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「S7G (原子炉)」の版間の差分

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== 設計と運用 ==
== 設計と運用 ==
従来、アメリカ海軍の原子炉ではすべて可動式の[[ハフニウム]]製制御棒が使われていたが、S7Gでは炉心の[[反応度 (原子力)|反応度]]を固定された[[ガドリニウム]]圧着材の管に水を出し入れすることで制御するようになっていた。管内の水位を上げると炉心の[[中性子]]が減速されて、[[ウラン]]燃料ではなく管表面のガドリニウムに吸収されるようになり、原子炉の出力を下げることができた。
従来、アメリカ海軍の原子炉ではすべて可動式の[[ハフニウム]]製制御棒が使われていたが、S7Gでは炉心の[[反応度]]を固定された[[ガドリニウム]]圧着材の管に水を出し入れすることで制御するようになっていた。管内の水位を上げると炉心の[[中性子]]が減速されて、[[ウラン]]燃料ではなく管表面のガドリニウムに吸収されるようになり、原子炉の出力を下げることができた。


このシステムでは、ポンプによって管内の水位が常に低く保たれるように設計されていた。これは、電力が失われたときに速やかに水が管内に満たされて原子炉が停止されるようにするためであった。また、この設計は従来の[[加圧水型原子炉|加圧水型炉]]と同様、負の反応度[[フィードバック]]係数を持つ利点があった。すなわち、出力が上昇して発熱が大きくなると[[減速材]]である水の密度が減少し、[[中性子]]が十分減速されなくなって[[核分裂]]反応に寄与しにくくなるため出力が下がるのである。このような平均冷却材温度の変動により、例えば機関での蒸気需要が変化した場合でも、運転員が何も操作せずとも原子炉出力が維持されるのである。
このシステムでは、ポンプによって管内の水位が常に低く保たれるように設計されていた。これは、電力が失われたときに速やかに水が管内に満たされて原子炉が停止されるようにするためであった。また、この設計は従来の[[加圧水型原子炉|加圧水型炉]]と同様、負の反応度[[フィードバック]]係数を持つ利点があった。すなわち、出力が上昇して発熱が大きくなると[[減速材]]である水の密度が減少し、[[中性子]]が十分減速されなくなって[[核分裂]]反応に寄与しにくくなるため出力が下がるのである。このような平均冷却材温度の変動により、例えば機関での蒸気需要が変化した場合でも、運転員が何も操作せずとも原子炉出力が維持されるのである。

2020年1月25日 (土) 01:22時点における版

S7Gアメリカ海軍艦艇向け発電推進原子炉の原型炉である。

型式名のS7Gは以下のような意味である。

S7Gは制御棒を使用しない設計の原型炉として陸上設置型のものが製造された。 1970年代後半から1980年代初めにかけて、ニューヨーク州ボールストンスパにあるノルズ原子力研究所(英語版) ケッセルリングサイトの原子炉改修付加施設(Modifications and Additions to a Reactor Facility, MARF)で試験が行われた。ここでは、試験用の炉心を改修したS5Wプラントに収めて試験が行われた。

設計と運用

従来、アメリカ海軍の原子炉ではすべて可動式のハフニウム製制御棒が使われていたが、S7Gでは炉心の反応度を固定されたガドリニウム圧着材の管に水を出し入れすることで制御するようになっていた。管内の水位を上げると炉心の中性子が減速されて、ウラン燃料ではなく管表面のガドリニウムに吸収されるようになり、原子炉の出力を下げることができた。

このシステムでは、ポンプによって管内の水位が常に低く保たれるように設計されていた。これは、電力が失われたときに速やかに水が管内に満たされて原子炉が停止されるようにするためであった。また、この設計は従来の加圧水型炉と同様、負の反応度フィードバック係数を持つ利点があった。すなわち、出力が上昇して発熱が大きくなると減速材である水の密度が減少し、中性子が十分減速されなくなって核分裂反応に寄与しにくくなるため出力が下がるのである。このような平均冷却材温度の変動により、例えば機関での蒸気需要が変化した場合でも、運転員が何も操作せずとも原子炉出力が維持されるのである。

S7Gは実際に艦に搭載されることなく、1980年代の終わりには炉心を試験用の材料開発用炉心(Developmental Materials Core, DMC)に交換された。

脚注