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[[image:MenstrualCycle ja.png|thumb|270px|月経周期における[[卵巣]]、基礎体温、[[ホルモン]]分泌、[[子宮内膜]]などの変化。]] |
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'''月経'''(げっけい、{{lang-en-short|menstruation}})は、成熟した人間の[[女性]]および高等[[霊長類]]のメスの[[子宮]]から周期的に起こる、生理的[[出血]]である<ref name="SeikagakuDic427-8">[[#生化学辞典(2版)|生化学辞典第2版、p.427 【月経周期】]]</ref>。正式な[[医学]]用語は月経だが、'''生理'''(せいり)、女の子の日、メンス、アレなど様々に呼ばれる。他には[[#別名]]節を参照。 |
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'''月経'''(げっけい、{{lang-en-short|menstruation}})は、[[性成熟]]した[[ヒト]]の[[女性]]、高等[[霊長類]]のメスにおいて、[[子宮内膜]]([[子宮]]壁の最内層)が周期的に剥離・脱落する際に生じる生理的[[出血]]である<ref name="SeikagakuDic427-8">[[#生化学辞典(2版)|『生化学辞典』第2版、p.427 【月経周期】]]</ref><ref name=msd>[https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/22-女性の健康上の問題/女性の生殖器系の生物学/月経周期 月経周期 - 22. 女性の健康上の問題] [[メルク・アンド・カンパニー#MSDマニュアル|MSDマニュアル]]家庭版</ref>。 |
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[[思春期]]に始まり(初経)、個人差はあるが、[[#閉経|閉経]]時期までの間におよそ28日[[周期]]で起こり、通常3~7日間続く(正常月経周期:25日から38日)<ref name="SeikagakuDic427-8" />。月経と同時かその数日前から不快な症状を感じる女性が多く、これは「[[月経随伴症状]]」や「[[月経前症候群|月経前緊張症候群]]」、「[[生理痛]](月経痛)」と呼ばれる。特に生理痛は子宮筋が収縮し剥離・脱落した子宮内膜を腟へ排出する際に生じる収縮痛である<ref name="経産省"/><ref name=KOMPAS />。 |
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正式な[[医学]]用語は月経だが、「'''生理'''(せいり)」「女の子の日」「女性の日」「レディースディ」「メンス」「アレ」など様々な名称で呼ばれる。他には「[[#名称|名称]]」節を参照。 |
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==別名== |
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月経が医学用語であるが、様々な俗称がある。 |
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== 名称 == |
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俗に「メンス」({{lang-en-short|menstruation, menses}} のカタカナ表記の省略形)、「[[アンネ]]」(生理用品のメーカー名より)、「お弁当箱」([[ナプキン]]が梱包されている形から)、「お客さん」(ナプキンを座布団に見立てて)、「つきのもの」「つきやく」「お月様」「[[美少女戦士セーラームーン|セーラームーン]]」{月経の周期が[[月]]の満ち欠け周期(29.5日)に近いことから}、また隠語めいて「アレ」「めぐり」「女の子の日」「女盛りの日」「アノ日」と呼ぶことも口語ではありえる。 |
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『[[古事記]]』の、[[ヤマトタケル|倭健命]]が[[宮簀媛|美夜受比売]]の服に経血の跡を見付けて交わし合った歌についての説明に「月経」という文字の並びが登場し<ref>{{Cite journal|和書 |author=居駒永幸 |title=景行記の歌と散文(I): 表現空間の解読と注釈<!--ci.nii.ac.jp で表示される内容に誤り有り--> |journal=明治大学教養論集 |issn=0389-6005 |publisher=[[明治大学]]教養論集刊行会 |year=2018 |month=sep |issue=534 |pages=111-123 |naid=120006471718 |url=https://hdl.handle.net/10291/19423 |accessdate=2021-03-11}}</ref>、これが日本に於ける初出とされている。1872年、[[奥山虎章]]が『[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/833035/108 医語類聚]』にて 「Menses」 「Menstruation」の訳語として「月経」を採用する<ref name=鈴木.2013>{{Cite journal|和書 |author=鈴木明子 |title=月経の名称 : 現代の月経 |journal=跡見学園女子大学文学部紀要 |issn=1348-1444 |publisher=[[跡見学園女子大学]] |year=2013 |month=mar |issue=48 |pages=133-146 |naid=110009605390 |url=http://id.nii.ac.jp/1612/00000715/ |accessdate=2022-05-21}}</ref>。 |
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月経という言葉が普及する以前は「月水」「経水」などと呼ばれていたが、時代や[[社会階級|階級]]などによって様々な名称で呼ばれた(例:「おまけ」「おめぐり」「はつはな」「めぐり」「おてなし」「かりや」「おてあい」等<ref name="inokuchi">{{Cite journal|和書 |author=井之口有一 |author2=中井和子 |author3=堀井令以知 |title=<資料>御所ことば語彙の調査研究 : 続編食物を除く |journal=京都府立大学学術報告 人文 |issn=00757381 |publisher=[[京都府立大学]]学術報告委員会 |year=1963 |month=nov |issue=15 |pages=22-52 |naid=110000057145 |url=http://id.nii.ac.jp/1122/00003544/}}(記述は p.32)</ref>)。おおよそ[[月 (暦)|1ヶ月]]の周期であることから、古くから「月の障り」と呼ばれ、異称として「月のもの」「月やく」「月の障り」「お月様」などと呼ばれた<ref>鈴木明子『おんなの身体論 月経・産育・暮らし』([[岩田書院]] 2018年10月11日第1刷発行)p.47</ref>。また、直接的な表現を[[忌み言葉]]として避け婉曲な表現を用いることも多く、地方での異称も数多く存在する<ref>鈴木明子『おんなの身体論 月経・産育・暮らし』(岩田書院 2018年10月11日第1刷発行)pp.48-51</ref>。 |
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古くは初経を「初花」とも呼んだ<ref name="YUGO">[[ユーゴ]]『布ナプキン』[[産経新聞出版]]</ref>。 |
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[[大正]]期の広告などには「月役」の名称も見られる<ref name=鈴木.2013 /><ref>{{Cite journal|和書 |author=太田恭子 |title=大正期の「母親による性教育モデル」の形成 |journal=人文学報. 社会学 |issn=0386-8729 |publisher=[[首都大学東京]]人文科学研究科 |year=2013 |month=mar |issue=467 |pages=1-26 |naid=120005325502 |url=https://hdl.handle.net/10748/5892}}</ref>。昭和に入ると「生理」という表現が用いられるようになり、当初は婉曲的な表現だったものが、やがて完全に月経の別称となっていった<ref>鈴木明子『おんなの身体論 月経・産育・暮らし』(岩田書院 2018年10月11日第1刷発行)p.52</ref>。このほか同時期には、「メンス」({{lang-en-short|menstruation, menses}} のカタカナ表記の省略形)、紙[[ナプキン (生理用)|ナプキン]]の普及以降は「[[アンネ (企業)|アンネ]]」(生理用品のメーカー名より)<ref name="kawase">川瀬良美「[http://id.nii.ac.jp/1544/00000013/ 人間発達における女性の特質:思春期と月経]」『[[淑徳大学]]社会学部研究紀要』む 1998-03-15, 32巻, pp.17-32, {{issn|1342-7792}}, {{naid|110004783233}}。</ref>、{{要出典範囲|date=2024年4月|「お客さん」(ナプキンを[[座布団]]に見立てて「予め座布団を敷いてお客さんを待つ」などともいう)、「お弁当箱」(ナプキンが梱包されている形から)などとも呼ばれるようになり、また現代では「[[美少女戦士セーラームーン|セーラームーン]]」{月経周期が[[月相|月の満ち欠け]]周期(29.5日)に近いことから}などと呼ぶ場合もある}}。また直接的な表現を避ける傾向は[[平成時代]]に入ってもみられ、「あれ」「あの日」「女の子の日」「女性の日」などとも呼ばれる<ref>鈴木明子『おんなの身体論 月経・産育・暮らし』(岩田書院 2018年10月11日第1刷発行)pp.58-68</ref>{{sfn|孫ら|2023|p=17}}。 |
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==月経周期== |
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[[画像:ovulation.jpg|thumb|排卵直前の卵巣]] |
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子宮壁の最内層は、[[子宮内膜]]と呼ばれる特徴的な粘膜層で、[[卵巣]]が分泌する[[ホルモン]]の影響を特に強く受ける部位である。ヒトの女性では月経周期に伴って([[哺乳類]]一般ではメスの性周期に伴って)周期的な変化をすることが知られる。この月経周期とは、月経開始日を1日目として、次の月経が開始する前日までの日数をいう。月経周期は個人差はあるが、閉経時期までの間におよそ28日[[周期]]で起こり、通常3〜7日間続く(正常月経周期:25〜38日)<ref name="SeikagakuDic427-8" />。 |
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== 月経周期 == |
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月経周期には卵胞期と黄体期があり、卵胞期には卵巣内で[[下垂体前葉]]が[[分泌]]する[[卵胞刺激ホルモン]] (FSH) の影響で[[卵胞]]が成長し、子宮内膜が厚くなる。同時に分泌を促された[[エストロゲン]]の[[血液|血]]中濃度が高まると[[下垂体前葉]]から[[黄体刺激ホルモン]]が分泌され、排卵が起こり[[黄体]]が形成される<ref name="SeikagakuDic427-8" />。 |
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{{Main|月経周期|排卵}}[[image:Lining of Uterine Wall.jpg|220px|thumb|子宮内膜の変化の模式(英語版)]] |
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[[image:ovulation.jpg|thumb|180px|排卵直前の卵巣]] |
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[[月経周期]]とは、月経開始日を1日目として、次の月経が開始する前日までの日数をいう。月経周期は個人差はあるが、およそ28日周期(個人差はあるが、およそ24–38日が正常の範囲<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/22-女性の健康上の問題/女性の生殖器系の生物学/月経周期 |title=月経周期 - 22. 女性の健康上の問題 |accessdate=2024-04-09 |author=Jennifer Knudtson; Jessica E. McLaughlin |date=2022年 4月 |website=MSDマニュアル家庭版 |publisher=[[メルク・アンド・カンパニー|MSD]] |language=ja-JP}})</ref>で起こり、医学的には、通常3 - 7日間続く(正常月経周期:25 - 38日)<ref name="SeikagakuDic427-8" />。25 - 36日とする文献もある<ref name=msd />。 |
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月経周期は卵胞期、排卵期、黄体期に分けられる<ref name=msd.pro>[https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/18-婦人科および産科/女性の生殖内分泌学/女性の生殖内分泌学 女性の生殖内分泌学 - 18. 婦人科および産科] MSDマニュアル プロフェッショナル版</ref>。適切に月経が起こるには、[[エストロゲン]](卵胞ホルモン)と[[プロゲステロン]](黄体ホルモン)の2種類の女性ホルモンの働きが重要となる<ref name="日経メディカル">{{Cite web |title=卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤の解説|url=https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf831a.html |website=日経メディカル|date= |access-date=2024-03-31 |language=ja}}</ref>。 |
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この黄体が形成される時期からは黄体期と呼ばれる。黄体は平均14日間活動を維持する。しかし排卵した卵子が[[受精]]しなかった場合、やがてエストロゲンなどの分泌が低下し、子宮内膜が脱落する<ref name="SeikagakuDic427-8" />。そして血液とともに子宮口、[[膣]]を経由して体外に排出されるのが月経である。そのため[[妊娠]]すると、[[出産]]の数か月後まで月経は停止する。 |
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* [[卵胞期]] : 卵巣内で[[下垂体前葉]]が[[分泌]]する[[卵胞刺激ホルモン]](FSH)の影響で[[卵胞]]が成長し、子宮内膜が厚くなる。エストロゲンは卵胞が成熟したことを知らせ、卵胞の成熟が止まる<ref name="日経メディカル"/>。分泌を促された[[エストロゲン]]の[[血液|血]]中濃度が高まると[[下垂体前葉]]から[[黄体刺激ホルモン]]が分泌され、排卵が起こり[[黄体]]が形成される<ref name="SeikagakuDic427-8" /><ref name=msd.pro />。 |
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一般的に、月経と同時かその数日前から不快な症状を感じる女性が多い。月経前緊張症候群、生理痛と呼ばれる。 |
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* [[排卵期]] : [[排卵]]([[卵子]]の放出)が起こる。エストロゲン濃度が最大値となり、[[プロゲステロン]]値も上昇を始め、貯蔵されていた黄体形成ホルモンが通常36 - 48時間に渡り大量に放出される黄体形成ホルモンサージ(LHサージ)が起きる。プロゲステロンは子宮内膜に柔らかく厚みのある状態にし、受精卵が着床しやすいように子宮内環境を整える作用がある<ref name="日経メディカル"/>。卵胞刺激ホルモンもわずかに上昇する。黄体形成ホルモンサージ開始から約16 - 32時間以内に、卵胞壁の崩壊と成熟した卵子の放出を生じさせる酵素が活性化される。また、卵母細胞の第一[[減数分裂]]が約36時間以内に完了する<ref name=msd.pro />。 |
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* [[黄体期]] : 平均14日間活動を維持する。しかし排卵した卵子が[[受精]]しなかった場合、やがてエストロゲンなどの分泌が低下し、子宮内膜が脱落する<ref name="SeikagakuDic427-8" />。そして血液とともに子宮口、[[膣]]を経由して体外に排出されるのが月経である。そのため[[妊娠]]すると、[[出産]]の数か月後まで月経は停止する。 |
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* 排卵性月経 |
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* 無排卵性月経 |
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== 月経前症候群 == |
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{{Main|月経前症候群 }} |
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; 症状 |
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: [[月経前症候群]] (PMS) とは月経の3〜10日前に身体、精神症状が出現し、月経開始とともにその症状が減退、消失するものである。身体症状としては乳房痛、乳房緊満感、腹部膨満感、[[頭痛]](特に[[片頭痛]])、四肢の浮腫、腹痛などが知られている。精神症状としては、イライラや抑うつ状態、不安感、易興奮性などが知られている。 |
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; 治療 |
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: イギリス月経前症候群協会のガイドラインによれば以下である<ref name="napsguide">{{Cite book|author=Nick Panay|title=Guidelines on Premenstrual Syndrome|url=http://www.pms.org.uk/assets/files/guidelinesfinal60210.pdf|format=pdf|publisher=The National Association for Premenstrual Syndrome (NAPS)|date=}}2011年という記載があり、少なくともそれ以降の文献。</ref>。まず栄養改善と定期的な運動が勧められる<ref name="napsguide"/>。第2段階として、[[ヨガ]]や[[瞑想]]などのストレス管理、カウンセリングなどのサポート、チェストツリーやイソフラボンやセントジョーンズワートによる補完療法、またビタミンB6やマグネシウムやカルシウムの補充である<ref name="napsguide"/>。その次の段階で重症のものではSSRI系抗うつ薬や、月経周期を抑制するために経口避妊薬やホルモンのエストラジオールのパッチである<ref name="napsguide"/>。 |
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== 初潮 == |
== 初潮 == |
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[[File:Tanner scale-female.svg|thumb|[[乳房]]の[[タナー段階]]III、[[陰毛]]のタナー段階IIまたはIIIで発生することが多い。]] |
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生まれて初めての月経を'''初潮'''(しょちょう、{{lang-en-short|[[:en:Menarche|menarche]]}})、または'''初経'''(しょけい)と言う。古くは「初花(はつはな)」とも言われた。初経時の印象がその後の月経感に影響し、よい印象がなかった人は[[月経前症候群]] (PMS) や[[月経痛]]が多いという研究結果がある<ref name="YUGO"/>。 |
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生まれて初めての月経を'''初潮'''(しょちょう、{{lang-en-short|[[:en:Menarche|menarche]]}})、または'''初経'''(しょけい)とも言う。古くは「初花(はつはな)」とも言われた。初潮時の印象がその後の月経感に影響し、よい印象がなかった人は[[月経前症候群]](PMS)や[[月経痛]]が多いという研究結果がある<ref name="YUGO">ユーゴ『布ナプキン:こころ、からだ、軽くなる』[[産経新聞出版]]、2010年</ref>。 |
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; 年齢 |
; 年齢 |
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: 初潮の数ヶ月前から[[透明]]又は[[白]]色の[[ |
: 栄養状態や健康状態で初潮を迎える年齢は変動し、栄養状態と健康状態が共に良好であれば早く訪れる<ref>守山正樹、柏崎浩、鈴木継美「[https://doi.org/10.3861/jshhe.46.22 日本における初潮年齢の推移]」『民族衛生』1980年 46巻 1号 pp.22-32, {{doi|10.3861/jshhe.46.22}}。</ref>。初潮の数ヶ月前から[[透明]]又は[[白]]色の[[おりもの|帯下]]の増加が見られるようになった後、初潮が発生する。初潮の平均年齢は12.3歳<ref name=jsog36_1 /><!-- 小数点を含む値は無意味 また 開業医は信頼のおける出典とならない -->で、大部分は年齢で10歳から15歳の間、[[陰毛]]が発育し始めてから一定後([[タナー段階]]で2-3度)、身長の伸びが低くなり始めた頃に発生することが多い<ref name="oyama">{{Cite journal|和書 |author=大山建司 |title=思春期の発現 |journal=山梨大学看護学会誌 |issn=13477714 |publisher=[[山梨大学]]看護学会 |year=2004 |volume=3 |issue=1 |pages=3-8 |naid=110006184827 |doi=10.34429/00003695 |url=https://doi.org/10.34429/00003695}}</ref>。平均初潮年齢は栄養・健康状態の改善により、19世紀以降全世界的に一貫して早まる傾向にある。日本も同様の傾向があり、19世紀末には15歳前後だった平均初潮年齢が、1997年には12歳2ヶ月にまで低下している<ref>鈴木明子『おんなの身体論 月経・産育・暮らし』(岩田書院 2018年10月11日第1刷発行)pp.17-19</ref>。 |
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:* 10歳未満 早発月経(思春期早発症)<ref name=jsog36_1 /><ref name="#1">[http://jspe.umin.jp/public/sishunnki.html 思春期早発症] 日本小児内分泌学会</ref><ref>森下一「早発月経・遅発月経」『臨床婦人科産科』46巻11号(1992年11月), {{doi|10.11477/mf.1409901061}}, 有償閲覧</ref>。 |
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: 9歳未満は思春期早発症<ref name="oyama"/>。10歳未満は'''早発月経'''と言われ、低身長の原因になる恐れがあり、医師による診断を受けたほうが良いという。16歳以上は'''遅発月経'''と言われ、いつまでも発来がないままだと'''[[無月経]]症'''になる恐れがあり、これも医師による診断を受けたほうが良いという<ref>{{Wayback |url=http://www.miyake-clinic.gr.jp/sisyunki/sisyunki20.htm |title=三宅婦人科内科医院“思春期” |date=20160310045147}}</ref>。 |
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:* 15歳以上 遅発月経<ref name=jsog36_1 /> |
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:* 18歳で初経を見ない 原発無月経<ref name=jsog36_1 />、染色体異常、性の発生・分化異常が疑われる<ref name=jsog36_1 />。 |
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; 妊娠 |
; 妊娠 |
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: |
: 初潮を迎えると子供を産める身体になると受け取られがちだが、始まっても1-2年間は周期は不規則で排卵が無い'''(無排卵性月経)'''場合が多く<ref name="oyama"/>、妊娠の可能性は低いが、排卵があれば妊娠の可能性はある。 |
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; 成長 |
; 成長 |
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: 思春期開始から初 |
: 思春期開始から初潮の1年以上前は[[乳房#乳房の成長|乳房の発達]]開始(Thelarche・[[乳首|乳頭]]期、後に[[乳輪]]期<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.wacoal.jp/girlsbody/library/karada/answer03.html|title=バストの先が痛がゆい|からだの疑問|小学生・中学生女の子下着の悩み解決|journal=ガールズばでなび|publisher=[[ワコール]]|accessdate=2021-08-03|archivedate=2021-08-03|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210803031110/https://www.wacoal.jp/girlsbody/library/karada/answer03.html}}</ref>)や[[外陰部 (女性)|外陰部]]の発達し始め<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.miyake-clinic.gr.jp/sisyunki/sisyunki52.htm|title=三宅婦人科内科医院・外陰部の発育 |accessdate=2015-11-21 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160304201456/http://www.miyake-clinic.gr.jp/sisyunki/sisyunki52.htm |archivedate=2016-03-04 |url-status=dead|url-status-date=2017-10}}</ref>など、[[大人]]の体型へ変化し始めで、[[骨盤]]が前傾傾向(女児型)のままなど、まだ[[子供]]の体型に近いが、初潮を挟む前後1年間は乳房全体が膨らみ始め(第1乳房期、後に第2乳房期)、骨盤が前傾傾向から直立傾向(女児型から女性成人型)に転換し始めることから[[腹]]がまっすぐになり、[[尻|臀部]]が大きくなり始めるなど急激に体型が変化し<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.wacoal.jp/girlsbody/park/02.html|title=バストと初経のヒミツの関係|publisher=ワコール|accessdate=2021-08-27|archivedate=2021-08-27|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210827075601/https://www.wacoal.jp/girlsbody/park/02.html}}</ref><ref>{{citation|和書|url=http://www.cocoros.jp/data/pdf/wacoal/release/W-P-6.pdf|title=『初経』をキーにした現代ティーンの成長と体型変化について|format=pdf|deadlinkdate=2021-10-07|accessdate=2019-04-17|archivedate=2019-04-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190417000834/http://www.cocoros.jp/data/pdf/wacoal/release/W-P-6.pdf}}</ref>、初潮の1年後以降になると骨盤が直立傾向(女性成人型)となり、大人の体型に近くなる(乳房は形成期)。乳房は途中で初潮を挟む約4年間で発達する<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.wacoal.jp/top/tanoshimu_contents/tanken/junior/growth/index.html|title=ワコール探検隊|「少女」から「おとな」へ約4年間で変化する成長期のバスト|publisher=ワコール|accessdate=2021-01-15|archivedate=2021-01-15|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210115165047/https://www.wacoal.jp/top/tanoshimu_contents/tanken/junior/growth/index.html}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://www.wacoal.jp/sight/knowledge/html/k0404.html |title=バストの発育、形態とブラジャーの関係|accessdate=2016-05-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20130214062656/http://www.wacoal.jp/sight/knowledge/html/k0404.html |archivedate=2013-02-14 }}</ref>。初潮時は[[身長]]の伸びのピークが過ぎており、初潮後はあまり身長が伸びなくなる<ref name="#1"/>。 |
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; 病気 |
; 病気 |
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: 初 |
: 初潮前後は[[脊椎側彎症]]の発症が多いとされている<ref>[https://www.yobouigaku-tokyo.or.jp/child/topics01.html 脊柱側わん症-現状と治療] 東京都予防医学協会</ref>。 |
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== 閉経 == |
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閉経時期([[更年期]])を迎えると、女性の体はホルモン分泌が変わり、月経は不規則になり、やがて停止する。多くの場合、50歳前後で閉経する(日本人女性の平均閉経年齢は約50歳である)。正常閉経の定義は、40歳〜54歳となっている<ref name="QBvol72016">クエスチョン・バンク 医師国家試験問題解説2016 vol.7 必修問題 Z-1 P291 2015年7月9日発売 メディックメディア社 ISBN 978-4896325898</ref>。それより早く45歳以前に閉経する場合を早発閉経、55歳以上の場合を晩発閉経と呼ぶ。動詞で「上がる」とも称する。 |
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閉経まで排卵が続く場合もあるが、早い者では40歳代前半には排卵がなくなり、無排卵のままホルモンバランスによる月経が閉経まで起こることがある。 |
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閉経をはさむ前後5年ほどの時期を「更年期」と呼ぶ。月経の停止以外に、ホルモンバランスの変化や心理影響によって、色々な自覚症状をおぼえる女性もいる([[更年期障害|更年期症状]])。 |
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長期間にわたり喫煙を続けると閉経が早くなるという報告がある。 |
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== 処置 == |
== 処置 == |
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月経期間中は、子宮から |
月経期間中は、子宮から膣を経て体外に経血が排出される。経血の排出は当人のコントロール下にないため、排出される経血を吸収するために、[[ナプキン (生理用)|ナプキン]]や[[タンポン]]、[[月経カップ]]といった[[生理処理用品|生理用品]]を使用する。 |
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[[開発援助|開発支援]]等では、「女性と思春期の女子が経血を吸収する清潔な生理用品を使い、それをプライバシーが確保される空間で月経期間中に必要なだけ交換でき、石鹸と水で必要な時に体を洗い、使用済みの生理用品を廃棄するための設備にアクセスできること」を{{仮リンク|月経衛生対処|en|Menstrual hygiene management}}(Menstrual hygiene management、MHM)と呼ぶ([[世界保健機関|WHO]])<ref name="osaka-u">{{Cite web|和書|url=https://ic.hus.osaka-u.ac.jp/mhm/|title=グローバル化時代の月経(生理)と人類学|work=大阪大学 人間科学研究科 国際協力学 研究室|accessdate=2024-01-24}}</ref>。 |
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ナプキンは綿を吸収体とした厚型のものがかつては主流であったが、現在は薄型で吸収力の高い[[ポリマー]]を使用したものが利便性から普及している。使用済みの生理用品は、トイレでは便器には流さず備え付けの[[サニタリーボックス]]に廃棄する(流すと下水配管を支障する)。 |
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[[UNESCO]]は女子や女性をとりまく環境について、月経衛生対処には以下のことを整えていくことが必要だと示している(括弧内は大阪大学の杉田映理による追記){{sfn|杉田2|2022|pp=22-23}}<ref name="osaka-u"/>。 |
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繰り返し使えるものとしては[[月経布|布ナプキン]]があり、ナプキンが普及する前は、[[ぬか袋]]なども使用されていた。その他、海外では[[月経カップ]]も古くから市販されているようだが、日本国内においては現在(2011年10月)インターネット上でしか見かけない。 |
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{{Quote| |
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# 正確で時宣を得た(月経に関する)知識 |
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# 安全かつ手ごろな価格で、入手可能な生理用品 |
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# (安全かつ衛生的でプライバシーが確保された)トイレと(手や体を)洗うための設備 |
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# 生理用品の安全で衛生的な廃棄 |
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# (月経に関する)知識を持ち安心できる(教員やヘルスワーカー等の)専門家 |
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# 保健サービスへの紹介とアクセス |
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# (月経に関する)ポジティブな社会規範 |
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# (月経に関する)[[アドボカシー]]と政策{{sfn|杉田2|2022|pp=22-23}}<ref name="osaka-u"/>|UNESCO(2014年)}} |
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月経衛生に対する権利は、国連の[[持続可能な開発目標]](SDGs)と、国連の条約で定められた権利に基づいている<ref name="Ashley Ward">{{Cite web|url=https://lawblogs.uc.edu/ihrlr/2021/11/01/the-right-to-menstrual-hygiene-period-poverty-in-developing-countries/|author=Ashley Ward |title=The Right to Menstrual Hygiene: Period Poverty in Developing Countries |website=Immigration and Human Rights Law Review|work=|date=2021.11.1|access-date=2024.03.28}}</ref>。貧困や周囲の不理解等により十分な生理用品が利用できないといった月経衛生対処が不十分な状態は、「[[生理の貧困]]」と呼ばれることもある。 |
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タンポンについては1970年代、[[黄色ブドウ球菌#毒素性ショック症候群|毒素性ショック症候群]](トキシックショック症候群)により[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で死亡事故が相次いだ。これは十分に消毒されなかったタンポンを長時間挿入していたことにより膣内で黄色ブドウ球菌が繁殖したものによる。現在でもタンポンの使用説明書に長時間の使用をしないように記述がある。 |
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== 月経異常 == |
== 月経異常 == |
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期間の異常、サイクルの異常、疼痛などがあり<ref name=KOMPAS />、正常月経の範囲を逸脱したものと定義される<ref name=jsog36_1>{{Citation|和書|author=高橋俊之|url=http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/63/1/KJ00007017607.pdf|title=研修コーナー:症候論(その1)|journal=『日本産科婦人科学会雑誌』63巻1号}}</ref> |
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* 月経不順(=月経周期 (menstrual cycle) の異常) |
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{| class="wikitable" style="text-align:right" |
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|+ 日本産科婦人科学会定義による 正常月経<ref name=jsog36_1 /> |
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| 月経周期 |
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| style="text-align:center" | 25 - 38日 |
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|- |
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| 出血持続日数 |
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| style="text-align:center" | 3 - 7日 |
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|- |
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| 出血量 |
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| style="text-align:center" | 20 - 140 ml |
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|- |
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| 随伴症状 || 日常生活に支障の無い軽度のもの |
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|} |
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* 月経不順 |
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** 月経が始まった頃は、月経周期は安定せず、数か月起こらなかったりすることもよくある。 |
** 月経が始まった頃は、月経周期は安定せず、数か月起こらなかったりすることもよくある。 |
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** 月経周期の異常 |
** 月経周期 (menstrual cycle) の異常 |
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*** 頻発月経/経早/月経先期:月経周期が異常に短縮する(24日以下) |
*** 頻発月経/経早/月経先期:月経周期が異常に短縮する(24日以下) |
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*** 稀発月経/経遅/月経後期:月経周期が異常に長くなる(39日以上) |
*** 稀発月経/経遅/月経後期:月経周期が異常に長くなる(39日以上) |
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74行目: | 87行目: | ||
*** 過多月経 (hypermenorrhea/menorrhagia):140ml以上 |
*** 過多月経 (hypermenorrhea/menorrhagia):140ml以上 |
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* [[無排卵月経]] |
* [[無排卵月経]] |
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* |
*: 一見すると定期反復的な出血が見られるが、周期内に排卵を伴わないもの。[[基礎体温]]を測ると一相性になる。厳密な意味での月経とはいえず、特に短期間に繰り返す頻発月経だったり不正周期のランダムな出血だったり、あるいは月経とも呼べない程の過少月経だったりする場合は、[[不正出血]]の一種として扱うことも多い。 |
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* [[無月経]] ([[:en:Amenorrhoea|amenorrhoea]]) |
* [[無月経]] ([[:en:Amenorrhoea|amenorrhoea]]) |
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** 原発性無月経 |
** 原発性無月経 |
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** |
**: 18歳の誕生日までに初潮を見ないこと。[[染色体異常]]や[[性分化疾患]]、[[内分泌器]]系の異常<ref name=naika.81.506 />などで起因することが多い。 |
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** 二次性無月経または続発性無月経 |
** 二次性無月経または続発性無月経 |
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** |
**: 初潮後ある程度月経を経験した女性の月経が3か月以上なくなること。妊娠した場合には当然ながら続発性無月経となる。また過度な[[ダイエット]]や[[拒食症]]、過度の[[スポーツ]]などで栄養障害を起こした場合にしばしば起こりうる。スポーツに起因するものは運動性無月経と呼ばれる事がある<ref>目崎登、相澤勝治、中村良三、山口香「[https://doi.org/10.20693/jspeconf.53.0_332 一流柔道選手の体重管理と月経現象の現状]」『日本体育学会大会号』第53回(2002) p.332-, {{doi|10.20693/jspeconf.53.0_332}}</ref>。 |
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* 月経発来異常 |
* 月経発来異常 |
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** 早発月経 (premature menstruation):10歳の誕生日より前に初経を迎える |
** 早発月経 (premature menstruation):10歳の誕生日より前に初経を迎える<ref name=naika.81.506>横谷進「[https://doi.org/10.2169/naika.81.506 性早熟・男性化]」『日本内科学会雑誌』1992年 81巻 4号 pp. 506-511, {{doi|10.2169/naika.81.506}}</ref> |
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** 遅発月経 (delayed menstruation):16歳の誕生日より後に初経を迎える |
** 遅発月経 (delayed menstruation):16歳の誕生日より後に初経を迎える |
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* [[月経困難症]](生理痛 [[:en:Dysmenorrhea|dysmenorrhea]]) |
* [[月経困難症]](生理痛 [[:en:Dysmenorrhea|dysmenorrhea]])。子宮筋が収縮し剥離・脱落した子宮内膜を腟へ排出する際に生じる収縮痛<ref name=KOMPAS />。 |
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* |
*: 月経期間中に[[痙攣]]のような腹痛や腰が砕けそうな痛み、足の痺れ、身体の麻痺、[[下痢]]・[[悪心]]など、日常生活に支障をきたすような不調が起こること。若い女性に多い。妊娠経験後、痙攣性の腹痛を感じなくなる場合も少なくない。 |
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* [[月経前症候群 |
* [[月経前症候群]]・PMS (premenstrual syndrome) |
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* |
*: 多くの女性は月経前数日、様々な不快を感じる(個人差はある)。腰痛・腹痛・頭痛・むくみ・悪心・食欲不振・乳房の緊張など。また精神的に不安定になって、落ち込んだり怒りっぽくなったりすることも多い。黄体ホルモンの影響によると考えられる。 |
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{{Main|月経前症候群}} |
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== 閉経 == |
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[[閉経]]とは、卵巣機能の低下による生理的または医原性の月経停止(無月経)であり、妊孕性がなくなる<ref name="MSDプロ">{{Cite web |title=閉経|url=https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/18-婦人科および産科/閉経/閉経 |website=MSDマニュアル プロフェッショナル版|date= |access-date=2024-03-31 |language=ja}}</ref><ref name="MSD家庭">{{Cite web |title=閉経|url=https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/22-女性の健康上の問題/閉経/閉経|website=MSDマニュアル 家庭版|date= |access-date=2024-03-31 |language=ja}}</ref>。月経が来ない状態が1年以上続いた時に、1年前を振り返って閉経とする<ref name="日本産科婦人科学会"/>。日本では「閉経」も漢方系の「血の道」もあまり使われておらず、医療でも一般でも「更年期」が使われることが多い{{sfn|ウベロイ, バハドゥー|1999|p=316}}。動詞で「上がる」とも称する。 |
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月経の周期が規則的であるためには、卵巣から十分なホルモン([[エストロゲン]]と[[プロゲステロン]])が分泌される必要があり([[#月経周期|月経周期]]を参照)、閉経は、加齢により卵巣からのホルモンの分泌が停止することで起こる<ref name="MSD家庭"/>。閉経時期([[更年期]])を迎えると、女性の体はホルモン分泌が変わり、月経は不規則になり、卵巣の中に[[卵胞]]がなくなり排卵が終わることで、閉経に至る<ref>{{Cite web |title=更年期の身体の変化|更年期障害・更年期の悩みのことなら更年期ラボ |url=https://ko-nenkilab.jp/menopause/about03.html |website=ko-nenkilab.jp |access-date=2024-03-31 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://mirrazatsurukamekai.jp/blog/20211210.html |title=女性のライフサイクルと閉経後の体の変化 |access-date=2024-03-31 |publisher=ミラザ新宿 つるかめクリニック}}</ref><ref>{{Cite web |title=これは閉経ですか? {{!}} 公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会 |url=https://www.meno-sg.net/health/menopause/1224/ |website=公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会 {{!}} 女性が健康で充実したライフキャリア が実現できる社会づくりを目指して |date=2021-05-08 |access-date=2024-03-30 |language=ja}}</ref><ref name="MSD家庭"/>。月経周期の変化は通常40代で始まり、周期の長さが変動する<ref name="MSDプロ"/>。閉経時期は個人差が大きく、早い人は40歳台前半、遅い人は50歳台後半で、40 - 55歳の間に迎える閉経は正常とみなされる<ref name="MSD家庭"/><ref name="日本産科婦人科学会"/>。アメリカ人の平均閉経年齢は約52歳、日本人の平均閉経年齢は約50歳である<ref name="MSD家庭"/><ref name="日本産科婦人科学会">{{Cite web |title=更年期障害|url=https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/|website=公益社団法人日本産科婦人科学会|date=2018-6-16|access-date=2024-03-31|language=ja}}</ref>。 |
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'''日本産科婦人科学会定義による 月経異常の種類【閉止】と問題点'''<ref name=jsog36_1 /> |
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{| class="wikitable" style="text-align:center" |
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! 種類と年令 || 問題点 |
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|- |
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| 正常 50歳 || |
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|- |
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| 早期閉経 40歳未満<br>(早期卵巣不全)<ref name=KOMPAS>[https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000092.html 経異常・排卵障害] [[慶應義塾大学病院]] KOMPAS</ref> || 骨粗鬆症、動脈硬化 |
|||
|- |
|||
| 遅発閉経 55歳以上 || [[乳がん]]、[[子宮体がん]] |
|||
|} |
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[[閉経]]をはさむ前後5年ほどの時期を「更年期」と呼ぶ<ref name=KOMPAS />。月経の停止以外に、ホルモンバランスの変化や心理影響によって色々な自覚症状を感じる女性もおり、[[更年期障害]]と呼ばれている。[[ホットフラッシュ]](ほてり、のぼせ)は75 - 85%の女性が経験する<ref name="MSD家庭"/>。閉経後は[[エストロゲン]]が分泌されなくなることで、[[骨密度]]が低下し、[[子宮]]、[[膣]]等の内性器、[[外陰部 (女性)|外陰部]]、乳房などの[[萎縮]]が起こる<ref name="MSD家庭"/><ref name="萎縮性腟炎"/>。皮膚や粘膜が薄くなり潤いがなくなることで、腟等は乾いて抵抗力が落ち炎症が起きやすくなり、性交時に痛みを感じる人も増える<ref name="萎縮性腟炎">{{Cite web |title=萎縮性腟炎について教えてください。 |url=https://www.jaog.or.jp/qa/oldage/jyosei200513/ |website=公益社団法人日本産婦人科医会|date=|access-date=2024-03-30 |language=ja}}</ref>。 |
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== 月経中の性行為 == |
== 月経中の性行為 == |
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月経中の性行為はタブー視されていることが多い。キリスト教の[[カトリック]]では、[[西ローマ帝国]]の[[アウグスティヌス]]の結婚論によって性倫理が規定され、結婚の第一の善は生殖、生み育てることとされており、生理中等の生殖が不可能と思われる時期のセックスは、教義上正当化することが困難であった(現代では良好な夫婦関係のためのセックスの意義も認められている){{sfn|森本|2001|pp=91-92}}。 |
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月経中の性行為はタブー視されていることが多いが、血液の流出に対処できるのであれば行為自体に問題はない<ref>{{cite web |url=https://www1.e-shogakukan.com/fanet/cgi-bin/member/diary/View.cgi?CT=05&RN=00016&LP=4 |author=[[河野美代子]]、永田由紀子 |title=心と体の交差点 |accessdate=2014-08-12}}</ref>。しかし、月経中の性行為では妊娠しない、というのは俗説であるため、妊娠を避ける場合は通常通り避妊が必要となる。また、[[子宮頸部]]が広がっているため、子宮内に細菌が入ったり、[[性行為感染症]]に罹患しないように清潔にすることを心掛ける必要がある<ref name="SexInfo1">{{cite web |url=http://www.soc.ucsb.edu/sexinfo/article/sex-your-period |author=UCSB SexInfo |title=Sex on Your Period |accessdate=2014-08-12}}</ref>。上記のリスク以外には、オーガズム時の筋収縮によって月経の終わりが早まる、行為時に出されるホルモン([[オキシトシン]]など)が月経時の苦しみを和らげるなどのメリットがあるとも言われている<ref name="SexInfo1"/><ref>{{cite web |url=http://www.wikihow.com/Have-Sex-During-Your-Period |title=How to Have Sex During Your Period |accessdate=2014-08-12}}</ref>。一般的に月経中セックスは出血を伴うためストロベリーセックスと言われる。 |
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月経中に[[性欲]]の高まりを感じる人もいる<ref>{{cite web |url=https://goaskalice.columbia.edu/answered-questions/it-weird-feel-hornier-usual-during-my-period |title=Is it weird to feel hornier than usual during my period? |publisher=[[コロンビア大学]]|accessdate=2018-09-29 |date=Sep 19, 2003|author=コロンビア大学公衆衛生学チーム}}</ref><ref name="watson">{{cite web |url=https://www.healthline.com/health/womens-health/sex-during-periods |title=Is It Safe to Have Sex During Your Periods? Tips, Benefits, and Side Effects |publisher=[[Healthline]]|accessdate=2018-09-29 |author=Stephanie Watson}}</ref>。産婦人科医の[[河野美代子]]によれば、血液の流出に対処できるのであれば行為自体に問題はないという<ref name="kouno">{{Cite web|和書|url=https://www1.e-shogakukan.com/fanet/cgi-bin/member/diary/View.cgi?CT=05&RN=00016&LP=4 |author=[[河野美代子]]、永田由紀子 |title=心と体の交差点 |accessdate=2014-08-12 |publisher=[[小学館]]}}</ref>。また、「生理中にセックスしてはいけない」という説には医学的な根拠はないのではないかとも述べている<ref name="kouno"/>。性行為で経血の逆流が起こるとされることもあるが、{{仮リンク|英国王立産婦人科医協会|en|Royal College of Obstetricians and Gynaecologists}}によれば、経血の逆流は性行為の有無に関わらず月経中の女性の90%に起きていることであるという<ref>{{cite book|title=Management of Infertility for the MRCOG and Beyond |publisher=[[ケンブリッジ大学出版局]] |author=Siladitya Bhattacharya、Mark Hamilton編 |page=57}}</ref>。 |
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しかし、月経中の性行為でも妊娠の可能性はあり、妊娠を避ける場合は通常通り避妊が必要となる<ref name="watson"/><ref name="kouno"/><ref name="amanda">{{cite web|url=https://www.health.com/pregnancy/6-things-you-should-know-about-having-sex-during-your-period |title=6 Things You Should Know About Having Sex During Your Period |date=ebruary 09, 2015 |accessdate=2018-09-29 |author=AMANDA MACMILLAN |publisher=[[メレディス・コーポレーション]]}}</ref>。また、[[子宮頸部]]が広がっていることにより感染のリスクが普段よりも若干上がっているため、パートナーが[[性感染症]]に罹患しているかどうかわからないような場合には、[[コンドーム]]などを利用して[[セーファーセックス]]を心がける必要がある<ref name="amanda"/>。また、[[ヒト免疫不全ウイルス]](HIV)などの性感染症のウイルスは血液中に存在するため、パートナーにうつさないためにも、セーファーセックスは有用な考え方である<ref name="watson"/>。{{仮リンク|インディアナ大学ブルーミントン校公衆衛生学部|en|Indiana University School of Public Health-Bloomington}}の教授である{{仮リンク|デビー・ハーベニック|en|Debby Herbenick}}博士は、[[オーガズム]]時の筋収縮によって月経前や月経時の痛みや不快感が和らぐこともあるとしている<ref name="Herbenick">{{cite web|url=https://kinseyconfidential.org/sex-alleviate-menstrual-cramps/ |title=Q&A: Can Having Sex Help To Alleviate Menstrual Cramps? |author=デビー・ハーベニック |publisher=[[:w:Kinsey Institute for Research in Sex, Gender, and Reproduction|Kinsey Institute for Research in Sex, Gender, and Reproduction]] |accessdate=2018-09-29 |date=2008-07-07}}</ref>。ただし、生理痛を和らげるためにできることは他にもあるため、女性は生理痛であるか否かに関わらず、したいときはすれば良いし、したくないときはしなければ良いとも述べている<ref name="Herbenick"/>。 |
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== 社会的捉え方 == |
== 社会的捉え方 == |
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; 生理休暇 |
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: 日本の[[労働基準法]]では、「生理日の就業がいちじるしく困難な女子は生理休暇が取得できる」と定められている。しかし、「勤務が困難かどうか」については[[医師]]による診断書の提出のような厳格な証明は不要とされている([[1948年]][[5月5日]] 基発682号)。また、休暇の間の賃金の有無等については規定されておらず、使用者と労働者の間の契約([[就業規則]]など)に委ねられている。 |
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: なお、近代以降において、生理休暇を法制化したのは日本が最初である<ref>古代律令制の休暇には女官のために淋假が設けられていたので、近代以前には生理休暇は存在していた。生理休暇の導入経緯については、田口亜紗『生理休暇の誕生』(青弓社)を参照。</ref>。これに対し、[[女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約|婦人差別撤廃条約]][[批准]]以降は、「母性保護措置ではないので、医学的に配慮が必要な場合を除き廃止すべきである」との指摘があるが、依然として「母性保護のため必要なので、現行のとおり存続とすべきである」という主張もあり、両者の意見は分かれたままになっている<ref>{{Cite web|url=http://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/shiryou/roudou/534.pdf|title=雇用における男女の機会の均等及び待遇の平等の確保のための法的整備について - 婦人少年問題審議会建議|format=PDF|publisher=[[国立社会保障・人口問題研究所]]|date=1984-03-26|accessdate=2015-07-01}}</ref>。 |
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; タブー |
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: 近代以前の世界では、月経は穢れであるとして忌避されていた国や地域が多く、今日でもその名残が残るところもある。 |
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: 日本でもインドや中国の文化的影響により、かつては月経中の女性は宮参りなどの[[神事]]に参加することができなかった(たとえば『[[落窪物語]]』巻二、『[[堤中納言物語]]』「花桜折る中将」)。現在もごく少数の社寺で女性の神事の参加を禁止している所がある。[[大相撲]]の土俵が女人禁制であるのも、相撲が元は神前で行うものだった名残である。→[[女人禁制]]を参照のこと。 |
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{{see also|:en:Menstrual taboo}} |
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: [[ネパール]]の西部では月経期間中の女性を穢れた存在として村から追放する[[チャウパディ]]という習慣が存在する<ref>{{Cite web|publisher=[[CNN|CNN.co.jp]]|url=http://www.cnn.co.jp/world/35094211.html|title=生理中の女性隔離、ネパールの15歳少女が死亡|date=2016-12-23|accessdate=2016-12-25}}</ref>。 |
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; 祝い事 |
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: かつての日本では、初潮を迎えた女性に対して[[赤飯]]を炊いて祝う家庭もあったが、現在ではそのようなことをする家庭は少なくなってきている。 |
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; 広告 |
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: 生理用品の[[コマーシャルメッセージ|CM]]では、経血は青色や緑色の着色水で表現される。透明では分かりにくいのはもちろん、赤だと生々しいからである。またテレビCMについても夕飯時といったゴールデンタイムには放映が禁止されるといった規制もある。 |
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=== 祝い事 === |
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多くの国では、初潮を迎えた女性を祝う風習がある<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.buzzfeed.com/jp/bfjapan/21-first-period-traditions-from-around-the-world-1|title=世界中の女の子が「初めての生理」を経験したとき|accessdate=2020-11-05|publisher=[[BuzzFeed Japan]]}}</ref>。 |
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日本では、貴重で特別な食材である[[小豆]]を祝い事で食べることが多く、集落の中で女子が初潮を迎えると、結婚し子どもを産める身体になったことを祝い、畏敬の念を込めて女子に自らの身体を大切にするよう促す儀礼として、[[赤飯]]を炊いて祝い、近所の家々にもふるまう習慣があった{{sfn|早乙女|2016|p=11}}{{sfn|加藤|2012|p=3}}{{sfn|田辺|2015|p=44}}。古代の日本では、血には霊力が宿り、豊穣をもたらすと考えられ、月経のある女性は神聖視されており{{sfn|横瀬|2009|p=32}}{{sfn|福崎|1996|p=64}}、月経が忌み嫌われながらも、喜びの意味を持つ「初経祝いの赤飯」の儀礼が行われたのは、古代の神聖視の名残であるという{{sfn|源|2001|pp=111-112}}。 |
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田辺けい子による2015年の30歳から80代の女性への聞き取り調査では、ほぼすべての人が「初経祝いの赤飯」のエピソードを語っているが、50代以下では儀礼は形骸化し、日常の中で赤飯を食べるだけのイベントになっている{{sfn|田辺|2015|p=44}}。 |
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=== タブー === |
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{{main|月経に関する偏見|生理の貧困|en:Menstrual taboo}} |
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月経に関する社会的、経済的、政治的、文化的障壁は、世界で約500万人に影響を与えていると言われる{{sfn|田中他|2022|p=181}}。 |
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社会における月経観には文化的側面があり(参考:{{仮リンク|文化と月経|en|Culture and menstruation}})、文化によって見方は異なる。月経は身体的な現象、生理現象であるが、女性たちはそれぞれの地域の月経に対する文化的・社会的な価値観の中で月経を経験する{{sfn|杉田|2022|p=9}}。月経中の女性や経血を穢れ、畏れの対象とする社会は多い{{sfn|杉田|2022|p=11}}。タブーという言葉の[[語源]]自体、月経を意味するものだと言われる{{sfn|杉田|2019|p=2}}。世界的に「[[血穢]](血の[[穢れ]])」に基づく「月経不浄視」があり、月経は、穢れ、不浄なものとみなされたり、汚いもの、恥ずかしいものもみなされてきた<ref name="Tanaka">{{Cite web|和書|author=田中ひかる|title=「虚偽の強姦」多発の真相…「女は嘘つき」はなぜ“定説”となったのか|url=https://gendai.media/articles/-/78143?page=4|website=現代ビジネス(講談社)|date=2020-12-18|accessdate=2024-03-27}}</ref>{{sfn|杉田・新本|2022|pp=272-273}}。世界の主要な宗教では、女性は月経があるがために穢れた存在であると説かれ、現在でも世界各地で、月経中の女性を小屋([[忌み小屋|月経小屋]])に隔離する慣習や、月経中の女性は舟に乗ってはいけない、食品を加工してはいけない、といった、月経に関して女性の行動を制限する決まりが見られる<ref name="Tanaka"/>{{sfn|杉田|2022|p=11}}。 |
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[[ユダヤ教]]、そこから派生した[[キリスト教]]、[[イスラム教]]や、それ以外の宗教的伝統は、様々な方法で世界各地で月経の[[タブー]]を形成してきた{{sfn|ワシントンコアL.L.C.|2023|p=90}}。ユダヤ教や[[ヒンドゥー教]]、日本では、月経中の女性を月経小屋(または部屋)に隔離する習慣がある(もしくはあった){{sfn|ウベロイ, バハドゥー|1999|p=316}}{{sfn|大澤|2020|p=75}}<ref name="島根"/>。月経中の女性が触れたものや経血が付いた衣服等は、穢れ、不浄になるとされる{{sfn|ウベロイ, バハドゥー|1999|p=316}}{{sfn|大澤|2020|p=75}}。インドで生まれた東アジアに広まった[[仏教]]では、男性修行者(僧)にとって女性(への性欲)が修行の妨げであること強調され、女性抑圧の傾向があり{{sfn|源|1989|pp=323-325}}、後に[[五障|女人五障説]](女性は仏に成れない)、[[変成男子]]説(女性は男性に変じることで成仏できる)が説かれ、これが仏教の女性不浄観、女性罪悪観につながっている{{sfn|源|1989|pp=323-325}}。日本では、月経小屋の習慣は地方によっては比較的近年まで行われており{{sfn|杉田|2022|p=11}}、家族と離れて食事を取る風習が戦後まで続いたところもあった<ref name="島根">{{Cite web|和書|url=https://shimane-kodaibunka.jp/history/history-428/|author=石山祥子 |title=いまどき島根の歴史 第16話 生理をめぐる風習 |work=島根県古代文化センター|date=2022-01-30|accessdate=2024-02-28}}</ref>。[[ネパール]]西部のヒンドゥー教徒が行う{{仮リンク|チャウパディ|en|Chhaupadi}}等、月経小屋の慣習は現在も一部で存在する<ref>{{Cite web|publisher=[[CNN|CNN.co.jp]]|url=https://www.cnn.co.jp/world/35094211.html|title=生理中の女性隔離、ネパールの15歳少女が死亡|date=2016-12-23|accessdate=2016-12-25}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.gnjp.org/reports/detail/20210624_naga/|author= |title=【ネパール】女子生徒の月経衛生事業|work=認定NPO法人 グッドネーバーズ・ジャパン |date= |access-date=2024.03.28}}</ref>。 |
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日本では、古代にあった月経の神聖視は薄まりながらも、平安時代中頃まで続いていたが、平安京の貴族社会を中心に穢れとしての月経観が定着していった{{sfn|小野|2009|pp=151-152}}。インドで生まれ、中国経由で外来した仏教の一派の[[密教]]と共に、こうした穢れ観が日本に定着したとも考えられている{{sfn|小野|2009|pp=151-152}}。日本における月経の不浄視は、支配者層や権力者層が作り出した(もしくは中国から導入した)社会システムであるという説が現在は有力なようである{{sfn|千葉|2015|p=176}}{{sfn|馬場|2015|pp=259-260}}。日本では、かつては月経中の女性は宮参りなどの[[神事]]に参加することができなかった(たとえば『[[落窪物語]]』巻二、『[[堤中納言物語]]』「花桜折る中将」)。[[室町時代]](15世紀)には、中国で作られた[[偽経]]「[[血盆経]]」が伝わり、これが日本の月経の不浄視に最も影響を及ぼしたと考えられている<ref name="Tanaka"/><ref name="コトバンク"/>。血盆経信仰は、女性は出産、月経の出血の穢れの[[業|罪業]]で死後[[血の池地獄 (仏教)|血の池地獄]]に堕ちるが、血盆経を唱えれば救済されるという教えで<ref name="Tanaka"/><ref name="コトバンク"/>{{sfn|杉田|2022|p=11}}、日本にあった血を忌む思想と仏教の女性不浄観が習合し、女性は血を流すため不浄だと説かれた<ref name="コトバンク">{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/%E8%A1%80%E3%81%AE%E6%B1%A0%E5%9C%B0%E7%8D%84-1365715|title=世界大百科事典(旧版)内の血の池地獄の言及|work=コトバンク|accessdate=2024-01-26}}</ref>。日本では現在も、[[女人禁制]]の[[聖地]]が存在し、一部の社寺では女性の神事の参加を禁止している。[[大相撲]]の[[土俵]]は現在も女人禁制であるが、これは相撲が元は神事だった名残である。 |
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日本では、月経の対処法を母親から学ぶ人がほとんどいうこともあり、血穢や血盆経信仰の影響で長年育まれた月経に対するネガティブな理解・態度、月経に対する「隠すべきもの」「穢れたもの」といった意識は、現在も母から娘へと連綿と継承されていると推測されている{{sfn|千葉|2015|p=177-178}}{{sfn|長島|2022|pp=40-41}}。 |
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月経のタブーと[[ジェンダー]]規範は深く結びついており、女性はこう振る舞うべきという規範に、月経が関係していると指摘されている{{sfn|杉田・新本|2022|pp=271-272}}{{sfn|杉田|2022|p=9}}。文化人類学者の杉田映理・新本万里子は、月経は「恥ずかしいもの」「秘匿すべきこと」「秘めごと」といった月経観は、女性の身体が性的なものとして見られていること、「[[セクシュアル]]なまなざしの対象になっていることを示している。」と述べている{{sfn|杉田・新本|2022|pp=272-273}}。 |
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月経は歴史的に社会において、女性の劣等性を主張する手段であり、選挙や政治、市民社会に参加するには、女性は生理学的に不適格であることを示す「呪い」として使われてきた{{sfn|Bildhauerら|2022}}。エディンバラ・ネピア大学のカースティン・マックロードは、社会の中で女性にとって月経は「[[ジェンダー]]の[[社会的スティグマ|スティグマ]]と社会的不名誉として機能し、その存在が恒久的に続く」と述べている{{sfn|マックロード|2022|p=10}}。 |
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2016年にイギリスで、{{仮リンク|イギリスの緊縮財政政策|label=緊縮財政政策|en|United Kingdom government austerity programme}}による市民の苦境と[[フェミニズム]]の台頭の中で、生理用品の購入が困難な低所得世帯の女性と女子が増加しているという問題が注目され、「[[生理の貧困]]」と呼ばれた{{sfn|Benedictis|2022}}。2010年代にSNSの広がりに伴い、SNSでのハッシュタグを使って、生理にまつわる諸問題の声と情報が集積し{{sfn|田中|2021|pp=37-40}}、これが後押しになり、「生理の貧困」ムーブメントは一種の[[フェミニズム]]運動と呼べるまでに成長し、経済的問題だけでなく、それ以外の月経に関する非物質的な問題も顕在化した{{sfn|田中|2021|pp=37-40}}。「生理の貧困」の問題は、「貧困への偏見」と「月経への偏見」という二重のタブーがある{{sfn|Benedictis|2022}}。生理の貧困の生活体験を研究したアリソン・ブリッグスは、生活必需品の援助を受けることで着せられる汚名や、「月経に関する一般的なタブー」、社会が「月経は隠されるべきものだと決めてかかっている」ことも加わり、月経のある女性にとって「実際の身体的不快感だけでなく、面目を潰され、屈辱を受ける体験」となる、二重苦であると述べている<ref name="EACH OTHER">{{Cite web|url=https://eachother.org.uk/period-poverty-what-happens-next/|author=Jem Collins |title=‘My Charity Shouldn’t Exist In Two Years’: What Happens Next To Truly Eradicate Period Poverty?|work=EACH OTHER|date=2021.01.18|access-date=2024.03.27}}</ref>。 |
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月経は女性特有の生理現象であるため、男性から隠されていることも少なくない{{sfn|杉田|2022|p=11}}。そのため、欧米や日本での月経をめぐる活動でも、月経について語ることがタブー視されていることが、幾度となく問題視されている{{sfn|杉田|2022|p=11}}。 |
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月経の穢れ観は、地域によって早さに差はあるが、世界的に希薄化が進んでいる{{sfn|杉田・新本|2022|pp=271-272}}。 |
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また、月経観はジェンダーによる差があり、男性の月経観は女性とは異なるという調査結果もある{{sfn|杉田・新本|2022|pp=271-272}}。 |
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=== 労働と生理休暇 === |
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{{See|生理休暇}} |
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就労している女性は月経に伴う症状を服薬で抑えたり我慢したりして仕事を続けるほか、病院に行ったり、[[生理休暇]]を利用したりすることもあり、[[健康経営]]上も重要なテーマである。日本の[[経済産業省]]は2019年([[平成]]31年)3月、月経随伴症状による労働損失が年間4911億円、通院・医薬品代を含む社会経済的コストが6828億円とする推計値を公表した<ref name="経産省">経済産業省ヘルスケア産業課『[https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf 健康経営における女性の健康の取り組みについて]』平成31年3月</ref>。 |
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生理休暇は日本の[[労働基準法]]の第68条で、生理日の就業がいちじるしく困難な女子が取得できる旨を定めている。 |
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なお、{{要出典範囲|date=2024年4月|近代以降において、生理休暇を法制化したのは日本が最初である}}<ref group="注釈">古代[[律令制]]の休暇には[[女官]]のために「淋假」が設けられていたので、近代以前には生理休暇は存在していた。生理休暇の導入経緯については、田口亜紗『生理休暇の誕生』([[青弓社]])を参照。</ref>。これに対し、[[女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約|婦人差別撤廃条約]][[批准]]以降は「母性保護措置ではないので、医学的に配慮が必要な場合を除き廃止すべきである」との指摘があるが、依然として「母性保護のため必要なので、現行のとおり存続とすべきである」という主張もあり、両者の意見は分かれたままになっている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/shiryou/roudou/534.pdf|title=雇用における男女の機会の均等及び待遇の平等の確保のための法的整備について - 婦人少年問題審議会建議|format=PDF|publisher=[[国立社会保障・人口問題研究所]]|date=1984-03-26|accessdate=2015-07-01}}</ref>。 |
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多くの職場では男女双方が働いているが、月経について話題にすることは[[セクシャルハラスメント]](セクハラ)と受け取られることがあり、女性従業員を気遣うつもりであっても躊躇するという声もあると[[産経新聞]]は報じている<ref>[https://www.sankei.com/article/20211228-C6TDBD6FCJNFFIQIW6RSVAJHTA/ 性ホルモンを学ぶ④職場で話せる?女性の体調 理解したい男性に「セクハラ懸念」の壁] [[産経デジタル]](2021年12月28日)2022年5月21日閲覧</ref>。 |
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=== 広告 === |
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{{要出典範囲|date=2024年4月|生理用品の[[コマーシャルメッセージ|CM]]では、経血は青色や緑色の着色水で表現される。無色透明ではわかりにくく、赤だと生々しいという理由からである}}。 |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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{{Notelist}} |
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=== 出典 === |
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{{Reflist|2}} |
{{Reflist|2}} |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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* {{Cite book|和書|author = |title = 生化学辞典第2版|edition = 第2版第6刷|year = 1995|publisher = [[東京化学同人]]|isbn = 4-8079-0340-3|page = |ref = 生化学辞典(2版)}} |
* {{Cite book|和書|author = |title = 生化学辞典第2版|edition = 第2版第6刷|year = 1995|publisher = [[東京化学同人]]|isbn = 4-8079-0340-3|page = |ref = 生化学辞典(2版)}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =[[源淳子]]|title = 仏教の女性性否定|volume =38 |issue = |journal =印度學佛教學研究|publisher =日本印度学仏教学会|date = 1989|pages =323-327|crid =1390001205376947840 |url=https://doi.org/10.4259/ibk.38.323 |doi=10.4259/ibk.38.323 |ref = {{SfnRef|源|1989}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =福崎孝雄|title =血に対するケガレ意識|volume =8|issue = |journal =現代密教|publisher =智山伝法院|date = 1996-03-30|pages =62-73|url=https://chisan.or.jp/wp-content/uploads/2019/11/user-pdfD-gendaimikkyo-8pdf-05.pdf|ref = {{SfnRef|福崎|1996}}}} |
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== 関連書 == |
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*{{Cite journal |和書 |author =パトリシア=ウベロイ|author2 =タリニ・バハドゥー|translator=林千根 |title =中年期の女性の身体-社会文化的・医学的な東西比較-|volume = |issue = |journal =生涯を通じた女性の健康づくりに関する研究|publisher =厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業|date = 1999|pages =314-332|url=https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/1999/000117/199900297A/199900297A0007.pdf|ref = {{SfnRef|ウベロイ, バハドゥー|1999}}}} |
|||
* 田中ひかる 『月経と犯罪』女性犯罪論の真偽を問う 批評社 ISBN 4826504381 |
|||
*{{Cite journal |和書 |author =源淳子|title =天皇制と穢れ|volume =6 |issue = |journal =研究紀要 / 世界人権問題研究センター 編|publisher =世界人権問題研究センター|date = 2001-03|pages =103-119|crid =1523669555632772736|url=https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I5863282|ref = {{SfnRef|源|2001}}}} |
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* おんなのこ物語―初潮のほん [[小学館]] ISBN 978-4091043115 |
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*{{Cite journal |和書 |author =森本あんり|title =人間にとって性の活動はどのような意味を持つか -同性愛をめぐる現代キリスト教倫理の視点から-|volume =32|issue = |journal =人文科学研究|publisher =国際基督教大学キリスト教と文化研究所|date = 2001年3月|pages =89-113|url=https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3011553_po_3_089_113.pdf?contentNo=1|ref = {{SfnRef|森本|2001}}}} |
|||
*{{Cite journal |和書 |author =横瀬利枝子|title = 生理用品の受容とその意義|volume =22 |issue = |journal =人間科学研究|publisher =早稲田大学人間科学学術院|date = 2009-05-25|pages =31-45|crid =1050282677466473856 |url=https://waseda.repo.nii.ac.jp/records/24005 |hdl=2065/30925 |ref = {{SfnRef|横瀬|2009}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =小野千佐子|title = 布ナプキンを通じた月経観の変容に関する研究 : 「存在する月経」への選択肢を求めて|volume =11 |issue = |journal =同志社政策科学研究|publisher =同志社大学大学院総合政策科学会|date = 2009-12-20|pages =149-162 |url=https://doshisha.repo.nii.ac.jp/records/21580 |doi=10.14988/pa.2017.0000012631|crid =1390009224913694976|ref = {{SfnRef|小野|2009}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =加藤寛昭|title = 豆類の地域ブランド化による市場基盤の確立への挑戦|volume =67 |issue = |journal =豆類時報 / 日本特産農産物協会 編|publisher =日本豆類協会|date = 2012-06|pages= 2-6|crid =1523388080856924544|url=https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I023836364|ref = {{SfnRef|加藤|2012}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =田辺けい子|title =「生殖から離れている身体」の医療人類学的考察 —子どもを産まない女性たちの身体観と生殖観に基づく「女性の健康支援」の検討—|volume =29 |issue = |journal =日本助産学会誌|publisher =一般社団法人 日本助産学会|date = 2015|pages =35-47|crid =1390001204435670272|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjam/29/1/29_35/_pdf|ref = {{SfnRef|田辺|2015}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =千葉理未|title = 女性が月経体験を言語化することの意義について|volume =61 |issue = |journal =京都大学大学院教育学研究科紀要|publisher =京都大学大学院教育学研究科|date = 2015-03-31|pages =175-187|url=https://hdl.handle.net/2433/196908 |hdl=2433/196908 |crid =1050564285764128256|ref = {{SfnRef|千葉|2015}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =馬場まみ|title = 近代における月経観と女性の身体認識|volume =20 |issue = |journal =研究紀要 / 世界人権問題研究センター 編|publisher =京都 : 世界人権問題研究センター|date =2015-07|pages =259-276|url=https://khrri.or.jp/publication/4/post_144.html |crid =1522825128321120640|ref = {{SfnRef|馬場|2015}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =早乙女智子|title = 女子の性 隔月連載16 消費される性・消費させる性|volume =67 |issue = |journal = 現代性教育研究ジャーナル|publisher =日本性教育協会 |date = 2016|url=https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/journal/seikyoiku_journal_201610.pdf|ref = {{SfnRef|早乙女|2016}}}} |
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* {{Cite journal |和書 |author =杉田映理|title = 月経衛生対処 (MHM) の開発支援および研究の動向|volume =28 |issue = |journal =国際開発研究|publisher =国際開発学会|date = 2019-11-30|pages =2|crid =1390846609793822080 |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jids/28/2/28_1/_pdf |ref = {{SfnRef|杉田|2019}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =大澤香|title = ヘブライ語聖書における捕囚と穢れのメタファー|volume = 67|issue = |journal =神戸女学院大学論集|publisher =|date = 2020-06-20|pages =69-81|crid =1390853649582147840 |url=https://kobe-c.repo.nii.ac.jp/records/5743 |doi=10.18878/00005665 |ref = {{SfnRef|大澤|2020}}}} |
|||
* {{cite book|和書|author=#みんなの生理(福井みのり)、ヒオカ、吉沢豊予子、田中東子、田中ひかる、河野真太郎|date=2021-11-09|title=#生理の貧困──#PeriodPoverty|publisher=[[日本看護協会出版会]]|series=Nursing Today ブックレット|isbn=978-4-8180-2364-2}} |
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**{{cite book|和書|chapter=「#生理の貧困」とSNS―日本で起きているバッシングを考える|author=田中東子|ref = {{SfnRef|田中|2021}}}} |
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*{{Cite journal |author =Sara De Benedictis|title = Periods of austerity: The emergence of ‘period poverty’ in UK news media|volume = 26|issue = |journal =European Journal of Cultural Studies|publisher = |date = 2021|pages =|doi =10.1177/13675494221133131|ref = {{SfnRef|Benedictis|2022}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =田中雅子、乾友菜、川村ひなの、萩原千賀|title = 「#入管被収容者にも生理用品を」プロジェクト: 被収容者・被仮放免者とのソーシャル・アクション|volume = 4|issue = |journal = |
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グローバル・コンサーン |publisher =上智大学グローバル・コンサーン研究所 |date = 2022-03-31|pages = 181-208|crid =1050012711548425088 |url=https://digital-archives.sophia.ac.jp/repository/view/repository/20221115024 |ref = {{SfnRef|田中他|2022}}}} |
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*{{Cite book|author =Bettina Bildhauer |author2 =Camilla Mork Røstvik|author3 =[[:en:Sharra L. Vostral|Sharra L Vostral]]|title =Introduction: The Period Products (Free Provision) (Scotland) Act 2021 in the Context of Menstrual Politics and History|series= The Politics and History of Menstruation: Contextualising the Scottish Campaign to End Period Poverty|volume =8|publisher = |date = 2022|doi =10.16995/olh.8159|ref = {{SfnRef|Bildhauerら|2022}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =|title = 生理の貧困 : IGSオンライン国際セミナー(生殖領域)記録集(2021年7月開催)|volume = |issue = |journal =|publisher =お茶の水ジェンダー研究所|date = 2022|pages =|url=https://www2.igs.ocha.ac.jp/wp-content/uploads/2022/03/IPS22_all-1.pdf|crid =1130291776117783699}} |
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**{{cite book|和書|chapter=生理の貧困をテーマにしたドキュメンタリーフィルム“Bleeding Free”から|author=カースティン・マックロード|ref = {{SfnRef|マックロード|2022}}}} |
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**{{cite book|和書|chapter=生理からみる日本のジェンダー課題:機会損失・スティグマをめぐる私たちの問題|author=長島美紀|ref = {{SfnRef|長島|2022}}}} |
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* {{Citation|和書|others=杉田映理、新本万里子 編集|date=2022|title=月経の人類学―女子生徒の「生理」と開発支援|publisher=世界思想社}} |
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**{{Citation|和書|chapter=序論|author=杉田映理|ref = {{SfnRef|杉田|2022}}}} |
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**{{Citation|和書|chapter=国際開発の目標となった月経衛生対処―MHMとは|author=杉田映理|ref = {{SfnRef|杉田2|2022}}}} |
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**{{Citation|和書|chapter=ローカルな文脈から見える開発実践への示唆|author=杉田映理・新本万里子|ref = {{SfnRef|杉田・新本|2022}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =杉田映理|title = 「生理の貧困」対策かジェンダー平等化か 日本における生理用品トイレ内無償提供のアクション・リサーチから考える|volume = 73|issue = |journal =日本文化人類学会研究大会発表要旨集 2022 |日本体育・スポーツ・健康学会予稿集|publisher =日本文化人類学会 |date = 2022|pages =A11|crid =1390293401256150144 |url=https://doi.org/10.14890/jasca.2022.0_a11 |doi=10.14890/jasca.2022.0_a11 |ref = {{SfnRef|杉田|2022}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |author =孫詩彧|author2 =祁暁航|author3 =張思銘|title = 月経言説と生理用品の商品化 : 研究レビューを踏まえた問題提起|volume = 143|issue = |journal =北海道大学大学院教育学研究院紀要|publisher =北海道大学大学院教育学研究院 |date = 2023-12-22|pages =17-35|crid =1390580143068136576 |url=https://doi.org/10.14943/b.edu.143.17 |hdl=2115/91012 |doi=10.14943/b.edu.143.17 |ref = {{SfnRef|孫ら|2023}}}} |
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*{{Cite journal |和書 |title = 令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(APEC エコノミーにおける日本発フェムテック製品・サービスの展開可能性に関する基礎調査)調査報告書~詳細版~|volume = |issue = |journal = |
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|publisher =ワシントンコアL.L.C. 経済産業省 |date = 2023年3月|pages =|url=https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000307.pdf|ref = {{SfnRef|ワシントンコアL.L.C. |2023}}}} |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[生理の貧困]] |
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* [[女性と喫煙]] |
* [[女性と喫煙]] |
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* [[骨粗鬆症]] |
* [[骨粗鬆症]] |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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<!--企業 |
<!-- 企業サイトは内容の中立性を保つこと。百科事典的なサイトの掲載に限るよう要選別のこと。--> |
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<!-- 宣伝目的のサイトや、私的な考えを記述したサイトは削除対象となります。またウィキペディアはリンク集ではないため、ウィキペディアにおける適切な外部リンクの選び方は、[[Wikipedia:外部リンクの選び方]](ショートカット:[[WP:EL]])を参照下さい。{{外部リンクの方針参照}}を使って貼り付けることができます。このメッセージは、2015年10月に貼り付けられました。--> |
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{{外部リンクの方針参照/追跡}}<!-- |
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{{外部リンクの方針参照/追跡}} |
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宣伝目的のサイトや、私的な考えを書いたに過ぎないようなサイトは削除されます。また、ウィキペディアはリンク集ではありません。ウィキペディアにおける適切な外部リンクの選び方は、[[Wikipedia:外部リンクの選び方]](ショートカット:[[WP:EL]])を参照して下さい。このメッセージは、2015年10月に貼り付けられました。{{外部リンクの方針参照}}を使って貼り付けることができます。--> |
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* [https://seirino-mikata.jp/ 生理痛と女性のからだの悩み 生理のミカタ] バイエル薬品 |
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* [http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec22/ch241/ch241e.html 月経周期](メルクマニュアル、家庭版) |
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* {{Kotobank}} |
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*[http://books.google.co.jp/books?id=HfhdOItQcJwC&pg=PA44 日本における月経観の歴史] - 『日本人の魂のゆくえ: 古代日本と琉球の死生観』(谷川建一、冨山房インターナショナル、2012年) |
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* {{Kotobank|月経痛}} |
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{{性}} |
{{性}} |
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{{Normdaten}} |
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{{DEFAULTSORT:けつけい}} |
{{DEFAULTSORT:けつけい}} |
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2024年9月25日 (水) 10:48時点における最新版
月経(げっけい、英: menstruation)は、性成熟したヒトの女性、高等霊長類のメスにおいて、子宮内膜(子宮壁の最内層)が周期的に剥離・脱落する際に生じる生理的出血である[1][2]。
思春期に始まり(初経)、個人差はあるが、閉経時期までの間におよそ28日周期で起こり、通常3~7日間続く(正常月経周期:25日から38日)[1]。月経と同時かその数日前から不快な症状を感じる女性が多く、これは「月経随伴症状」や「月経前緊張症候群」、「生理痛(月経痛)」と呼ばれる。特に生理痛は子宮筋が収縮し剥離・脱落した子宮内膜を腟へ排出する際に生じる収縮痛である[3][4]。
正式な医学用語は月経だが、「生理(せいり)」「女の子の日」「女性の日」「レディースディ」「メンス」「アレ」など様々な名称で呼ばれる。他には「名称」節を参照。
名称
[編集]『古事記』の、倭健命が美夜受比売の服に経血の跡を見付けて交わし合った歌についての説明に「月経」という文字の並びが登場し[5]、これが日本に於ける初出とされている。1872年、奥山虎章が『医語類聚』にて 「Menses」 「Menstruation」の訳語として「月経」を採用する[6]。
月経という言葉が普及する以前は「月水」「経水」などと呼ばれていたが、時代や階級などによって様々な名称で呼ばれた(例:「おまけ」「おめぐり」「はつはな」「めぐり」「おてなし」「かりや」「おてあい」等[7])。おおよそ1ヶ月の周期であることから、古くから「月の障り」と呼ばれ、異称として「月のもの」「月やく」「月の障り」「お月様」などと呼ばれた[8]。また、直接的な表現を忌み言葉として避け婉曲な表現を用いることも多く、地方での異称も数多く存在する[9]。
大正期の広告などには「月役」の名称も見られる[6][10]。昭和に入ると「生理」という表現が用いられるようになり、当初は婉曲的な表現だったものが、やがて完全に月経の別称となっていった[11]。このほか同時期には、「メンス」(英: menstruation, menses のカタカナ表記の省略形)、紙ナプキンの普及以降は「アンネ」(生理用品のメーカー名より)[12]、「お客さん」(ナプキンを座布団に見立てて「予め座布団を敷いてお客さんを待つ」などともいう)、「お弁当箱」(ナプキンが梱包されている形から)などとも呼ばれるようになり、また現代では「セーラームーン」{月経周期が月の満ち欠け周期(29.5日)に近いことから}などと呼ぶ場合もある[要出典]。また直接的な表現を避ける傾向は平成時代に入ってもみられ、「あれ」「あの日」「女の子の日」「女性の日」などとも呼ばれる[13][14]。
月経周期
[編集]月経周期とは、月経開始日を1日目として、次の月経が開始する前日までの日数をいう。月経周期は個人差はあるが、およそ28日周期(個人差はあるが、およそ24–38日が正常の範囲[15]で起こり、医学的には、通常3 - 7日間続く(正常月経周期:25 - 38日)[1]。25 - 36日とする文献もある[2]。
月経周期は卵胞期、排卵期、黄体期に分けられる[16]。適切に月経が起こるには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類の女性ホルモンの働きが重要となる[17]。
- 卵胞期 : 卵巣内で下垂体前葉が分泌する卵胞刺激ホルモン(FSH)の影響で卵胞が成長し、子宮内膜が厚くなる。エストロゲンは卵胞が成熟したことを知らせ、卵胞の成熟が止まる[17]。分泌を促されたエストロゲンの血中濃度が高まると下垂体前葉から黄体刺激ホルモンが分泌され、排卵が起こり黄体が形成される[1][16]。
- 排卵期 : 排卵(卵子の放出)が起こる。エストロゲン濃度が最大値となり、プロゲステロン値も上昇を始め、貯蔵されていた黄体形成ホルモンが通常36 - 48時間に渡り大量に放出される黄体形成ホルモンサージ(LHサージ)が起きる。プロゲステロンは子宮内膜に柔らかく厚みのある状態にし、受精卵が着床しやすいように子宮内環境を整える作用がある[17]。卵胞刺激ホルモンもわずかに上昇する。黄体形成ホルモンサージ開始から約16 - 32時間以内に、卵胞壁の崩壊と成熟した卵子の放出を生じさせる酵素が活性化される。また、卵母細胞の第一減数分裂が約36時間以内に完了する[16]。
- 黄体期 : 平均14日間活動を維持する。しかし排卵した卵子が受精しなかった場合、やがてエストロゲンなどの分泌が低下し、子宮内膜が脱落する[1]。そして血液とともに子宮口、膣を経由して体外に排出されるのが月経である。そのため妊娠すると、出産の数か月後まで月経は停止する。
初潮
[編集]生まれて初めての月経を初潮(しょちょう、英: menarche)、または初経(しょけい)とも言う。古くは「初花(はつはな)」とも言われた。初潮時の印象がその後の月経感に影響し、よい印象がなかった人は月経前症候群(PMS)や月経痛が多いという研究結果がある[18]。
- 年齢
- 栄養状態や健康状態で初潮を迎える年齢は変動し、栄養状態と健康状態が共に良好であれば早く訪れる[19]。初潮の数ヶ月前から透明又は白色の帯下の増加が見られるようになった後、初潮が発生する。初潮の平均年齢は12.3歳[20]で、大部分は年齢で10歳から15歳の間、陰毛が発育し始めてから一定後(タナー段階で2-3度)、身長の伸びが低くなり始めた頃に発生することが多い[21]。平均初潮年齢は栄養・健康状態の改善により、19世紀以降全世界的に一貫して早まる傾向にある。日本も同様の傾向があり、19世紀末には15歳前後だった平均初潮年齢が、1997年には12歳2ヶ月にまで低下している[22]。
- 妊娠
- 初潮を迎えると子供を産める身体になると受け取られがちだが、始まっても1-2年間は周期は不規則で排卵が無い(無排卵性月経)場合が多く[21]、妊娠の可能性は低いが、排卵があれば妊娠の可能性はある。
- 成長
- 思春期開始から初潮の1年以上前は乳房の発達開始(Thelarche・乳頭期、後に乳輪期[25])や外陰部の発達し始め[26]など、大人の体型へ変化し始めで、骨盤が前傾傾向(女児型)のままなど、まだ子供の体型に近いが、初潮を挟む前後1年間は乳房全体が膨らみ始め(第1乳房期、後に第2乳房期)、骨盤が前傾傾向から直立傾向(女児型から女性成人型)に転換し始めることから腹がまっすぐになり、臀部が大きくなり始めるなど急激に体型が変化し[27][28]、初潮の1年後以降になると骨盤が直立傾向(女性成人型)となり、大人の体型に近くなる(乳房は形成期)。乳房は途中で初潮を挟む約4年間で発達する[29][30]。初潮時は身長の伸びのピークが過ぎており、初潮後はあまり身長が伸びなくなる[23]。
- 病気
- 初潮前後は脊椎側彎症の発症が多いとされている[31]。
処置
[編集]月経期間中は、子宮から膣を経て体外に経血が排出される。経血の排出は当人のコントロール下にないため、排出される経血を吸収するために、ナプキンやタンポン、月経カップといった生理用品を使用する。
開発支援等では、「女性と思春期の女子が経血を吸収する清潔な生理用品を使い、それをプライバシーが確保される空間で月経期間中に必要なだけ交換でき、石鹸と水で必要な時に体を洗い、使用済みの生理用品を廃棄するための設備にアクセスできること」を月経衛生対処(Menstrual hygiene management、MHM)と呼ぶ(WHO)[32]。
UNESCOは女子や女性をとりまく環境について、月経衛生対処には以下のことを整えていくことが必要だと示している(括弧内は大阪大学の杉田映理による追記)[33][32]。
—UNESCO(2014年)
月経衛生に対する権利は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)と、国連の条約で定められた権利に基づいている[34]。貧困や周囲の不理解等により十分な生理用品が利用できないといった月経衛生対処が不十分な状態は、「生理の貧困」と呼ばれることもある。
月経異常
[編集]期間の異常、サイクルの異常、疼痛などがあり[4]、正常月経の範囲を逸脱したものと定義される[20]
月経周期 | 25 - 38日 |
出血持続日数 | 3 - 7日 |
出血量 | 20 - 140 ml |
随伴症状 | 日常生活に支障の無い軽度のもの |
- 月経不順
- 月経が始まった頃は、月経周期は安定せず、数か月起こらなかったりすることもよくある。
- 月経周期 (menstrual cycle) の異常
- 頻発月経/経早/月経先期:月経周期が異常に短縮する(24日以下)
- 稀発月経/経遅/月経後期:月経周期が異常に長くなる(39日以上)
- 不正周期月経/経乱:月経周期が不定期なもの(毎回の変動が7日以上)
- 月経持続期間の異常
- 過短月経 (too short menstruation):出血期間が異常に短縮する(2日以下)
- 過長月経 (too long menstruation):出血期間が異常に長くなる(8日以上)
- 月経量の異常
- 過少月経 (hypomenorrhea):20ml未満
- 過多月経 (hypermenorrhea/menorrhagia):140ml以上
- 無排卵月経
- 無月経 (amenorrhoea)
- 月経発来異常
- 早発月経 (premature menstruation):10歳の誕生日より前に初経を迎える[35]
- 遅発月経 (delayed menstruation):16歳の誕生日より後に初経を迎える
- 月経困難症(生理痛 dysmenorrhea)。子宮筋が収縮し剥離・脱落した子宮内膜を腟へ排出する際に生じる収縮痛[4]。
- 月経前症候群・PMS (premenstrual syndrome)
- 多くの女性は月経前数日、様々な不快を感じる(個人差はある)。腰痛・腹痛・頭痛・むくみ・悪心・食欲不振・乳房の緊張など。また精神的に不安定になって、落ち込んだり怒りっぽくなったりすることも多い。黄体ホルモンの影響によると考えられる。
閉経
[編集]閉経とは、卵巣機能の低下による生理的または医原性の月経停止(無月経)であり、妊孕性がなくなる[37][38]。月経が来ない状態が1年以上続いた時に、1年前を振り返って閉経とする[39]。日本では「閉経」も漢方系の「血の道」もあまり使われておらず、医療でも一般でも「更年期」が使われることが多い[40]。動詞で「上がる」とも称する。
月経の周期が規則的であるためには、卵巣から十分なホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が分泌される必要があり(月経周期を参照)、閉経は、加齢により卵巣からのホルモンの分泌が停止することで起こる[38]。閉経時期(更年期)を迎えると、女性の体はホルモン分泌が変わり、月経は不規則になり、卵巣の中に卵胞がなくなり排卵が終わることで、閉経に至る[41][42][43][38]。月経周期の変化は通常40代で始まり、周期の長さが変動する[37]。閉経時期は個人差が大きく、早い人は40歳台前半、遅い人は50歳台後半で、40 - 55歳の間に迎える閉経は正常とみなされる[38][39]。アメリカ人の平均閉経年齢は約52歳、日本人の平均閉経年齢は約50歳である[38][39]。
日本産科婦人科学会定義による 月経異常の種類【閉止】と問題点[20]
種類と年令 | 問題点 |
---|---|
正常 50歳 | |
早期閉経 40歳未満 (早期卵巣不全)[4] |
骨粗鬆症、動脈硬化 |
遅発閉経 55歳以上 | 乳がん、子宮体がん |
閉経をはさむ前後5年ほどの時期を「更年期」と呼ぶ[4]。月経の停止以外に、ホルモンバランスの変化や心理影響によって色々な自覚症状を感じる女性もおり、更年期障害と呼ばれている。ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)は75 - 85%の女性が経験する[38]。閉経後はエストロゲンが分泌されなくなることで、骨密度が低下し、子宮、膣等の内性器、外陰部、乳房などの萎縮が起こる[38][44]。皮膚や粘膜が薄くなり潤いがなくなることで、腟等は乾いて抵抗力が落ち炎症が起きやすくなり、性交時に痛みを感じる人も増える[44]。
月経中の性行為
[編集]月経中の性行為はタブー視されていることが多い。キリスト教のカトリックでは、西ローマ帝国のアウグスティヌスの結婚論によって性倫理が規定され、結婚の第一の善は生殖、生み育てることとされており、生理中等の生殖が不可能と思われる時期のセックスは、教義上正当化することが困難であった(現代では良好な夫婦関係のためのセックスの意義も認められている)[45]。
月経中に性欲の高まりを感じる人もいる[46][47]。産婦人科医の河野美代子によれば、血液の流出に対処できるのであれば行為自体に問題はないという[48]。また、「生理中にセックスしてはいけない」という説には医学的な根拠はないのではないかとも述べている[48]。性行為で経血の逆流が起こるとされることもあるが、英国王立産婦人科医協会によれば、経血の逆流は性行為の有無に関わらず月経中の女性の90%に起きていることであるという[49]。
しかし、月経中の性行為でも妊娠の可能性はあり、妊娠を避ける場合は通常通り避妊が必要となる[47][48][50]。また、子宮頸部が広がっていることにより感染のリスクが普段よりも若干上がっているため、パートナーが性感染症に罹患しているかどうかわからないような場合には、コンドームなどを利用してセーファーセックスを心がける必要がある[50]。また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの性感染症のウイルスは血液中に存在するため、パートナーにうつさないためにも、セーファーセックスは有用な考え方である[47]。インディアナ大学ブルーミントン校公衆衛生学部の教授であるデビー・ハーベニック博士は、オーガズム時の筋収縮によって月経前や月経時の痛みや不快感が和らぐこともあるとしている[51]。ただし、生理痛を和らげるためにできることは他にもあるため、女性は生理痛であるか否かに関わらず、したいときはすれば良いし、したくないときはしなければ良いとも述べている[51]。
社会的捉え方
[編集]祝い事
[編集]多くの国では、初潮を迎えた女性を祝う風習がある[52]。
日本では、貴重で特別な食材である小豆を祝い事で食べることが多く、集落の中で女子が初潮を迎えると、結婚し子どもを産める身体になったことを祝い、畏敬の念を込めて女子に自らの身体を大切にするよう促す儀礼として、赤飯を炊いて祝い、近所の家々にもふるまう習慣があった[53][54][55]。古代の日本では、血には霊力が宿り、豊穣をもたらすと考えられ、月経のある女性は神聖視されており[56][57]、月経が忌み嫌われながらも、喜びの意味を持つ「初経祝いの赤飯」の儀礼が行われたのは、古代の神聖視の名残であるという[58]。
田辺けい子による2015年の30歳から80代の女性への聞き取り調査では、ほぼすべての人が「初経祝いの赤飯」のエピソードを語っているが、50代以下では儀礼は形骸化し、日常の中で赤飯を食べるだけのイベントになっている[55]。
タブー
[編集]月経に関する社会的、経済的、政治的、文化的障壁は、世界で約500万人に影響を与えていると言われる[59]。
社会における月経観には文化的側面があり(参考:文化と月経)、文化によって見方は異なる。月経は身体的な現象、生理現象であるが、女性たちはそれぞれの地域の月経に対する文化的・社会的な価値観の中で月経を経験する[60]。月経中の女性や経血を穢れ、畏れの対象とする社会は多い[61]。タブーという言葉の語源自体、月経を意味するものだと言われる[62]。世界的に「血穢(血の穢れ)」に基づく「月経不浄視」があり、月経は、穢れ、不浄なものとみなされたり、汚いもの、恥ずかしいものもみなされてきた[63][64]。世界の主要な宗教では、女性は月経があるがために穢れた存在であると説かれ、現在でも世界各地で、月経中の女性を小屋(月経小屋)に隔離する慣習や、月経中の女性は舟に乗ってはいけない、食品を加工してはいけない、といった、月経に関して女性の行動を制限する決まりが見られる[63][61]。
ユダヤ教、そこから派生したキリスト教、イスラム教や、それ以外の宗教的伝統は、様々な方法で世界各地で月経のタブーを形成してきた[65]。ユダヤ教やヒンドゥー教、日本では、月経中の女性を月経小屋(または部屋)に隔離する習慣がある(もしくはあった)[40][66][67]。月経中の女性が触れたものや経血が付いた衣服等は、穢れ、不浄になるとされる[40][66]。インドで生まれた東アジアに広まった仏教では、男性修行者(僧)にとって女性(への性欲)が修行の妨げであること強調され、女性抑圧の傾向があり[68]、後に女人五障説(女性は仏に成れない)、変成男子説(女性は男性に変じることで成仏できる)が説かれ、これが仏教の女性不浄観、女性罪悪観につながっている[68]。日本では、月経小屋の習慣は地方によっては比較的近年まで行われており[61]、家族と離れて食事を取る風習が戦後まで続いたところもあった[67]。ネパール西部のヒンドゥー教徒が行うチャウパディ等、月経小屋の慣習は現在も一部で存在する[69][70]。
日本では、古代にあった月経の神聖視は薄まりながらも、平安時代中頃まで続いていたが、平安京の貴族社会を中心に穢れとしての月経観が定着していった[71]。インドで生まれ、中国経由で外来した仏教の一派の密教と共に、こうした穢れ観が日本に定着したとも考えられている[71]。日本における月経の不浄視は、支配者層や権力者層が作り出した(もしくは中国から導入した)社会システムであるという説が現在は有力なようである[72][73]。日本では、かつては月経中の女性は宮参りなどの神事に参加することができなかった(たとえば『落窪物語』巻二、『堤中納言物語』「花桜折る中将」)。室町時代(15世紀)には、中国で作られた偽経「血盆経」が伝わり、これが日本の月経の不浄視に最も影響を及ぼしたと考えられている[63][74]。血盆経信仰は、女性は出産、月経の出血の穢れの罪業で死後血の池地獄に堕ちるが、血盆経を唱えれば救済されるという教えで[63][74][61]、日本にあった血を忌む思想と仏教の女性不浄観が習合し、女性は血を流すため不浄だと説かれた[74]。日本では現在も、女人禁制の聖地が存在し、一部の社寺では女性の神事の参加を禁止している。大相撲の土俵は現在も女人禁制であるが、これは相撲が元は神事だった名残である。
日本では、月経の対処法を母親から学ぶ人がほとんどいうこともあり、血穢や血盆経信仰の影響で長年育まれた月経に対するネガティブな理解・態度、月経に対する「隠すべきもの」「穢れたもの」といった意識は、現在も母から娘へと連綿と継承されていると推測されている[75][76]。
月経のタブーとジェンダー規範は深く結びついており、女性はこう振る舞うべきという規範に、月経が関係していると指摘されている[77][60]。文化人類学者の杉田映理・新本万里子は、月経は「恥ずかしいもの」「秘匿すべきこと」「秘めごと」といった月経観は、女性の身体が性的なものとして見られていること、「セクシュアルなまなざしの対象になっていることを示している。」と述べている[64]。
月経は歴史的に社会において、女性の劣等性を主張する手段であり、選挙や政治、市民社会に参加するには、女性は生理学的に不適格であることを示す「呪い」として使われてきた[78]。エディンバラ・ネピア大学のカースティン・マックロードは、社会の中で女性にとって月経は「ジェンダーのスティグマと社会的不名誉として機能し、その存在が恒久的に続く」と述べている[79]。
2016年にイギリスで、緊縮財政政策による市民の苦境とフェミニズムの台頭の中で、生理用品の購入が困難な低所得世帯の女性と女子が増加しているという問題が注目され、「生理の貧困」と呼ばれた[80]。2010年代にSNSの広がりに伴い、SNSでのハッシュタグを使って、生理にまつわる諸問題の声と情報が集積し[81]、これが後押しになり、「生理の貧困」ムーブメントは一種のフェミニズム運動と呼べるまでに成長し、経済的問題だけでなく、それ以外の月経に関する非物質的な問題も顕在化した[81]。「生理の貧困」の問題は、「貧困への偏見」と「月経への偏見」という二重のタブーがある[80]。生理の貧困の生活体験を研究したアリソン・ブリッグスは、生活必需品の援助を受けることで着せられる汚名や、「月経に関する一般的なタブー」、社会が「月経は隠されるべきものだと決めてかかっている」ことも加わり、月経のある女性にとって「実際の身体的不快感だけでなく、面目を潰され、屈辱を受ける体験」となる、二重苦であると述べている[82]。
月経は女性特有の生理現象であるため、男性から隠されていることも少なくない[61]。そのため、欧米や日本での月経をめぐる活動でも、月経について語ることがタブー視されていることが、幾度となく問題視されている[61]。
月経の穢れ観は、地域によって早さに差はあるが、世界的に希薄化が進んでいる[77]。
また、月経観はジェンダーによる差があり、男性の月経観は女性とは異なるという調査結果もある[77]。
労働と生理休暇
[編集]就労している女性は月経に伴う症状を服薬で抑えたり我慢したりして仕事を続けるほか、病院に行ったり、生理休暇を利用したりすることもあり、健康経営上も重要なテーマである。日本の経済産業省は2019年(平成31年)3月、月経随伴症状による労働損失が年間4911億円、通院・医薬品代を含む社会経済的コストが6828億円とする推計値を公表した[3]。
生理休暇は日本の労働基準法の第68条で、生理日の就業がいちじるしく困難な女子が取得できる旨を定めている。
なお、近代以降において、生理休暇を法制化したのは日本が最初である[要出典][注釈 1]。これに対し、婦人差別撤廃条約批准以降は「母性保護措置ではないので、医学的に配慮が必要な場合を除き廃止すべきである」との指摘があるが、依然として「母性保護のため必要なので、現行のとおり存続とすべきである」という主張もあり、両者の意見は分かれたままになっている[83]。
多くの職場では男女双方が働いているが、月経について話題にすることはセクシャルハラスメント(セクハラ)と受け取られることがあり、女性従業員を気遣うつもりであっても躊躇するという声もあると産経新聞は報じている[84]。
広告
[編集]生理用品のCMでは、経血は青色や緑色の着色水で表現される。無色透明ではわかりにくく、赤だと生々しいという理由からである[要出典]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e 『生化学辞典』第2版、p.427 【月経周期】
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- 杉田映理「「生理の貧困」対策かジェンダー平等化か 日本における生理用品トイレ内無償提供のアクション・リサーチから考える」『日本文化人類学会研究大会発表要旨集 2022』第73巻、日本文化人類学会、2022年、A11、CRID 1390293401256150144、doi:10.14890/jasca.2022.0_a11。
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関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 生理痛と女性のからだの悩み 生理のミカタ バイエル薬品
- 『月経』 - コトバンク
- 『月経痛』 - コトバンク