「緑藻」の版間の差分
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{{otheruses|一般名としての緑藻|多くの緑藻を含む門|緑藻植物門|さらに緑藻植物門に含まれる綱の1つ|緑藻綱}} |
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{{生物分類表 |
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{{multiple image |
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| 色 = lightgreen |
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| total_width = 250 |
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| 画像 = [[Image:Haeckel Melethallia.jpg|250px]] |
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| align = right |
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| 画像キャプション = "Melethallia" from [[エルンスト・ヘッケル|Ernst Haeckel]]'s<br />''[[Kunstformen der Natur]]'', 1904 |
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| direction = vertical |
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| caption_align = left |
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| ドメイン = [[真核生物]] [[:w:Eukaryota|Eukaryota]] |
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| image1 = Mikrofoto.de-volvox-4.jpg |
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| 界 = [[アーケプラスチダ]] {{sname||Archaeplastida}}<br/>([[植物界]] {{sname||Plantae}}) |
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| caption1 = [[オオヒゲマワリ]]([[緑藻綱]])。群体性(多細胞性)。 |
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| 亜界 = [[緑色植物亜界]] [[:w:Viridiplantae|Viridiplantae]] |
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| image2 = Chlorella_vulgaris_NIES2170.jpg |
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| 門 = [[緑藻植物門]] [[:w:Chlorophyta|Chlorophyta]] |
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| caption2 = [[クロレラ]]([[トレボウクシア藻綱]])。単細胞性。 |
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| 綱 = '''緑藻綱 [[:w:Chlorophyceae|Chlorophyceae]]'''<br /><small>Stewart and Mattox, 1984</small> |
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| image3 = The_freshwater_alga_Spirogyra.jpg |
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| 下位分類名 = 下位分類 |
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| caption3 = [[アオミドロ]]([[接合藻綱]])。糸状性。 |
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| 下位分類 = |
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| image4 = Caulerpa racemosa algae.jpg |
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;Melkonian (1990) |
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| caption4 = イワヅタ属([[アオサ藻綱]])。多核嚢状。 |
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* [[クラミドモナス目]] [[:w:Chlamydomonadales|Chlamydomonadales]] |
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* [[ドナリエラ目]] [[:w:Dunaliellales|Dunaliellales]] |
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* [[ボルボックス目]] [[:w:Volvocales|Volvocales]] |
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* [[ヨツメモ目]] [[:w:Tetrasporales|Tetrasporales]] |
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* [[クロロコックム目]] [[:w:Chlorococcales|Chlorococcales]] |
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* [[クロロサルシナ目]] [[:w:Chlorosarcinales|Chlorosarcinales]] |
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* [[ヨコワミドロ目]] [[:w:Sphaeropleales|Sphaeropleales]] |
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* [[ミクロスポラ目]] [[:w:Microsporales|Microsporales]] |
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* [[サヤミドロ目]] [[:w:Oedogoniales|Oedogoniales]] |
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* [[シリンドロカプサ目]] [[:w:Cylindrocapsales|Cylindrocapsales]] |
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* [[カエトフォラ目]] [[:w:Chaetophorales|Chaetophorales]] |
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| 和名 = 緑藻 |
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| 英名 = green algae |
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'''緑藻'''(りょくそう、{{lang-en-short|Green algae}})は、[[緑色植物]]のうち、[[陸上植物]]([[コケ植物]]と[[維管束植物]])を除いたものに対する一般名である。[[クロレラ]]や[[イカダモ]]、[[ミカヅキモ]]の様な微細藻から、[[アオサ]]や[[マリモ]]、[[カサノリ]]の様な大型藻まで含まれる。系統的には[[単系統]]ではなく、一部の緑藻([[アオミドロ]]など)は、他の緑藻に対してよりも陸上植物に近縁である([[#tree|系統樹参照]])。そのため現在では、この意味での緑藻を[[分類群]]として扱うことはない。ただし緑藻の多くが[[緑藻植物門]]([[学名]]: {{Sname||Chlorophyta}})に、さらにその一部が[[緑藻綱]](学名: {{Sname||Chlorophyceae}})に分類される。日本語では、これら分類群の名前(緑藻植物門、緑藻綱) と、一般名としての緑藻が混同されることがあり、それを避けるために一般名としての緑藻(本項で扱っている意味での緑藻)に対して「'''緑色藻'''(りょくしょくそう)」の名が使われることもある<ref name="千原1999緑色">{{cite book|author=渡邊 信 & 中山 剛|year=1999|chapter=緑色植物門|editor=千原 光雄 (編)|title=バイオディバーシティ・シリーズ (3) 藻類の多様性と系統|publisher=裳華房|isbn=978-4785358266|pages=260–267}}</ref><ref name="Iwasa2013緑色藻">{{cite book|author=巌佐 庸, 倉谷 滋, 斎藤 成也 & 塚谷 裕一 (編)|year=2013|chapter=緑色藻|editor=|title=岩波 生物学辞典 第5版|publisher=岩波書店|isbn=978-4000803144|pages=1471–1472}}</ref>。 |
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緑藻の中には、[[単細胞生物|単細胞]]のものから、[[群体]]、[[多細胞生物|多細胞]]、[[多核体|多核嚢状]]のものまで多様な種が含まれる(右図)。ただし多細胞であっても、陸上植物にみられるほどの複雑な[[組織]]・[[器官]]分化はみられない。[[クロロフィル]]''a''と''b''を含む2重膜に囲まれた[[色素体]]([[葉緑体]])をもち、[[デンプン]]を色素体内に貯蔵する。[[有性生殖]]様式は多様であるが、[[胚]] (母体中に保持された、接合子から発生した多細胞の幼体) をもつことはない。海から淡水まで水域に分布するものが多いが、土壌や岩上など陸域に生育するものもいる。また塩湖や氷雪など特殊環境に生育する種も知られている。[[地衣類]]や[[繊毛虫]]、[[ヒドラ]]などに[[共生]]している種もいる。緑藻の中には、[[アオノリ]]や[[クロレラ]]など食用や健康食品として利用されている例がある。 |
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# 緑色の[[光合成色素]]を持つ[[藻類]]。非常に多彩な生物をその中に含んでいる。2.のほか、[[ストレプト植物]]の[[車軸藻綱]]および[[接合藻綱]]も含む。'''緑藻類'''とも。 |
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# [[緑色植物亜界]]'''[[緑藻植物門]]'''のこと。 |
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# 緑色植物亜界緑藻植物門'''緑藻綱'''のこと。 |
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==特徴== |
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===体制=== |
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'''緑藻'''(りょくそう)とは、伝統的には、[[藻類]]全体を[[褐藻]]、[[紅藻]]、緑藻等に分けた場合のひとつを意味していたが、現在では、[[緑色植物亜界]][[緑藻植物門]]緑藻綱の[[タクソン]]を意味することも多い。すなわち、広義と狭義があり注意を要する。狭義緑藻以外の緑色植物亜界の藻類は、緑色藻類などと言って言い分ける場合もある。 |
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緑藻の栄養体 (通常時の体) の体制 (体のつくり) は極めて多様であり、[[単細胞生物|単細胞]]、[[群体]]、[[多細胞生物|多細胞]]、[[多核体|多核嚢状]]などがある<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Hirose1972">{{cite book|author=廣瀬 弘幸|year=1972|chapter=緑藻綱、輪藻綱|editor=|title=藻類学総説|publisher=内田老鶴圃新社|isbn=|pages=415–506}}</ref><ref name="Graham2008">{{cite book|author=Graham, J.E., Wilcox, L.W. & Graham, L.E. |year=2008|title=Algae|publisher=Benjamin Cummings|isbn=978-0321559654|pages=353–485}}</ref><ref name="Lee2008">{{cite book|author=Lee, R. E.|year=2012|chapter=Chlorophyta|editor=|title=Phycology|publisher=Cambridge University Press|isbn=9780511812897|pages=139–237}}</ref>。また栄養体に[[鞭毛]]をもつものもいる。このように多様な体制は、以下のように類別できる。古くは、このような体制の系列に応じた進化仮説が一般的に受け入れられており、これに基づいた分類体系が用いられていた ([[#系統と分類|下記参照]])。 |
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====鞭毛性単細胞〜群体==== |
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広義には[[光合成色素]]として[[クロロフィル]]aとbを含んでいる藻類を指す。[[海藻]]として出現するものもあれば、[[単細胞生物]]となっているものもある。また、淡水産のものも多く、陸上生活のものもある。大きいものでは[[ミル (緑藻)|ミル]]のように 1メートルにも達する樹状のもの、[[アオサ]]のように葉状のもの、[[アオミドロ]]のような糸状のもの、[[ミカヅキモ]]のような単細胞のものまでがある。また、体制としてもアオサは平面的な多細胞体、アオミドロは糸状の細胞列からなり、ミカヅキモのような単細胞体、[[クンショウモ]]のような[[群体|細胞群体]]、ミルや[[カサノリ]]のような[[多核体]]までを含む。[[車軸藻類]]も含めれば、立体的な多細胞体までが含まれることになる。光合成色素の他に、遊走細胞が鞭状[[鞭毛]]を複数持つことが特徴としてあげられる。 |
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緑藻の中には、栄養細胞が鞭毛をもち遊泳するものがいる<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Hirose1972" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /> ('''下図''')。その多くは'''単細胞性''' (unicellular) であり、[[クラミドモナス]]属 ({{Snamei||Chlamydomonas}};'''下図''') や[[ドナリエラ|ドゥナリエラ]]属 ({{Snamei||Dunaliella}})、ヘマトコックス属 ({{Snamei||Haematococcus}};'''下図''') など[[緑藻綱]][[オオヒゲマワリ目]]に属するものが多いが ('''下図''')、[[プラシノ藻]]と総称される緑色植物の初期分岐群の中にも、[[マミエラ目|ミクロモナス属]] ({{Snamei||Micromonas}}) や[[ネフロセルミス藻綱|ネフロセルミス属]] ({{Snamei||Nephroselmis}})、[[クロロデンドロン藻綱|テトラセルミス属]] ({{Snamei||Tetraselmis}}) など例が少なくない<ref name="Graham2008" />。[[ストレプト植物]] ([[陸上植物]]につながる系統群) の中では、唯一[[メソスティグマ藻綱|メソスティグマ属]] ({{Snamei||Mesostigma}}) が単細胞鞭毛性である<ref name="Graham2008" />。一方、[[オオヒゲマワリ目]]の中には[[ゴニウム]]属 ({{Snamei||Gonium}};'''下図''')、[[パンドリナ]]属 ({{Snamei||Pandorina}})、[[オオヒゲマワリ]]属 (ボルボックス属;{{Snamei||Volvox}};'''下図''') など'''群体性''' (colonial) である種も含まれる<ref name="千原1999緑色" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /> ('''下図''')。これらの"群体"は個体としての統一性をもち細胞分化を示すため、"多細胞体" ととして扱われることも多い<ref name="Arakaki2013">{{cite journal|author=Arakaki, Y., Kawai-Toyooka, H., Hamamura, Y., Higashiyama, T., Noga, A., Hirono, M. ... & Nozaki, H.|year=2013|title=The simplest integrated multicellular organism unveiled|journal=PLoS One|volume=8|issue=12|pages=e81641|doi=}}</ref><ref name="Herron2016">{{cite journal|author=Herron, M. D.|year=2016|title=Origins of multicellular complexity: ''Volvox'' and the volvocine algae|journal=Molecular Ecology|volume=25|issue=6|pages=1213-1223|doi= 10.1111/mec.13551}}</ref>。また[[アオサ藻綱]]のウミイカダモ属 ({{Snamei||Oltmannsiellopsis}}) の中にも、鞭毛性の単純な群体を形成する種がいる<ref name="Chihara1986">{{cite journal|author=Chihara, M., Inouye, I. & Takahata, N.|year=1986|title=''Oltmannsiellopsis'', a new genus of marine flagellate (Dunaliellaceae, Chlorophyceae)|journal=Archiv für Protistenkunde|volume=132|issue=4|pages=313-324|doi=10.1016/S0003-9365(86)80026-4}}</ref>。 |
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{{multiple image |
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| total_width = 700 |
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| align = center |
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| caption_align = left |
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| image1 = Chlamydomonas_globosa_-_400x_(13263097835).jpg |
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| caption1 = 鞭毛性単細胞の[[クラミドモナス]]類 ([[緑藻綱]]). |
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| image2 = Haematococcus pluvialis - Motile stage.jpg |
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| caption2 = 鞭毛性単細胞のヘマトコックス属 ([[緑藻綱]]). |
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| image3 = Gonium_pectorale_EPA.jpg |
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| caption3 = 鞭毛性群体の[[ゴニウム]]属 ([[緑藻綱]]). |
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| image4 = Mikrofoto.de-volvox-8.jpg |
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| caption4 = 鞭毛性群体の[[ボルボックス|オオヒゲマワリ]]属 ([[緑藻綱]]). |
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====不動性単細胞〜群体==== |
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近年の研究では、[[種子植物]]を始めとする陸上植物は、緑藻と共通の祖先を持つか、或いは緑藻の直系の子孫にあたる、とする説が有力になっている。これにより、[[コケ植物]]や[[維管束植物]]と[[単系統]]を構成することから、これらを合わせて[[植物界]]に含めることも多いが、高校生物などでよく知られる[[リン・マーギュリス|マーグリス]]の[[五界説]]にて、緑藻を[[原生生物界]]に所属させることもある。 |
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緑藻の中には、栄養体が明瞭な運動能を欠く'''単細胞性'''または'''群体性'''であるものが多く知られている<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Hirose1972" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /> ('''下図''')。ふつう鞭毛を欠くが、ヨツメモ属 ({{Snamei||Tetraspora}};[[緑藻綱]]) のように非運動性の鞭毛 (偽鞭毛、pseudocilium, pseudoflagellum) をもつものもいる。単細胞性では、クロレラ属 ({{Snamei||Chlorella}};[[トレボウクシア藻綱]]) やクロロコックム属 ({{Snamei||Chlorococcum}};[[緑藻綱]]) など球形であるものが多いが、テトラエドロン属 ({{Snamei||Tetraedron}};[[緑藻綱]];'''下図''') のように多面体のものや、[[ミカヅキモ]]属 ({{Snamei||Closterium}};[[接合藻]]) のように紡錘形のもの、アワセオウギ属 ({{Snamei||Micrasterias}};[[接合藻]];'''下図''') のようにさらに複雑な形をしたものもいる。また群体の形式としては、ヨツメモ属のように寒天質基質内に多数の細胞が散在している'''パルメラ状群体''' (palmelloid colony;'''下図''') や、クロロキブス属 ({{Snamei||Chlorokybus}};[[クロロキブス藻綱]]) のように複数の細胞が3次元的に密着している'''サルシナ状群体''' (sarcinoid colony)、プラシノクラドゥス属 ({{Snamei||Prasinocladus}};[[クロロデンドロン藻綱]]) のように樹状になった細胞外被の先端に細胞が位置する'''樹状群体''' (dendroid colony;'''下図''') などがある<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。また緑藻によく見られる群体様式として'''定数群体''' (coenobium, ''[[複数形|pl.]]'' coenobia) がある。定数群体では、特定数 (基本的に2のn乗個) の細胞が特定の配列で配置しており、[[イカダモ]]類 ('''下図''')、[[クンショウモ]]類 ([[緑藻綱]])、テトラスツルム属 ({{Snamei||Tetrastrum}};[[トレボウクシア藻綱]]) などに見られる。イカダモ類は培養下では単細胞で増殖するが[[ミジンコ]]などの捕食者混在下では定数群体を形成することが報告されており、定数群体形成は被食防御のためであると考えられている<ref name="Hessen1993">{{cite journal|author=Hessen, D. O. & Van Donk, E.|year=1993|title=Morphological changes in ''Scenedesmus'' induced by substances released from ''Daphnia''|journal=Archiv fur Hydrobiologie|volume=127|issue=|pages=129-129|doi=}}</ref><ref name="Lürling2003">{{cite journal|author=Lürling, M.|year=2003|title=The effect of substances from different zooplankton species and fish on the induction of defensive morphology in the green alga ''Scenedesmus obliquus''|journal=Journal of Plankton Research|volume=25|issue=8|pages=979-989|doi=10.1093/plankt/25.8.979}}</ref>。 |
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{{multiple image |
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| total_width = 800 |
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| align = center |
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| caption_align = left |
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| image1 = Tetraedron EPA.jpg |
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| caption1 = 不動性単細胞のテトラエドロン属 ([[緑藻綱]]). |
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| image2 = Micrasterias_americana_3.jpg |
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| caption2 = 不動性単細胞のアワセオウギ属 ([[接合藻]]). |
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| image3 = Kirchneriella_lunaris_EPA.jpg |
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| caption3 = パルメラ状群体であるキルクネリエラ属 ([[緑藻綱]]). |
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| image4 = Prasinocladus_lubricus_as_Chlorodendron_subsalsum.jpg |
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| caption4 = 樹状群体であるプラシノクラドゥス属 ([[クロロデンドロン藻綱]]). |
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| image5 = Scenedesmus_dimorphus.jpg |
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| caption5 = 定数群体である[[イカダモ]]類 ({{Snamei||Tetradesmus}}) ([[緑藻綱]]). |
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}} |
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====多細胞性==== |
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==下位分類群== |
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一部の緑藻は'''多細胞性''' (multicellular) であり、複数の細胞が密接してひとまとまりの体を形成している<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Hirose1972" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /> ('''下図''')。ただし群体性との明瞭な区分は難しい。多細胞性の緑藻の多くは'''糸状性''' (filamentous) であり、[[ヒビミドロ属]] ([[アオサ藻綱]])、[[サヤミドロ属]] ([[緑藻綱]])、[[アオミドロ]] ([[接合藻綱]];'''下図''') のように無分枝であるものや、[[スミレモ属]] ([[アオサ藻綱]]) やツルギミドロ属 ([[緑藻綱]];'''下図''')、コレオケーテ属 ([[コレオケーテ藻綱]]) のように分枝するものがある。またシオグサ類 ([[アオサ藻綱]]) のように大型の多核細胞からなる糸状体は特に多核有隔性 (siphonocladous) とよばれることがある<ref name="Coneva2015">{{cite journal|author=Coneva, V. & Chitwood, D. H.|year=2015|title=Plant architecture without multicellularity: quandaries over patterning and the soma-germline divide in siphonous algae|journal=Frontiers in Plant Science|volume=6|issue=|pages=287|doi=10.3389/fpls.2015.00287}}</ref> ('''下図''')。[[ヒトエグサ]]、[[アオサ]] ('''下図''')、[[アオノリ]] ([[アオサ藻綱]])、[[カワノリ]] ([[トレボウクシア藻綱]]) などは細胞層からなる葉状 (膜状) または管状の体をもつ。[[シャジクモ類]]は柔組織性の節部と巨大な節間細胞の繰り返しからなる特異な多細胞体をもつ<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /> ('''下図''')。多くの場合、陸上植物のような原形質連絡は見られないが、[[アオサ藻綱]][[スミレモ目]]、[[緑藻綱]][[カエトフォラ目]]と[[サヤミドロ目]]、[[コレオケーテ藻綱]]、[[車軸藻類|シャジクモ綱]]は原形質連絡を伴う多細胞体を形成する<ref name="Graham2008" />。ただし陸上植物に見られるような複雑な組織・器官分化を伴う多細胞体をもつものは知られていない。 |
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以下は狭義緑藻の下位分類について記載する。広義緑藻に関しては、[[緑藻植物門]]等を参照のこと。 |
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{{multiple image |
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| align = center |
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| caption_align = left |
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| image1 = Spirogyra_(248_00)_Native_preparation.jpg |
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| caption1 = 無分枝糸状性の[[アオミドロ]]属 ([[接合藻]]). |
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| image2 = Draparnaldia.jpg |
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| caption2 = 分枝糸状性のツルギミドロ属 ([[緑藻綱]]). |
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| image3 = Dictyosphaeria_cavernosa.jpg |
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| caption3 = 大型の多核細胞からなる多核有隔性であるキッコウグサ属 (アオサ藻綱). |
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| image4 = Meersalat-Ulva-lactuca.jpg |
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| caption4 = 葉状性の[[アオサ]]属 ([[アオサ藻綱]]). |
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| image5 = Chara_delicatula_rinde.jpeg |
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| caption5 = 比較的複雑な多細胞体をもつシャジクモ属 ([[車軸藻類|シャジクモ綱]]). |
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}} |
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====多核嚢状==== |
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{{multiple image |
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| total_width = 500 |
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| align = right |
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| caption_align = left |
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| image1 = 703px-Acetabularia.jpg |
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| caption1 = 多核嚢状である[[カサノリ属]] ([[アオサ藻綱]]). |
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| image2 = Codium_sp.jpg |
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| caption2 = 多核嚢状である[[ミル属]] (アオサ藻綱). |
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| image3 = Caulerpa_brownii.jpeg |
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| caption3 = 多核嚢状であるイワヅタ属 (アオサ藻綱). |
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}} |
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緑藻の中には、[[カサノリ]]、[[ハネモ]]、[[イワヅタ]]、[[ミル]] ([[アオサ藻綱]]) など肉眼で見える大きな体ではあるものの体内に細胞隔壁がなく、ひとつながりの原形質からなるものがいる<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Hirose1972" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Coneva2015" /> ('''右図''')。このような体制は、'''多核嚢状''' (siphonous;多核性 coenocytic) とよばれる。巨大な単細胞体ともいえるし、隔壁を欠く多細胞体ともいえる。多核嚢状体をもつ緑藻のほとんどは、アオサ藻綱[[ハネモ目]]および[[カサノリ目]]に属する。微小な多核嚢状体となる種は、[[緑藻綱]]や[[トレボウクシア藻綱]]にもわずかに知られる<ref name="Kouwets1992">{{cite journal|author=Kouwets, F. A. & van der Schaaf, P. J.|year=1992|title=Two types of cytoplasmic cleavage in the coenocytic soil alga ''Protosiphon botryoides'' (Chlorophyceae)|journal=Journal of Phycology|volume=28|issue=4|pages=526-537|doi=10.1111/j.0022-3646.1992.00526.x}}</ref><ref name="Aboal2011">{{cite journal|author=Aboal, M. & Werner, O.|year=2011|title=Morphology, fine structure, life cycle and phylogenetic analysis of ''Phyllosiphon arisari'', a siphonous parasitic green alga|journal=European Journal of Phycology|volume=46|pages=181-192|doi=10.1080/09670262.2011.590902}}</ref>。 |
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{{-}} |
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===細胞外被=== |
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[[ファイル:Nitella hyalina, struktuur, Little Eden, a.jpg|200px|thumb|right|[[シャジクモ類]] (シャジクモ綱) の細胞壁はしばしば石灰化している.]] |
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緑藻の細胞は、明瞭な細胞外被を欠く裸のものや鱗片で覆われるものもあるが、多くは[[細胞壁]]で囲まれている<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Domozych2012">{{cite journal|author=Domozych, D., Ciancia, M., Fangel, J. U., Mikkelsen, M. D., Ulvskov, P. & Willats, W. G.|year=2012|title=The cell walls of green algae: a journey through evolution and diversity|journal=Frontiers in Plant Science|volume=3|issue=|pages=82|doi=10.3389/fpls.2012.00082}}</ref>。[[プラシノ藻]]と総称される緑藻は、[[糖タンパク質]]を含む[[有機質]]の鱗片で覆われていることが多い<ref name="Becker1994">{{cite journal|author=Becker, B., Marin, B. & Melkonian, M.|year=1994|title=Structure, composition, and biogenesis of prasinophyte cell coverings|journal=Protoplasma|volume=181|issue=1-4|pages=233-244|doi=10.1007/BF01666398}}</ref><ref name="Sym1993" />。これと相同な鱗片は、[[車軸藻類|シャジクモ綱]]や[[アオサ藻綱]]の一部の鞭毛細胞にも見られることから (これらの緑藻は互いにかなり遠縁である)、鱗片の存在は[[緑色植物]]全体における原始形質であると考えられている<ref name="Becker1994" /><ref name="Sym1993">{{cite book|author=Sym, S. D. & Pienaar, R. N.|year=1993|chapter=The class Prasinophyceae|editor=Round, F. E. & Chapman, D. J.|title=Progress in Phycological Research|publisher=Biopress Ltd., Bristol|isbn=|pages=281-376}}</ref>。細胞壁は[[セルロース]]を含むことが多いが、[[マンナン]]や[[キシラン]]など他の多糖を主とするもの (例:アオサ藻綱[[ハネモ目]]など) や、糖タンパク質からなるもの (例:[[クラミドモナス]]など) もある<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Domozych2012" />。細胞壁の性状は多様であり、薄い構造が細胞膜に密着しているもの (テカ theca) や、細胞を緩く囲んでいるもの (ロリカ lorica) もある。細胞壁が石灰化 ([[炭酸カルシウム]]が沈着) している例もあり、サボテングサや[[カサノリ]] ([[アオサ藻綱]])、{{Snamei||Coccomoans}} ([[緑藻綱]])、[[シャジクモ類]] ('''右図''') などが知られる<ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Pentecost1991">{{cite book|author=Pentecost, A.|year=1991|chapter=Calcification processes in algae and cyanobacteria|editor=Riding, R.|title=Calcareous Algae and Stromatolites|publisher=Springer, Berlin, Heidelberg|isbn=978-3-642-52337-3|pages=3-20}}</ref>。 |
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===細胞構造=== |
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緑藻の多くは単核性 (1細胞に1個の[[細胞核|核]]をもつ) であるが、[[マリモ]]や[[イワヅタ]] ([[アオサ藻綱]]) など多核性 (多数の核をもつ) であるものもいる<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。核分裂様式はグループによって異なっており、[[緑藻植物]]ではふつう閉鎖型 (核分裂時に核膜が維持される)、[[ストレプト植物]]では開放型 (核分裂時に核膜が消失する) である<ref name="千原1999緑色" /><ref name="Graham2008" />。極にはふつう[[中心体]]が存在する<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" />。緑藻植物の多くでは、中間紡錘体が比較的早期に崩壊し、娘核が接近する ([[アオサ藻綱]]などを除く)<ref name="千原1999緑色" /><ref name="Graham2008" />。細胞質分裂様式は極めて多様であり、単純な細胞膜の環状収縮によるものが多いが、[[緑藻綱]]サヤミドロ目や[[シャジクモ類|シャジクモ綱]]などでは細胞板の遠心的発達による分裂を行う<ref name="千原1999緑色" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。また分裂面に[[フィコプラスト|ファイコプラスト]] (分裂面に平行な微小管群) が生じるものや ([[緑藻綱]]など)、陸上植物と同様にフラグモプラスト ([[隔膜形成体]];分裂面に垂直な微小管群) が生じるもの ([[コレオケーテ藻綱]]など)、また特にこのような微小管が生じないもの ([[アオサ藻綱]]など) がある<ref name="千原1999緑色" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。 |
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[[ファイル:Chlamydomonas TEM 04.jpg|250px|thumb|right|[[クラミドモナス]] ([[緑藻綱]]) の[[透過型電子顕微鏡]]像. [[葉緑体]]中の[[チラコイド]]はラメラを形成しており、上部にはデンプン粒 (白) で囲まれた[[ピレノイド]] (黒) が見える.]] |
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[[葉緑体]]の形態は多様であり、カップ状 (杯状) のものから星状、帯状、網状などがある。また1細胞あたりの数も1個のものから多数のものまである<ref name="千原1999緑色" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。葉緑体 ([[色素体]]) は2枚の包膜で囲まれ、[[チラコイド]]は複数枚が重なってラメラ (チラコイドラメラ) を形成している<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /> ('''右図''')。[[陸上植物]]のようにグラナ (円盤状のチラコイドが多数重なったものであり、複数のグラナがチラコイドで連結される) をもつものは少ない ([[シャジクモ類]]など)<ref name="Graham2008" />。葉緑体中にはしばしば[[ピレノイド]]が存在する<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。ピレノイドは主に[[ルビスコ]] (光合成において二酸化炭素を固定する酵素) からなり、効率的な二酸化炭素固定に働いていると考えられている<ref name="Wang2020" />。また[[クラミドモナス]] ([[緑藻綱]]) では、ピレノイドの高次構造を形成するタンパク質 (EPYC1) も報告されている<ref name="Wang2020">{{cite journal|author=Wang, L. & Jonikas, M. C.|year=2020|title=The pyrenoid|journal=Current Biology|volume=30|issue=10|pages=R456-R458|url=https://static1.squarespace.com/static/5b451871365f02ee34e6c346/t/5f18c258cd4be1671a462284/1595458137761/~2020_Wang_Quick_Guide.pdf}}</ref>。ピレノイドはふつうデンプン鞘に覆われおり、基質に膜状のチラコイドが貫通するものや管状のチラコイドが陥入するもの、細胞質基質を伴う葉緑体膜が陥入するもの、陥入構造を欠くものなどの多様性がある<ref name="千原1999葉緑体">{{cite book|author=井上 勲 & 原 慶明|year=1999|chapter=葉緑体にみる多様性|editor=千原 光雄 (編)|title=バイオディバーシティ・シリーズ (3) 藻類の多様性と系統|publisher=裳華房|isbn=978-4785358266|pages=5067–284}}</ref> ('''右図''')。貯蔵多糖は[[デンプン]] ([[アミロース]]と[[アミロペクチン]]) であり、色素体中に貯蔵される<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /> ('''右図''')。[[色素体DNA]]はふつう色素体中に散在しているが<ref name="Coleman1985">{{cite journal|author=Coleman, A.|year=1985|title=Diversity of plastid DNA configuration among eukaryote algae|journal=J. Phycol.|volume=21|pages=1-16|url=https://doi.org/10.1111/j.0022-3646.1985.00001.x}}</ref>、イワヅタ属 ([[アオサ藻綱]]) などではピレノイド中に局在する<ref name="千原1997" /><ref>{{cite journal|author=Miyamura, S., Hori, T., Ohya, T., Tohma, T. & Ikawa, T.|year=1996|title=Co-localization of chloroplast DNA and ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase in the so-called pyrenoid of the siphonous green alga ''Caulerpa lentillifera'' (Caulerpales, Chlorophyta)|journal=Phycologia|volume=35|pages=156–160|doi=10.2216/i0031-8884-35-2-156.1}}</ref>。光合成能を欠く緑藻は、[[白色体]]の形で色素体をもつ。アオサ藻綱[[ハネモ目]]の一部は、葉緑体と共に[[アミロプラスト]] (デンプンを多く貯蔵した非光合成性の色素体) をもつ<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" />。 |
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光合成色素組成は基本的には[[陸上植物]]と同様であるが、大きな多様性を示す。クロロフィルは ''a'' と ''b'' をもち、またジビニルプロトクロロフィリド (MgDVP) をもつものもいる<ref name="Latasa2004">{{cite journal|author=Latasa, M., Scharek, R., Le Gall, F. & Guillou, L.|year=2004|title=Pigment suites and taxonomic groups in Prasinophyceae|journal=J. Phycol.|volume=40|pages=1149-1155|doi=10.1111/j.1529-8817.2004.03136.x}}</ref>。[[カロテノイド]]としては基本的に[[ルテイン]]、[[ゼアキサンチン]]、[[ビオラキサンチン]]、[[ネオキサンチン]]、[[β-カロテン]]をもつが、[[ロロキサンチン]]や[[α-カロテン]]をもつものもおり、さらに一部の種はプラシノキサンチンやシフォナキサンチンなど特異なカロテノイドをもつ<ref name="Latasa2004" /><ref name="Takaichi2011">{{cite journal|author=Takaichi, S.|year=2011|title=Carotenoids in algae: distributions, biosyntheses and functions|journal=Marine Drugs|volume=9|pages=1101-1118|doi=10.3390/md9061101}}</ref><ref name="Egeland1997">{{cite journal|author=Egeland, E. S., Guillard, R. R., & Liaaen-Jensen, S.|year=1997|title=Additional carotenoid prototype representatives and a general chemosystematic evaluation of carotenoids in Prasinophyceae (Chlorophyta)|journal=Phytochemistry|volume=44|pages=1087-1097|doi=10.1016/S0031-9422(00)85601-0}}</ref>。ピコキスティス属 ([[ピコキスティス藻綱]]) は極めて特異なカロテノイドをもち、[[モナドキサンチン]]、[[アロキサンチン]]、[[ディアトキサンチン]]などは緑色植物の中でこの藻類だけから報告されている<ref name="Santos2017">{{cite journal|author=dos Santos, A. L., Pollina, T., Gourvil, P., Corre, E., Marie, D. et al.|year=2017|title=Chloropicophyceae, a new class of picophytoplanktonic prasinophytes|journal=Scientific Reports|volume=7|pages=14019|doi=10.1038/s41598-017-12412-5}}</ref>。また一部の緑藻は、強光防御用のカロテノイドを大量に蓄積して赤くなる<ref name="Solovchenko2013">{{cite journal|author=Solovchenko, A. E.|year=2013|title=Physiology and adaptive significance of secondary carotenogenesis in green microalgae|journal=Russian Journal of Plant Physiology|volume=60|issue=1|pages=1-13|doi=10.1134/S1021443713010081}}</ref> ('''[[#FigEcology|下図]]''')。このような緑藻は、浅水域や陸上域に生育しているものが多い。 |
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緑藻の中には、光合成能を二次的に失ったものがわずかに知られている。このような緑藻はふつう[[細胞小器官]]としての[[色素体]]は残している ([[白色体]])<ref name="Nadakavukaren1977">{{cite journal|author=Nadakavukaren, M. J. & McCracken, D. A.|year=1977|title=An ultrastructural survey of the genus ''Prototheca'' with special reference to plastids|journal=Mycopathologia|volume=61|issue=2|pages=117-119|doi=10.1007/BF00443840}}</ref><ref name="Figueroa-Martinez">{{cite journal|author=Figueroa-Martinez, F., Nedelcu, A. M., Smith, D. R. & Reyes-Prieto, A.|year=2017|title=The plastid genome of ''Polytoma uvella'' is the largest known among colorless algae and plants and reflects contrasting evolutionary paths to nonphotosynthetic lifestyles|journal=Plant Physiology|volume=173|issue=2|pages=932-943|doi=10.1104/pp.16.01628}}</ref>。例として、ポリトマ属 ({{Snamei||Polytoma}}; 緑藻綱) や [[プロトテカ]] ([[トレボウクシア藻綱]]) がある。 |
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===鞭毛=== |
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[[ファイル:Chlamydomanas reinhardtii Flagella 5 - TEM.jpg|250px|thumb|right|[[クラミドモナス]] ([[緑藻綱]]) の[[透過型電子顕微鏡]]像. 鞭毛移行部には星状構造が存在する (H形の縦断面が見える).]] |
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緑藻の中には、少なくとも生活環の一時期に鞭毛を持つものが少なくないが、[[接合藻]]のように鞭毛細胞を失ったと考えられている例も多い。鞭毛細胞はふつう等長・等運動性の鞭毛をもつ (等鞭毛性 isokont) が、長さ・運動が異なる鞭毛を前後に伸ばしている種もいる ([[プラシノ藻]]の一部)<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Sym1993" />。鞭毛数は2または4本のものが多いが、それ以上のものもおり ([[プラシノ藻]]の一部、[[アオサ藻綱]][[ハネモ目]]、[[緑藻綱]][[サヤミドロ目]])、また鞭毛を1本のみもつものもいる (プラシノ藻の一部)。 |
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緑藻の中で、[[ストレプト植物]]に属するもの ([[クレブソルミディウム藻綱]]、[[コレオケーテ藻綱]]、[[シャジクモ類|シャジクモ綱]]など) の鞭毛細胞は、ふつう細胞亜頂端から2本の鞭毛が平行に伸びている。鞭毛装置では微小管性鞭毛根の1つが発達し、多層構造体 (multilayred structure, MLS) を形成している<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。一方、[[緑藻植物]]に属する緑藻の鞭毛細胞は、細胞頂端から対向して伸びる2または4本の鞭毛をもつものが多く ([[トレボウクシア藻綱]]、[[アオサ藻綱]]、[[緑藻綱]])、鞭毛装置は回転対称の交叉型である<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。[[プラシノ藻]]と総称される緑色植物の初期分岐群では鞭毛細胞の形態や鞭毛装置は多様である。[[ストレプト植物]]の鞭毛細胞では、[[メソスティグマ藻綱]]以外は眼点を欠くが、緑藻植物では鞭毛細胞の色素体中に眼点をもつ例が多い。また緑藻を含む緑色植物の鞭毛移行部には、星状構造 (stellate structure) とよばれる特異な構造が存在する<ref name="千原1999緑色" /><ref name="Graham2008" /> ('''右図''')。 |
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===生殖=== |
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====無性生殖==== |
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緑藻の多くは、無性生殖を行う。無性生殖の様式は多様であり、'''二分裂''' (出芽など不等分裂を含む)、'''胞子'''、藻体の分断化などがあり、特に胞子による無性生殖を行うものが多い<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Hori1994">{{cite book|author=堀 輝三 (編)|year=1994|chapter=アオサ藻綱|editor=|title=藻類の生活史集成 第1巻 緑色藻類|publisher=内田老鶴圃|isbn=978-4753640577|pages=2–367}}</ref>。胞子の形式としては鞭毛をもつ'''遊走子''' (zoospore)、遊走子に似た細胞構造をもつが鞭毛をもたない'''不動胞子''' (aplanospore)、遊走子的な特徴をもたず母細胞とほぼ同じ形態をした'''自生胞子''' (autospore) などがある。また定数群体をもつもの ([[イカダモ]]類など) では、群体を構成する個々の細胞が分裂して群体を形成するが、このような群体は'''自生群体''' (autocolony) とよばれる。 |
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緑藻の中には、丈夫な細胞壁をもつ休眠細胞を形成するものもいる<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Hori1994" />。このような休眠細胞は'''アキネート''' (akinete) ともよばれる。また緑藻の中には、有性生殖における配偶子合体の結果形成された接合子が休眠細胞となるものが多い (下記)。 |
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====有性生殖==== |
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緑藻の中にはさまざまな形式の有性生殖が知られているが、有性生殖が見つかっていない (もしくは欠如した) ものも多い。配偶子合体様式としては、同形同大の配偶子 (同形配偶子 isogamete) が合体する'''同形配偶''' (同形配偶子接合、isogamy)、大小の差がある配偶子 (異形配偶子 anisogamete) が合体する'''異形配偶''' (異形配偶子接合、anisogamy) がある<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Hori1994" />。異形配偶の場合は大型の配偶子を雌性、小型の配偶子を雄性とよぶ。同形配偶の場合は雌雄ではなく、ふつう+ (プラス) と− (マイナス) で表す。また異形配偶の一型として'''卵生殖''' (oogamy) があり、雌性配偶子が大型で不動性になっている。この場合雌性配偶子を卵 (egg; 卵細胞 egg cell)、雄性配偶子を精子 (sperm) とよぶ<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Hori1994" />。特殊な配偶子合体様式として、[[接合藻]]に見られる[[接合]]がある。接合においては、対応する接合型の栄養細胞 (通常時の細胞) が対合し、原形質が融合することで配偶子合体が起こる<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" />。 |
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[[ファイル:Chara sp reproductive structure.JPG|200px|thumb|right|[[シャジクモ類]] (シャジクモ綱) の生卵器 (上側) と造精器 (下側の球形の構造).]] |
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配偶子を形成する構造は、'''配偶子囊''' (gametangium, ''[[複数形|pl.]]'' gametangia) とよばれる。[[陸上植物]]では配偶子囊は多細胞の構造であるが、緑藻においては単一の細胞が配偶子囊になり、配偶子は母細胞の細胞壁のみに囲まれている<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Hori1994" />。卵生殖を行う緑藻では、卵を形成する配偶子囊は'''生卵器''' (oogonium, ''[[複数形|pl.]]'' oogonia)、精子を形成する配偶子囊は'''造精器''' (antheridium, ''[[複数形|pl.]]'' antheridia) とよばれる。例外的に、[[シャジクモ類]]の配偶子囊 (生卵器、造精器) は多細胞からなる複雑な構造をもつ ('''右図''')。 |
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配偶子合体によって生じた接合子は強固な細胞壁に囲まれて休眠構造となることが多い。このような構造は、分類群によって休眠接合子 (hypnozygote)、接合胞子 (zygospore)、卵胞子 (oospore) などとよばれる<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Hori1994" />。このような接合子は発芽時に[[減数分裂]]を行い (接合子減数分裂)、単相 (ゲノムを1セットのみもつ) である栄養体を形成することが多い ([[緑藻綱]]の多く、[[接合藻]]、[[シャジクモ類|シャジクモ綱]]など)。このような生活環では単相の世代のみが存在し (接合子のみが複相)、'''単相単世代型生活環''' (haplontic life cycle) とよばれる。アオミドロ型またはクラミドモナス型生活環ともよばれる<ref name="千原1997" />。 |
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一部の緑藻では、接合子が発芽して複相 (ゲノムを2セットもつ) の栄養体を形成する<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Hori1994" />。[[ミル]]や[[イワヅタ]] ([[アオサ藻綱]]) では、この複相の栄養体が[[減数分裂]]することで単相の[[配偶子]]を形成する (配偶子減数分裂) と考えられている (異論もある<ref name="Hoek1995">{{cite book|author=van den Hoek, C., Mann, D., Jahns, H. M. & Jahns, M.|year=1995|chapter=|editor=|title=Algae: an introduction to phycology|publisher=Cambridge University Press|isbn=978-0521316873|pages=}}</ref>)。つまりこのような生活環では複相の世代のみが存在し (配偶子のみが単相)、'''複相単世代型生活環''' (diplontic life cycle) とよばれる。ミル型生活環ともよばれる<ref name="千原1997" />。 |
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また[[アオサ]]や[[シオグサ]]、[[ハネモ]] ([[アオサ藻綱]]) などでは、このような複相の栄養体は[[減数分裂]]によって[[配偶子]]ではなく[[胞子]]を形成する<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" /><ref name="Hori1994" /> (胞子減数分裂)。そのためこの栄養体は'''[[胞子体]]''' (sporophyte) とよばれる。単相の胞子は栄養体を形成し、この単相の栄養体は配偶子を形成する。そのためこの栄養体は'''[[配偶体]]''' (gametophyte) とよばれる。配偶子は合体して接合子となり、再び胞子体を形成する。このような生活環では、複相の胞子体と単相の配偶体という2つの世代の間で'''[[世代交代]]''' (alternation of generations) を行い、'''単複世代交代型生活環''' (haplodiplontic or diplohaplontic life cycle) ともよばれる。世代交代を行うものでは、胞子体と配偶体がほぼ同形同大である'''同形世代交代''' (isomorphic alternation of generations; シオグサ型生活環) と、胞子体と配偶体が明らかに異形である'''異形世代交代''' (anisomorphic alternation of generations) がある<ref name="千原1997" />。アオサやシオグサ (アオサ藻綱)、[[カエトフォラ目]] ([[緑藻綱]]) は同形世代交代を行う。また異形世代交代を行うものの中で、[[ヒトエグサ]]やハネモ (アオサ藻綱) では配偶体の方が大型であり (ヒトエグサ型生活環)、[[ツユノイト]] (アオサ藻綱) では胞子体の方が大型である (ツユノイト型生活環)<ref name="千原1997" />。 |
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==生態== |
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緑藻の多くは水界に生育している<ref name="千原1997" /><ref name="Graham2008" /><ref name="Lee2008" />。淡水では、[[緑藻綱]]や[[トレボウクシア藻綱]]、[[接合藻]]に属する微細藻が[[植物プランクトン]]や[[底生生物|底生藻]]として多く見られる ('''下図''')。海では[[マミエラ藻綱]]など[[プラシノ藻]]と総称される緑藻が植物プランクトンとして多いことがあり、また[[アオサ藻綱]]に属する大型藻は沿岸域に[[海藻]]として多く見られる<ref>{{cite book|author=神谷 充伸 (監)|year=2012|chapter=|editor=|title=海藻 ― 日本で見られる388種の生態写真+おしば標本|publisher=誠文堂新光社|isbn=978-4416812006|pages=271}}</ref> ('''下図''')。[[ドナリエラ|ドゥナリエラ]]属 (緑藻綱) のように、塩分濃度が高い[[塩湖]]に生育する緑藻も知られている<ref name="Graham2008" /> ('''下図''')。 |
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<span id="FigEcology"></span>{{multiple image |
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| header = 緑藻の生態 |
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| image1 = Spirogyra water surface and water inside.jpg |
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| caption1 = 淡水で大増殖した[[アオミドロ]]属 ([[接合藻]]). |
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| image2 = DüneAlge1.jpg |
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| caption2 = 沿岸域に生育するアオサ属 ([[アオサ藻綱]]). |
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| image3 = Цвет соли 101.jpg |
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| caption3 = 塩湖を赤く染める[[ドナリエラ|ドゥナリエラ]]属 ([[緑藻綱]]). |
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| image4 = Algae and Lichen on stone wall John Wesley Gardens 7th Brigade Park Chermside IMGP1113.jpg |
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| caption4 = このような気生性の緑藻は[[トレボウクシア藻綱]]に属するものが多い. |
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| image5 = 170828-FS-Inyo-PRW-001-MountRitter_(36217539154).jpg |
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| caption5 = 赤い雪はおそらくクロロモナス類 ([[緑藻綱]]). |
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緑藻の中には、陸上に生育する種も少なくない。岩や壁、樹皮、土壌などの表面に生育する[[気生藻]]は、[[トレボウクシア藻綱]]または[[クレブソルミディウム藻綱]]に属する緑藻であることが多い<ref name="Graham2008" /><ref name="半田2002">{{cite journal|author=半田 信司|year=2002|title=気生藻類|journal=21世紀初頭の藻学の現況|volume=|pages=|url=http://sourui.org/publications/phycology21/materials/file_list_21_pdf/25Airborne-algae.pdf}}</ref><ref name="半田2017">{{cite journal|author=半田 信司|year=2017|title=気生藻の分類と生態 (1) 講義編|journal=藻類|volume=65|pages=111-113|naid=40021281740}}</ref> ('''上図''')。また南極の岩の中に生育する緑藻もいる<ref name="Martins2020">{{cite journal|author=Martins, T. P., Ramos, V., Hentschke, G. S., Castelo‐Branco, R., Rego, A., Monteiro, M., ... & Krienitz, L.|year=2020|title=The extremophile ''Endolithella mcmurdoensis'' gen. et sp. nov.(Trebouxiophyceae, Chlorellaceae), a new ''Chlorella''‐like endolithic alga from Antarctica|journal=Journal of Phycology|volume=56|pages=208-216|doi=10.1111/jpy.12940}}</ref>。特異な環境としては、降雪や氷河上で生育する緑藻も知られている<ref name="Matsuzaki2014">{{cite journal|author=Matsuzaki, R., Hara, Y. & Nozaki, H.|year=2014|title=A taxonomic study of snow ''Chloromonas'' species (Volvocales, Chlorophyceae) based on light and electron microscopy and molecular analysis of cultured material|journal=Phycologia|volume=53|issue=3|pages=293-304|doi=10.2216/14-3.1}}</ref><ref name="Yallop2012">{{cite journal|author=Yallop, M. L., Anesio, A. M., Perkins, R. G., Cook, J., Telling, J., Fagan, D. ... & Hodson, A.|year=2012|title=Photophysiology and albedo-changing potential of the ice algal community on the surface of the Greenland ice sheet|journal=The ISME Journal|volume=6|issue=12|pages=2302-2313|doi=10.1038/ismej.2012.107}}</ref> ('''上図''')。 |
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<span id="FigSymbiosis"></span>{{multiple image |
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| header = 緑藻の共生 |
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| caption_align = left |
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| image1 = Lichen Parmotrema tinctorum P4271771.jpg |
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| caption1 = [[地衣類]]の多くは緑藻 (特に[[トレボウクシア藻綱]]) を共生藻とする. |
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| image2 = Paramecium bursaria - 400x (13263096305).jpg |
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| caption2 = 緑藻が共生したミドリゾウリムシ ([[繊毛虫]]). |
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| image3 = Mikrofoto.de-Hydra 15.jpg |
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| caption3 = [[クロレラ]] ([[トレボウクシア藻綱]]) が共生した[[ヒドラ]] ([[刺胞動物]]). |
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| image4 = Ambystoma maculatum egg mass UMFS 2014 2.jpg |
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| caption4 = {{Snamei||Oophila}} ([[緑藻綱]]) が共生した[[キボシサンショウウオ]]の卵. |
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| image5 = Brown-throated three-toed sloth female.JPG |
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| caption5 = 緑色に色づいている[[ナマケモノ]]の毛には、おそらくトリコフィルス属 ([[アオサ藻綱]]) が着生.}} |
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他の生物と共生する例も多く知られている。地衣類の共生藻は、多くの場合[[トレボウクシア藻綱]]に属する緑藻であるが、[[スミレモ類]] ([[アオサ藻綱]]) が共生藻となっていることもある<ref name="Muggia2018">{{cite journal|author=Muggia, L., Leavitt, S. & Barreno, E.|year=2018|title=The hidden diversity of lichenised Trebouxiophyceae (Chlorophyta)|journal=Phycologia|volume=57|pages=503-524|doi=10.2216/17-134.1}}</ref><ref name="Honegger2009">{{cite book|author=Honegger, R.|year=2009|chapter=Lichen-Forming Fungi and Their Photobionts|editor=Deising, H.B.|title=Plant Relationships. The Mycota (A Comprehensive Treatise on Fungi as Experimental Systems for Basic and Applied Research), vol 5|publisher=Springer, Berlin, Heidelberg|isbn=978-3-540-87406-5|pages=307-333}}</ref> ('''上図''')。他にも[[繊毛虫]]や[[太陽虫]]、[[アメーバ類]]、[[ヒドラ (生物)|ヒドラ]]、[[無腸動物]]、[[サンショウウオ]]などに緑藻が共生していることがある<ref name="Graham2008" /><ref>{{cite book|author=Goff, L. J. (Ed.)|year=2011|title=Algal Symbiosis: a continuum of interaction strategies|publisher=Cambridge University Press|pages=221|isbn=978-0-521-17742-9}}</ref><ref name="Letsch2009">{{cite journal|author=Letsch, M. R., Muller‐Parker, G., Friedl, T. & Lewis, L. A.|year=2009|title=''Elliptochloris marina'' sp. nov.(Trebouxiophyceae, Chlorophyta), symbiotic green alga of the temperate pacific sea anemones ''Anthopleura xanthogrammica'' and ''A. elegantissima'' (Anthozoa, Cnidaria)|journal=Journal of Phycology|volume=45|pages=1127-1135|doi=10.1111/j.1529-8817.2009.00727.x}}</ref><ref name="Kim2014">{{cite journal|author=Kim, E., Lin, Y., Kerney, R., Blumenberg, L. & Bishop, C.|year=2014|title=Phylogenetic analysis of algal symbionts associated with four North American amphibian egg masses|journal=PloS One|volume=9|issue=11|pages=e108915|doi=10.1371/journal.pone.0108915}}</ref> ('''上図''')。また[[アオサ藻綱]]の中には、[[ナマケモノ]]の毛や、[[スガイ]]の貝殻に特異的に付着しているものもいる<ref name="Suutari2010">{{cite journal|author=Suutari, M., Majaneva, M., Fewer, D. P., Voirin, B., Aiello, A., Friedl, T., ... & Blomster, J.|year=2010|url=https://doi.org/10.1186/1471-2148-10-86|title=Molecular evidence for a diverse green algal community growing in the hair of sloths and a specific association with ''Trichophilus welckeri'' (Chlorophyta, Ulvophyceae)|journal=BMC Evolutionary Biology|volume=10|pages=86}}</ref><ref name="Yamada2003">{{cite journal|author=Yamada, M., Wada, K., & Ohno, T.|year=2003|title=Observations on the alga ''Cladophora conchopheria'' on shells of the intertidal gastropod ''Turbo coronatus coreensis''|journal=Benthos Research|volume=58|pages=1-6|doi=10.5179/benthos1996.58.1_1}}</ref> ('''上図''')。 |
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==人間との関わり== |
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アオサ藻綱に属する[[ヒトエグサ]]や[[アオノリ]]、[[クビレヅタ]]などは食用とされ、養殖されている例もある<ref name="嶌田2012アオサ">{{cite book|author=嶌田 智|year=2012|chapter=アオサ,アオノリ,ヒトエグサ|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=株式会社エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=564–567}}</ref><ref name="城間2012">{{cite book|author=城間 一仁|year=2012|chapter=クビレズタ|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=株式会社エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=568–571}}</ref><ref name="嶌田2012ミル">{{cite book|author=嶌田 智|year=2012|chapter=その他の緑色大型藻 (カワノリ,ミルなど)|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=株式会社エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=572–574}}</ref> ('''下図''')。また[[クロレラ]] ([[トレボウクシア藻綱]]) は大量培養され、[[健康食品]]や養殖魚介類の初期餌料として用いられている<ref name="丸山2012">{{cite book|author=丸山 功|year=2012|chapter=クロレラ|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=660–663}}</ref><ref name="丸山2011">{{cite journal|author=丸山 功|year=2011|title=淡水産緑藻「クロレラ」の餌料生物用培養餌料としての開発|journal=日本水産学会誌|volume=77|pages=783-786|doi=10.2331/suisan.77.783}}</ref>。[[ドナリエラ|ドゥナリエラ]]属 ([[緑藻綱]]) が産生する[[β-カロテン]]や[[グリセロール]]、ヘマトコックス ([[緑藻綱]]) が産生する[[アスタキサンチン]]などが商業的に利用される (利用されていた) ことがある<ref name="竹中2012">{{cite book|author=竹中 裕行 & 山口 裕司|year=2012|chapter=ドナリエラ|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=664–668}}</ref><ref name="佐藤2012">{{cite book|author=佐藤 朗|year=2012|chapter=ヘマトコッカス|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=672–674}}</ref> ('''下図''')。ボトリオコックスが産生する炭化水素 (ボトリオコッセン) はハンドクリームに利用されている<ref name="Moina">{{Cite news |和書|title=株式会社デンソーから「moina UV」発売 |newspaper=藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センター |date=2017-05-31 |author= |url=http://www.abes.tsukuba.ac.jp/archives/689 |accessdate=2020-06-28}}</ref>。 |
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{{multiple image |
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| total_width = 800 |
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| header = 緑藻の利用 |
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| align = center |
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| caption_align = left |
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| image1 = Aonori (8309799385).jpg |
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| caption1 = お好み焼きに振りかけられる[[青海苔]]. |
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| image2 = Gokasyo Port Nori cultivation ac (2).jpg |
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| caption2 = [[ヒトエグサ]] ([[アオサ藻綱]]) の養殖 (三重県[[五ヶ所湾]]). |
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| image3 = Umibudou at Miyakojima01s3s2850.jpg |
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| caption3 = 食用とされる[[クビレヅタ]] (海ぶどう) (アオサ藻綱). |
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| image4 = Mikrofoto.de-Blutregenalgen_3.jpg |
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| caption4 = [[カロテノイド]]を蓄積したヘマトコックス属 ([[緑藻綱]]). |
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特定の緑藻 (特に {{Snamei||Raphidocelis subcapitata}} = {{Snamei||Selenastrum capricornutum}}) の特定の株は、AGP (Alga Growth Potential) 試験 (藻類生産力試験、藻類生産潜在能力試験) とよばれる水質試験に広く用いられている<ref name="河内2012">{{cite book|author=河内 正伸|year=2012|chapter=AGP試験の標準となる藻類|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=369–371}}</ref>。 |
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アオサ属 ([[アオサ藻綱]]) の中には、基質から離れて浮遊した状態で大増殖するものがおり、このような現象はグリーンタイド (緑潮、green tide) とよばれる<ref name="嶌田2012緑潮">{{cite book|author=嶌田 智|year=2012|chapter=海藻類 − グリーンタイドとキラー海藻|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=株式会社エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=423–425}}</ref> ('''下図''')。緑潮は景観悪化や悪臭、生態系への悪影響などを引き起こす。また {{Snamei||Cephaleuros}} (アオサ藻綱) の中には被子植物の葉に寄生するものも知られており、[[チャノキ]] (茶) や[[コーヒーノキ]]などの害をなすことがある<ref name="Nelson2008">{{cite journal|author=Nelson, S. C.|year=2008|title=''Cephaleuros'' species, the plant-parasitic green algae|journal=Plant Disease|volume=|pages=PD-43|url=https://scholarspace.manoa.hawaii.edu/bitstream/10125/12385/PD-43.pdf}}</ref> ('''下図''')。[[従属栄養]]性の[[プロトテカ]] ([[トレボウクシア藻綱]]) はふつう土壌や汚水などに自由生活しているが、ヒトなど哺乳類に[[日和見感染]]してプロトテカ症を引き起こすことがある<ref name="池田2002">{{cite journal|author=池田 輝雄 & 郷間 雅之|year=2002|title=動物のプロトテカ症|journal=獣医臨床皮膚科|volume=8|pages=23-32|doi=10.2736/jjvd.8.23}}</ref> ('''下図''')。 |
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{{multiple image |
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| header = 緑藻による害 |
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| caption_align = left |
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| image1 = 青岛第六海水浴场的浒苔 2008-06-21.jpg |
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| caption1 = 海水浴場でのグリーンタイド (中国). |
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| image2 = C11 Cephaleuros parasiticus (5824733645).jpg |
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| caption2 = [[グアバ]]の葉や果実に寄生した {{Snamei||Cephaleuros}} (アオサ藻綱). |
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| image3 = Prototheca wickerhamii.GMS.jpg |
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| caption3 = ヒトに寄生した[[プロトテカ]] (トレボウクシア藻綱). |
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}} |
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{{-}} |
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==系統と分類== |
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広義の緑藻は[[緑色植物亜界|緑色植物]]から[[陸上植物]]を除いたものに対する名称であり、[[#tree|下記系統樹]]で示すように単系統群ではない (接合藻など一部の緑藻は他の緑藻に対してよりも陸上植物に近縁である;[[#tree|下記系統樹参照]])<ref name="Iwasa2013緑色藻" />。そのため現在では、この範囲での緑藻を1つの分類群として扱うことはない。 |
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===古典的な分類=== |
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古くは、ほとんどの緑藻は単一の分類群 (緑藻綱) に分類されていた<ref name="Round1963">{{cite journal|author=Round, F. E.|year=1963|title=The taxonomy of the Chlorophyta|journal=British Phycological Bulletin|volume=2|issue=4|pages=224-235|doi=10.1080/00071616300650061}}</ref><ref name="Round1971">{{cite journal|author=Round, F. E.|year=1971|title=The taxonomy of the Chlorophyta. II|journal=British Phycological Journal|volume=6|issue=2|pages=235-264|doi=10.1080/00071617100650261}}</ref>。ただし[[シャジクモ類]]は特異な多細胞体をもつため、他の緑藻とは分けて独立の綱や門に分類されることも多かった<ref name="Round1971" /><ref name="井上1983">{{cite book|和書|author=井上 浩, 岩槻 邦男, 柏谷 博之, 田村 道夫, 堀田 満, 三浦 宏一郎 & 山岸 高旺|year=1983|chapter=|editor=|title=植物系統分類の基礎|publisher=北隆館|isbn=|pages=122–134}}</ref>。また接合藻も接合という特異な有性生殖様式をもつため、独立の綱とされることがあった<ref name="Round1971" />。 |
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伝統的に、緑藻の系統関係は鞭毛性、糸状性、葉状など体制 (大まかな体のつくり) に基づいて考えられていた<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="井上1983" /><ref name="Bold1978" />。また葉緑体や光合成色素、貯蔵多糖などの共通性から、陸上植物は緑藻から生じたと考えられていた (つまり緑藻は単一の分類群にまとめられていたが単系統群と考えられていたわけではない)。陸上植物の祖先的な緑藻として、陸生で比較的複雑な分枝糸状緑藻であるフリッチエラ属 ({{Snamei||Fritschiella}}) などが想定されていた<ref name="千原1997">{{cite book|author=千原 光雄|year=1997|chapter=緑藻綱|editor=|title=藻類多様性の生物学|publisher=内田老鶴圃|isbn=978-4753640607|pages=253–293}}</ref> (現在ではフリッチエラ属は緑藻綱カエトフォラ目に分類されており、陸上植物に近縁であるとは考えられていない)。 |
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また緑藻はその体制に基づいて分類されていた<ref name="Round1971" /><ref name="井上1983" /><ref name="Bold1978" />。緑藻の古典的な分類体系の一例を'''下表'''に示す。この体系は、緑藻の分類体系が大きく変更される直前のころのものである<ref name="千原1997" />。 |
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<span id="systemOld"></span> |
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{| class="wikitable" style="margin:0 auto" |
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|'''古典的な緑藻の分類体系の1例'''<ref name="千原1997" />. 各分類群について、上段に古典的な分類体系における分類群の扱いや特徴を、下段に2020年現在の分類体系におけるその分類群の扱いについて記した. |
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*緑藻綱 {{Sname||Chlorophyceae}} {{AUY|Wille in Warming|1884}} |
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**[[オオヒゲマワリ目]] (ボルボックス目) {{Sname||Volvocales}} {{AUY|Oltmanns|1904}} |
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***[[単細胞]]または[[群体]]、栄養体 (通常時の体) は[[鞭毛]]をもち遊泳する<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。単細胞性の種をクラミドモナス目 ({{Sname||Chlamydomonadales}}) として分けることもあった<ref name="Ettl1966">{{cite journal|author=Ettl, H.|year=1966|title=Über die Systematische Gliederung kleiner Chlorophyceen|journal=Nova Hedwigia|volume=10|issue=|pages=515-525|doi=}}</ref>。また[[細胞壁]]を欠く種をドゥナリエラ目 ({{Sname||Dunaliellales}}) として分けることもあった<ref name="Ettl1985">{{cite book|author=Ettl, H.|year=1985|chapter=|editor=|title=Süsswasserflora von Mitteleuropa. 9. Chlorophyta I Phytomonadina|publisher=Gustav Fischer Verlag|isbn=978-3-8274-2659-8|pages=807}}</ref>。 |
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***2020年現在一般的な分類体系では、[[オオヒゲマワリ目]] (同じ意味でクラミドモナス目の名を使うことも多い) は[[緑藻綱]] (狭義) の1目とされ、オオヒゲマワリ属 (ボルボックス属、{{Snamei||Volvox}})、クラミドモナス属 ({{Snamei||Chlamydomonas}})、[[ドナリエラ|ドゥナリエラ]]属 ({{Snamei||Dunaliella}}) などを含む<ref name="Graham2008" /><ref name="Nakada2012緑藻">{{cite book|author=仲田 崇志|year=2012|chapter=緑藻類|editor=渡邉 信 (監)|title=藻類ハンドブック|publisher=株式会社エヌ・ティー・エス|isbn=978-4864690027|pages=28–32}}</ref><ref name="Frey2015緑藻">{{cite book|author=Neustupa, J.|year=2015|chapter=Class Chlorophyceae|editor=Frey, W. (ed.)|title=Syllabus of Plant Families - A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien Part 2/1: Photoautotrophic eukaryotic Algae|publisher=Borntraeger Science Publishers|isbn=978-3-443-01083-6|pages=216–240}}</ref><ref name="Leliaert2012" />。また下記のようにヨツメモ目やクロロコックム目などに分類されていた種の一部もオオヒゲマワリ目に含めるようになった。古典的な意味でのオオヒゲマワリ目に分類されていた種のうち、不等鞭毛をもつ種や有機質鱗片で覆われている種は1970年頃から[[プラシノ藻綱]]に分類されるようになり<ref name="千原1999緑色" /><ref name="千原1997" /><ref name="Sym1993" />、さらに2020年現在では[[マミエラ藻綱]]や[[ネフロセルミス藻綱]]、[[ペディノ藻綱]]、[[クロロデンドロン藻綱]]、[[メソスティグマ藻綱]]などに分割されている<ref name="Leliaert2012" />。またウミイカダモ属 ({{Snamei||Oltmannsiellopsis}}) は[[アオサ藻綱]]に移された<ref name="Frey2015アオサ">{{cite book|author=Leliaert, F., Lopez-Bautista, J., De Clerck, O. & Neustupa, J.|year=2015|chapter=Class Ulvophyceae|editor=Frey, W. (ed.)|title=Syllabus of Plant Families - A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien Part 2/1: Photoautotrophic eukaryotic Algae|publisher=Borntraeger Science Publishers|isbn=978-3-443-01083-6|pages=247–280}}</ref>。 |
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**[[ヨツメモ目]] {{Sname||Tetrasporales}} {{AUY|Lemmermann|1915}} |
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***[[単細胞]]または[[群体]]、鞭毛細胞に類似した細胞構造 ([[収縮胞]]、[[眼点]]など) をもつが、運動性の[[鞭毛]]を欠き (運動能を欠く鞭毛 [偽鞭毛、偽繊毛] をもつことはある)、栄養体は不動性である<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。寒天質に包まれたパルメラ状群体を形成するものが多い。オオヒゲマワリ目の種が不動性になったものに類似しており、またクロロコックム目との区別も明瞭ではない。 |
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***タイプ属であるヨツメモ属 ({{Snamei||Tetraspora}}) は[[緑藻綱]] (狭義) の[[オオヒゲマワリ目]]に属することが明らかになっているため、学名としてのヨツメモ目はオオヒゲマワリ目の[[シノニム]] (同物異名) である<ref name="Frey2015緑藻" />。ヨツメモ属以外でもオオヒゲマワリ目に属するものが多いが ({{Snamei||Asterococcus}}、{{Snamei||Characiochloris}}、{{Snamei||Nautococcus}} など)、他に[[緑藻綱]][[ヨコワミドロ目]]に移された属 ({{Snamei||Schizochlamys}}) や、[[カエトペルティス目]]に移された属 (例:{{Snamei||Chaetopeltis}}、{{Snamei||Hormotilopsis}})、[[クロロデンドロン藻綱]]に移された属 ({{Snamei||Prasinocladus}}) などもある<ref name="Frey2015緑藻" /><ref name="Nakada2008">{{cite journal|author=Nakada, T., Misawa, K. & Nozaki, H.|year=2008|title=Molecular systematics of Volvocales (Chlorophyceae, Chlorophyta) based on exhaustive 18S rRNA phylogenetic analyses|journal=Molecular Phylogenetics and Evolution|volume=48|issue=1|pages=281-291|doi=10.1016/j.ympev.2008.03.016}}</ref><ref name="Frey2015クロロデンドロン">{{cite book|author=Leliaert, F., Lopez-Bautista, J. & De Clerck, O.|year=2015|chapter=Class Chlorodendrophyceae|editor=Frey, W. (ed.)|title=Syllabus of Plant Families - A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien Part 2/1: Photoautotrophic eukaryotic Algae|publisher=Borntraeger Science Publishers|isbn=978-3-443-01083-6|pages=202–203}}</ref>。 |
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**[[クロロコックム目]] {{Sname||Chlorococcales}} {{AUY|Marchand|1895}} |
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***[[単細胞]]または[[群体]]、栄養体は鞭毛を欠き、上記の[[ヨツメモ目]]とは異なり細胞構造は鞭毛細胞の特徴 (収縮胞、眼点など) を示さない<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。群体性の種では、パルメラ状群体や定数群体など群体様式は多様。遊走子を形成しないものはクロレラ目 ({{Sname||Chlorellales}}) として分けられることもあった。 |
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***タイプ属であるクロロコックム属 ({{Snamei||Chlorococcum}}) は[[緑藻綱]] (狭義) の[[オオヒゲマワリ目]]に属することが明らかになっているため、[[学名]]としてのクロロコックム目はオオヒゲマワリ目の[[シノニム]] (同物異名) である<ref name="Frey2015緑藻" />。別の分類群に移されたものも多く、[[緑藻綱]][[ヨコワミドロ目]]に移された属 (例:{{Snamei||Neochloris}}、[[アミミドロ]]属、[[クンショウモ]]類、[[イカダモ]]類、{{Snamei||Ankistrodesmus}})、[[アオサ藻綱]]に移された属 (例:{{Snamei||Pseudocharaciopsis}})、[[トレボウクシア藻綱]]に移された属 (例:[[クロレラ]]属、{{Snamei||Oocystis}}、{{Snamei||Trebouxia}}、{{Snamei||Botryococcus}}) などがある<ref name="Frey2015緑藻" /><ref name="Frey2015アオサ" /><ref name="Frey2015トレボウクシア">{{cite book|author=Neustupa, J.|year=2015|chapter=Class Trebouxiophyceae|editor=Frey, W. (ed.)|title=Syllabus of Plant Families - A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien Part 2/1: Photoautotrophic eukaryotic Algae|publisher=Borntraeger Science Publishers|isbn=978-3-443-01083-6|pages=203–216}}</ref>。 |
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**クロロサルシナ目 (クロロサルキナ目) {{Sname||Chlorosarcinales}} {{AUY|Groover & Bold|1969}} |
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***サルシナ状群体 (複数の細胞が3次元的に密着した細胞塊) を形成し、母細胞壁は娘細胞の細胞壁になる (栄養細胞分裂 desmoschisis, vegetative cell division)<ref name="千原1997" /><ref name="Bold1978" />。クロロコックム目との区別は明瞭ではなく、これに含めることも多かった<ref name="Round1971" />。一方で細胞分裂様式を重視してカエトフォラ目に含めることもあった<ref name="Round1971" />。 |
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***タイプ属であるクロロサルシナ属 ({{Snamei||Chlorosarcina}}) は[[緑藻綱]] (狭義) の[[オオヒゲマワリ目]]に属することが示されているため、学名としてのクロロサルシナ目はオオヒゲマワリ目のシノニム (同物異名) である<ref name="Frey2015緑藻" />。他にもオオヒゲマワリ目に属するものが多いが ({{Snamei||Neochlorosarcina}}, {{Snamei||Chlorosarcinopsis}}, {{Snamei||Tetracystis}} など)、緑藻綱[[カエトペルティス目]] (例:{{Snamei||Floydiella}})、[[トレボウクシア藻綱]] (例:{{Snamei||Myrmecia}}、{{Snamei||Apatococcus}})、[[アオサ藻綱]] (例:{{Snamei||Planophila}}, {{Snamei||Desmochloris}})、[[クロロキブス藻綱]] ({{Snamei||Chlorokybus}}) などに移された属がある<ref name="Frey2015緑藻" /><ref name="Frey2015アオサ" /><ref name="Frey2015トレボウクシア" /><ref name="Frey2015ストレプト">{{cite book|author=Neustupa, J.|year=2015|chapter=Streptophyta|editor=Frey, W. (ed.)|title=Syllabus of Plant Families - A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien Part 2/1: Photoautotrophic eukaryotic Algae|publisher=Borntraeger Science Publishers|isbn=978-3-443-01083-6|pages=282–294}}</ref>。 |
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**[[ヒビミドロ目]] {{Sname||Ulotrichales}} {{AUY|Borzì|1895}} |
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***単核細胞からなる無分枝糸状体<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。接合は行わない。付着器で基物に付着しているものや、付着せずに浮遊しているものがある。特異な[[細胞壁]]をもつミクロスポラ属 ({{Snamei||Microspora}}) も独立の目、ミクロスポラ目に分類されることもあった<ref name="Round1971" /> (2020年現在では本属は[[緑藻綱]][[ヨコワミドロ目]]に分類されている<ref name="Frey2015緑藻" />)。 |
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***2020年現在の分類体系では、ヒビミドロ目は[[アオサ藻綱]]の1目とされ、ヒビミドロ属 ({{Snamei||Ulothrix}}) とともに、アオサ目に分類されていたヒトエグサ属 ({{Snamei||Monostroma}}) やモツレグサ目に分類されていたシリオミドロ属 ({{Snamei||Urospora}}) なども含む<ref name="Frey2015アオサ" />。一方でヒビミドロ目から他の藻群に移されたものが多く、[[緑藻綱]][[ヨコワミドロ目]] (例:{{Snamei||Microspora}})、緑藻綱[[カエトフォラ目]] (例:{{Snamei||Uronema}})、[[トレボウクシア藻綱]] (例:{{Snamei||Stichococcus}}、{{Snamei||Geminella}} など)、[[クレブソルミディウム藻綱]] (例:{{Snamei||Klebsormidium}} など) に移された例がある<ref name="Frey2015緑藻" /><ref name="Frey2015アオサ" /><ref name="Frey2015トレボウクシア" />。 |
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**[[ヨコワミドロ目]] {{Sname||Sphaeropleales}} {{AUY|Luerssen|1877}} |
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***糸状体または単細胞体であり、各細胞は多核で極めて細長い<ref name="千原1997" />。糸状性のヨコワミドロ属 ({{Snamei||Sphaeroplea}}) と単細胞性のアトラクトモルファ属 ({{Snamei||Antractomorpha}}) がある。それぞれヒビミドロ目、クロロコックム目に分類されることも多かった。 |
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***2020年現在の分類体系では、ヨコワミドロ目は[[緑藻綱]] (狭義) の1目とされる<ref name="Frey2015緑藻" />。[[クロロコックム目]]に分類されていた[[イカダモ]]類や[[クンショウモ]]類など多くの種もヨコワミドロ目に移されている。 |
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**[[カエトフォラ目]] (ケートフォラ目) {{Sname||Chaetophorales}} {{AUY|Wille|1901}} |
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***単核細胞からなる分枝糸状体<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。ヒビミドロ目に含めることもあった。一方でコレオケーテ属はコレオケーテ目として分けられることもあった<ref name="Round1971" />。 |
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***2020年現在の分類体系では、[[緑藻綱]] (狭義) の1目とされ、カエトフォラ属 (タマモ属、{{Snamei||Chaetophora}})、ツルギミドロ属 ({{Snamei||Draparnaldia}})、フリッチエラ属 ({{Snamei||Fritschiella}}) などを含む<ref name="Frey2015緑藻" />。[[アオサ藻綱]] ([[ヒビミドロ目]]、[[アオサ目]]、[[スミレモ目]]など) やコレオケーテ藻綱など他の分類群に移されたものも多い<ref name="Frey2015緑藻" /><ref name="Frey2015アオサ" /><ref name="Frey2015ストレプト" />。 |
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**[[スミレモ目]] {{Sname||Trentepohliales}} {{AUY|Chadefaud ex Thompson & Wujek|1997}} |
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***カエトフォラ目と同様に分枝糸状体であるが、特殊化した遊走子嚢、配偶子嚢を形成する<ref name="千原1997" />。陸生であり、カロテノイドを多量に蓄積して赤くなるものが多い。カエトフォラ目に分類されることも多かった<ref name="Round1971" />。 |
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***2020年現在では、スミレモ目は[[アオサ藻綱]]の1目とされる<ref name="Frey2015アオサ" />。その範囲は古典的な分類と大きくは変わっていない。 |
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**[[サヤミドロ目]] {{Sname||Oedogoniales}} {{AUY|Heering|1914}} |
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***無分枝または分枝糸状体であり、各細胞末端に特徴的な鞘状構造が存在する<ref name="千原1997" /><ref name="Bold1978" />。卵生殖を行い、鞭毛細胞は多数の鞭毛をもつ冠鞭毛性。全て淡水生。ヒビミドロ目に分類されることも多かった。 |
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***2020年現在では、サヤミドロ目は[[緑藻綱]] (狭義) の1目とされる。3属 (サヤミドロ属、ブルボカエテ属、オエドクラディア属) を含み、目の範囲は古典的な範囲と変わっていない<ref name="Frey2015緑藻" />。 |
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**[[アオサ目]] {{Sname||Ulvales}} {{AUY|Blackman & Tansley|1902}} |
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***細胞層からなる膜状または多列糸状の体をもつ<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。細胞は単核性。カワノリ類はカワノリ目として分けられることもあった<ref name="Round1971" />。 |
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***2020年現在では、アオサ目は[[アオサ藻綱]]の1目とされる<ref name="Frey2015アオサ" />。ヒトエグサ属やカプサアオノリ属、トリコサルキナ属は[[ヒビミドロ目]] (アオサ藻綱)、カワノリ属などは[[トレボウクシア藻綱]]カワノリ目、スキゾメリス属は[[緑藻綱]][[カエトフォラ目]]にそれぞれ移されている<ref name="Frey2015緑藻" /><ref name="Frey2015アオサ" /><ref name="Frey2015トレボウクシア" />。 |
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**モツレグサ目 {{Sname||Acrosiphonales}} {{AUY|Kornmann ex P.C. Silva|1982}} |
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***無分枝または分枝糸状体であり、単核または多核細胞からなる<ref name="千原1997" />。葉緑体は膜状で多数の孔をもつ。多核細胞の核分裂は細胞質分裂と同調して起こる。大型の藻体は配偶体であり、単細胞嚢状の胞子体との間で世代交代を行う。 |
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***2020年現在では、モツレグサ目に分類されていた種は[[アオサ藻綱]][[ヒビミドロ目]]に分類されている<ref name="Frey2015アオサ" />。 |
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**[[シオグサ目]] {{Sname||Cladophorales}} {{AUY|Haeckel|1894}} |
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***多核細胞からなる無分枝または分枝糸状体であり、葉緑体は多数で網状に配置する<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。核分裂は細胞質分裂と同調していない。 |
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***2020年現在では、シオグサ目は[[アオサ藻綱]]の1目とされる<ref name="Frey2015アオサ" />。ミドリゲ目とされていた種を全て含む (下記)。 |
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**ミドリゲ目 {{Sname||Siphonocladales}} {{AUY|(Blackman & Tansley) Oltmanns|1904}} |
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***大型の多核細胞からなる多細胞であり、多核嚢状の細胞が分割細胞分裂 (1度に多数の原形質に分割する) することによって藻体が形成される<ref name="千原1997" /><ref name="Bold1978" />。葉緑体は多数で網状に配置する。 |
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***2020年現在では、[[アオサ藻綱]][[シオグサ目]]に含められている<ref name="Frey2015アオサ" />。 |
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**[[カサノリ目]] {{Sname||Dasycladales}} {{AUY|Pascher|1931}} |
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***主軸と輪生する側枝からなり、基本的に隔壁を欠く<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。発生初期は複相単核であるが、やがて減数分裂を行い単相多核となり、配偶子嚢シストを形成、配偶子を放出して同形配偶を行う。 |
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***2020年現在では、カサノリ目は[[アオサ藻綱]]の1目とされる<ref name="Frey2015アオサ" />。その範囲は古典的な分類と変わっていない。 |
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**[[イワヅタ目]] {{Sname||Caulerpales}} {{AUY|Feldmann|1946}} |
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***多核嚢状の体をもつ<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。ほとんどは海に生育する。クダモ目 (管状藻目;{{Sname||Siphonales}}) とよばれることも多かった (ただしこの場合ミドリゲ目やカサノリ目も含むことがあった)<ref name="Round1971" />。またハネモ目 ({{Sname||Bryopsidales}}) やミル目 ({{Sname||Codiales}})、ツユノイト目 ({{Sname||Derbesiales}})、チョウチンミドロ目 ({{Sname||Dichotomosiphonales}}) に細分することもあった<ref name="Round1971" />。 |
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***2020年現在では[[ハネモ目]]の名が充てられ、アオサ藻綱の1目とされる<ref name="Frey2015アオサ" />。目の範囲は上記のイワヅタ目とほとんど変わっていない。 |
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**[[接合藻|ホシミドロ目]] {{Sname||Zygnematales}} {{AUY|C.E.Bessey|1907}} (接合藻 conjugating green algae) |
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***単細胞性または無分枝糸状体であり、アオミドロやミカヅキモなどよく知られた緑藻を含む<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。生活環を通じて鞭毛をもたない。栄養細胞が直接接して原形質が融合する特異な配偶子合体様式である接合を行う。緑藻綱に含めることが一般的であったが、独立綱 (ホシミドロ綱) として扱うこともあった。 |
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***微細構造学的研究から陸上植物に近縁な緑藻であることが示され、一時期は[[シャジクモ類]]や[[コレオケーテ属]]などとともに[[シャジクモ綱]] (広義) に分類されていたが<ref name="千原1999車軸藻">{{cite book|author=渡邊 信 & 中山 剛|year=1999|chapter=車軸藻綱|editor=千原 光雄 (編)|title=バイオディバーシティ・シリーズ (3) 藻類の多様性と系統|publisher=裳華房|isbn=978-4785358266|pages=285–289}}</ref>、2020年現在では、接合藻は[[接合藻|ホシミドロ綱]]として独立の綱として扱われることが多い。また2020年現在、接合藻内は、ホシミドロ目、チリモ目、スピログロエア目の3目に分けることが提唱されている (ただしこのうちホシミドロ目は側系統群である)<ref name="Cheng2019">{{cite journal|author=Cheng, S., Xian, W., Fu, Y., Marin, B., Keller, J., Wu, T., ... & Wittek, S.|year=2019|title=Genomes of subaerial Zygnematophyceae provide insights into land plant evolution|journal=Cell|volume=179|pages=1057-1067|doi=10.1016/j.cell.2019.10.019}}</ref>。また接合藻 (旧ホシミドロ目) の範囲は現在でもほとんど変わっていないが、スピロタエニア属 (ネジモ属、ネジレオビ属; {{Snamei||Spirotaenia}}) は他の接合藻とは縁遠く、クロロキブス属 ([[クロロキブス藻綱]]) に近縁であることが示唆されている<ref name="Gontcharov2004">{{cite journal|author=Gontcharov, A. A. & Melkonian, M.|year=2004|title=Unusual position of the genus ''Spirotaenia'' (Zygnematophyceae) among streptophytes revealed by SSU rDNA and rbcL sequence comparisons|journal=Phycologia|volume=43|pages=105-113|doi=10.2216/i0031-8884-43-1-105.1}}</ref>。 |
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**[[シャジクモ目]] {{Sname||Charales}} {{AUY|Dumortier|1829}} |
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***節と節間の繰り返しからなる特異な多細胞体を形成し、緑藻としては例外的に複雑な生殖器官をもつ<ref name="千原1997" /><ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978" />。特異な特徴を多くもつため、独立の綱とされることも多かった。また独立の門に分類されることもあった<ref name="Round1971" /><ref name="Bold1978">{{cite book|author=Bold, H. C. & Wynne, M. J.|year=1978|chapter=|editor=|title=Introduction to the algae : structure and reproduction|publisher=Prentice-Hall|isbn=9780134777863|pages=706}}</ref>。 |
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***微細構造学的研究から[[陸上植物]]に近縁な緑藻であることが示され、シャジクモ綱 (車軸藻綱、シャジクモ藻綱) として独立の分類群として扱われている<ref name="Frey2015Charo">{{cite book|author=Blindow, I. & Schudack, M.|year=2015|chapter=Class Charophyceae|editor=Frey, W.|title=Syllabus of Plant Families - A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien Part 2/1: Photoautotrophic eukaryotic Algae|publisher=Stuttgart: Borntraeger Science Publishers|isbn=978-3-443-01083-6|pages=294–300}}</ref>。同様に陸上植物に近縁であることが明らかとなった緑藻 ([[接合藻]]など) がシャジクモ綱に分類されたことがあるが<ref name="千原1999車軸藻" /> (広義の[[車軸藻綱|シャジクモ綱]])、このまとまりは側系統群である。特異な特徴をもつ藻群であり、古くからその範囲は変わっていない。 |
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===現在の分類=== |
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上記のように緑藻の分類およびその系統仮説は基本的にその体制に基づいて考えられていた。しかし1960年代から、[[電子顕微鏡]]を用いた微細構造学特徴 ([[鞭毛装置]]や[[細胞分裂]]様式) が緑藻の系統関係推定に用いられるようになった<ref name="Stewart1975">{{cite journal|author=Stewart,K.D. & Mattox, K. R.|year=1975|title=Comparative cytology, evolutionand classification of the green algae, with some consideration of theorigin of other organisms with chlorophylls ''a'' and ''b''.|journal=Botanical Review41|volume=41|pages=104–135|doi=}}</ref><ref>{{cite journal|author=O'Kelly, C. J. & Floyd, G. L.|year=1983|title=Flagellar apparatus absolute orientations and the phylogeny of the green algae|journal=BioSystems|volume=16|pages=227-251|doi=10.1016/0303-2647(83)90007-2}}</ref><ref name="Melkonian1982">{{cite journal|author=Melkonian, M.|year=1982|title=Structural and evolutionary aspects of the flagellar apparatus in green algae and land plants|journal=Taxon|volume=31|pages=255-265|doi=10.2307/1219989}}</ref>。その結果、伝統的な分類体系は緑藻の系統関係を反映したものではないと考えられるようになり、1980年代にはこのような微細構造学的特徴に基づく分類体系が受け入れられるようになった<ref name="Mattox1984">{{cite book|author=Mattox, K. R. & Stewart, K. D.|year=1984|chapter=Classification of the green algae: a concept based on comparative cytology|editor=Irvine, D. E. G. & John, D. (eds.)|title=The Systematics of the Green Algae|publisher=Academic Press, New York|isbn=|pages=29-72}}</ref>。さらに1990年代以降の分子系統学的研究も基本的に微細構造学的特徴に基づく分類体系を支持しており ('''下図''')、またさらに詳細な分類体系の改訂が進んでいる ('''下表''')<ref name="Leliaert2012">{{cite journal|author=Leliaert, F., Smith, D.R., Moreau, H., Herron, M.D., Verbruggen, H., Delwiche, C.F. & De Clerck, O.|year=2012|title=Phylogeny and molecular evolution of the green algae|journal=Critical Reviews in Plant Sciences|volume=31|pages=1-46|url=https://frederikleliaert.files.wordpress.com/2013/05/2012_leliaert_crps.pdf}}</ref>。 |
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<span id="tree"></span>{{cladogram |
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|caption='''緑色植物内の系統仮説の1例'''<ref name="Santos2017" /><ref name="Leliaert2012">{{cite journal|author=Leliaert, F., Smith, D.R., Moreau, H., Herron, M.D., Verbruggen, H., Delwiche, C.F. & De Clerck, O.|year=2012|title=Phylogeny and molecular evolution of the green algae|journal=Critical Reviews in Plant Sciences|volume=31|pages=1-46|url=https://frederikleliaert.files.wordpress.com/2013/05/2012_leliaert_crps.pdf}}</ref><ref name="Timme2012">{{cite journal|author=Timme, R. E., Bachvaroff, T. R. & Delwiche, C. F.|year=2012|title=Broad phylogenomic sampling and the sister lineage of land plants.|journal=PLoS One|volume=7|pages=e29696|url=https://doi.org/10.1371/journal.pone.0029696}}</ref><ref name="Wickett2014">{{cite journal|author=Wickett, N.J., Mirarab, S., Nguyen, N., Warnow, T., Carpenter, E., Matasci, N., Ayyampalayam, S., Barker, M.S., Burleigh, J.G., Gitzendanner, M.A., et al.|year=2014|title=Phylotranscriptomic analysis of the origin and early diversification of land plants|journal=Proc Natl. Acad. Sci. USA|volume=111|pages=E4859-4868|url=https://doi.org/10.1073/pnas.1323926111}}</ref><ref name="O.T.P.T.I.2019">{{cite journal|author=O.T.P.T.I. [= One Thousand Plant Transcriptomes Initiative]|year=2019|title=One thousand plant transcriptomes and the phylogenomics of green plants|journal=Nature|volume=574|pages=679-685|doi=10.1038/s41586-019-1693-2}}</ref><ref name="Yang2019">{{cite journal|author=Yang, T., Liao, X., Yang, L., Liu, Y., Mu, W., Sahu, S. K., ... & Liu, H.|year=2019|title=Comparative analyses of 3654 chloroplast genomes unraveled new insights into the evolutionary mechanism of green plants|journal=bioRxiv|volume=|pages=655241|doi=10.1101/655241}}</ref>. 一番下の[[陸上植物]]以外は[[緑藻]]と総称される. |
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|align=center |
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|width= |
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|clades={{clade| style=font-size:80%;line-height:100% |
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|grouplabel1='''緑藻''' (緑色藻) |
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|label1='''[[緑色植物亜界]]''' |
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|1={{Clade |
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|label1='''[[緑藻植物門|緑藻植物]]''' |
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|1={{Clade |
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|1='''[[パルモフィルム藻綱]]'''{{efn2|name="パルモフィルム"|}}|barbegin1=green |
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|1={{Clade |
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|1='''[[マミエラ藻綱]]'''|bar1=green |
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|label2='''[[ストレプト植物]]''' |
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|1='''[[コレオケーテ藻綱]]'''|bar1=green |
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|2={{Clade |
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|1={{Nowrap|'''[[接合藻]]''' (ホシミドロ綱)}}|barend1=green |
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|2='''[[陸上植物]]''' |
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<span id="systemNew"></span> |
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鞭毛基部の構造をはじめとする微細構造および分子系統学から、緑藻綱は5群に分類されることが分かっている。すなわち、[[サヤミドロ目]]、[[ヨコワミドロ目]]、[[カエトフォラ目]]、[[カエトペルチス目]]、およびその他の緑藻類である。 |
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{| class="wikitable" style="margin:0 auto" |
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|'''2020年現在の緑藻の分類体系の1例'''<ref name="Santos2017" /><ref name="Leliaert2012" /><ref name="Frey2015Green">{{cite book|author=|year=2015|chapter=Class Charophyceae|editor=Frey, W.|title=Syllabus of Plant Families - A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien Part 2/1: Photoautotrophic eukaryotic Algae|publisher=Stuttgart: Borntraeger Science Publishers|isbn=978-3-443-01083-6|pages=193–196}}</ref><ref name="Iwasa2013分類">{{cite book|author=巌佐 庸, 倉谷 滋, 斎藤 成也, 塚谷 裕一 (編)|year=2013|title=岩波 生物学辞典 第5版|publisher=岩波書店|pages=1633–1636|isbn=978-4000803144}}</ref> |
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*緑色植物亜界 {{Sname||Viridiplantae}} {{AUY|Cavalier-Smith|1981}} |
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**緑藻植物下界 {{Sname||Chlorophyta}} {{AUY|Cavalier-Smith|1993}} |
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***緑藻植物門 {{Sname||Chlorophyta}} {{AUY|Reichenbach|1834}} |
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****[[パルモフィルム藻綱]] {{Sname||Palmophyllophyceae}} {{AUY|Leliaert et al.|2016}}{{efn2|name="パルモフィルム"|近年のゲノムレベルの系統解析からは緑藻植物とストレプト植物の分岐前に他と分かれたことが示唆されており、プラシノデルマ植物門 ({{Sname||Prasinodermophyta}}) として他と分けることが提唱されている<ref name="Li2020">{{cite journal|author=Li, L., Wang, S., Wang, H., Sahu, S. K., Marin, B., Li, H., ... & Reder, T.|year=2020|title=The genome of ''Prasinoderma coloniale'' unveils the existence of a third phylum within green plants|journal=Nature Ecology & Evolution|volume=4|issue=|pages=1220–1231|doi=10.1038/s41559-020-1221-7}}</ref>。}} |
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****[[マミエラ藻綱]] {{Sname||Mamiellophyceae}} {{AUY|Marin & Melkonian|2010}} |
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****[[ネフロセルミス藻綱]] {{Sname||Nephroselmidophyceae}} {{AUY|Cavalier-Smith|1993}} |
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****[[クロロピコン藻綱]] {{Sname||Chloropicophyceae}} {{AUY|Lopes dos Santos & Eikrem in Lopes dos Santos et al.|2017}} |
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****[[ピコキスティス藻綱]] {{Sname||Picocystophyceae}} {{AUY|Eikrem & Lopes dos Santos in Lopes dos Santos et al.|2017}} |
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****[[ペディノ藻綱]] {{Sname||Pedinophyceae}} {{AUY|Moestrup|1991}} |
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****[[クロロデンドロン藻綱]] {{Sname||Chlorodendrophyceae}} {{AUY|Massjuk|2006}} |
|||
****[[トレボウクシア藻綱]] {{Sname||Trebouxiophyceae}} {{AUY|Friedl|1995}} |
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****[[アオサ藻綱]] {{Sname||Ulvophyceae}} {{AUY|K.R.Mattox & K.D.Stewart|1984}} |
|||
****[[緑藻綱]] {{Sname||Chlorophyceae}} {{AUY|Wille in Warming|1884}} |
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****所属不明 ''Incertae sedis'' |
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*****[[ピラミモナス目]] {{Sname||Pyramimonadales}} {{AUY|Chadefaud|1950}} |
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*****[[プセウドスコウルフィエルディア目]] {{Sname||Pseudoscourfieldiales}} {{AUY|Melkonian|1990}} |
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*****[[スコウルフィエルディア目]] {{Sname||Scourfieldiales}} {{AUY|Moestrup|1991}} |
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**ストレプト植物下界 {{Sname||Streptophyta}} {{AUY|Cavalier-Smith in Lewin|1993}} |
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***[[メソスティグマ藻綱]] {{Sname||Mesostigmatophyceae}} {{AUY|Marin & Melkonian|2010}} |
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***[[クロロキブス藻綱]] {{Sname||Chlorokybophyceae}} {{AUY|K.Bremer|1985}} nom. inval. (非正式名){{efn2|name="クロロキブス"|命名規約上非正式名である。またメソスティグマ藻綱に含めることもある<ref name="Li2020" />。}} |
|||
***[[クレブソルミディウム科|クレブソルミディウム藻綱]] {{Sname||Klebsormidiophyceae}} {{AUY|C.Hoek, D.G.Mann & H.M.Jahns|1995}} |
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***[[シャジクモ類|シャジクモ綱]] {{Sname||Charophyceae}} {{AUY|Rabenhorst|1863}} (狭義) |
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***[[コレオケーテ藻綱]] {{Sname||Coleochaetophyceae}} {{AUY|C.Jeffrey|1982}} |
|||
***[[接合藻|ホシミドロ綱]] {{Sname||Zygnematophyceae}} {{AUY|Round ex Guiry|2013}} ([[接合藻綱]] {{Sname||Conjugatophyceae}} {{AUY|Engler|1892}}) |
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***(陸上植物 embryophytes) |
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|} |
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==ギャラリー== |
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*緑藻類(狭義) |
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<gallery style="font-size:80%;"> |
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**[[クラミドモナス]]目 [[:w:Chlamydomonadales|Chlamydomonadales]] :クラミドモナス |
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ファイル:Pyramimonas sp.jpg|{{Snamei||Pyramimonas}} ([[プラシノ藻]]) の走査型電子顕微鏡像 |
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**[[ボルボックス目|オオヒゲマワリ目]] [[:w:Volvocales|Volvocales]] :[[ボルボックス|オオヒゲマワリ]](ボルボックス) |
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ファイル:Picocystis_salinarum.jpg|{{Snamei||Picocystis}} ([[ピコキスティス藻綱]]) |
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**[[クロロコックム目]] [[:w:Chlorococcales|Chlorococcales]] |
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ファイル:Tetrastrum glabrum EPA.jpg|{{Snamei||Tetrastrum}} ([[トレボウクシア藻綱]]) |
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**[[ミクロスポラ目]] [[:w:Microsporales|Microsporales]] |
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ファイル:Botryococcus_braunii.jpg|{{Snamei||Botryococcus}} (トレボウクシア藻綱) |
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**[[シリンドロカプサ目]] [[:w:Cylindrocapsales|Cylindrocapsales]] |
|||
ファイル:Microthamnion.jpg|{{Snamei||Microthamnion}} (トレボウクシア藻綱) |
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**[[ヨコワミドロ目]] [[:w:Sphaeropleales|Sphaeropleales]] :[[アミミドロ]]・[[クンショウモ]]・[[イカダモ]](セネデスムス) |
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ファイル:Ulva_lactuca.jpeg|[[アオサ]]属 ([[アオサ藻綱]]) |
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**[[カエトフォラ目]] [[:w:Chaetophorales|Chaetophorales]] |
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ファイル:Valonia_macrophysa_40400808.jpg|[[バロニア]]属 (アオサ藻綱) |
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**カエトペルチス目 [[:w:Chaetopeltidales|Chaetopeltidales]] |
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ファイル:Acetabularia meditarranea.jpg|[[カサノリ属]] (アオサ藻綱) |
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**サヤミドロ目 [[:w:Oedogoniales|Oedogoniales]] |
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ファイル:Halimeda_copiosa_at_10_meters_depth_in_shallow_cave.jpg|サボテングサ属 (アオサ藻綱) |
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上記下方4目以外の、クロロコックム目などのいくつかの目は、クラミドモナス目(もしくはオオヒゲマワリ目)として、ひとつの目にまとめるよう提言がなされている。 |
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ファイル:Stigeoclonium_sp_zugespitzte_seitenzweige.jpeg|{{Snamei||Stigeoclonium}} ([[緑藻綱]]) |
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ファイル:Pediastrum duplex.jpg|{{Snamei||Lacunastrum}} (緑藻綱) |
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ファイル:Scenedesmus quadricauda close up DIC Image-1.tif|{{Snamei||Desmodesmus}} (緑藻綱) |
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ファイル:Gonium formosum phv.jpg|{{Snamei||Gonium}} (緑藻綱) |
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2020年9月25日 (金) 14:02時点における版
緑藻(りょくそう、英: Green algae)は、緑色植物のうち、陸上植物(コケ植物と維管束植物)を除いたものに対する一般名である。クロレラやイカダモ、ミカヅキモの様な微細藻から、アオサやマリモ、カサノリの様な大型藻まで含まれる。系統的には単系統ではなく、一部の緑藻(アオミドロなど)は、他の緑藻に対してよりも陸上植物に近縁である(系統樹参照)。そのため現在では、この意味での緑藻を分類群として扱うことはない。ただし緑藻の多くが緑藻植物門(学名: Chlorophyta)に、さらにその一部が緑藻綱(学名: Chlorophyceae)に分類される。日本語では、これら分類群の名前(緑藻植物門、緑藻綱) と、一般名としての緑藻が混同されることがあり、それを避けるために一般名としての緑藻(本項で扱っている意味での緑藻)に対して「緑色藻(りょくしょくそう)」の名が使われることもある[1][2]。
緑藻の中には、単細胞のものから、群体、多細胞、多核嚢状のものまで多様な種が含まれる(右図)。ただし多細胞であっても、陸上植物にみられるほどの複雑な組織・器官分化はみられない。クロロフィルaとbを含む2重膜に囲まれた色素体(葉緑体)をもち、デンプンを色素体内に貯蔵する。有性生殖様式は多様であるが、胚 (母体中に保持された、接合子から発生した多細胞の幼体) をもつことはない。海から淡水まで水域に分布するものが多いが、土壌や岩上など陸域に生育するものもいる。また塩湖や氷雪など特殊環境に生育する種も知られている。地衣類や繊毛虫、ヒドラなどに共生している種もいる。緑藻の中には、アオノリやクロレラなど食用や健康食品として利用されている例がある。
特徴
体制
緑藻の栄養体 (通常時の体) の体制 (体のつくり) は極めて多様であり、単細胞、群体、多細胞、多核嚢状などがある[1][3][4][5][6]。また栄養体に鞭毛をもつものもいる。このように多様な体制は、以下のように類別できる。古くは、このような体制の系列に応じた進化仮説が一般的に受け入れられており、これに基づいた分類体系が用いられていた (下記参照)。
鞭毛性単細胞〜群体
緑藻の中には、栄養細胞が鞭毛をもち遊泳するものがいる[1][3][4][5][6] (下図)。その多くは単細胞性 (unicellular) であり、クラミドモナス属 (Chlamydomonas;下図) やドゥナリエラ属 (Dunaliella)、ヘマトコックス属 (Haematococcus;下図) など緑藻綱オオヒゲマワリ目に属するものが多いが (下図)、プラシノ藻と総称される緑色植物の初期分岐群の中にも、ミクロモナス属 (Micromonas) やネフロセルミス属 (Nephroselmis)、テトラセルミス属 (Tetraselmis) など例が少なくない[5]。ストレプト植物 (陸上植物につながる系統群) の中では、唯一メソスティグマ属 (Mesostigma) が単細胞鞭毛性である[5]。一方、オオヒゲマワリ目の中にはゴニウム属 (Gonium;下図)、パンドリナ属 (Pandorina)、オオヒゲマワリ属 (ボルボックス属;Volvox;下図) など群体性 (colonial) である種も含まれる[1][5][6] (下図)。これらの"群体"は個体としての統一性をもち細胞分化を示すため、"多細胞体" ととして扱われることも多い[7][8]。またアオサ藻綱のウミイカダモ属 (Oltmannsiellopsis) の中にも、鞭毛性の単純な群体を形成する種がいる[9]。
不動性単細胞〜群体
緑藻の中には、栄養体が明瞭な運動能を欠く単細胞性または群体性であるものが多く知られている[1][3][4][5][6] (下図)。ふつう鞭毛を欠くが、ヨツメモ属 (Tetraspora;緑藻綱) のように非運動性の鞭毛 (偽鞭毛、pseudocilium, pseudoflagellum) をもつものもいる。単細胞性では、クロレラ属 (Chlorella;トレボウクシア藻綱) やクロロコックム属 (Chlorococcum;緑藻綱) など球形であるものが多いが、テトラエドロン属 (Tetraedron;緑藻綱;下図) のように多面体のものや、ミカヅキモ属 (Closterium;接合藻) のように紡錘形のもの、アワセオウギ属 (Micrasterias;接合藻;下図) のようにさらに複雑な形をしたものもいる。また群体の形式としては、ヨツメモ属のように寒天質基質内に多数の細胞が散在しているパルメラ状群体 (palmelloid colony;下図) や、クロロキブス属 (Chlorokybus;クロロキブス藻綱) のように複数の細胞が3次元的に密着しているサルシナ状群体 (sarcinoid colony)、プラシノクラドゥス属 (Prasinocladus;クロロデンドロン藻綱) のように樹状になった細胞外被の先端に細胞が位置する樹状群体 (dendroid colony;下図) などがある[1][3][5][6]。また緑藻によく見られる群体様式として定数群体 (coenobium, pl. coenobia) がある。定数群体では、特定数 (基本的に2のn乗個) の細胞が特定の配列で配置しており、イカダモ類 (下図)、クンショウモ類 (緑藻綱)、テトラスツルム属 (Tetrastrum;トレボウクシア藻綱) などに見られる。イカダモ類は培養下では単細胞で増殖するがミジンコなどの捕食者混在下では定数群体を形成することが報告されており、定数群体形成は被食防御のためであると考えられている[10][11]。
多細胞性
一部の緑藻は多細胞性 (multicellular) であり、複数の細胞が密接してひとまとまりの体を形成している[1][3][4][5][6] (下図)。ただし群体性との明瞭な区分は難しい。多細胞性の緑藻の多くは糸状性 (filamentous) であり、ヒビミドロ属 (アオサ藻綱)、サヤミドロ属 (緑藻綱)、アオミドロ (接合藻綱;下図) のように無分枝であるものや、スミレモ属 (アオサ藻綱) やツルギミドロ属 (緑藻綱;下図)、コレオケーテ属 (コレオケーテ藻綱) のように分枝するものがある。またシオグサ類 (アオサ藻綱) のように大型の多核細胞からなる糸状体は特に多核有隔性 (siphonocladous) とよばれることがある[12] (下図)。ヒトエグサ、アオサ (下図)、アオノリ (アオサ藻綱)、カワノリ (トレボウクシア藻綱) などは細胞層からなる葉状 (膜状) または管状の体をもつ。シャジクモ類は柔組織性の節部と巨大な節間細胞の繰り返しからなる特異な多細胞体をもつ[3][5] (下図)。多くの場合、陸上植物のような原形質連絡は見られないが、アオサ藻綱スミレモ目、緑藻綱カエトフォラ目とサヤミドロ目、コレオケーテ藻綱、シャジクモ綱は原形質連絡を伴う多細胞体を形成する[5]。ただし陸上植物に見られるような複雑な組織・器官分化を伴う多細胞体をもつものは知られていない。
多核嚢状
緑藻の中には、カサノリ、ハネモ、イワヅタ、ミル (アオサ藻綱) など肉眼で見える大きな体ではあるものの体内に細胞隔壁がなく、ひとつながりの原形質からなるものがいる[1][3][4][5][6][12] (右図)。このような体制は、多核嚢状 (siphonous;多核性 coenocytic) とよばれる。巨大な単細胞体ともいえるし、隔壁を欠く多細胞体ともいえる。多核嚢状体をもつ緑藻のほとんどは、アオサ藻綱ハネモ目およびカサノリ目に属する。微小な多核嚢状体となる種は、緑藻綱やトレボウクシア藻綱にもわずかに知られる[13][14]。
細胞外被
緑藻の細胞は、明瞭な細胞外被を欠く裸のものや鱗片で覆われるものもあるが、多くは細胞壁で囲まれている[1][3][5][6][15]。プラシノ藻と総称される緑藻は、糖タンパク質を含む有機質の鱗片で覆われていることが多い[16][17]。これと相同な鱗片は、シャジクモ綱やアオサ藻綱の一部の鞭毛細胞にも見られることから (これらの緑藻は互いにかなり遠縁である)、鱗片の存在は緑色植物全体における原始形質であると考えられている[16][17]。細胞壁はセルロースを含むことが多いが、マンナンやキシランなど他の多糖を主とするもの (例:アオサ藻綱ハネモ目など) や、糖タンパク質からなるもの (例:クラミドモナスなど) もある[1][3][5][15]。細胞壁の性状は多様であり、薄い構造が細胞膜に密着しているもの (テカ theca) や、細胞を緩く囲んでいるもの (ロリカ lorica) もある。細胞壁が石灰化 (炭酸カルシウムが沈着) している例もあり、サボテングサやカサノリ (アオサ藻綱)、Coccomoans (緑藻綱)、シャジクモ類 (右図) などが知られる[5][6][18]。
細胞構造
緑藻の多くは単核性 (1細胞に1個の核をもつ) であるが、マリモやイワヅタ (アオサ藻綱) など多核性 (多数の核をもつ) であるものもいる[1][3][5][6]。核分裂様式はグループによって異なっており、緑藻植物ではふつう閉鎖型 (核分裂時に核膜が維持される)、ストレプト植物では開放型 (核分裂時に核膜が消失する) である[1][5]。極にはふつう中心体が存在する[1][3][5]。緑藻植物の多くでは、中間紡錘体が比較的早期に崩壊し、娘核が接近する (アオサ藻綱などを除く)[1][5]。細胞質分裂様式は極めて多様であり、単純な細胞膜の環状収縮によるものが多いが、緑藻綱サヤミドロ目やシャジクモ綱などでは細胞板の遠心的発達による分裂を行う[1][5][6]。また分裂面にファイコプラスト (分裂面に平行な微小管群) が生じるものや (緑藻綱など)、陸上植物と同様にフラグモプラスト (隔膜形成体;分裂面に垂直な微小管群) が生じるもの (コレオケーテ藻綱など)、また特にこのような微小管が生じないもの (アオサ藻綱など) がある[1][5][6]。
葉緑体の形態は多様であり、カップ状 (杯状) のものから星状、帯状、網状などがある。また1細胞あたりの数も1個のものから多数のものまである[1][5][6]。葉緑体 (色素体) は2枚の包膜で囲まれ、チラコイドは複数枚が重なってラメラ (チラコイドラメラ) を形成している[1][3][5][6] (右図)。陸上植物のようにグラナ (円盤状のチラコイドが多数重なったものであり、複数のグラナがチラコイドで連結される) をもつものは少ない (シャジクモ類など)[5]。葉緑体中にはしばしばピレノイドが存在する[3][5][6]。ピレノイドは主にルビスコ (光合成において二酸化炭素を固定する酵素) からなり、効率的な二酸化炭素固定に働いていると考えられている[19]。またクラミドモナス (緑藻綱) では、ピレノイドの高次構造を形成するタンパク質 (EPYC1) も報告されている[19]。ピレノイドはふつうデンプン鞘に覆われおり、基質に膜状のチラコイドが貫通するものや管状のチラコイドが陥入するもの、細胞質基質を伴う葉緑体膜が陥入するもの、陥入構造を欠くものなどの多様性がある[20] (右図)。貯蔵多糖はデンプン (アミロースとアミロペクチン) であり、色素体中に貯蔵される[3][5] (右図)。色素体DNAはふつう色素体中に散在しているが[21]、イワヅタ属 (アオサ藻綱) などではピレノイド中に局在する[3][22]。光合成能を欠く緑藻は、白色体の形で色素体をもつ。アオサ藻綱ハネモ目の一部は、葉緑体と共にアミロプラスト (デンプンを多く貯蔵した非光合成性の色素体) をもつ[3][5]。
光合成色素組成は基本的には陸上植物と同様であるが、大きな多様性を示す。クロロフィルは a と b をもち、またジビニルプロトクロロフィリド (MgDVP) をもつものもいる[23]。カロテノイドとしては基本的にルテイン、ゼアキサンチン、ビオラキサンチン、ネオキサンチン、β-カロテンをもつが、ロロキサンチンやα-カロテンをもつものもおり、さらに一部の種はプラシノキサンチンやシフォナキサンチンなど特異なカロテノイドをもつ[23][24][25]。ピコキスティス属 (ピコキスティス藻綱) は極めて特異なカロテノイドをもち、モナドキサンチン、アロキサンチン、ディアトキサンチンなどは緑色植物の中でこの藻類だけから報告されている[26]。また一部の緑藻は、強光防御用のカロテノイドを大量に蓄積して赤くなる[27] (下図)。このような緑藻は、浅水域や陸上域に生育しているものが多い。
緑藻の中には、光合成能を二次的に失ったものがわずかに知られている。このような緑藻はふつう細胞小器官としての色素体は残している (白色体)[28][29]。例として、ポリトマ属 (Polytoma; 緑藻綱) や プロトテカ (トレボウクシア藻綱) がある。
鞭毛
緑藻の中には、少なくとも生活環の一時期に鞭毛を持つものが少なくないが、接合藻のように鞭毛細胞を失ったと考えられている例も多い。鞭毛細胞はふつう等長・等運動性の鞭毛をもつ (等鞭毛性 isokont) が、長さ・運動が異なる鞭毛を前後に伸ばしている種もいる (プラシノ藻の一部)[1][3][5][6][17]。鞭毛数は2または4本のものが多いが、それ以上のものもおり (プラシノ藻の一部、アオサ藻綱ハネモ目、緑藻綱サヤミドロ目)、また鞭毛を1本のみもつものもいる (プラシノ藻の一部)。
緑藻の中で、ストレプト植物に属するもの (クレブソルミディウム藻綱、コレオケーテ藻綱、シャジクモ綱など) の鞭毛細胞は、ふつう細胞亜頂端から2本の鞭毛が平行に伸びている。鞭毛装置では微小管性鞭毛根の1つが発達し、多層構造体 (multilayred structure, MLS) を形成している[1][3][5][6]。一方、緑藻植物に属する緑藻の鞭毛細胞は、細胞頂端から対向して伸びる2または4本の鞭毛をもつものが多く (トレボウクシア藻綱、アオサ藻綱、緑藻綱)、鞭毛装置は回転対称の交叉型である[1][3][5][6]。プラシノ藻と総称される緑色植物の初期分岐群では鞭毛細胞の形態や鞭毛装置は多様である。ストレプト植物の鞭毛細胞では、メソスティグマ藻綱以外は眼点を欠くが、緑藻植物では鞭毛細胞の色素体中に眼点をもつ例が多い。また緑藻を含む緑色植物の鞭毛移行部には、星状構造 (stellate structure) とよばれる特異な構造が存在する[1][5] (右図)。
生殖
無性生殖
緑藻の多くは、無性生殖を行う。無性生殖の様式は多様であり、二分裂 (出芽など不等分裂を含む)、胞子、藻体の分断化などがあり、特に胞子による無性生殖を行うものが多い[1][3][5][6][30]。胞子の形式としては鞭毛をもつ遊走子 (zoospore)、遊走子に似た細胞構造をもつが鞭毛をもたない不動胞子 (aplanospore)、遊走子的な特徴をもたず母細胞とほぼ同じ形態をした自生胞子 (autospore) などがある。また定数群体をもつもの (イカダモ類など) では、群体を構成する個々の細胞が分裂して群体を形成するが、このような群体は自生群体 (autocolony) とよばれる。
緑藻の中には、丈夫な細胞壁をもつ休眠細胞を形成するものもいる[3][5][6][30]。このような休眠細胞はアキネート (akinete) ともよばれる。また緑藻の中には、有性生殖における配偶子合体の結果形成された接合子が休眠細胞となるものが多い (下記)。
有性生殖
緑藻の中にはさまざまな形式の有性生殖が知られているが、有性生殖が見つかっていない (もしくは欠如した) ものも多い。配偶子合体様式としては、同形同大の配偶子 (同形配偶子 isogamete) が合体する同形配偶 (同形配偶子接合、isogamy)、大小の差がある配偶子 (異形配偶子 anisogamete) が合体する異形配偶 (異形配偶子接合、anisogamy) がある[3][5][6][30]。異形配偶の場合は大型の配偶子を雌性、小型の配偶子を雄性とよぶ。同形配偶の場合は雌雄ではなく、ふつう+ (プラス) と− (マイナス) で表す。また異形配偶の一型として卵生殖 (oogamy) があり、雌性配偶子が大型で不動性になっている。この場合雌性配偶子を卵 (egg; 卵細胞 egg cell)、雄性配偶子を精子 (sperm) とよぶ[3][5][6][30]。特殊な配偶子合体様式として、接合藻に見られる接合がある。接合においては、対応する接合型の栄養細胞 (通常時の細胞) が対合し、原形質が融合することで配偶子合体が起こる[3][5]。
配偶子を形成する構造は、配偶子囊 (gametangium, pl. gametangia) とよばれる。陸上植物では配偶子囊は多細胞の構造であるが、緑藻においては単一の細胞が配偶子囊になり、配偶子は母細胞の細胞壁のみに囲まれている[3][5][6][30]。卵生殖を行う緑藻では、卵を形成する配偶子囊は生卵器 (oogonium, pl. oogonia)、精子を形成する配偶子囊は造精器 (antheridium, pl. antheridia) とよばれる。例外的に、シャジクモ類の配偶子囊 (生卵器、造精器) は多細胞からなる複雑な構造をもつ (右図)。
配偶子合体によって生じた接合子は強固な細胞壁に囲まれて休眠構造となることが多い。このような構造は、分類群によって休眠接合子 (hypnozygote)、接合胞子 (zygospore)、卵胞子 (oospore) などとよばれる[3][5][6][30]。このような接合子は発芽時に減数分裂を行い (接合子減数分裂)、単相 (ゲノムを1セットのみもつ) である栄養体を形成することが多い (緑藻綱の多く、接合藻、シャジクモ綱など)。このような生活環では単相の世代のみが存在し (接合子のみが複相)、単相単世代型生活環 (haplontic life cycle) とよばれる。アオミドロ型またはクラミドモナス型生活環ともよばれる[3]。
一部の緑藻では、接合子が発芽して複相 (ゲノムを2セットもつ) の栄養体を形成する[3][5][6][30]。ミルやイワヅタ (アオサ藻綱) では、この複相の栄養体が減数分裂することで単相の配偶子を形成する (配偶子減数分裂) と考えられている (異論もある[31])。つまりこのような生活環では複相の世代のみが存在し (配偶子のみが単相)、複相単世代型生活環 (diplontic life cycle) とよばれる。ミル型生活環ともよばれる[3]。
またアオサやシオグサ、ハネモ (アオサ藻綱) などでは、このような複相の栄養体は減数分裂によって配偶子ではなく胞子を形成する[3][5][6][30] (胞子減数分裂)。そのためこの栄養体は胞子体 (sporophyte) とよばれる。単相の胞子は栄養体を形成し、この単相の栄養体は配偶子を形成する。そのためこの栄養体は配偶体 (gametophyte) とよばれる。配偶子は合体して接合子となり、再び胞子体を形成する。このような生活環では、複相の胞子体と単相の配偶体という2つの世代の間で世代交代 (alternation of generations) を行い、単複世代交代型生活環 (haplodiplontic or diplohaplontic life cycle) ともよばれる。世代交代を行うものでは、胞子体と配偶体がほぼ同形同大である同形世代交代 (isomorphic alternation of generations; シオグサ型生活環) と、胞子体と配偶体が明らかに異形である異形世代交代 (anisomorphic alternation of generations) がある[3]。アオサやシオグサ (アオサ藻綱)、カエトフォラ目 (緑藻綱) は同形世代交代を行う。また異形世代交代を行うものの中で、ヒトエグサやハネモ (アオサ藻綱) では配偶体の方が大型であり (ヒトエグサ型生活環)、ツユノイト (アオサ藻綱) では胞子体の方が大型である (ツユノイト型生活環)[3]。
生態
緑藻の多くは水界に生育している[3][5][6]。淡水では、緑藻綱やトレボウクシア藻綱、接合藻に属する微細藻が植物プランクトンや底生藻として多く見られる (下図)。海ではマミエラ藻綱などプラシノ藻と総称される緑藻が植物プランクトンとして多いことがあり、またアオサ藻綱に属する大型藻は沿岸域に海藻として多く見られる[32] (下図)。ドゥナリエラ属 (緑藻綱) のように、塩分濃度が高い塩湖に生育する緑藻も知られている[5] (下図)。
緑藻の中には、陸上に生育する種も少なくない。岩や壁、樹皮、土壌などの表面に生育する気生藻は、トレボウクシア藻綱またはクレブソルミディウム藻綱に属する緑藻であることが多い[5][33][34] (上図)。また南極の岩の中に生育する緑藻もいる[35]。特異な環境としては、降雪や氷河上で生育する緑藻も知られている[36][37] (上図)。
他の生物と共生する例も多く知られている。地衣類の共生藻は、多くの場合トレボウクシア藻綱に属する緑藻であるが、スミレモ類 (アオサ藻綱) が共生藻となっていることもある[38][39] (上図)。他にも繊毛虫や太陽虫、アメーバ類、ヒドラ、無腸動物、サンショウウオなどに緑藻が共生していることがある[5][40][41][42] (上図)。またアオサ藻綱の中には、ナマケモノの毛や、スガイの貝殻に特異的に付着しているものもいる[43][44] (上図)。
人間との関わり
アオサ藻綱に属するヒトエグサやアオノリ、クビレヅタなどは食用とされ、養殖されている例もある[45][46][47] (下図)。またクロレラ (トレボウクシア藻綱) は大量培養され、健康食品や養殖魚介類の初期餌料として用いられている[48][49]。ドゥナリエラ属 (緑藻綱) が産生するβ-カロテンやグリセロール、ヘマトコックス (緑藻綱) が産生するアスタキサンチンなどが商業的に利用される (利用されていた) ことがある[50][51] (下図)。ボトリオコックスが産生する炭化水素 (ボトリオコッセン) はハンドクリームに利用されている[52]。
特定の緑藻 (特に Raphidocelis subcapitata = Selenastrum capricornutum) の特定の株は、AGP (Alga Growth Potential) 試験 (藻類生産力試験、藻類生産潜在能力試験) とよばれる水質試験に広く用いられている[53]。
アオサ属 (アオサ藻綱) の中には、基質から離れて浮遊した状態で大増殖するものがおり、このような現象はグリーンタイド (緑潮、green tide) とよばれる[54] (下図)。緑潮は景観悪化や悪臭、生態系への悪影響などを引き起こす。また Cephaleuros (アオサ藻綱) の中には被子植物の葉に寄生するものも知られており、チャノキ (茶) やコーヒーノキなどの害をなすことがある[55] (下図)。従属栄養性のプロトテカ (トレボウクシア藻綱) はふつう土壌や汚水などに自由生活しているが、ヒトなど哺乳類に日和見感染してプロトテカ症を引き起こすことがある[56] (下図)。
系統と分類
広義の緑藻は緑色植物から陸上植物を除いたものに対する名称であり、下記系統樹で示すように単系統群ではない (接合藻など一部の緑藻は他の緑藻に対してよりも陸上植物に近縁である;下記系統樹参照)[2]。そのため現在では、この範囲での緑藻を1つの分類群として扱うことはない。
古典的な分類
古くは、ほとんどの緑藻は単一の分類群 (緑藻綱) に分類されていた[57][58]。ただしシャジクモ類は特異な多細胞体をもつため、他の緑藻とは分けて独立の綱や門に分類されることも多かった[58][59]。また接合藻も接合という特異な有性生殖様式をもつため、独立の綱とされることがあった[58]。
伝統的に、緑藻の系統関係は鞭毛性、糸状性、葉状など体制 (大まかな体のつくり) に基づいて考えられていた[3][58][59][60]。また葉緑体や光合成色素、貯蔵多糖などの共通性から、陸上植物は緑藻から生じたと考えられていた (つまり緑藻は単一の分類群にまとめられていたが単系統群と考えられていたわけではない)。陸上植物の祖先的な緑藻として、陸生で比較的複雑な分枝糸状緑藻であるフリッチエラ属 (Fritschiella) などが想定されていた[3] (現在ではフリッチエラ属は緑藻綱カエトフォラ目に分類されており、陸上植物に近縁であるとは考えられていない)。
また緑藻はその体制に基づいて分類されていた[58][59][60]。緑藻の古典的な分類体系の一例を下表に示す。この体系は、緑藻の分類体系が大きく変更される直前のころのものである[3]。
古典的な緑藻の分類体系の1例[3]. 各分類群について、上段に古典的な分類体系における分類群の扱いや特徴を、下段に2020年現在の分類体系におけるその分類群の扱いについて記した.
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現在の分類
上記のように緑藻の分類およびその系統仮説は基本的にその体制に基づいて考えられていた。しかし1960年代から、電子顕微鏡を用いた微細構造学特徴 (鞭毛装置や細胞分裂様式) が緑藻の系統関係推定に用いられるようになった[75][76][77]。その結果、伝統的な分類体系は緑藻の系統関係を反映したものではないと考えられるようになり、1980年代にはこのような微細構造学的特徴に基づく分類体系が受け入れられるようになった[78]。さらに1990年代以降の分子系統学的研究も基本的に微細構造学的特徴に基づく分類体系を支持しており (下図)、またさらに詳細な分類体系の改訂が進んでいる (下表)[65]。
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緑色植物内の系統仮説の1例[26][65][79][80][81][82]. 一番下の陸上植物以外は緑藻と総称される. |
ギャラリー
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Pyramimonas (プラシノ藻) の走査型電子顕微鏡像
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Botryococcus (トレボウクシア藻綱)
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Microthamnion (トレボウクシア藻綱)
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バロニア属 (アオサ藻綱)
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カサノリ属 (アオサ藻綱)
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サボテングサ属 (アオサ藻綱)
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Lacunastrum (緑藻綱)
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Desmodesmus (緑藻綱)
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Gonium (緑藻綱)
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ミカヅキモ属 (接合藻)
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イボマタモ属 (接合藻)
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アワセオオギ属 (接合藻)
-
シャジクモ属 (シャジクモ綱)
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 渡邊 信 & 中山 剛 (1999). “緑色植物門”. In 千原 光雄 (編). バイオディバーシティ・シリーズ (3) 藻類の多様性と系統. 裳華房. pp. 260–267. ISBN 978-4785358266
- ^ a b 巌佐 庸, 倉谷 滋, 斎藤 成也 & 塚谷 裕一 (編) (2013). “緑色藻”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. pp. 1471–1472. ISBN 978-4000803144
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc 千原 光雄 (1997). “緑藻綱”. 藻類多様性の生物学. 内田老鶴圃. pp. 253–293. ISBN 978-4753640607
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