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「リカレンスプロット」の版間の差分

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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite journal|last=J. P. Eckmann, S. O. Kamphorst, [[David Ruelle|D. Ruelle]]|author=J. P. Eckmann, S. O. Kamphorst, [[David Ruelle|D. Ruelle]]|year=1987|title=Recurrence Plots of Dynamical Systems|url=http://iopscience.iop.org/0295-5075/4/9/004/|journal=Europhysics Letters|volume=5|issue=9|pages=973–977|bibcode=1987EL......4..973E|DOI=10.1209/0295-5075/4/9/004}}
* {{Cite journal|last=J. P. Eckmann, S. O. Kamphorst, [[David Ruelle|D. Ruelle]]|author=J. P. Eckmann, S. O. Kamphorst, [[David Ruelle|D. Ruelle]]|year=1987|title=Recurrence Plots of Dynamical Systems|url=http://iopscience.iop.org/0295-5075/4/9/004/|journal=Europhysics Letters|volume=5|issue=9|pages=973–977|bibcode=1987EL......4..973E|doi=10.1209/0295-5075/4/9/004}}
* {{Cite journal|last=N. Marwan|year=2007|title=Recurrence Plots for the Analysis of Complex Systems|journal=Physics Reports|volume=438|issue=5-6|pages=237|bibcode=2007PhR...438..237M|DOI=10.1016/j.physrep.2006.11.001}}
* {{Cite journal|last=N. Marwan|year=2007|title=Recurrence Plots for the Analysis of Complex Systems|journal=Physics Reports|volume=438|issue=5-6|pages=237|bibcode=2007PhR...438..237M|doi=10.1016/j.physrep.2006.11.001}}
* {{Cite journal|last=N. Marwan|author=N. Marwan|year=2008|title=A historical review of recurrence plots|url=http://www.springerlink.com/content/5412256211633127/|journal=European Physical Journal ST|volume=164|issue=1|pages=3–12|bibcode=2008EPJST.164....3M|DOI=10.1140/epjst/e2008-00829-1}}
* {{Cite journal|last=N. Marwan|author=N. Marwan|year=2008|title=A historical review of recurrence plots|url=http://www.springerlink.com/content/5412256211633127/|journal=European Physical Journal ST|volume=164|issue=1|pages=3–12|bibcode=2008EPJST.164....3M|doi=10.1140/epjst/e2008-00829-1}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2020年1月25日 (土) 17:01時点における版

リカレンスプロット(RP)とは統計カオス理論において用いられる図であり、ある時間において、値がほぼ等しくなる時間を点としてプロットした図である。つまり、このグラフは

の場合にのみ  に点が描画される図となる。

背景

周期性や繰り返しを示す自然のプロセスは多い。周期性には、季節やミランコビッチ・サイクルのような明確な周期性だけでなく、エルニーニョ・南方振動のような不規則な周期性も存在する。さらに、状態が繰り返すとは状態が遷移した後に再び近い値に戻ってくるという意味であり、決定論的な力学系の基本特性だけでなく、非線形・カオス系の性質としてもよく見られる(ポアンカレの回帰定理を参照)。自然界における繰り返しは、1890年にアンリ・ポアンカレが研究するなど、古くから知られている。

詳細

1987年に Eckmann らは位相空間内の軌跡の周期的な性質を視覚化するためにリカレンスプロットを導入した。このような図示において、高次の位相空間は一般に、より低い次元(主に2次元か3次元)の位相空間に射影され、情報は削減される。しかし、リカレンスプロットは2次元平面に描画される図であるにも関わらず、m次元位相空間における特定の様相(特に周期性)をうまく表現します。

先に述べた通り、リカレンスとは以前の値へと戻ってくる性質を表す。リカレンスプロットは、描画されるペア  のときのみに持つ。これにより、多くの性質を示すことが可能である。例えば、この値が厳密に周期  の倍数にのみ存在し、対角線のように描かれる。実際には、連続の値は計測時に標本化・量子化が行われるため、値が十分近い値になった場合にペアを描画する。具体的には、

とし、 の場合のみ(黒い)点を描画することでリカレンスプロットを描画する。

値の性質によって、リカレンスプロットに単一の点・対角線・垂直/水平線などの構造が見られる。そのような texture と呼ばれる大規模な構造は、均一、周期的、ドリフト・無秩序などに分けられる。この視覚に訴える外観が、その値が従う系についてのヒントになりうる。

リカレンスプロットの典型的な例。上の図は時系列データを表し、下の図はそのデータに対応するリカレンスプロットである。左から順に白色雑音、2つの周波数による高調波発信、線形傾向を持つカオス(ロジスティック)データ、自己回帰モデルのデータである。

一方で、リカレンスプロットの小規模な構造は、再帰定量分析に使用される (Zbilut & webber (1992), Marwan et al. (2002))。この定量化によって、リカレンスプロットを定量的に記述し、系の遷移や非線形パラメータの解析に用いることが可能になった。再帰定量分析のヒューリスティックな手法が埋め込みパラメータの選択に依存するのとは対照的に、埋め込みパラメータに依存しない相関次元K2エントロピー相互情報量もリカレンスプロットから導出可能である。これらの値は基本的に再起立と対角線の長さの分布と関係する。

close returns plotはリカレンスプロットに似ており、リカレンスプロットが絶対時間を 軸とする代わりに、close returns plot は相対時間を 軸とする図である。

リカレンスプロットの主な利点は、短いデータや非定常データに対しても有用な結果を得られる点である。

拡張

リカレンスプロットの多変数への拡張にはクロスリカレンスプロットジョイントリカレンスプロットがある。

クロスリカレンスプロット (Marwan & Kurths (2002)) は、同じ位相空間の異なる値を考慮するものであり、2つの系に対して

である。 2つのデータの次元は等しい必要があるが、データ長は異なっていても描画可能である。クロスリカレンスプロットは、2つの系の状態が類似する頻度を比較する。2つの系で類似したパターンを探すためや、時間スケールの異なる2つの系の時間の関係の研究のために用いることが可能である (Marwan & Knuths (2005))。

ジョイントリカレンスプロットは、下位系(サブシステム)を考慮した、リカレンスプロットのアダマール積である (Romano et al. (2004))。2つの系に対して、ジョイントリカレンスプロットは

となる。

クロスリカレンスプロットとは対照的に、ジョイントリカレンスプロットは2つ(以上)の系における周期の同時発生を比較する。さらに、考慮する状態の数が等しければ系の次元が異なっていても比較可能である。位相の同期を検出するためにジョイントリカレンスプロットは用いられる。

南方振動指数のリカレンスプロット。

参照

  • ポアンカレプロット
  • Recurrence period density entropy:決定論的・確率論的な動的システムの再帰特性の要約に用いられる情報論的方法
  • 再帰定量分析:リカレンスプロットを定量化するヒューリスティックな手法
  • 自己相似性マトリクス

参考文献

外部リンク