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'''日雇い'''(ひやとい)とは、[[雇用]]形態のひとつ。一日限りの[[有期労働契約]]でやとうこと。またはそのやとわれる人。[[法律]]上は、これより広い意味で用いられることもある<ref>広辞苑第四版</ref>。[[アルバイト]]との区別は曖昧である。
'''日雇い'''(ひやとい)とは、[[雇用]]形態のひとつ。一日限りの[[有期労働契約]]でやとうこと。またはそのやとわれる人。[[法律]]上は、これより広い意味で用いられることもある<ref>広辞苑第四版</ref>。[[アルバイト]]との区別は曖昧である。
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=== 雇用保険 ===
=== 雇用保険 ===
[[雇用保険法]]においては、被保険者である日雇労働者('''日々または30日以内の有期契約で雇用される者'''、第42条)であって、以下のいずれかに該当する者を'''日雇労働被保険者'''という(雇用保険法第43条1項)。
*[[雇用保険法]]については、以下では条数のみ記す。

雇用保険法においては、被保険者である日雇労働者('''日々または30日以内の有期契約で雇用される者'''、第42条)であって、以下のいずれかに該当する者を'''日雇労働被保険者'''という(第43条1項)。
*適用区域([[公共職業安定所]]までの交通が便利である区域)に居住し、[[雇用保険#適用事業|適用事業]]に雇用される者
*適用区域([[公共職業安定所]]までの交通が便利である区域)に居住し、[[雇用保険#適用事業|適用事業]]に雇用される者
*適用区域外の地域に居住し、適用区域内にある適用事業に雇用される者
*適用区域外の地域に居住し、適用区域内にある適用事業に雇用される者
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*認可を受けなかったため、日雇労働被保険者とされなくなった最初の月に離職し、失業した場合には、その失業した月の間における日雇労働求職者給付金の支給については、その者を日雇労働被保険者とみなす(第43条3項)。
*認可を受けなかったため、日雇労働被保険者とされなくなった最初の月に離職し、失業した場合には、その失業した月の間における日雇労働求職者給付金の支給については、その者を日雇労働被保険者とみなす(第43条3項)。


日雇労働者を主な対象とした[[雇用保険#失業等給付|失業等給付]]は、[[日雇労働求職者給付金]]である。また、[[雇用保険#移転費|移転費]]・[[雇用保険#求職支援活動費|求職支援活動費]]・[[雇用保険#教育訓練給付金|教育訓練給付金]](一般被保険者・高年齢被保険者でなくなった日から原則1年以内に限る。施行規則第101条の2の3)・[[雇用保険#常用就職支度手当|常用就職支度手当]]を受給できる場合がある。また[[雇用保険#二事業|雇用保険二事業]]の利用も可能である。
日雇労働者は、日雇労働被保険者となる要件を満たしたときは、その要件を満たすに至った日から'''5日以内'''に、日雇労働被保険者資格取得届を、管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない(施行規則第72条)。任意加入の認可を受けようとするときは、管轄公共職業安定所に'''出頭'''し、日雇労働被保険者任意加入申請書を管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない(施行規則第71条)。管轄公共職業安定所の長は、提出を受けて、あるいは認可をしたときは、'''日雇労働被保険者手帳'''(俗に言う「日雇手帳」「白手帳」「センター手帳」。以下、日雇手帳と略する)をその者に交付しなければならない(第44条)。日雇手帳の有効期間は、日雇労働被保険者となってから1年間である。有効期間経過後は1年ごとに手帳を更新する。
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日雇労働者を主な対象とした[[雇用保険#失業等給付|失業等給付]]は、[[#日雇労働求職者給付金|日雇労働求職者給付金]]である。また、[[雇用保険#移転費|移転費]]・[[雇用保険#求職支援活動費|求職支援活動費]]・[[雇用保険#教育訓練給付金|教育訓練給付金]](一般被保険者・高年齢被保険者でなくなった日から原則1年以内に限る。施行規則第101条の2の3)・[[雇用保険#常用就職支度手当|常用就職支度手当]]を受給できる場合がある。また[[雇用保険#二事業|雇用保険二事業]]の利用も可能である。

==== 日雇労働求職者給付金 ====
日雇労働者の生活を保障するため、日雇労働求職者給付金制度(いわゆる日雇雇用保険制度。雇用保険の失業等給付のうちの[[雇用保険#求職者給付|求職者給付]]のひとつ)が設けられている。支給を受けるにあたって'''年齢制限はない'''。したがって、「失業状態」であれば何歳であっても給付を受けることができる。

====== 普通給付 ======
日雇労働被保険者の失業の認定は日々その日の分について行われる(施行規則第75条1項)。支給を受けるためには、公共職業安定所に出頭し'''求職の申し込みを行った上で(第47条2項)、'''日雇手帳を提出する(出頭時間は公共職業安定所によって異なるが通常は朝7時から9時までの間、施行規則第75条6項)。同じ日の指定された時刻(おおむね朝11時ごろ)に再度公共職業安定所に出頭し、失業していたと認定された日数分の求職者給付を受けることとなる。なお、日雇労働者は通常就業地を転々とすることが多いので、自分の住所地を管轄する公共職業安定所でなくとも給付を受けることができる('''自ら選択する'''公共職業安定所において申し込みを行う。ただし日雇派遣労働者については、厚生労働省職業安定局長の定める公共職業安定所に限る)。天災その他やむを得ない理由で出頭できないときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して7日以内に認定を受けることができる。

給付を受けようとする月の前2月間において合計'''26日以上'''の日雇就労を適用事業所で行い、就業した事業所から日雇手帳に[[#雇用保険印紙|雇用保険印紙]]の貼付または[[印紙保険料納付計器]]の押捺を受けることにより、その数と納付額に応じて1月につき13日~17日分に相当する日雇労働求職者給付金を公共職業安定所から受けることができるものとされる(第45条)。

日雇労働求職者給付金(普通給付)の日額は、下記のとおり(第48条)。
* 第1級印紙保険料が'''24日分'''以上納付されているとき、日額7,500円
* 第1級印紙保険料及び第2級印紙保険料が合計して24日分以上納付されているとき、または第1級、第2級、第3級印紙保険料の順に選んだ24日分の印紙保険料の平均額が第2級印紙保険料の日額以上であるとき、日額6,200円
* 上記以外の場合、日額4,100円

給付を受けようとする月の前月、前々月の印紙の合計枚数について、給付を受けることのできる日数は下記のとおり(第50条1項)<ref>条文上の表記は「その者について納付されている印紙保険料が通算して28日分以下であるときは、通算して13日分を限度として支給し・・・印紙保険料が通算して28日分を超えているときは、通算して、28日分を超える4日分ごとに1日を13日に加えて得た日数分を限度として支給する。」</ref>。
* 26枚~31枚・・・給付を受けようとする月の最大給付日数13日
* 32枚~35枚・・・給付を受けようとする月の最大給付日数14日
* 36枚~39枚・・・給付を受けようとする月の最大給付日数15日
* 40枚~43枚・・・給付を受けようとする月の最大給付日数16日
* 44枚以上・・・給付を受けようとする月の最大給付日数17日

[[失業]]であった日については、公共職業安定所の開庁日でなくとも給付をうけることができる。職安の閉庁日(土曜、日曜および祝祭日)に失業した場合については、当該閉庁日の翌日から1か月以内であれば支給を受けることができる。各週(日曜日~土曜日)において、'''仕事に就かなかった最初の日'''(「不就労日」)'''については給付を受けることはできない'''(一般的な失業等給付における「待期」に相当する。第50条2項)。したがって、1週間で最大限給付を受けられる日数は6日分である。各週の最初に公共職業安定所に出頭した日に、「不就労届」を提出する必要がある。「不就労届」には、先述の「不就労日」および職安の閉庁日において失業していた日を記入する。「不就労日」については単に職業に就かなかった事実を確かめればよく、その日については労働の意思や能力は問われない。

日雇労働求職者給付金については、「失業状態」すなわち仕事に就く意思、能力があるにも関わらず仕事に就くことができない状態において支給されるのであって、単に印紙を貼付した日雇手帳を所有しているということのみをもって支給されるものではない。したがって、日雇就労という雇用形態が存在しないとされる地域の職安や、自己の就労現場と無関係の職安に出頭した場合については、「失業状態」にないという理由で給付を断られることがある。おおよそ仕事に就き得ない健康状態(例えば、重い[[病気]]やけが、[[産前産後休業|産前産後]]期間など)であるときについても、「失業状態」ではないという理由で支給されない。

====== 特例給付 ======
日雇労働被保険者の中には、ある期間は比較的失業することなく就業し、他の特定の期間に継続的に失業する者がある。このような日雇労働被保険者が失業した場合において、次のいずれにも該当するときは、管轄公共職業安定所長に申し出て(普通給付とは異なり、住所地の公共職業安定所でしか支給を受けられない)、特例給付による日雇労働求職者給付金の支給を受けることができる(第53条1項)。
* 継続する6月間(基礎期間)に、'''印紙保険料を各月11日分以上、かつ、通算して78日分以上'''納付している。
* 基礎期間のうち後の5月間に普通給付又は特例給付による日雇労働求職者給付金の支給を受けていない。
* 基礎期間の最後の月の翌月以後2月間に、普通給付による日雇労働求職者給付金の支給を受けていない。

特例給付を受ける申出は、基礎期間の最後の月の翌月以後4月の期間内に、管轄公共職業安定所長に日雇手帳を提出して行う(第53条2項)。申出をした日から起算して4週間に1回ずつ、管轄公共職業安定所で失業の認定を受ける。したがって、認定日には最大で24日分(4週×6日)支給されることになる。基礎期間の最後の月の翌月以後4月の期間内(受給期間内)の失業している日につき、通算して60日分を限度として支給される(第54条1号)。なお、基本手当と同様に、失業の認定日の変更及び証明書による認定も行える。

日雇労働求職者給付金(特例給付)の日額は、下記のとおり(第54条2号)。
* 第1級印紙保険料が'''72日分'''以上納付されているとき、日額7,500円
* 第1級印紙保険料及び第2級印紙保険料が合計して72日分以上納付されているとき、または第1級、第2級、第3級印紙保険料の順に選んだ72日分の印紙保険料の平均額が第2級印紙保険料の日額以上であるとき、日額6,200円
* 上記以外の場合、日額4,100円

==== 印紙保険料 ====
印紙保険料とは、事業主が一般保険料のほかに、日雇労働被保険者に係る雇用保険料として納付するものである。

日雇労働被保険者は、事業主に使用されるたびに、その所持する日雇手帳を提出しなければならない。[[賃金]]の支払いを受ける都度、就労1日ごとに1枚の印紙の貼付または押捺を日雇手帳に受ける。これを事業主の側から見れば、日雇労働被保険者を使用するたびに、日雇手帳を提出させ、賃金を支払う都度(賃金が後払いの場合、印紙の貼付・消印を行う日は日雇労働被保険者を使用した日ではなく、現実の賃金支払日である)、日雇手帳に印紙の貼付・消印を行うことにより、印紙保険料を納付しなければならない。

'''雇用保険印紙'''は、支払われた賃金額に応じて1級から3級に分類される。負担割合は労使折半である。[[労働保険の保険料の徴収等に関する法律#請負事業の一括|請負事業の一括]]により元請負人が事業主とされる場合であっても、元請ではなく下請が事業主として負担する。日雇労働被保険者が1日において2以上の事業所に使用される場合においては、初めにその者を使用する事業主が納付義務を負うこととされている。
* 第1級印紙保険料(日額) 176円 日給11,300円以上の場合
* 第2級印紙保険料(日額) 146円 日給8,200円以上11,300円未満の場合
* 第3級印紙保険料(日額) 96円 日給8,200円未満の場合

事業主は、雇用保険印紙を購入しようとするときは、あらかじめ雇用保険印紙購入通帳交付申請書を所轄公共職業安定所長に提出して、雇用保険印紙購入通帳(印紙通帳)の交付を受けたうえで、必要事項を記入して、[[日本郵便株式会社]]の営業所([[郵便]]の業務を行うものに限る)に提出しなければならない。印紙通帳の有効期間は、交付日の属する保険年度に限られ、通常毎年3月中に新年度の印紙通帳の交付を受けて有効期間を更新する。

雇用保険に係る保険関係が消滅したとき・日雇労働被保険者を使用しなくなったとき(あらかじめ所轄公共職業安定所長の確認が必要)、雇用保険印紙が変更されたとき(6月以内)は、事業主は雇用保険印紙の買い戻しを申し出ることができる。なお、事業主は、雇用保険印紙を[[譲渡]]し、又は譲り受けてはならない(罰則はない)。また事業主その他正当な権限を有する者を除いては、何人も消印を受けない雇用保険印紙を所持してはならない。

事業主は、日雇労働被保険者を使用した場合には、印紙保険料の納付に関する帳簿を備えて、毎月におけるその納付状況を記載し、かつ翌月末日までに当該納付状況を所轄公共職業安定所長を経由して所轄[[都道府県労働局]]歳入徴収官に報告しなければならない。印紙の受け払いのない月についても同様である。

事業主は、印紙保険料に係る事務を、[[労働保険事務組合]]に委託することは認められていない。したがって雇用保険に係る諸事務を一括して労働保険事務組合に委託している場合であっても、印紙の購入・貼付・消印は事業主が行わなければならない。

事業主が印紙保険料の納付を怠った場合には、政府(所轄都道府県労働局歳入徴収官に事務委任)は調査を行い、納付すべき印紙保険料の額を決定し('''認定決定'''、徴収法第25条1項)、当該調査決定した日から20日以内の休日でない日を納期限と定め、'''納入告知書'''にて事業主に通知する。さらに、事業主に正当な理由がないと認められる場合には、決定された印紙保険料の25%に相当する額の'''追徴金'''(徴収法第25条2項、3項)を徴収する(計算した追徴金の額が1,000円未満の場合は徴収しない)。この場合、政府はその通知を発する日から起算して30日を経過した日を納期限をして、事業主に対し追徴金の額及び納期限について通知しなければならない。認定決定された印紙保険料・追徴金については、[[口座振替]]や印紙の貼付・消印による納付はできず、現金で直接日本銀行(本店、支店、代理店、歳入代理店)又は所轄都道府県労働局収入官吏に納付しなければならない。なお、「正当な理由」に、単に日雇労働被保険者が日雇手帳を提出しなかったことにより印紙の貼付・消印ができなかったという理由は含まれない<ref>提出しなかった場合に、その日に手帳を持参させることが困難で、かつその後においても手帳に印紙を貼付する機会がなかったために印紙を貼付できなかった場合は「正当な理由」あり、とされる。</ref>。

事業主が印紙の貼付・消印を行わなかった場合、帳簿の未備え・虚偽記載・虚偽報告をした場合は、6月以下の[[懲役]]または30万円以下の[[罰金]]に処せられる。

==== 給付制限 ====
日雇労働求職者給付金の支給を受けることができる者が、'''偽りその他不正の行為'''により求職者給付又は就職促進給付の支給を受け、又は受けようとしたときは、やむをえない場合を除き、'''その支給を受け、又は受けようとした月及びその月の翌月から3ヶ月間'''は、日雇労働求職者給付金は支給されない。なお、やむをえない理由がある場合には、日雇労働求職者給付金の全部または一部を支給することはできる(第52条3項)。

日雇労働求職者給付金の支給を受けることができる者が、正当な理由なく'''公共職業安定所の紹介する業務に就くことを拒んだ'''ときは、その拒んだ日から起算して'''7日間'''は、日雇労働求職者給付金は支給されない(第52条1項)。なお、[[雇用保険#被保険者の種類|一般被保険者]]のような、公共職業訓練等の受講拒否・職業指導拒否・離職理由による給付制限は、日雇労働被保険者には適用されない。、

日雇手帳を所持する者の中には、実際には日雇労働を行わず、雇用保険印紙を適用事業所やそこから横流しされた売人などから「購入」して不正に給付を受けている者も相当数いるとされ、問題となっている。不正受給が発覚した場合は当然に受給資格を失い、職安に手帳を没収されることもある。

==== 基本手当等との調整 ====
日雇労働求職者給付金の受給資格者が、[[雇用保険#基本手当|基本手当]]の支給を受けたときは、その支給の対象となった日については日雇労働求職者給付金が支給されず、日雇労働求職者給付金の支給を受けたときは、その支給の対象となった日については基本手当は支給されない(第46条)。つまり、基本手当と日雇労働求職者給付金はどちらか一方しか支給されないのである。高年齢求職者給付金と日雇労働求職者給付金についてもどちらか一方しか支給されない(第37条の2)。また普通給付と特例給付の併給もできない。


== 日雇い派遣 ==
== 日雇い派遣 ==

2017年9月14日 (木) 01:55時点における版

日本の雇用者
(総務省統計局、2019年度労働力調査[1]
雇用形態 万人
役員 335
期間の定めのない労働契約 3,728
1年以上の有期契約 451
1か月~1年未満の有期契約(臨時雇) 763
1か月未満の有期契約(日雇い 15
期間がわからない 239

日雇い(ひやとい)とは、雇用形態のひとつ。一日限りの有期労働契約でやとうこと。またはそのやとわれる人。法律上は、これより広い意味で用いられることもある[2]アルバイトとの区別は曖昧である。

健康保険法においては2ヵ月以内、雇用保険法においては1ヵ月以内の有期労働契約と定義されている。

被用者保険(社会保険)

労働者災害補償保険は、すべての労働者に適用される。

健康保険

健康保険法において「日雇労働者」とは、以下のいずれかに該当する者をいう。一般の被保険者としての適用を除外されている者の一部が該当する。

  • 臨時に使用される者であって、日々雇い入れられる者(同一の事業所において1月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)。
    • 「1月」の計算においては、事業所の公休日は労務に服したものとみなして計算する。
  • 臨時に使用される者であって、2月以内の期間を定めて使用される者(同一の事業所において、所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く)。
  • 季節的業務に使用される者(継続して4月を超えて使用されるべき場合を除く)。
  • 臨時的事業の事業所に使用される者(継続して6月を超えて使用されるべき場合を除く)。

雇用保険

雇用保険法においては、被保険者である日雇労働者(日々または30日以内の有期契約で雇用される者、第42条)であって、以下のいずれかに該当する者を日雇労働被保険者という(雇用保険法第43条1項)。

  • 適用区域(公共職業安定所までの交通が便利である区域)に居住し、適用事業に雇用される者
  • 適用区域外の地域に居住し、適用区域内にある適用事業に雇用される者
  • 適用区域外の地域に居住し、厚生労働大臣が指定する適用区域外の地域にある適用事業に雇用される者
  • 上記の者のほか、日雇労働被保険者の任意加入の申請をし、公共職業安定所長の認可を受けた者

日雇労働被保険者であり、同じ事業主の適用事業に以前2か月間にわたって各月18日以上雇用された者、又は同一の事業主の適用事業に連続して31日以上雇用された場合であっても、日雇労働被保険者資格継続の認可の申請を行い公共職業安定所長の認可を受けることにより、引き続き日雇労働被保険者となることができる(第43条2項)。認可を受けなかった場合、

  • 各月に18日以上雇用された2月の初日・同一の事業主の適用事業に雇用される日数が連続して31日以上に至った日(切替日)に65歳未満であれば、一般の被保険者又は短期雇用特例被保険者となる。
  • 切替日に65歳以上であれば、高年齢被保険者又は短期雇用特例被保険者となる。
  • 認可を受けなかったため、日雇労働被保険者とされなくなった最初の月に離職し、失業した場合には、その失業した月の間における日雇労働求職者給付金の支給については、その者を日雇労働被保険者とみなす(第43条3項)。

日雇労働者を主な対象とした失業等給付は、日雇労働求職者給付金である。また、移転費求職支援活動費教育訓練給付金(一般被保険者・高年齢被保険者でなくなった日から原則1年以内に限る。施行規則第101条の2の3)・常用就職支度手当を受給できる場合がある。また雇用保険二事業の利用も可能である。

日雇い派遣

日雇い派遣とは、派遣元事業主がその雇用する日雇労働者(日々又は30日未満の期間を定めて雇用される労働者)について労働者派遣を行うことである(労働者派遣法第35条の4)。2012年10月の改正法施行により、以下の例外を除き、日雇い派遣は禁止された。

  • その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務のうち、労働者派遣により日雇労働者を従事させても
    • 当該日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務として政令で定める業務について労働者派遣をする場合(派遣法施行令第4条1~18号に定める業務)
    • 雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合(60歳以上、昼間学生、世帯年収500万円以上等)

呼び名から1日を期間とした契約を思わせる記述が書籍やマスメディアで散見されるが誤りである。この形態は「登録型派遣」「スポット派遣」「ワンコール派遣」「ワンコールワーカー」と呼ばれている。携帯電話と電子メールを通じて登録し、呼出を受け派遣されることもある。 手軽な登録と利用者のライフスタイルに融通が利きやすいことから会社員の副業、学生、主婦、定年退職後の高齢者、自営業者等幅広い層が利用している。また、何らかの理由により親元を離れた若年層や、家賃を払えずにアパートを退去させられた失業者が、漫画喫茶ネットカフェなどで寝食しながら「日雇い派遣」を利用する場合(ネットカフェ難民と呼ばれる)こともある。

日雇い雇用の問題点

日雇い派遣労働者は、以下の2つに大別できる[3]

  1. 副業感覚で、気楽に働きたい人
  2. 正社員として働く意思はあるものの、環境や条件などが折り合わず、やむなく日雇い労働者として働く人

社会問題として扱われるのは、特に2.の方となる[3]

  • 日雇い労働者は、正社員に比べ景気動向による雇用調整の影響を受けやすい。
  • グッドウィルの法令違反で社会問題として認識されるようになった日雇い派遣問題に、日本政府は労働者派遣法の改正を検討していたが、「単に派遣が減って、アルバイトが増えるだけ」といった指摘があった[4]
  • 日雇い派遣労働者の場合も、「日雇手帳」のような保険制度の適用範囲内である[5]が、国や派遣会社からの周知が徹底されていない。

2013年2月25日に、自民党参議院議員で厚生労働大臣政務官丸川珠代と、ヒューマントラスト株式会社代表取締役の阪本美貴子日本経済新聞に掲載された広告上で対談し、その上で、丸川は日雇い派遣禁止の見直しを示唆した[6]

更に、政府の規制改革会議は2013年9月12日、日雇い派遣の再解禁を検討する方向性を決めた[7]9月25日、日雇い派遣解禁を求める内容の意見書案をまとめた。10月4日の規制改革会議に提出[8]。しかし、議論がまとまらず、2015年の派遣法改正時には日雇い派遣の解禁は盛り込まれなかった。

脚注

  1. ^ 労働力調査 基本集計 全都道府県 結果原表 全国 年次 2019年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口』(レポート)総務省統計局、2019年1月31日、基本集計 第II-10表https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000000110001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001040276&tclass2=000001040283&tclass3=000001040284&result_back=1 
  2. ^ 広辞苑第四版
  3. ^ a b 山田久『雇い派遣禁止・派遣規制強化は妥当か』株式会社日本総合研究所
  4. ^ 「グッドウィル廃業 「日雇い」規制強化へ 禁止範囲焦点に」『産経新聞』2008年6月26日付配信
  5. ^ 日雇で働く方には特別の雇用保険があります厚生労働省
  6. ^ しんぶん赤旗 2013年2月26日 政治欄
  7. ^ “派遣法見直し年内に 規制改革会議 「日雇い派遣」も検討”. しんぶん赤旗. (2013年9月13日). http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-09-13/2013091302_02_1.html?_tptb=032 2013年9月13日閲覧。 
  8. ^ しんぶん赤旗 2013年9月26日 2面

関連書籍

  • 派遣ユニオン『日雇い派遣 グッドウィル、フルキャストで働く』(旬報社)ISBN 9784845110421

関連項目