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'''カムイサウルス'''(英名: ''Kamuysaurus'')は、[[日本]]の[[北海道]][[むかわ町]]穂別地区の[[白亜紀]]後期のかつては海だった地層で発見された[[ハドロサウルス科]]ハドロサウルス亜科エドモントサウルス族の[[恐竜]]である<ref>{{Cite journal|last=Sakurai|first=Kazuhiko|last2=Sato|first2=Tamaki|last3=Chinzorig|first3=Tsogtbaatar|last4=Tanaka|first4=Kohei|last5=Fiorillo|first5=Anthony R.|last6=Chiba|first6=Kentaro|last7=Takasaki|first7=Ryuji|last8=Nishimura|first8=Tomohiro|last9=Kobayashi|first9=Yoshitsugu|date=September 5, 2019|title=A New Hadrosaurine (Dinosauria: Hadrosauridae) from the Marine Deposits of the Late Cretaceous Hakobuchi Formation, Yezo Group, Japan|url=https://www.nature.com/articles/s41598-019-48607-1|journal=Scientific Reports|volume=9|issue=1|pages=1–14|DOI=10.1038/s41598-019-48607-1}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://phys.org/news/2019-09-hadrosaur-japan-dinosaur-diversity.html|title=New hadrosaur from Japan sheds light on dinosaur diversity|website=phys.org|accessdate=2019-9-6}}</ref>。発掘された化石自体は'''むかわ竜'''(むかわりゅう)の名で親しまれていた<ref>[https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1909/06/news106.html 通称・むかわ竜、学名が「カムイサウルス・ジャポニクス」に決定 新属新種の恐竜だと正式に認定される]</ref>。
'''カムイサウルス'''(英名: ''Kamuysaurus'')は、[[日本]]の[[北海道]][[むかわ町]]穂別地区の[[白亜紀]]後期のかつては海だった地層で発見された[[ハドロサウルス科]]ハドロサウルス亜科エドモントサウルス族の[[恐竜]]である<ref>{{Cite journal|last=Sakurai|first=Kazuhiko|last2=Sato|first2=Tamaki|last3=Chinzorig|first3=Tsogtbaatar|last4=Tanaka|first4=Kohei|last5=Fiorillo|first5=Anthony R.|last6=Chiba|first6=Kentaro|last7=Takasaki|first7=Ryuji|last8=Nishimura|first8=Tomohiro|last9=Kobayashi|first9=Yoshitsugu|date=September 5, 2019|title=A New Hadrosaurine (Dinosauria: Hadrosauridae) from the Marine Deposits of the Late Cretaceous Hakobuchi Formation, Yezo Group, Japan|url=https://www.nature.com/articles/s41598-019-48607-1|journal=Scientific Reports|volume=9|issue=1|pages=1–14|doi=10.1038/s41598-019-48607-1}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://phys.org/news/2019-09-hadrosaur-japan-dinosaur-diversity.html|title=New hadrosaur from Japan sheds light on dinosaur diversity|website=phys.org|accessdate=2019-9-6}}</ref>。発掘された化石自体は'''むかわ竜'''(むかわりゅう)の名で親しまれていた<ref>[https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1909/06/news106.html 通称・むかわ竜、学名が「カムイサウルス・ジャポニクス」に決定 新属新種の恐竜だと正式に認定される]</ref>。


== 発見 ==
== 発見 ==

2020年1月25日 (土) 18:33時点における版

カムイサウルス
生息年代: 中生代白亜紀後期, 73–66 Ma
地質時代
中生代白亜紀後期
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
亜目 : 鳥脚亜目 Ornithopoda
上科 : ハドロサウルス上科
Hadrosauroidea
: ハドロサウルス科
Hadrosauridae
亜科 : ハドロサウルス亜科
Hadrosaurinae
: エドモントサウルス族
Edmontosaurini
学名
Kamuysaurus japonicus

カムイサウルス(英名: Kamuysaurus)は、日本北海道むかわ町穂別地区の白亜紀後期のかつては海だった地層で発見されたハドロサウルス科ハドロサウルス亜科エドモントサウルス族の恐竜である[1][2]。発掘された化石自体はむかわ竜(むかわりゅう)の名で親しまれていた[3]

発見

むかわ竜の化石は、穂別町(当時)在住の堀田良幸によって、2004年4月に発見された[4]。堀田は、地元では化石愛好家として知られ[5]、年に数十回の化石採集を趣味としていた[6]。その堀田氏が、散歩の一環で沢沿いを歩いていると[4]、崖の上に化石のようなものを見つけた[5]。この沢は、アンモナイトなどが発掘されることで知られており[4]、堀田自身は当初は大きなワニのものだろうと思っていた[6]。堀田の狙う化石はアンモナイトであったこと[6]、若干変わった化石であったことから、穂別博物館の櫻井和彦館長に連絡し、見つけた化石を博物館に寄贈した[5]

現場を見た櫻井は、周囲に似たような化石が複数あることを確認した[5]が、発掘した化石を首長竜尾椎骨と誤認してしまい[4]、首長竜の標本が博物館に大量に収蔵されていたことも相まって[5]、余分な岩石や泥を取り除くクリーニング作業は後回しにされ[4]、収蔵庫に仕舞ってしまった[5]。この化石は、結局7年もの間収蔵庫に仕舞われたままとなってしまった[5]

状況が一変するのは、東京学芸大学所属の佐藤たまき准教授[4]が、この化石のクリーニング作業を行ってからだった[5]。佐藤は首長竜の専門家で、人気が恐竜に比べると乏しく、収蔵庫に死蔵している可能性の高い首長竜の化石を求めて全国の博物館を回っていた[5]。2010年に穂別博物館を訪れた佐藤は、櫻井館長から複数の化石を見せてもらい、その中の一つに堀田氏と櫻井館長が発掘した化石が含まれており、佐藤の目からはクリーニング前の外見は「珍しい種類の首長竜」にみえるものであった[5]。しかし、実際にクリーニングをしてみると、この化石は首長竜ではなく恐竜の骨の特徴を持っていることがわかり[5]、2011年8月にこの化石が恐竜の化石である可能性を指摘した[7]

櫻井はその指摘を受けて、北海道大学総合博物館小林快次准教授(当時。現在は教授に昇任している)[4]に鑑定を依頼した[5]。送られた写真を見た小林は一目で恐竜のものだと判断し、化石の現物を見て恐竜のものであると断言した[5]。さらに2012年5月に発掘現場を確認すると、尻尾の続きが化石として残っていることを確認した[5]。また、発掘された地層は、当時波の影響を受けないほど水深の深いところであったことなどもあり、全身骨格が埋蔵している可能性すら高いと考えられた[4]。さらに、2003年発掘の化石に、椎体の後方の関節面の背面側に突起があった[7]。この突起が、他のハドロサウルス科の恐竜と比べて顕著であったことから、新種の可能性も考えられた[7]

小林に説得されたむかわ町は、総額6000万円の予算を付けて、本格的な発掘事業を開始した[5]。発掘作業は第1次(2013年9月から同年10月)と第2次(2014年9月)に分けられ、小林を筆頭に、北海道大学の学生と北海道大学総合博物館のボランティアら、穂別博物館の学芸員ら等[8]によって行われた[4]。第1次発掘では、1.2メートルの右大腿骨を含む、後肢と尾椎骨の大部分が、第2次発掘では頭骨の一部や100本の歯が発掘された[4]。この2回の発掘で掘り出された岩石付きの化石は、重量6トンにも及んだ[8]

クリーニング作業

2017年には一部の化石のクリーニング作業が完了し、その結果、この化石群が全身骨格であることが判明した[9]。日本で恐竜の全身骨格化石が発掘されたのは、かつて日本領だった樺太(サハリン)で発掘されたニッポノサウルスを含めれば、福井県勝山市で発掘されたフクイヴェナトルと合わせて3例目、前者を含めなければ2例目となる[9]。また、かつて海であった地層から発掘されたハドロサウルス科の全身骨格化石としても世界で3例目という稀な例となった[9]

2019年3月には、ほぼすべての化石のクリーニング作業が完了し、その結果、この化石が骨の個数を分母にすると60%、総体積を分母にすると80%にも及ぶ完成度のきわめて高い全身骨格化石であることが分かった[10]。頭骨・肩帯・前肢・胴椎骨・腰帯・大腿骨・尾椎骨はすべて存在するこの骨格化石は、日本で発掘された化石としては最も完成度の大きいものとなった[10]

新属新種の認定

北海道大学・穂別博物館・岡山理科大学アメリカ合衆国ペロー自然科学博物館英語版筑波大学・モンゴル古生物学地学研究所 (Institute of Paleontology and Geology of Mongolian)・東京学芸大学らが共同研究したところ、他の恐竜とは異なる特徴が複数見られたことから、新種の可能性がより高まった[10]。さらに研究を進めたところ、3つの固有の特徴と、13のユニークな特徴を併せ持っていることがわかり、したがって新属新種であることが認定された[10]

これらの研究成果は、イギリス時間9月5日(日本時間6日)にイギリス科学雑誌である “Scientific Reports” に掲載された[11]

脚注

  1. ^ Sakurai, Kazuhiko; Sato, Tamaki; Chinzorig, Tsogtbaatar; Tanaka, Kohei; Fiorillo, Anthony R.; Chiba, Kentaro; Takasaki, Ryuji; Nishimura, Tomohiro et al. (September 5, 2019). “A New Hadrosaurine (Dinosauria: Hadrosauridae) from the Marine Deposits of the Late Cretaceous Hakobuchi Formation, Yezo Group, Japan”. Scientific Reports 9 (1): 1–14. doi:10.1038/s41598-019-48607-1. https://www.nature.com/articles/s41598-019-48607-1. 
  2. ^ New hadrosaur from Japan sheds light on dinosaur diversity”. phys.org. 2019年9月6日閲覧。
  3. ^ 通称・むかわ竜、学名が「カムイサウルス・ジャポニクス」に決定 新属新種の恐竜だと正式に認定される
  4. ^ a b c d e f g h i j 調査・研究中のハドロサウルス科恐竜化石/むかわ町 - 北海道むかわ町公式ウェブサイト”. www.town.mukawa.lg.jp. 2019年9月6日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o NHK札幌放送局 | 日本で見つかった “パーフェクト恐竜” むかわ竜~これが恐竜王国ニッポンだ!”. NHK札幌放送局. 2019年9月6日閲覧。
  6. ^ a b c 北海道創生ジャーナル「創る」第5号 特集 むかわ町 後編 | 総合政策部地域創生局地域戦略課”. www.pref.hokkaido.lg.jp. 2019年9月6日閲覧。
  7. ^ a b c "むかわ町穂別から恐竜化石を発見―ハドロサウルス科恐竜か" (PDF) (Press release). 北海道大学・穂別博物館. 2013/7/17. 2019-09-07閲覧 {{cite press release2}}: |date=の日付が不正です。 (説明)
  8. ^ a b "むかわ町穂別産恐竜の頭骨一部を発見" (PDF) (Press release). 北海道大学・穂別博物館. 2014/10/10. 2019-9-7閲覧 {{cite press release2}}: |accessdate=|date=の日付が不正です。 (説明)
  9. ^ a b c "国内最大の恐竜全身骨格を発見(むかわ竜)" (PDF) (Press release). 穂別博物館・北海道大学. 2017/4/28. 2019-9-7閲覧 {{cite press release2}}: |accessdate=|date=の日付が不正です。 (説明)
  10. ^ a b c d "むかわ竜を新属新種の恐竜として「カムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurusjaponicus)」と命名〜ハドロサウルス科の起源を示唆〜" (PDF) (Press release). 北海道大学・穂別博物館・筑波大学. 2019/9/6. 2019-9-7閲覧 {{cite press release2}}: |accessdate=|date=の日付が不正です。 (説明)
  11. ^ 国内最大の恐竜の全身化石は新種 「カムイサウルス」と命名 北海道むかわ町で発掘”. 毎日新聞. 2019年9月6日閲覧。