「シェルスクリプト」の版間の差分
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例として[[Ls (UNIX)|ls]]コマンドのバリエーションを作るスクリプトを示す。コマンドオプションを事前に提供しており、これを例えば <tt>l</tt> という短い名前のファイルとして <tt>/home/''username''/bin/l</tt> などに置くのが一般的である。 |
例として[[Ls (UNIX)|ls]]コマンドのバリエーションを作るスクリプトを示す。コマンドオプションを事前に提供しており、これを例えば <tt>l</tt> という短い名前のファイルとして <tt>/home/''username''/bin/l</tt> などに置くのが一般的である。 |
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LC_COLLATE=C ls -FCas "$@" |
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ここで、1行目は[[シバン (Unix)|シバン]]であり、スクリプトの残りの部分を実行するのに使用するインタプリタが "/bin/sh" であることを示している。2行目ではlsコマンドのオプションを指定しており、ファイル形式のインジケータを表示すること、1行に1ファイルの形式で表示すること、省略せずに全ファイルを表示すること、ファイルサイズをブロック数で表示することを指定している。<tt>LC_COLLATE=C</tt> は文字の照合順序の指定であり、<tt>"$@"</tt> は <tt>l</tt> に付随しているパラメータ列をそのまま ls に渡すことを意味する。したがって、ls の通常のコマンドオプションや構文がそのまま使える。 |
ここで、1行目は[[シバン (Unix)|シバン]]であり、スクリプトの残りの部分を実行するのに使用するインタプリタが "/bin/sh" であることを示している。2行目ではlsコマンドのオプションを指定しており、ファイル形式のインジケータを表示すること、1行に1ファイルの形式で表示すること、省略せずに全ファイルを表示すること、ファイルサイズをブロック数で表示することを指定している。<tt>LC_COLLATE=C</tt> は文字の照合順序の指定であり、<tt>"$@"</tt> は <tt>l</tt> に付随しているパラメータ列をそのまま ls に渡すことを意味する。したがって、ls の通常のコマンドオプションや構文がそのまま使える。 |
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次の例のシェルスクリプトは、カレントディレクトリの全ファイルおよびディレクトリの一覧を表示するショートカットとして使える。 |
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ls -l -a |
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こちらも先頭行は一般的な <tt>#!/bin/sh</tt> である。次に <tt>clear</tt> というコマンドでディスプレイをクリアする。その次の行でこのスクリプトのメインの機能を実行する。<tt>ls -l -a</tt> というコマンド行は、このスクリプトを実行したときのカレントディレクトリにあるファイルとディレクトリの一覧を表示する。lsコマンドのオプションを変更すれば、ユーザーが必要な表示をさせることができる。 |
こちらも先頭行は一般的な <tt>#!/bin/sh</tt> である。次に <tt>clear</tt> というコマンドでディスプレイをクリアする。その次の行でこのスクリプトのメインの機能を実行する。<tt>ls -l -a</tt> というコマンド行は、このスクリプトを実行したときのカレントディレクトリにあるファイルとディレクトリの一覧を表示する。lsコマンドのオプションを変更すれば、ユーザーが必要な表示をさせることができる。 |
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シェルスクリプトを使えば、コマンドラインインタフェースで人手で入力していたコマンド列を自動的に実行でき、一連のコマンドを連続的に実行できる。例えば、あるディレクトリに[[C言語]]のソースファイルが3つあるとき、4つのコマンドを人手で入力して[[ビルド (ソフトウェア)|ビルド]]する代わりに、次のような[[C Shell|Cシェル]]のスクリプトを作成して、 名称を <tt>build</tt> としてそのディレクトリに置けば、ビルドを自動実行できる。 |
シェルスクリプトを使えば、コマンドラインインタフェースで人手で入力していたコマンド列を自動的に実行でき、一連のコマンドを連続的に実行できる。例えば、あるディレクトリに[[C言語]]のソースファイルが3つあるとき、4つのコマンドを人手で入力して[[ビルド (ソフトウェア)|ビルド]]する代わりに、次のような[[C Shell|Cシェル]]のスクリプトを作成して、 名称を <tt>build</tt> としてそのディレクトリに置けば、ビルドを自動実行できる。 |
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echo compiling... |
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cc -o myprog foo.o bar.o qux.o |
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このようなスクリプトを用意しておけば、ユーザーがソースファイルを編集し、その途中で <tt>./build</tt> を実行すれば、更新された[[実行ファイル]]を生成・評価し、編集に戻ることもできる。ただし1980年代以降、このようなスクリプトは [[make]] などの専用ユーティリティに置換されている。 |
このようなスクリプトを用意しておけば、ユーザーがソースファイルを編集し、その途中で <tt>./build</tt> を実行すれば、更新された[[実行ファイル]]を生成・評価し、編集に戻ることもできる。ただし1980年代以降、このようなスクリプトは [[make]] などの専用ユーティリティに置換されている。 |
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簡単な[[バッチ処理]]は孤立したタスクでは珍しくないが、シェルの持つループ機能、評価機能、変数などを使えば、より柔軟なスクリプトを書くことができる。次の例はJPEG画像をPNG画像に変換する[[bash]]スクリプトで、画像ファイル名はコマンド行で提供し、ワイルドカードも使用できる。そのためファイル名をスクリプト内に羅列する必要はない。このスクリプトは例えば <tt>/home/''username''/bin/jpg2png</tt> といったファイル名で置いておく。 |
簡単な[[バッチ処理]]は孤立したタスクでは珍しくないが、シェルの持つループ機能、評価機能、変数などを使えば、より柔軟なスクリプトを書くことができる。次の例はJPEG画像をPNG画像に変換する[[bash]]スクリプトで、画像ファイル名はコマンド行で提供し、ワイルドカードも使用できる。そのためファイル名をスクリプト内に羅列する必要はない。このスクリプトは例えば <tt>/home/''username''/bin/jpg2png</tt> といったファイル名で置いておく。 |
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#!/bin/bash |
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for jpg in "$@" ; do # 指定されたファイル名を $jpg として参照 |
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echo all conversions successful # 完了を表示 |
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<tt>jpg2png</tt> コマンドを使えば、例えば <tt>jpg2png *.jpg</tt> とすることでディレクトリ内の全JPEG画像を変換できる。 |
<tt>jpg2png</tt> コマンドを使えば、例えば <tt>jpg2png *.jpg</tt> とすることでディレクトリ内の全JPEG画像を変換できる。 |
2020年7月5日 (日) 22:39時点における版
シェルスクリプト (英語: shell script) は、オペレーティングシステムのシェルまたはコマンドラインインタプリタ向けに書かれたスクリプト言語である。狭義では、Unixシェルで用いられるスクリプト言語を指す。シェルスクリプトは他のツールを組み合わせるためのグルー型のドメイン固有言語とみなされることもある[1]。シェルスクリプトで書かれる典型的処理としては、ファイル操作、プログラム実行、テキストの印刷などがある。
シェルスクリプト用インタプリタの多くはコマンドラインインタフェースも兼ねており、各種Unixシェル、Windows PowerShell、MS-DOSのCOMMAND.COMなどがある。他にAppleScriptやグラフィカルな Windows Script Host (WScript.exe) などもあり、コマンドラインインタフェース抜きでコンピューティング環境にスクリプト機能を加えている。他のシェルスクリプト向けのプログラミング言語としては、DCLとJCLなどがある。
この項目では、Unixシェルのシェルスクリプトについて記載する。
機能
ショートカット
その最も基本的な形式として、シェルスクリプトはシステムコマンドに特別な環境設定、コマンドオプション、後処理などを自動的に適用する形で新たなコマンドのバリエーションを提供するが、そのスクリプトを普通のUNIXのコマンドとして利用することもできる。
例としてlsコマンドのバリエーションを作るスクリプトを示す。コマンドオプションを事前に提供しており、これを例えば l という短い名前のファイルとして /home/username/bin/l などに置くのが一般的である。
#!/bin/sh
LC_COLLATE=C ls -FCas "$@"
ここで、1行目はシバンであり、スクリプトの残りの部分を実行するのに使用するインタプリタが "/bin/sh" であることを示している。2行目ではlsコマンドのオプションを指定しており、ファイル形式のインジケータを表示すること、1行に1ファイルの形式で表示すること、省略せずに全ファイルを表示すること、ファイルサイズをブロック数で表示することを指定している。LC_COLLATE=C は文字の照合順序の指定であり、"$@" は l に付随しているパラメータ列をそのまま ls に渡すことを意味する。したがって、ls の通常のコマンドオプションや構文がそのまま使える。
これを使えば、単に l と入力するだけでよく使うファイル一覧表示形式が得られる。
次の例のシェルスクリプトは、カレントディレクトリの全ファイルおよびディレクトリの一覧を表示するショートカットとして使える。
#!/bin/sh
clear
ls -l -a
こちらも先頭行は一般的な #!/bin/sh である。次に clear というコマンドでディスプレイをクリアする。その次の行でこのスクリプトのメインの機能を実行する。ls -l -a というコマンド行は、このスクリプトを実行したときのカレントディレクトリにあるファイルとディレクトリの一覧を表示する。lsコマンドのオプションを変更すれば、ユーザーが必要な表示をさせることができる。
バッチ処理
シェルスクリプトを使えば、コマンドラインインタフェースで人手で入力していたコマンド列を自動的に実行でき、一連のコマンドを連続的に実行できる。例えば、あるディレクトリにC言語のソースファイルが3つあるとき、4つのコマンドを人手で入力してビルドする代わりに、次のようなCシェルのスクリプトを作成して、 名称を build としてそのディレクトリに置けば、ビルドを自動実行できる。
#!/bin/csh
echo compiling...
cc -c foo.c
cc -c bar.c
cc -c qux.c
cc -o myprog foo.o bar.o qux.o
echo done.
このようなスクリプトを用意しておけば、ユーザーがソースファイルを編集し、その途中で ./build を実行すれば、更新された実行ファイルを生成・評価し、編集に戻ることもできる。ただし1980年代以降、このようなスクリプトは make などの専用ユーティリティに置換されている。
一般化
簡単なバッチ処理は孤立したタスクでは珍しくないが、シェルの持つループ機能、評価機能、変数などを使えば、より柔軟なスクリプトを書くことができる。次の例はJPEG画像をPNG画像に変換するbashスクリプトで、画像ファイル名はコマンド行で提供し、ワイルドカードも使用できる。そのためファイル名をスクリプト内に羅列する必要はない。このスクリプトは例えば /home/username/bin/jpg2png といったファイル名で置いておく。
#!/bin/bash
for jpg in "$@" ; do # 指定されたファイル名を $jpg として参照
png="${jpg%.jpg}.png" # .jpg を .png に置換することでPNG用ファイル名を生成
echo converting "$jpg" ... # ステータス情報を表示
if convert "$jpg" jpg.to.png ; then # Linuxで一般的な convert というプログラムを使って、フォーマットを変換する
mv jpg.to.png "$png" # 成功したら、出力ファイルを正しいファイル名に移動する
else # 失敗したらエラーを表示してスクリプトを終了させる
echo 'error: failed output saved in "jpg.to.png".' 1>&2
exit 1
fi # "if" の終り
done # "for" ループの終り
echo all conversions successful # 完了を表示
exit 0
jpg2png コマンドを使えば、例えば jpg2png *.jpg とすることでディレクトリ内の全JPEG画像を変換できる。
シバン行の意味
シェルスクリプトの重要な点として、インタプリタの呼び出しはオペレーティングシステムの中核機能として処理される。すなわち、execシステムコールにシェルスクリプトのファイル名を渡すと、シバンをカーネルが解釈し、そこに指定されたファイルを実行ファイル、元々渡されたスクリプトファイルをその実行ファイルへのパラメータとして実行させる。初期の Bourne Shell が登場したころはこのような機能はなかった。このため現代のシェルスクリプトはシステムコマンドと同じ足場に立っているだけでなく、実際に多くのシステムコマンドがシェルスクリプトで実装されている(さらに言えば、PerlやPythonなどの言語で書かれたスクリプトも同様の機構で実行できる)。そのため、スクリプトも通常のシステムユーティリテイと同様に終了ステータスとして成功か失敗かを返すようになっていき、どういった言語で実装されているかに関わらず大規模なソフトウェアのコンポーネントとして使えるようになっていった。
標準的なシステムコマンドと同様、シェルスクリプトのファイル名には拡張子をつけないことが多い。しかし、動作中のシェルにシェルスクリプトを読み込ませる特別な機構(例えば、sh の “.
”コマンドや csh の source コマンド)を使う場合は、その限りではない
プログラミング
現代の多くのシェルは手続き型プログラミング言語にある基本的な制御フロー構造などに似た豊富な機能を備えている。制御構造、変数、コメント、配列、サブルーチンなどである。それらを使えばかなり洗練されたアプリケーションをシェルスクリプトで書くことも可能である。しかし、シェル言語の多くはデータ型システム、クラス、スレッド、複雑な数学的計算といった高水準言語に見られる機能をほとんどサポートしていない。また、コンパイラや性能重視のインタプリタで実装された汎用言語に比べれば実行速度が遅い。
他のスクリプト言語
シェルスクリプトで扱うには大きいあるいは複雑すぎるタスクを扱うため、もっと強力な様々なスクリプト言語が開発されてきた。ただしそのような用途には高水準言語もあり、高水準言語とスクリプト言語のそれぞれがどういう用途に適しているかは議論のテーマともなってきた。一般にスクリプト言語はインタプリタとして実装される。
開発ライフサイクル
スクリプト言語はプログラミング言語と比較して簡単に記述できるため、Proof of Concept実装に適している。ソフトウェア開発の初期段階でシェルスクリプトを使い、それらを徐々に Perl、Python、C言語などに書き換えていく手法を用いることがある。
長所と短所
同じプログラムを書く場合、他のプログラミング言語よりもシェルスクリプトの方が早いことが多い。プログラムが容易でファイル操作機能が豊富で、素早く起動でき、対話的にデバッグできるためである。既存のプログラム群を順次実行する場合や何らかの条件判断を伴って実行する場合などはシェルスクリプトが有効で、中規模のシェルスクリプトではコンパイルが不要という点も利点の一つである。インタプリタ実行なのでデバッグ用コードを挿入するのも容易であり、バグも見つけやすい。また、複数のプログラムを限定的な形ながら並列実行することもできる。
一方でシェルスクリプトは手痛いエラーを引き起こしやすい。例えばUNIXコミュニティには rm -rf */ を rm -rf * / と打ち間違える有名なミスが存在する。空白が余分に1つ入っただけで、あるディレクトリ配下を全て消去するつもりだったものが、ルートディレクトリ配下全体を消去する指示になってしまった例である。同様に出力をリダイレクトする > を間違って使用することで、cp と mv も危険な武器になってしまう(ファイルの中身を上書きしてしまう)。また、UNIXには1文字しか違わないコマンド名が多く存在するため、さらにうっかりミスの危険性が増す。例えば、cp、cd、dd、df などである。
もう1つの短所は、実行速度の遅さとほぼ全てのシェルコマンド実行で新たなプロセスを生成する必要がある点である。多くのスクリプトの仕事はフィルタコマンド群をパイプで繋ぐことであり、性能問題はあまり関係ない。しかし、複雑なスクリプトはコンパイル方式の言語で実装した場合に比べて桁違いの遅さになることが多い。
また、プラットフォーム間の互換性問題もある。Perlの作者ラリー・ウォールの有名な言葉として「シェルスクリプトを移植するより、シェルそのものを移植する方が簡単だ」というものがある。
また、複雑なスクリプトを書こうとするとシェルスクリプト言語自身の制限にぶちあたることが多い。そのため回避策を施すことでコード品質が悪化し、シェル自体を拡張することで上述の互換性問題を引き起こすことになる[2]。
一部スクリプト言語を使った際の多くの短所は、言語の文法上の欠陥や実装上の欠陥が原因である。
脚注
- ^ Kernighan, Brian W.; Pike, Rob (1984), “3. Using the Shell”, The UNIX Programming Environment, Prentice Hall, Inc., p. 94, ISBN 0-13-937699-2, "The shell is actually a programming language: it has variables, loops, decision-making, and so on."
- ^ "Csh Programming Considered Harmful"