「黒い落葉/黄昏のビギン」の版間の差分
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「黄昏のビギン」は発表後しばらくの間は世間の耳目を集めるには至らなかったが、キャバレーなどのマイナーな世界では「隠れた名曲」として歌い継がれていた。川崎でスナックを経営していた[[大島東]]([[坂本九]]の兄)の証言によれば、発売当時は客のリクエストに応じてレコードでよく流しており、A面の「黒い落葉」よりも流す頻度は高かったという。また当時多かった流しの歌手もよく同曲を披露しており、全国の大衆酒場などでは需要があったという{{Sfn|佐藤|pp=198-203}}。 |
「黄昏のビギン」は発表後しばらくの間は世間の耳目を集めるには至らなかったが、キャバレーなどのマイナーな世界では「隠れた名曲」として歌い継がれていた。川崎でスナックを経営していた[[大島東]]([[坂本九]]の兄)の証言によれば、発売当時は客のリクエストに応じてレコードでよく流しており、A面の「黒い落葉」よりも流す頻度は高かったという。また当時多かった流しの歌手もよく同曲を披露しており、全国の大衆酒場などでは需要があったという{{Sfn|佐藤|pp=198-203}}。 |
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1991年、[[ちあきなおみ]]のカバーアルバム『[[すたんだーど・なんばー]]』に黄昏のビギンが収録されることとなり、服部隆之が編曲を担当する。中村は「このアレンジが一番好きだ」とコメントした。アルバムの先行シングルとして単独でリリースされた。同年10月から半年間、[[京成電鉄]]「[[スカイライナー]]」のCMに使用された。翌1992年6月10日、中村が没する。9月11日、ちあきの夫の[[ |
1991年、[[ちあきなおみ]]のカバーアルバム『[[すたんだーど・なんばー]]』に黄昏のビギンが収録されることとなり、服部隆之が編曲を担当する。中村は「このアレンジが一番好きだ」とコメントした。アルバムの先行シングルとして単独でリリースされた。同年10月から半年間、[[京成電鉄]]「[[スカイライナー]]」のCMに使用された。翌1992年6月10日、中村が没する。9月11日、ちあきの夫の[[郷鍈治]]の死をきっかけにちあきが表舞台から姿を消す{{Sfn|佐藤|pp=23-24}}。 |
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同年10月10日公開の『[[死んでもいい (映画)|死んでもいい]]』のワンシーンで楽曲が流れ(予告編では全編流された)、同作が映画賞を多数受賞するとともに再び楽曲が注目される{{Sfn|佐藤|pp=37-39}}。1993年には本曲をモチーフにした[[諸井薫]]の同名の小説が[[小説現代]]6月号に掲載され{{Sfn|佐藤|pp=39-41}}、12月には水原版が『[[君こそわが命]]』と両A面シングルとして再版される{{Sfn|佐藤|p=41}}。 |
同年10月10日公開の『[[死んでもいい (映画)|死んでもいい]]』のワンシーンで楽曲が流れ(予告編では全編流された)、同作が映画賞を多数受賞するとともに再び楽曲が注目される{{Sfn|佐藤|pp=37-39}}。1993年には本曲をモチーフにした[[諸井薫]]の同名の小説が[[小説現代]]6月号に掲載され{{Sfn|佐藤|pp=39-41}}、12月には水原版が『[[君こそわが命]]』と両A面シングルとして再版される{{Sfn|佐藤|p=41}}。 |
2020年7月11日 (土) 12:15時点における版
「黒い落葉/黄昏のビギン」 | ||||
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水原弘 の シングル | ||||
A面 | 黒い落葉 | |||
B面 | 黄昏のビギン | |||
リリース | ||||
規格 | シングルレコード | |||
録音 |
1959年 日本 | |||
ジャンル | 歌謡曲 | |||
レーベル | 東芝レコード/東京芝浦電気 | |||
作詞・作曲 |
永六輔 中村八大 | |||
水原弘 シングル 年表 | ||||
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「黒い落葉/黄昏のビギン」(くろいおちば/たそがれのびぎん)は、水原弘のシングル。1959年10月に東京芝浦電気(現・東芝)の音楽事業部、東芝レコード(現・ユニバーサル ミュージック合同会社)から発売された。
概要
1959年、中村八大は東宝映画『青春を賭けろ』の音楽監督に名乗りを上げるが、当時ジャズ奏者から転身したばかりの中村は無名で、東宝側からオーディションとして翌日までにロカビリー音楽を10曲用意するよう要求される。中村は偶然出会った放送作家の永六輔をつかまえて、自宅マンションで一夜一昼かけて映画のメイン楽曲『黒い花びら』などの10曲作り上げ、見事音楽監督の座を射止める。その10曲の題目は明らかになっていないが、佐藤剛は、この10曲の中に黄昏のビギンが存在した可能性が高いと分析している[1]。
「ビギン」というのは仏領マルティニクのダンス音楽で、これがパリに持ち込まれることによりジャズのスタンダードナンバー『ビギン・ザ・ビギン』が誕生した[2]。1950年代前半のジャズブームに沸く日本でもコンサートで度々演奏され、当時ジャズバンド『ビッグ・フォー』として一世を風靡していた中村も何度も演奏した[3]。後年中村は「女の子がショート・パンツで走り回る姿が浮かんでくる」と述べており[4]、当時踊り子として出演していた子役の役者を指しているものと推測される。
前述のオーディションの楽曲制作は、永が10曲分の歌詞を、中村が10曲分のメロディをそれぞれ作成して、原稿を突き合わせて訂正と編曲を行う、という手順で行われた。その段階で、「たそがれ」で始まる歌詞とビギン調のメロディが組み合わさることになり、これが「黄昏のビギン」の原型になったのではないか、というのが佐藤の推理である[1]。
1959年8月、東宝映画『青春を賭けろ』と『檻の中の野郎たち』が連続公開された。後者の作品の劇中に、ミッキー・カーチス、守屋浩、山下敬二郎が「黄昏のビギン」の原型となった曲(メロディは同じだが歌詞は一部異なり、曲名などはノンクレジット)を歌うシーンがある[5]。これに中村が更に手を加え、同年末公開の『「黒い落葉」より 青春を吹き鳴らせ』の劇中で水原弘が歌唱した[6]。同曲は水原のシングル「黒い落葉」のB面として発売される[7]。
「黒い落葉」は1959年の東芝レコードの流行歌レコード売上で年間2位を記録した[8]。同社の年間1位も同じく水原の「黒い花びら」であった[8]。
「黄昏のビギン」は発表後しばらくの間は世間の耳目を集めるには至らなかったが、キャバレーなどのマイナーな世界では「隠れた名曲」として歌い継がれていた。川崎でスナックを経営していた大島東(坂本九の兄)の証言によれば、発売当時は客のリクエストに応じてレコードでよく流しており、A面の「黒い落葉」よりも流す頻度は高かったという。また当時多かった流しの歌手もよく同曲を披露しており、全国の大衆酒場などでは需要があったという[9]。
1991年、ちあきなおみのカバーアルバム『すたんだーど・なんばー』に黄昏のビギンが収録されることとなり、服部隆之が編曲を担当する。中村は「このアレンジが一番好きだ」とコメントした。アルバムの先行シングルとして単独でリリースされた。同年10月から半年間、京成電鉄「スカイライナー」のCMに使用された。翌1992年6月10日、中村が没する。9月11日、ちあきの夫の郷鍈治の死をきっかけにちあきが表舞台から姿を消す[10]。
同年10月10日公開の『死んでもいい』のワンシーンで楽曲が流れ(予告編では全編流された)、同作が映画賞を多数受賞するとともに再び楽曲が注目される[11]。1993年には本曲をモチーフにした諸井薫の同名の小説が小説現代6月号に掲載され[12]、12月には水原版が『君こそわが命』と両A面シングルとして再版される[13]。
1999年にはちあき版がネスレ日本「ネスカフェ・プレジデント」のCMに起用、2003年まで4年のロングランとなる。芸能界を10年間不在にしていたちあきへの関心も相まって楽曲の知名度も上昇し、2000年2月、『かもめの街』とのカップリングで再版された[14]。これをきっかけに様々なアーティストによるカバーがなされ、「黄昏のビギン」は文字通りのスタンダード・ナンバーになった。
水原弘のシングル「黒い落葉/黄昏のビギン」
概要
A面の「黒い落葉」は前作(「黒い花びら」)同様、作詞は永六輔、作曲は中村八大のコンビ。「黒い落葉」は水原弘の黒いシリーズの第二弾として制作された。
B面の「黄昏のビギン」は、永六輔と中村八大の共同作詞[注釈 1]であり、中村八大が作曲している。永六輔は自身のラジオ番組で、この曲が自分の曲の中で一番好きなこと、作詞は中村八大が行い、自らは頼まれて名前を貸しただけであることを明かしている。「黒い落葉」をモチーフとして、日活が和田浩治&岡田真澄主演で『「黒い落葉」より 青春を吹き鳴らせ』という題名で映画化した[15]。この映画には水原弘自身も出演し、劇中で「黒い落葉」と「黄昏のビギン」を歌唱している。
「黄昏のビギン」は、後にちあきなおみを始めとして、多くの歌手によってカバーされている(後述)。
収録曲
(全作曲・編曲:中村八大)
- 黒い落葉
- 作詞:永六輔
- 黄昏のビギン
- 作詞:永六輔・中村八大
ちあきなおみのシングル「黄昏のビギン」
「黄昏のビギン」 | ||||
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ちあきなおみ の シングル | ||||
初出アルバム『すたんだーと・なんばー』 | ||||
A面 | 黄昏のビギン | |||
B面 |
黒い花びら かもめの街 (再発売) | |||
リリース | ||||
規格 | シングル | |||
録音 |
1991年 日本 | |||
ジャンル | 歌謡曲 | |||
レーベル | テイチクレコード | |||
作詞・作曲 |
永六輔(作詞) 中村八大(作曲) | |||
チャート最高順位 | ||||
ちあきなおみ シングル 年表 | ||||
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「黄昏のビギン」(たそがれのびぎん)は、1991年6月21日に発売されたちあきなおみのシングル。テイチクレコード(現・テイチクエンタテイメント)から発売された。
概要
1991年7月21日発売のカバーアルバム「すたんだーと・なんばー」から先行して本楽曲がシングルカットされた。
1991年には京成電鉄の「スカイライナー」、1999年 - 2003年には四期連続でネスレ日本の「ネスカフェ・プレジデント」、2011年にはトヨタ自動車の「ReBORN DRIVE FOR TOHOKU」と、数多くのCMで使用された。
2000年にはちあきの作品の「かもめの街」と「黄昏のビギン」がカップリングで収録されたバージョンが発売され、オリコンチャートで週間86位にランクインした。
また、1991年盤のカップリングに収録された「黒い花びら」も同じく水原弘のカバーである。
収録曲
1991年発売盤
2000年発売盤
その他のカバー
- 黄昏のビギン
- 島津ゆたか - シングルとして発売。
- さだまさし - 2001年発売のアルバム『さだまさし 永六輔・中村八大を歌う』に収録。
- 中森明菜 - 2002年発売のアルバム『-ZEROalbum- 歌姫2』に収録。
- 和幸 - 2007年発売のアルバム『和幸:ゴールデン・ヒッツ』に収録。
- 稲垣潤一 with 島健 - 2008年発売のシングル『悲しみがとまらない』に収録。
- 岩崎宏美 - 2010年発売のアルバム『Dear FriendsV』に収録。
- 大江千里のピアノ演奏に乗せてカバーした。
- 鈴木雅之 - 2010年発売のアルバム『MASAYUKI SUZUKI 30TH ANNIVERSARY LIVE THE ROOTS〜could be the night〜』に収録。
- Sumire - 2013年、シングルとして発売。
- 薬師丸ひろ子 - 2013年発売のアルバム『時の扉』に収録。
- 高岡早紀 - 2014年発売のアルバム 『Sings-Bedtime stories』に収録。
- 大竹しのぶ - 2014年発売のアルバム 『歌心 恋心』に収録。
- 髙橋真梨子 - 2015年発売のカバーアルバム『ClaChic -クラシック-』に収録。
- 蘭華 - アルバム『昭和を詠う〜大切なものへ〜』(2011年10月19日発売。BELLWOOD RECORDS BZCS-1083。編曲:綾部健三郎)収録。
- 井上陽水 - 2015年発売のカバーアルバム『UNITED COVER 2』に収録。
- 安奈淳 - 2016年発売のアルバム『麗人REIJIN -Season 2』に収録[16]。
- ケイ・グラント - 2016年発売のアルバムに『星の輝く夜だから(ピアノver.)』『朝に(ピアノver.)』とともに収録。
- 柴咲コウ - 2016年発売のカバーアルバム『続こううたう』に収録[17]。
- PUSHIM - 2016年発売のカバーアルバム『THE ノスタルジックス』に収録[18]。
- 西田あい - 2019年発売のカバーアルバム『アイランド・ソングス ~私の好きな愛の唄~』に収録。
脚注
注釈
出典
- ^ a b 佐藤, pp. 157–158.
- ^ 佐藤, pp. 159–160.
- ^ 佐藤, pp. 164–165.
- ^ 佐藤, p. 170.
- ^ 佐藤, pp. 174–177.
- ^ 佐藤, p. 188.
- ^ 佐藤, p. 181.
- ^ a b 「流行歌ことしの当たり屋 レコード各社のベスト・テンから」『毎日新聞』1959年12月26日付東京夕刊、3面。
- ^ 佐藤, pp. 198–203.
- ^ 佐藤, pp. 23–24.
- ^ 佐藤, pp. 37–39.
- ^ 佐藤, pp. 39–41.
- ^ 佐藤, p. 41.
- ^ 佐藤, p. 43.
- ^ 「黒い落葉」より 青春を吹き鳴らせ - KINENOTE
- ^ “涼風真世、壮一帆ら総勢12人の元宝塚トップスターが「男唄」をカバー!レコーディング風景をダイジェスト公開!”. シアタークリップ (2015年12月23日). 2015年12月25日閲覧。
- ^ “柴咲コウ「続こううたう」で星野源、GAO、マイラバ、陽水ら名曲カバー”. 音楽ナタリー. (2016年6月10日) 2016年6月10日閲覧。
- ^ “PUSHIMが歌う陽水、百恵、坂本九…ノスタルジックな昭和歌謡カバー集”. 音楽ナタリー. (2016年9月12日) 2016年9月13日閲覧。
参考文献
- 佐藤剛『「黄昏のビギン」の物語』小学館新書、2014年。ISBN 978-4-09-825214-5。
外部リンク
- “「黄昏のビギン」はいかにしてスタンダード・ソングとなったか 名プロデューサーの快著を読む”. Real Sound (2014年8月9日). 2019年7月7日閲覧。