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「グアニンヌクレオチド交換因子」の版間の差分

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'''グアニンヌクレオチド交換因子''' (ぐあにんぬくれおちどこうかんいんし、guanine nucleotide exchange factor, GEF)とは、[[グアノシン二リン酸]] (GDP)の放出を促進して[[グアノシン三リン酸]] (GTP)を結合させることによって、[[GTPアーゼ]]の活性化を行うタンパク質またはタンパク質ドメインのことである。<ref>{{Cite journal|date=January 2013|title=Regulation of small GTPases by GEFs, GAPs, and GDIs|journal=Physiological Reviews|volume=93|issue=1|pages=269-309|DOI=10.1152/physrev.00003.2012|doi=10.1152/physrev.00003.2012|PMID=23303910|pmid=23303910}}</ref> 様々な関連のない[[タンパク質ドメイン|構造ドメイン]]がGEFとしての活性をすことが示されている。一部のGEFは複数種類のGTPアーゼを活性化することができるが、その他は1種類のGTPアーゼに対して特異的に機能する。
'''グアニンヌクレオチド交換因子''' (ぐあにんぬくれおちどこうかんいんし、guanine nucleotide exchange factor, GEF)とは、[[グアノシン二リン酸]] (GDP)の放出を促進して[[グアノシン三リン酸]] (GTP)を結合させることによって、[[GTPアーゼ]]の活性化を行う[[タンパク質]]または[[タンパク質ドメイン]]のことである。<ref name=":0">{{cite journal|date=January 2013|title=Regulation of small GTPases by GEFs, GAPs, and GDIs|journal=Physiological Reviews|volume=93|issue=1|pages=269-309|doi=10.1152/physrev.00003.2012|pmid=23303910|vauthors=Cherfils J, Zeghouf M}}</ref>様々な関連のない構造ドメインがGEFとしての活性をことが示されている。一部のGEFは複数種類のGTPアーゼを活性化することができるが、その他は1種類のGTPアーゼに対して特異的に機能する。


== 機能 ==
== 機能 ==
[[ファイル:GTPase_Activation.png|サムネイル|GEFによるGTPアーゼ活性化の模式図]]
[[File:GTPase Activation.png|thumb|GEFによるGTPアーゼ活性化の模式図]]
グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)は、GTPアーゼの活性化に関与するタンパク質やタンパク質ドメインである。GTPアーゼは細胞内[[シグナル伝達|シグナル伝達経路]]において分子スイッチとして機能し、多くの下流のターゲットを持っている。最もよく知られているGTPアーゼは[[低分子量GTPアーゼ|Rasスーパーファミリー]]であり、細胞の[[細胞分化|分化]]、増殖、[[細胞骨格]]の組織、[[小胞|小胞輸送]]、[[細胞核|核]]輸送といった必須の細胞プロセスに関与している。<ref name="Alberts et al 2002">{{cite book|author=Bruce Alberts|title=Molecular Biology of the Cell|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK26822/#A2855|year=2002|accessdate=12 January 2011|publisher=Garland Science|isbn=0815332181|pages=877-|display-authors=etal}}</ref>GTPアーゼはGTPを結合しているとき活性化状態、GDPを結合しているとき不活性状態であり、その活性はGEFと[[GTPアーゼ活性化因子]](GTPase activating protein, GAP)によって制御される。<ref name="Bourne_1990">{{cite journal|date=November 1990|title=The GTPase superfamily: a conserved switch for diverse cell functions|journal=Nature|volume=348|issue=6297|pages=125-32|doi=10.1038/348125a0|pmid=2122258|vauthors=Bourne HR, Sanders DA, McCormick F}}</ref>

GTPアーゼからのGDPの解離は、きわめてゆっくりとしたものである。<ref name="Bourne_1990" />GEFの結合によって基質のGTPアーゼからのGDPの解離が触媒され、その位置にGTP分子が結合する。GEFはGDP解離の促進のために機能し、細胞質のGTP:GDP比は10:1とGTPの方がはるかに高いために、GTPアーゼからGDPが解離した後、一般的にその位置に結合するのはGTPである。GTPアーゼへのGTPの結合によってGEFが解離し、GTPアーゼが活性化される。<ref name=":1">{{cite journal|date=April 1994|title=Guanine-nucleotide exchange factors: a family of positive regulators of Ras and related GTPases|journal=Current Opinion in Cell Biology|volume=6|issue=2|pages=204-11|doi=10.1016/0955-0674(94)90137-6|pmid=8024811|vauthors=Feig LA}}</ref><ref name="Quilliam_2002">{{cite journal|year=2002|title=A growing family of guanine nucleotide exchange factors is responsible for activation of Ras-family GTPases|journal=Progress in Nucleic Acid Research and Molecular Biology|volume=71|pages=391–444|doi=10.1016/S0079-6603(02)71047-7|pmid=12102558|vauthors=Quilliam LA, Rebhun JF, Castro AF}}</ref>このようにGEFは、GTPアーゼとGDPとの相互作用を不安定化するとともに、GTP分子が結合するまで、[[ヌクレオチド]]が結合していない状態のGTPアーゼを安定化する。<ref name="Cherfils_1999">{{cite journal|date=August 1999|title=GEFs: structural basis for their activation of small GTP-binding proteins|journal=Trends in Biochemical Sciences|volume=24|issue=8|pages=306-11|doi=10.1016/S0968-0004(99)01429-2|pmid=10431174|vauthors=Cherfils J, Chardin P}}</ref> GAPは反対に、GTPアーゼのGTP加水分解速度を増加させることによってGTPアーゼを不活性化する。GDPは、GEFによって解離が促進されるまで、不活性状態のGTPアーゼに結合したままである。<ref name="Bourne_1990" />

GEFの局在によって、特定のGTPアーゼが細胞内のどの場所で活性化されるかを決定することができる。例えば、[[Ran]]のGEFである[[RCC1]]は核に、一方RanGAPは[[細胞質]]に存在し、タンパク質の核内・核外輸送を調節している。<ref name="Seki_1996">{{cite journal|date=August 1996|title=RCC1 in the Ran pathway|journal=Journal of Biochemistry|volume=120|issue=2|pages=207-14|doi=10.1093/oxfordjournals.jbchem.a021400|pmid=8889801|vauthors=Seki T, Hayashi N, Nishimoto T}}</ref> RCC1は核内で、タンパク質の核外輸送のためにRan-GDPをRan-GTPに変換し活性化する。細胞質に移行し、RanGAPによってRan-GTPがRan-GDPに変換されると、積み荷タンパク質(protein cargo)は降ろされる。

==機構==
GTPアーゼ活性化のメカニズムは、GEFごとにさまざまである。しかしながら、GEFがどのようにGタンパク質のヌクレオチド結合部位のコンフォメーションを変化させるかについてはいくつかの共通点がある。GTPアーゼはswitch 1、switch 2と呼ばれる2つのループ領域を持っており、これらは結合したヌクレオチドの両側に位置している。これらの領域とGTPアーゼのPループ(phosphate-binding loop)はヌクレオチドの[[リン酸基]]と配位[[マグネシウム]]イオンと相互作用し、ヌクレオチドが高いアフィニティで結合するよう保っている。GEFの結合は、GTPアーゼのPループとスイッチ領域のコンフォメーションを引き起こす。その一方、残りの部分のタンパク質構造は大きく変化しない。GEFの結合は物理的にマグネシウムやリン酸の結合部位をふさいでしまうが、[[核酸|塩基]]部分が結合する領域はアクセスが可能である。GEFがGTPアーゼに結合したとき、リン酸基部分が最初に解放され、GTP分子が入ってくることによってGEFは置き換えられる。この基本的なスキームはGEFに共通であるが、GTPアーゼの領域との個々の相互作用の様式についてはそれぞれに異なっている。<ref>{{cite journal|date=November 2001|title=The guanine nucleotide-binding switch in three dimensions|journal=Science|volume=294|issue=5545|pages=1299-304|doi=10.1126/science.1062023|pmid=11701921|vauthors=Vetter IR, Wittinghofer A}}</ref>

==構造と特異性==
いくつかのGEFは1種類のGTPアーゼに対して特異的に働くが、他のものは複数のGTPアーゼの基質を持っている。RasスーパーファミリーのGTPアーゼは異なる[[サブファミリー]]間でも共通したGTP結合ドメインを持っているが、GEFのほうはこれは当てはまらない。異なるファミリーのGEFが異なるRasのサブファミリーに対応する。GEFの機能ドメインはファミリー間で構造的類似性がなく、配列にも[[相同]]性がない。これらのGEFドメインは、類似した機能と基質をもつにもかかわらず、進化的に無関係であると考えられる。<ref name="Cherfils_1999" />

===CDC25ドメイン===
CDC25ホモロジードメイン、もしくはRasGEFドメインは多くの[[Rasタンパク質|Ras]]のGEFの触媒ドメインであり、Ras GTPアーゼを活性化する機能を持つ。CDC25ホモロジードメインは約500アミノ酸から構成され、[[出芽酵母]]''Saccharomyces cerevisiae''のCDC25タンパク質に最初に見つかったものである。<ref>{{cite journal|date=July 1998|title=The structural basis of the activation of Ras by Sos|journal=Nature|volume=394|issue=6691|pages=337-43|doi=10.1038/28548|pmid=9690470|vauthors=Boriack-Sjodin PA, Margarit SM, Bar-Sagi D, Kuriyan J}}</ref>

===DHドメインとPHドメイン===
Dbl型の[[RhoファミリーGタンパク質|Rho]]GEFは[[真核生物]]の起源の時点から存在し、高度に適応的な細胞シグナリングの仲介因子として進化した。<ref name="Fort_2017">{{cite journal|date=June 2017|title=The Evolutionary Landscape of Dbl-Like RhoGEF Families: Adapting Eukaryotic Cells to Environmental Signals|journal=Genome Biol Evol|volume=9|issue=6|pages=1471-1486|doi=10.1093/gbe/evx100|pmid=28541439|pmc=5499878|vauthors=Fort P, Blangy A}}</ref> [[ヒト]]では71種類のDbl RhoGEFが同定されており、20のサブファミリーに分類される。この71種類は初期の[[脊椎動物]]には既に存在しており、20のファミリーのほとんどは初期の[[後生動物]]に既にみられる。[[哺乳類]]のDblファミリータンパク質の多くは組織特異的であり、後生動物におけるDblファミリータンパク質の数は細胞シグナリングの複雑さと比例している。Dbl homology (DH)ドメインとPleckstrin homology (PH)ドメインはほとんどのDblファミリーのメンバーに存在し、Rho GTPアーゼに対するGEFとしてはたらく。<ref>{{cite journal|date=December 2001|title=Dbl family guanine nucleotide exchange factors|journal=Trends in Biochemical Sciences|volume=26|issue=12|pages=724-32|doi=10.1016/S0968-0004(01)01973-9|pmid=11738596|vauthors=Zheng Y}}</ref> DHドメイン、もしくはRhoGEFドメインは、GEFとしての触媒機能を担う。PHドメインはDHドメインの細胞内ターゲティングに関与している。一般的にPHドメインは[[リン脂質]]との相互作用を通して[[生体膜|膜]]への結合を調節すると考えられているが、その機能はタンパク質ごとに異なると示されており、<ref name="Schmidt_2002">{{cite journal|date=July 2002|title=Guanine nucleotide exchange factors for Rho GTPases: turning on the switch|journal=Genes & Development|volume=16|issue=13|pages=1587-609|doi=10.1101/gad.1003302|pmid=|vauthors=Schmidt A, Hall A}}</ref><ref name="Soisson_1998">{{cite journal|date=October 1998|title=Crystal structure of the Dbl and pleckstrin homology domains from the human Son of sevenless protein|journal=Cell|volume=95|issue=2|pages=259-68|doi=10.1016/S0092-8674(00)81756-0|pmid=9790532|vauthors=Soisson SM, Nimnual AS, Uy M, Bar-Sagi D, Kuriyan J}}</ref> また、このPHドメインはRhoGEF以外のタンパク質にも存在している。PHドメインはDHドメインのC末端の直後に位置しており、ほとんどのDblファミリータンパク質において、この2つのドメインが活性に最低限必要な構造的ユニットとなっている。

===DHR2ドメイン===
DHR2ドメインは、RhoGEFのうちのDOCKファミリーの触媒ドメインである。DOCKファミリーはDblファミリーとは別のグループであり、DHドメインとは構造的にも配列的にも関連性はない。これまでに11のDOCKファミリーのメンバーが同定されており、RacとCdc42に対する活性によってサブファミリーに分類されている。DOCKファミリーのメンバーは、[[細胞遊走]]、[[形態形成]]そして[[食作用]]に関与している。DHR2ドメインは約400アミノ酸から構成される。これらのタンパク質は、もう一つの保存された領域であるDHR1ドメインを持っており、これは約250アミノ酸から構成される。DHR1ドメインはいくつかのGEFにおいて膜局在に関与することが示されている。<ref>{{cite journal|date=September 2009|title=Activation of Rho GTPases by DOCK exchange factors is mediated by a nucleotide sensor|journal=Science|volume=325|issue=5946|pages=1398-402|doi=10.1126/science.1174468|pmid=19745154|vauthors=Yang J, Zhang Z, Roe SM, Marshall CJ, Barford D}}</ref>

===Sec7ドメイン===
Sec7ドメインはARF GTPアーゼに対してGEF活性を示すドメインである。ARFタンパク質は小胞輸送に関与している。ARFのGEFは全体配列は多様であるが、保存されたSec7ドメインを有している。この200アミノ酸の領域は酵母のSec7pに相同である。<ref>{{cite journal|date=February 2000|title=Turning on ARF: the Sec7 family of guanine-nucleotide-exchange factors|journal=Trends in Cell Biology|volume=10|issue=2|pages=60-7|doi=10.1016/s0962-8924(99)01699-2|pmid=10652516|vauthors=Jackson CL, Casanova JE}}</ref>

==調節==
GEFはしばしば上流のシグナルに応答した[[アダプタータンパク質]]によってリクルートされる。GEFは複数のドメインからなるタンパク質で、これらのドメインを通じて細胞内の他のタンパク質と相互作用する。<ref name="Schmidt_2002" /> アダプタータンパク質はGEFの触媒ドメインのそばで他のドメインと相互作用することによってGEFの活性を調節する。例えば、[[分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ|MAPK/ERK経路]]におけるRasのGEFであるSOS1は、[[上皮成長因子受容体|EGF受容体]]の活性化に応答したアダプタータンパク質GRB2によってリクルートされる。SOS1はGBR2への結合によって[[細胞膜]]へ局在化され、膜に結合したRasを活性化する。<ref name="Chardin_1993">{{cite journal|date=May 1993|title=Human Sos1: a guanine nucleotide exchange factor for Ras that binds to GRB2|journal=Science|volume=260|issue=5112|pages=1338-43|doi=10.1126/science.8493579|pmid=8493579|vauthors=Chardin P, Camonis JH, Gale NW, van Aelst L, Schlessinger J, Wigler MH, Bar-Sagi D}}</ref> 他のGEF、例えばRhoのGEFであるVav1は、上流シグナルによって[[リン酸化]]されて活性化される。<ref name="Fernandez-Zapico_2005">{{cite journal|date=January 2005|title=Ectopic expression of VAV1 reveals an unexpected role in pancreatic cancer tumorigenesis|journal=Cancer Cell|volume=7|issue=1|pages=39-49|doi=10.1016/j.ccr.2004.11.024|pmid=15652748|vauthors=Fernandez-Zapico ME, Gonzalez-Paz NC, Weiss E, Savoy DN, Molina JR, Fonseca R, Smyrk TC, Chari ST, Urrutia R, Billadeau DD}}</ref> [[環状アデノシン一リン酸|cAMP]]や[[カルシウム]]のような[[セカンドメッセンジャー]]もGEFの活性化に関与することがある。<ref name = "Bourne_1990"/>

GEFと複数のGTPアーゼのシグナル伝達経路の間でクロストークが行われることも示されている。例えば、SOSはCDC25ドメインに加えてDHドメインを持っており、Rasに対するGEFとしての役割だけでなく、RhoGTPアーゼであるRac1を活性化するGEFとしても機能する。そのため、SOSはRasファミリーとRhoファミリーのシグナル伝達経路のリンクとなる。

==がん==

GEFは多くのシグナル伝達経路、とりわけ細胞増殖に関する経路における役割のために、[[悪性腫瘍|がん]]治療の潜在的な標的となる。例えば、MAPK/ERK経路の変異によって引き起こされる制御されない成長が、多くのがんの原因となっている。GEFであるSOS1はRasを活性化する。Rasの標的はRaf[[キナーゼ]]であり、Rafは多くのがんで変異がみられる[[がん遺伝子|がん原遺伝子]]である。<ref name = "Quilliam_2002"/><ref name = "Schmidt_2002"/> RhoのGEFであるVav1は、EGF受容体によって活性化され、[[膵癌|すい臓がん]]の増殖を促進することが示されている。<ref name="Fernandez-Zapico_2005" /> GEFはGTPアーゼの活性化を通してこれらの経路を制御する役割があるため、潜在的な治療標的となっている。

==例==
*'''Son of sevenless''' (SOS1) は細胞の成長を制御するMAPK/ERK経路において重要なGEFである。SOS1はEGF受容体活性化の後に細胞膜に位置するGRB2と結合する。SOS1は低分子量Gタンパク質であるRasを活性化する。<ref name="Chardin_1993" />
*'''eIF2B''' は真核生物のタンパク質の[[翻訳 (生物学)|翻訳]]を開始するのに必要な翻訳開始因子である。eIF2Bは、eIF2がタンパク質合成の開始の新たなサイクルに用いられるよう、つまりメチオニンが付加された開始[[転移RNA|tRNA]]を結合できるよう、GTP結合型へ再生する。<ref>{{cite journal|year=1994|title=The guanine nucleotide-exchange factor, eIF-2B|journal=Biochimie|volume=76|issue=8|pages=748-60|doi=10.1016/0300-9084(94)90079-5|pmid=7893825|vauthors=Price N, Proud C}}</ref>
*[[Gタンパク質共役受容体|'''Gタンパク質共役型受容体''']](GPCR)は、[[リガンド]]の結合時にGタンパク質のGEFとして機能する膜貫通受容体である。リガンドの結合はコンフォメーションの変化を引き起こし、GPCRがGTPアーゼを活性化できるようになる。<ref name="Alberts et al 2002"/>
*'''RCC1''' はRan GTPアーゼのGEFである。RCC1は核に局在し、Ranを活性化してタンパク質を核外へ輸送させる。
*Ras-GRF1
*Kalirin
*'''[[PLEKHG2]]'''<ref>{{cite journal | vauthors = Ueda H, Nagae R, Kozawa M, Morishita R, Kimura S, Nagase T, Ohara O, Yoshida S, Asano T | year = 2008 | title = Heterotrimeric G protein βγ subunits stimulate FLJ00018, a guanine nucleotide exchange factor for Rac1 and Cdc42 | url = http://www.jbc.org/content/283/4/1946.full | journal = J. Biol. Chem. | volume = 283 | issue = | pages = 1946–1953 | doi=10.1074/jbc.m707037200}}</ref>
*'''Ephexin5''' は神経のシナプス形成に関与するRhoAのGEFである<ref name=":2" /><ref name=":3" />is a RhoA GEF involved in neuronal synapse development.<ref name=":2">{{cite journal | vauthors = Margolis SS, Salogiannis J, Lipton DM, Mandel-Brehm C, Wills ZP, Mardinly AR, Hu L, Greer PL, Bikoff JB, Ho HY, Soskis MJ, Sahin M, Greenberg ME | title = EphB-mediated degradation of the RhoA GEF Ephexin5 relieves a developmental brake on excitatory synapse formation | journal = Cell | volume = 143 | issue = 3 | pages = 442–55 | date = October 2010 | pmid = 21029865 | doi = 10.1016/j.cell.2010.09.038 | pmc=2967209}}</ref><ref name=":3">[https://dash.harvard.edu/handle/1/11181183 Regulation of excitatory synapse development by the RhoGEF Ephexin5. 2013]</ref>

== 関連項目 ==
*[[Gタンパク質]]
*[[グアニン]]
* [[:en:Nucleotide exchange factor]]
*[[低分子量GTPアーゼ]]


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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== 外部リンク ==
* [http://www.mechanobio.info/Home/glossary-of-terms/mechano-glossary--g/gaps-gefs-and-gdis MBInfo - Glossary Terms: GAPs, GEFs, and GDIs]


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2018年10月13日 (土) 09:35時点における版

GTP
GDP

グアニンヌクレオチド交換因子 (ぐあにんぬくれおちどこうかんいんし、guanine nucleotide exchange factor, GEF)とは、グアノシン二リン酸 (GDP)の放出を促進してグアノシン三リン酸 (GTP)を結合させることによって、GTPアーゼの活性化を行うタンパク質またはタンパク質ドメインのことである。[1]様々な関連のない構造ドメインがGEFとしての活性を有することが示されている。一部のGEFは複数種類のGTPアーゼを活性化することができるが、その他は1種類のGTPアーゼに対して特異的に機能する。

機能

GEFによるGTPアーゼ活性化の模式図

グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)は、GTPアーゼの活性化に関与するタンパク質やタンパク質ドメインである。GTPアーゼは細胞内シグナル伝達経路において分子スイッチとして機能し、多くの下流のターゲットを持っている。最もよく知られているGTPアーゼはRasスーパーファミリーであり、細胞の分化、増殖、細胞骨格の組織、小胞輸送輸送といった必須の細胞プロセスに関与している。[2]GTPアーゼはGTPを結合しているとき活性化状態、GDPを結合しているとき不活性状態であり、その活性はGEFとGTPアーゼ活性化因子(GTPase activating protein, GAP)によって制御される。[3]

GTPアーゼからのGDPの解離は、きわめてゆっくりとしたものである。[3]GEFの結合によって基質のGTPアーゼからのGDPの解離が触媒され、その位置にGTP分子が結合する。GEFはGDP解離の促進のために機能し、細胞質のGTP:GDP比は10:1とGTPの方がはるかに高いために、GTPアーゼからGDPが解離した後、一般的にその位置に結合するのはGTPである。GTPアーゼへのGTPの結合によってGEFが解離し、GTPアーゼが活性化される。[4][5]このようにGEFは、GTPアーゼとGDPとの相互作用を不安定化するとともに、GTP分子が結合するまで、ヌクレオチドが結合していない状態のGTPアーゼを安定化する。[6] GAPは反対に、GTPアーゼのGTP加水分解速度を増加させることによってGTPアーゼを不活性化する。GDPは、GEFによって解離が促進されるまで、不活性状態のGTPアーゼに結合したままである。[3]

GEFの局在によって、特定のGTPアーゼが細胞内のどの場所で活性化されるかを決定することができる。例えば、RanのGEFであるRCC1は核に、一方RanGAPは細胞質に存在し、タンパク質の核内・核外輸送を調節している。[7] RCC1は核内で、タンパク質の核外輸送のためにRan-GDPをRan-GTPに変換し活性化する。細胞質に移行し、RanGAPによってRan-GTPがRan-GDPに変換されると、積み荷タンパク質(protein cargo)は降ろされる。

機構

GTPアーゼ活性化のメカニズムは、GEFごとにさまざまである。しかしながら、GEFがどのようにGタンパク質のヌクレオチド結合部位のコンフォメーションを変化させるかについてはいくつかの共通点がある。GTPアーゼはswitch 1、switch 2と呼ばれる2つのループ領域を持っており、これらは結合したヌクレオチドの両側に位置している。これらの領域とGTPアーゼのPループ(phosphate-binding loop)はヌクレオチドのリン酸基と配位マグネシウムイオンと相互作用し、ヌクレオチドが高いアフィニティで結合するよう保っている。GEFの結合は、GTPアーゼのPループとスイッチ領域のコンフォメーションを引き起こす。その一方、残りの部分のタンパク質構造は大きく変化しない。GEFの結合は物理的にマグネシウムやリン酸の結合部位をふさいでしまうが、塩基部分が結合する領域はアクセスが可能である。GEFがGTPアーゼに結合したとき、リン酸基部分が最初に解放され、GTP分子が入ってくることによってGEFは置き換えられる。この基本的なスキームはGEFに共通であるが、GTPアーゼの領域との個々の相互作用の様式についてはそれぞれに異なっている。[8]

構造と特異性

いくつかのGEFは1種類のGTPアーゼに対して特異的に働くが、他のものは複数のGTPアーゼの基質を持っている。RasスーパーファミリーのGTPアーゼは異なるサブファミリー間でも共通したGTP結合ドメインを持っているが、GEFのほうはこれは当てはまらない。異なるファミリーのGEFが異なるRasのサブファミリーに対応する。GEFの機能ドメインはファミリー間で構造的類似性がなく、配列にも相同性がない。これらのGEFドメインは、類似した機能と基質をもつにもかかわらず、進化的に無関係であると考えられる。[6]

CDC25ドメイン

CDC25ホモロジードメイン、もしくはRasGEFドメインは多くのRasのGEFの触媒ドメインであり、Ras GTPアーゼを活性化する機能を持つ。CDC25ホモロジードメインは約500アミノ酸から構成され、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのCDC25タンパク質に最初に見つかったものである。[9]

DHドメインとPHドメイン

Dbl型のRhoGEFは真核生物の起源の時点から存在し、高度に適応的な細胞シグナリングの仲介因子として進化した。[10] ヒトでは71種類のDbl RhoGEFが同定されており、20のサブファミリーに分類される。この71種類は初期の脊椎動物には既に存在しており、20のファミリーのほとんどは初期の後生動物に既にみられる。哺乳類のDblファミリータンパク質の多くは組織特異的であり、後生動物におけるDblファミリータンパク質の数は細胞シグナリングの複雑さと比例している。Dbl homology (DH)ドメインとPleckstrin homology (PH)ドメインはほとんどのDblファミリーのメンバーに存在し、Rho GTPアーゼに対するGEFとしてはたらく。[11] DHドメイン、もしくはRhoGEFドメインは、GEFとしての触媒機能を担う。PHドメインはDHドメインの細胞内ターゲティングに関与している。一般的にPHドメインはリン脂質との相互作用を通してへの結合を調節すると考えられているが、その機能はタンパク質ごとに異なると示されており、[12][13] また、このPHドメインはRhoGEF以外のタンパク質にも存在している。PHドメインはDHドメインのC末端の直後に位置しており、ほとんどのDblファミリータンパク質において、この2つのドメインが活性に最低限必要な構造的ユニットとなっている。

DHR2ドメイン

DHR2ドメインは、RhoGEFのうちのDOCKファミリーの触媒ドメインである。DOCKファミリーはDblファミリーとは別のグループであり、DHドメインとは構造的にも配列的にも関連性はない。これまでに11のDOCKファミリーのメンバーが同定されており、RacとCdc42に対する活性によってサブファミリーに分類されている。DOCKファミリーのメンバーは、細胞遊走形態形成そして食作用に関与している。DHR2ドメインは約400アミノ酸から構成される。これらのタンパク質は、もう一つの保存された領域であるDHR1ドメインを持っており、これは約250アミノ酸から構成される。DHR1ドメインはいくつかのGEFにおいて膜局在に関与することが示されている。[14]

Sec7ドメイン

Sec7ドメインはARF GTPアーゼに対してGEF活性を示すドメインである。ARFタンパク質は小胞輸送に関与している。ARFのGEFは全体配列は多様であるが、保存されたSec7ドメインを有している。この200アミノ酸の領域は酵母のSec7pに相同である。[15]

調節

GEFはしばしば上流のシグナルに応答したアダプタータンパク質によってリクルートされる。GEFは複数のドメインからなるタンパク質で、これらのドメインを通じて細胞内の他のタンパク質と相互作用する。[12] アダプタータンパク質はGEFの触媒ドメインのそばで他のドメインと相互作用することによってGEFの活性を調節する。例えば、MAPK/ERK経路におけるRasのGEFであるSOS1は、EGF受容体の活性化に応答したアダプタータンパク質GRB2によってリクルートされる。SOS1はGBR2への結合によって細胞膜へ局在化され、膜に結合したRasを活性化する。[16] 他のGEF、例えばRhoのGEFであるVav1は、上流シグナルによってリン酸化されて活性化される。[17] cAMPカルシウムのようなセカンドメッセンジャーもGEFの活性化に関与することがある。[3]

GEFと複数のGTPアーゼのシグナル伝達経路の間でクロストークが行われることも示されている。例えば、SOSはCDC25ドメインに加えてDHドメインを持っており、Rasに対するGEFとしての役割だけでなく、RhoGTPアーゼであるRac1を活性化するGEFとしても機能する。そのため、SOSはRasファミリーとRhoファミリーのシグナル伝達経路のリンクとなる。

がん

GEFは多くのシグナル伝達経路、とりわけ細胞増殖に関する経路における役割のために、がん治療の潜在的な標的となる。例えば、MAPK/ERK経路の変異によって引き起こされる制御されない成長が、多くのがんの原因となっている。GEFであるSOS1はRasを活性化する。Rasの標的はRafキナーゼであり、Rafは多くのがんで変異がみられるがん原遺伝子である。[5][12] RhoのGEFであるVav1は、EGF受容体によって活性化され、すい臓がんの増殖を促進することが示されている。[17] GEFはGTPアーゼの活性化を通してこれらの経路を制御する役割があるため、潜在的な治療標的となっている。

  • Son of sevenless (SOS1) は細胞の成長を制御するMAPK/ERK経路において重要なGEFである。SOS1はEGF受容体活性化の後に細胞膜に位置するGRB2と結合する。SOS1は低分子量Gタンパク質であるRasを活性化する。[16]
  • eIF2B は真核生物のタンパク質の翻訳を開始するのに必要な翻訳開始因子である。eIF2Bは、eIF2がタンパク質合成の開始の新たなサイクルに用いられるよう、つまりメチオニンが付加された開始tRNAを結合できるよう、GTP結合型へ再生する。[18]
  • Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、リガンドの結合時にGタンパク質のGEFとして機能する膜貫通受容体である。リガンドの結合はコンフォメーションの変化を引き起こし、GPCRがGTPアーゼを活性化できるようになる。[2]
  • RCC1 はRan GTPアーゼのGEFである。RCC1は核に局在し、Ranを活性化してタンパク質を核外へ輸送させる。
  • Ras-GRF1
  • Kalirin
  • PLEKHG2[19]
  • Ephexin5 は神経のシナプス形成に関与するRhoAのGEFである[20][21]is a RhoA GEF involved in neuronal synapse development.[20][21]

関連項目

参考文献

  1. ^ “Regulation of small GTPases by GEFs, GAPs, and GDIs”. Physiological Reviews 93 (1): 269-309. (January 2013). doi:10.1152/physrev.00003.2012. PMID 23303910. 
  2. ^ a b Bruce Alberts (2002). Molecular Biology of the Cell. Garland Science. pp. 877-. ISBN 0815332181. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK26822/#A2855 12 January 2011閲覧。 
  3. ^ a b c d “The GTPase superfamily: a conserved switch for diverse cell functions”. Nature 348 (6297): 125-32. (November 1990). doi:10.1038/348125a0. PMID 2122258. 
  4. ^ “Guanine-nucleotide exchange factors: a family of positive regulators of Ras and related GTPases”. Current Opinion in Cell Biology 6 (2): 204-11. (April 1994). doi:10.1016/0955-0674(94)90137-6. PMID 8024811. 
  5. ^ a b “A growing family of guanine nucleotide exchange factors is responsible for activation of Ras-family GTPases”. Progress in Nucleic Acid Research and Molecular Biology 71: 391–444. (2002). doi:10.1016/S0079-6603(02)71047-7. PMID 12102558. 
  6. ^ a b “GEFs: structural basis for their activation of small GTP-binding proteins”. Trends in Biochemical Sciences 24 (8): 306-11. (August 1999). doi:10.1016/S0968-0004(99)01429-2. PMID 10431174. 
  7. ^ “RCC1 in the Ran pathway”. Journal of Biochemistry 120 (2): 207-14. (August 1996). doi:10.1093/oxfordjournals.jbchem.a021400. PMID 8889801. 
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  11. ^ “Dbl family guanine nucleotide exchange factors”. Trends in Biochemical Sciences 26 (12): 724-32. (December 2001). doi:10.1016/S0968-0004(01)01973-9. PMID 11738596. 
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  13. ^ “Crystal structure of the Dbl and pleckstrin homology domains from the human Son of sevenless protein”. Cell 95 (2): 259-68. (October 1998). doi:10.1016/S0092-8674(00)81756-0. PMID 9790532. 
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  17. ^ a b “Ectopic expression of VAV1 reveals an unexpected role in pancreatic cancer tumorigenesis”. Cancer Cell 7 (1): 39-49. (January 2005). doi:10.1016/j.ccr.2004.11.024. PMID 15652748. 
  18. ^ “The guanine nucleotide-exchange factor, eIF-2B”. Biochimie 76 (8): 748-60. (1994). doi:10.1016/0300-9084(94)90079-5. PMID 7893825. 
  19. ^ “Heterotrimeric G protein βγ subunits stimulate FLJ00018, a guanine nucleotide exchange factor for Rac1 and Cdc42”. J. Biol. Chem. 283: 1946–1953. (2008). doi:10.1074/jbc.m707037200. http://www.jbc.org/content/283/4/1946.full. 
  20. ^ a b “EphB-mediated degradation of the RhoA GEF Ephexin5 relieves a developmental brake on excitatory synapse formation”. Cell 143 (3): 442–55. (October 2010). doi:10.1016/j.cell.2010.09.038. PMC 2967209. PMID 21029865. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2967209/. 
  21. ^ a b Regulation of excitatory synapse development by the RhoGEF Ephexin5. 2013

外部リンク