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「インセンティブ (経済学)」の版間の差分

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'''インセンティブ'''({{lang-en-short|incentive}})は、人々の意思決定や行動を変化させるような要因のことをいう。'''誘因'''とも呼ぶ。
'''インセンティブ'''({{lang-en-short|incentive}})は、人々の意思決定や行動を変化させるような要因のことをいう。'''誘因'''、'''意欲刺激'''とも呼ぶ。


==インセンティブとリスク==
==インセンティブとリスク==

2017年2月19日 (日) 23:09時点における版

インセンティブ: incentive)は、人々の意思決定や行動を変化させるような要因のことをいう。誘因意欲刺激とも呼ぶ。

インセンティブとリスク

ある個人が保険に加入したとする。そのことは、その個人がもつ事故を避けようとするインセンティブを減少させる。このことをモラルハザードという。たとえば発生する損失を保険会社が全て負担すると仮定した場合、リスクゼロの顧客は損失を回避しようとするインセンティブを完全に喪失することが考えられる。このインセンティブとリスクの原理は、所得分配の平等がリスクの減少を伴うため、インセンティブと平等の問題とも関連している。

インセンティブと平等

所得分配の平等は、一般にはインセンティブを減少させ、経済全体のアウトプット(産出量)を減少させる。これをインセンティブと平等のトレードオフという。たとえば基数的効用を仮定し限界効用が逓減するとした場合には所得再分配策は肯定されるが、現実の政策としては所得の完全平等は一般に支持されない。これはインセンティブの減少による経済全体のアウトプットの減少を避けるためである。

インセンティブと市場の失敗

ある経済主体の活動がほかの経済主体の意思決定に影響を与えることを外部性という。特に、市場を通さないで影響を与える技術的外部性が存在する場合、市場メカニズムだけでは最適な状態を達成できなくなる。そこで、たとえば企業の発生させた公害のような負の外部性に対しては、課税(ピグー税)によって負のインセンティブを与えるメカニズムを加えることで、市場メカニズムを活用して外部性を解消することができるようになる。このような方法を内部化という。

警察や消防などの、準公共財(これに準じるものには情報財がある)は、人々にフリーライダーになろうとするインセンティブを与える。その結果、市場メカニズムだけでは当該の財の供給が過少となるという問題が発生する。そこで政府の徴収する租税によって公共サービスとしてこれを供給する。

共有の放牧地などの排除性を有しないが競合性は有するコモンプール財は、その望ましい量を超えて利用するインセンティブを人々に与える。そこで、たとえば放牧地を分割してその所有権を人々に与えることで、私的財となった放牧地は、過剰な利用から守られることになる。

インセンティブと所有権

所有者が自由にその財産を使ったり売ることのできる所有権は、その所有者に自己の 財産を維持・管理するインセンティブ(利潤動機)を与える。これに対して公共部門では、このようなインセンティブは機能しない。そのため、たとえば公営住宅の管理者は、民間の住宅の所有者と同等のインセンティブは持たないものと考えられる。

インセンティブと均衡

全ての経済主体がすでに最適な行動をとっており、自分の行動を変化させるインセンティブが存在しない場合にはじめて需要と供給均衡し得る。一方、需要と供給の調整の過程にある場合、価格の変化はそれを知った人々に対して需要量と供給量を変化させるインセンティブを与える。たとえば超過需要の下での価格の上昇は、需要量の減少と供給量の増大とをもたらすことになる。

インセンティブと競争

市場における競争は、それに直面する企業に対して効率性を高めるインセンティブを与える。

また企業には、参入障壁を構築することによって独占利潤の獲得を目指すインセンティブも存在する(レント・シーキングやブランドの構築など)。

さらに、利潤の存在自体が新規参入のインセンティブをもたらす。

公営企業は、少なくとも競争に直面しない場合には、民間企業に比べて非効率になるものと考えられる。

インセンティブと囚人のジレンマ

市場を支配している少数の寡占企業がカルテルを締結していたとする。個々の寡占企業は、自社だけ がカルテルを破ることによって、より高い利潤を得ることが可能である。そのため、合理的な経済主体としての寡占企業は、他社を裏切るインセンティブをもつ。そこで仮にすべての寡占企業が他社を裏切るほどに合理的(利己的)であれば、各社の利潤はかえって減少する。

参考文献

  • マンキュー『経済学ミクロ編』東洋経済新報社 2000年
  • スティグリッツ『入門経済学』東洋経済新報社 1999年