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「シクロオクタデカノナエン」の版間の差分

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'''シクロオクタデカノナエン''' (cyclooctadecanonaene、別名を [18]アヌレン ([18]annulene))とは[[アヌレン]]の一種で、18個の炭素が二重結合と単結合とを交互に介して環状に連なった共役構造を持つ[[炭化水素]]化合物。この環状化合物は[[ヒュッケル則]]に従っているため、結晶構造や [[核磁気共鳴|NMR]] などに[[芳香族化合物]]としての性質を示す。構造上の立体ひずみはほとんどない。安定な赤褐色針状晶。IUPAC名は シクロオクタデカ-1,3,5,7,9,11,13,15,17-ノナエン、分子式は C<sub>18</sub>H<sub>18</sub>。
'''シクロオクタデカノナエン''' (cyclooctadecanonaene、別名を [18]アヌレン ([18]annulene))とは[[アヌレン]]の一種で、18個の炭素が二重結合と単結合とを交互に介して環状に連なった共役構造を持つ[[炭化水素]]化合物。この環状化合物は[[ヒュッケル則]]に従っているため、結晶構造や [[核磁気共鳴|NMR]] などに[[芳香族化合物]]としての性質を示す。構造上の立体ひずみはほとんどない。安定な赤褐色針状晶。IUPAC名は シクロオクタデカ-1,3,5,7,9,11,13,15,17-ノナエン、分子式は C<sub>18</sub>H<sub>18</sub>。


理論的研究では、[18]アヌレンにおいて芳香族性と関連する完全に非局在化したπ結合は3つのみで、その他の6つのπ結合は環の縁上に共役3中心2電子 (3c-2e) π結合に相当することが示されている<ref>{{cite journal|last=Ivanov|first=A.|author2=Boldyrev. A|title=Deciphering aromaticity in porphyrinoids via adaptive natural density partitioning|journal=Org. Biomol. Chem.|year=2014|DOI=10.1039/C4OB01018C}}</ref>。
理論的研究では、[18]アヌレンにおいて芳香族性と関連する完全に非局在化したπ結合は3つのみで、その他の6つのπ結合は環の縁上に共役3中心2電子 (3c-2e) π結合に相当することが示されている<ref>{{cite journal|last=Ivanov|first=A.|author2=Boldyrev. A|title=Deciphering aromaticity in porphyrinoids via adaptive natural density partitioning|journal=Org. Biomol. Chem.|year=2014|doi=10.1039/C4OB01018C}}</ref>。


[18]アヌレンは F. Sondheimer により最初に合成法が報告された<ref>Sondheimer, F.; Wolovsky, R.; Amiel, Y. ''J. Am. Chem. Soc.'' '''1962''', ''84'', 274-284. DOI: [https://doi.org/10.1021/ja00861a030 10.1021/ja00861a030] 3連報の3報目であり、前2報は前駆体の合成法。</ref>。その方法では 1,5-ヘキサジインを[[ピリジン]]中、[[酢酸銅(II)]] の作用で酸化的に三量化させ([[エリントンカップリング]])、[[カリウム tert-ブトキシド|カリウム ''tert''-ブトキシド]]により異性化させてヘキサデヒドロ[18]アヌレンに変えた後、[[リンドラー触媒]]を用いた[[水素化]]によって [18]アヌレンを得る<ref>実験法の詳細: Stöckel, K.; Sondheimer, F. ''Org. Synth.'', Coll. Vol. 6, p.68 (1988); Vol. 54, p.1 (1974). [http://www.orgsyn.org/orgsyn/prep.asp?prep=cv6p0068 オンライン版]</ref>。
[18]アヌレンは F. Sondheimer により最初に合成法が報告された<ref>Sondheimer, F.; Wolovsky, R.; Amiel, Y. ''J. Am. Chem. Soc.'' '''1962''', ''84'', 274-284. DOI: [https://doi.org/10.1021/ja00861a030 10.1021/ja00861a030] 3連報の3報目であり、前2報は前駆体の合成法。</ref>。その方法では 1,5-ヘキサジインを[[ピリジン]]中、[[酢酸銅(II)]] の作用で酸化的に三量化させ([[エリントンカップリング]])、[[カリウム tert-ブトキシド|カリウム ''tert''-ブトキシド]]により異性化させてヘキサデヒドロ[18]アヌレンに変えた後、[[リンドラー触媒]]を用いた[[水素化]]によって [18]アヌレンを得る<ref>実験法の詳細: Stöckel, K.; Sondheimer, F. ''Org. Synth.'', Coll. Vol. 6, p.68 (1988); Vol. 54, p.1 (1974). [http://www.orgsyn.org/orgsyn/prep.asp?prep=cv6p0068 オンライン版]</ref>。

2020年1月25日 (土) 09:41時点における版

シクロオクタデカノナエンの構造式

シクロオクタデカノナエン (cyclooctadecanonaene、別名を [18]アヌレン ([18]annulene))とはアヌレンの一種で、18個の炭素が二重結合と単結合とを交互に介して環状に連なった共役構造を持つ炭化水素化合物。この環状化合物はヒュッケル則に従っているため、結晶構造や NMR などに芳香族化合物としての性質を示す。構造上の立体ひずみはほとんどない。安定な赤褐色針状晶。IUPAC名は シクロオクタデカ-1,3,5,7,9,11,13,15,17-ノナエン、分子式は C18H18

理論的研究では、[18]アヌレンにおいて芳香族性と関連する完全に非局在化したπ結合は3つのみで、その他の6つのπ結合は環の縁上に共役3中心2電子 (3c-2e) π結合に相当することが示されている[1]

[18]アヌレンは F. Sondheimer により最初に合成法が報告された[2]。その方法では 1,5-ヘキサジインをピリジン中、酢酸銅(II) の作用で酸化的に三量化させ(エリントンカップリング)、カリウム tert-ブトキシドにより異性化させてヘキサデヒドロ[18]アヌレンに変えた後、リンドラー触媒を用いた水素化によって [18]アヌレンを得る[3]

参考文献

  1. ^ Ivanov, A.; Boldyrev. A (2014). “Deciphering aromaticity in porphyrinoids via adaptive natural density partitioning”. Org. Biomol. Chem.. doi:10.1039/C4OB01018C. 
  2. ^ Sondheimer, F.; Wolovsky, R.; Amiel, Y. J. Am. Chem. Soc. 1962, 84, 274-284. DOI: 10.1021/ja00861a030 3連報の3報目であり、前2報は前駆体の合成法。
  3. ^ 実験法の詳細: Stöckel, K.; Sondheimer, F. Org. Synth., Coll. Vol. 6, p.68 (1988); Vol. 54, p.1 (1974). オンライン版