ――ジャーナリスト・中島恵”. ダイヤモンド社. (2015年4月14日). http://diamond.jp/articles/-/70041 2015年9月29日閲覧。 
  9. ^ “なぜ中国人は日本で「便座」を爆買いするのか”. 東洋経済新報社. (2015年4月22日). http://toyokeizai.net/articles/-/66595 2015年9月29日閲覧。 
  10. ^ 自由国民社. “2015ユーキャン新語・流行語大賞発表”. 2015年12月1日閲覧。
  11. ^ a b “春節商戦に冷や水!?中国「爆買い禁止令」の真相”. ダイヤモンド社. (2016年2月12日). http://diamond.jp/articles/-/86126 2016年2月19日閲覧。 
  12. ^ 意外と知らない中国人爆買いの理由 日本交通公社 観光政策研究部次長 塩谷英生 読売新聞 2015年12月25日
  13. ^ “温水便座の次はカバー 中国人観光客、大量買い最前線”. 日本経済新聞. (2015年6月5日). http://www.nikkei.com/article/DGXMZO87590120S5A600C1000000/ 2015年9月30日閲覧。 
  14. ^ “京阪神百貨店の「爆買い」全国上回る伸び 4月は前年の4倍 免税対象拡大で押し上げ”. 産経新聞. (2015年8月31日). http://www.sankei.com/west/news/150831/wst1508310097-n1.html 2015年9月30日閲覧。 
  15. ^ 日本でのショッピングの魅力向上と、地域への外国人観光客の誘客に取り組みます。”. 観光庁 (2013年12月13日). 2015年9月30日閲覧。
  16. ^ a b c d e 観光白書(2015年)56ページ
  17. ^ a b もりひろし (2015年9月5日). “四宝とイナゴ――「爆買い」の関連語たち。”. 日経ビジネスオンライン. http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216653/090300010/ 2015年10月2日閲覧。 
  18. ^ a b c 朝日新聞(2016年3月7日)夕刊第2面「めざせ「日本の電気釜」全人代で企業に訴え」
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参考文献

  • 一般社団法人中国研究所編『中国年間2015』(2015年)発行所一般社団法人中国研究所・発売毎日新聞出版(「動向 経済 概観」の章、執筆担当;菊池直樹)
  • 観光庁編『観光白書(平成27年度)』

関連項目

外部リンク