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2020年3月25日 (水) 02:14時点における版

高山 宏(たかやま ひろし、1947年10月8日 - )は、日本英文学者翻訳家評論家大妻女子大学副学長。専門は17・18世紀を軸とする英文学で、美術史、表現芸術の文化史の著作・翻訳を多数刊行している。

人物

岩手県生まれ、高知県育ち。父親は広島文理科大学出身で、高知大学の教員であった高山要一。母親は呉市出身。生来の弱視(黒サングラスと眼鏡を併用)。

東京大学文学部英文科卒、同大学院人文科学研究科修士課程修了。東大英文科助手、東京都立大学 (1949-2011)助教授、教授、首都大学東京都市教養学部教授を経て、明治大学国際日本学部教授、2014年より大妻女子大学比較文化学部教授。2017年退職し副学長。

澁澤龍彦種村季弘由良君美などの著作に学生時代から耽溺し、土佐高等学校(42期)から2年浪人して、1968年東京大学文科III類に進むも、学生紛争のまっただ中、授業そっちのけで各種文献を読み漁り、とりわけグスタフ・ルネ・ホッケマニエリスムワイリー・サイファー文化史的手法を自家薬籠中のものとする。東大大学院ではメルヴィルの『白鯨』で修士号を取得。博士後期課程を単位取得退学後、助手として東大英文科に就職するとともに、青土社の月刊誌「ユリイカ」などに寄稿。助手時代には、数万枚におよぶ図書カードをタイプで打ち、手や眼を痛めることにもなった。

1976年に最初の訳書、デレック・ハドソン『ルイス・キャロルの生涯』(東京図書)を刊行。1981年にルイス・キャロルを軸にした単著『アリス狩り』を刊行。以後は文学のみならず、美術、建築、文化史、思想史、哲学、デザイン、大衆文学、映画、江戸文化、コミック他諸々の学問領域を「横断」した各種論文、エッセイを執筆。マニエリスムのようなくねるような文体と妄想すれすれの「連想」により、近世以降の主に英語圏を中心とする欧米文化史を、巨視的に捉えつつ修辞を駆使する一連の著述により、各方面に多大な波紋を呼ぶ。異端の人文学者、学魔とも称される。

当初より「マニエリスム」という、ルネサンス期とバロックとの間に起きた美術潮流を、メイン・テーマの著作研究に掲げており、「奇想」「異端」というものを常に追い求めてきた。これらの発想はグスタフ・ルネ・ホッケの影響下にあり、ホッケ及び当人の理解によれば、マニエリスムは古典主義と交替でどの時代にも必ず表れうる時代相であり、一美術潮流に限られるものではないという。

都立大再編においては人文学部の文学系学科をとりまとめる中心人物のひとりであり、表象文化論分野の創設を担ったが、明治大学に新設された国際日本学部に就いた。

著書

  • 『アリス狩り』 青土社 1981年 新版1995年・2008年 ISBN 4791764307 
  • 『目の中の劇場 アリス狩りII』 青土社 1985年、新版1995年 ISBN 4791753623
  • 『ふたつの世紀末』 青土社 1986年、新版1998年 ISBN 479175669X
  • 『パラダイム・ヒストリー 表象の博物誌』 河出書房新社〈アスファルト・ブックス〉 1987年 
  • 『メデューサの知 アリス狩りIII』 青土社 1987年
  • 『黒に染める 本朝ピクチャレスク事始め』 ありな書房 1989年、新編1997年 ISBN 4756697496
  • 『世紀末異貌』 三省堂 1990年 ISBN 4385353603
  • 『テクスト世紀末』 ポーラ文化研究所 1992年 ISBN 4938547252
  • 『ガラスのような幸福 即物近代史序説』 五柳書院〈五柳叢書〉1994年 ISBN 4906010636
  • 『魔の王が見る バロック的想像力』 ありな書房 1994年 ISBN 4756694330
  • 『終末のオルガノン FANTASMAL I』 作品社 1994年 ISBN 487893199X
  • 『痙攣する地獄 FANTASMAL II』 作品社 1995年 ISBN 4878932198 - ※後半は知人たちとの対談
  • 『庭の綺想学 近代西欧とピクチャレスク美学』 ありな書房 1995年 ISBN 4756695388
  • 『ブック・カーニヴァル』 自由国民社 1995年 ISBN 4426678005 - ※知人たちの寄稿も含む
  • 『カステロフィリア 理性・建築・ピラネージ』 作品社〈叢書メラヴィリア〉 1996年 ISBN 4878937513
  • 『綺想の饗宴 アリス狩りIV』 青土社 1999年 ISBN 4791757203
  • 『奇想天外・英文学講義 シェイクスピアから「ホームズ」へ』 講談社選書メチエ 2000年  
  • 『殺す・集める・読む 推理小説特殊講義』 東京創元社・創元ライブラリ(文庫) 2002年、復刊2017年 ISBN 4488070477
  • 『高山宏椀飯振舞 I エクスタシー』 松柏社 2002年 ISBN 4881989480 - ※巻末で刊行予告された『同II トランス』は未刊。知人との対談も含む
  • 『表象の芸術工学 <神戸芸術工科大学レクチャーシリーズ>』 工作舎 2002年 ISBN 4875023642
  • 『超人高山宏のつくりかた』 NTT出版〈ライブラリーレゾナント〉 2007年 ISBN 4757141602
  • 『かたち三昧』 羽鳥書店 2009年 ISBN 4904702018
  • 『新人文感覚 I 風神の袋』 羽鳥書店 2011年8月
  • 『新人文感覚 II 雷神の撥』 羽鳥書店 2011年11月
  • 『夢十夜を十夜で』 羽鳥書店〈はとり文庫〉 2011年12月。副読本
  • 『アレハンドリア アリス狩りV』 青土社 2016年10月
  • 『見て読んで書いて、死ぬ』 青土社 2016年12月
  • 『トランスレーティッド 高山宏の解題新書』 青土社 2019年12月

翻訳

  • デレック・ハドスン『ルイス・キャロルの生涯 不思議の国の数学者』 東京図書 1976年
  • ジョン・フィッシャー『キャロル大魔法館』 河出書房新社 1978年
  • ルイス・キャロル鏡の国のアリス』 東京図書 1980年
  • エリザベス・シューエル『ノンセンスの領域』 河出書房新社 1980年/白水社(改訂版) 2012年 ISBN 4560083029
  • マーチン・ガードナー『ガードナーの数学サーカス』 東京図書 1981年
  • ジュール・ヴェルヌ、W・J・ミラー注『月世界旅行 詳注』 東京図書 1981年/ちくま文庫 1999年 ISBN 4480034978
  • ウィリアム・ウィルフォード『道化と笏杖』 晶文社 1983年/白水社(改訂版) 2016年 ISBN 4560083061
  • 『夜の勝利 英国ゴシック詞華撰』(全2冊 編訳)国書刊行会<ゴシック叢書> 1984年
  • ジャクソン・I・コープ『「魔」のドラマトゥルギー ルッツァンテからグリマルディにいたる反-演劇研究』(浜名恵美共訳)ありな書房 1986年
  • マージョリー・H・ニコルソン『美と科学のインターフェイス』 平凡社<叢書ヒストリー・オヴ・アイディアズ> 1986年 ISBN 4582733514
  • マージョリー・H・ニコルソン『月世界への旅』 (世界幻想文学大系44)国書刊行会 1986年
  • パスクァーレ・アッカード『シャーロック・ホームズが誤診する 医学/推理/神話』東京図書 1989年
  • ジュディス・ウェクスラー『人間喜劇 十九世紀パリの観相術とカリカチュア』 ありな書房 1987年
  • エディ・ラナーズ『イリュージョン』 河出書房新社 1989年、新版1998年 ISBN 4309263623
  • ヤン・コット『シェイクスピア・カーニヴァル』 平凡社 1989年/ちくま学芸文庫(改訂版) 2017年 ISBN 448009783X
  • レイチェル・ボウルビー『ちょっと見るだけ 世紀末消費文化と文学テクスト』 ありな書房 1989年
  • リチャード・D・オールティック『ロンドンの見世物』(全3巻、小池滋監訳、浜名恵美らとの共訳)
    国書刊行会 1989-90年 ISBN 4336027366(第1巻)、ISBN 4336027374(第2巻)、ISBN 4336030014(第3巻)
  • ステファーノ・ターニ『やぶれさる探偵 推理小説のポストモダン』 東京図書 1990年 ISBN 4489003315
  • ミッシェル・カルージュ『独身者の機械 未来のイヴ、さえも…』(森永徹共訳) ありな書房 1991年
  • フランシス・ハクスリー『眼の世界劇場 聖性を映す鏡』(イメージの博物誌)平凡社 1992年 ISBN 4582284175
  • ユルギス・バルトルシャイティス『著作集(2) アナモルフォーズ 光学魔術』 国書刊行会 1992年 ISBN 433603138X
  • ポール・バロルスキー『とめどなく笑う イタリア・ルネサンス美術における機知と滑稽』(森田義之伊藤博明共訳) ありな書房 1993年 ISBN 4756693318
  • ルイス・キャロル『新注 不思議の国のアリス』マーティン・ガードナー注、ピーター・ニューエル画、東京図書 1994年
    • キャロル『不思議の国のアリス』 亜紀書房 2015年。絵・佐々木マキ
  • ルイス・キャロル『新注 鏡の国のアリス』、マーティン・ガードナー注、ピーター・ニューエル画、東京図書 1994年
    • キャロル『鏡の国のアリス』 亜紀書房(改訂版)、2017年。絵・佐々木マキ ISBN 4750515302
  • ルーサー・リンク『悪魔』研究社出版 1995年 ISBN 4327376612
  • タイモン・スクリーチ『大江戸異人往来』 丸善ブックス 1995年/ちくま学芸文庫 2008年 ISBN 4480091343
  • リン・バーバー『博物学の黄金時代』国書刊行会 1995年 ISBN 4336034931
  • サンダー・L・ギルマン『健康と病 差異のイメージ』ありな書房 1996年 ISBN 4756696473
  • バーバラ・M・スタフォード『アートフル・サイエンス 啓蒙時代の娯楽と凋落する視覚教育』産業図書 1997年 ISBN 4782801041
  • タイモン・スクリーチ『江戸の身体を開く』 作品社 1997年 ISBN 487893753X
  • タイモン・スクリーチ『大江戸視覚革命 十八世紀日本の西洋科学と民衆文化』(田中優子共訳)作品社 1998年 ISBN 4878932937
  • ジョン・エルスナー/ロジャー・カーディナル編『蒐集』(富島美子浜口稔共訳)研究社出版 1998年 ISBN 4327376736
  • タイモン・スクリーチ『春画 片手で読む江戸の絵講談社選書メチエ 1998年/講談社学術文庫 2010年 ISBN 4062920042
  • ジャンカルロ・マイオリーノ『アルチンボルド エキセントリックの肖像』 ありな書房 1998年 ISBN 4756698522
  • マリオ・プラーツ『ムネモシュネ 文学と視覚芸術との間の平行現象』 ありな書房 1999年 ISBN 4756699618
  • スティーヴン・カーン『視線』[1] 研究社出版、2000年 ISBN 4327376787
  • トマス・ド・クインシー著作集 3 「悪魔の骰子」』 国書刊行会、2002年 ISBN 4336037035
  • タイモン・スクリーチ『定信お見通し 寛政視覚改革の治世学』 青土社、2003年 ISBN 4791760492
  • バーバラ・M・スタフォード 『グッド・ルッキング イメージング新世紀へ』 産業図書、2004年 ISBN 4782801521
  • サイモン・シャーマ 『風景と記憶』(栂正行と共訳)、河出書房新社、2005年 ISBN 4309255167
  • バーバラ・M・スタフォード 『ヴィジュアル・アナロジー つなぐ技術としての人間意識』 産業図書、2006年 ISBN 478280153X
  • バーバラ・M・スタフォード 『ボディ・クリティシズム 啓蒙時代のアートと医学における見えざるもののイメージ化』 国書刊行会、2006年 ISBN 4336048177
  • バーバラ・M・スタフォード 『実体への旅 1750年-1860年における美術、科学、自然と絵入り旅行記』 産業図書、2008年 ISBN 4782801645
  • サイモン・シャーマ 『レンブラントの目』 河出書房新社、2009年 ISBN 4309255248
  • ロザリー・L・コリー『パラドクシア・エピデミカ ルネサンスにおけるパラドックスの伝統』 白水社[2]、2011年 ISBN 4560081476
  • エリザベス・シューエル 『オルフェウスの声 詩とナチュラル・ヒストリー』 白水社、2014年 ISBN 4560083053
  • ピーター・ニューエル 『さかさまさかさ』亜紀書房、2015年。絵本
  • ピーター・ニューエル 『穴の本』亜紀書房、2016年。絵本
  • ウィリアム・マガイアー 『ボーリンゲン 過去を集める冒険』 白水社、2017年 ISBN 456008310X
  • 『新訳 不思議の国のアリス 鏡の国のアリス』青土社、2019年4月。画・建石修志 ISBN 4791771508
  • 『詳注アリス 完全決定版』マーティン・ガードナー注、亜紀書房、2019年12月
  • 『完訳 ポリフィロス狂恋夢』 東洋書林、2020年以降予定 
  • バーバラ・M・スタフォード 『象徴と神話』 産業図書、2020年以降予定
  • バーバラ・M・スタフォード 『エコー・オブジェクト』 産業図書、2020年以降予定

共著・編著・監修

関連人物(上記以外)

脚注

  1. ^ シリーズ刊行、「悪魔」、「蒐集」の他に別訳で、フランセット・パクトー『美人』、ジョン・ハーヴェイ『黒服』
  2. ^ シリーズ〈異貌の人文学〉・高山宏セレクション(全11巻)

外部リンク