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2020年7月17日 (金) 14:39時点における版
海鳴り忍法帖 | ||
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著者 | 山田風太郎 | |
発行日 | 1971年 | |
ジャンル | 時代小説 | |
前作 | 根来忍法帖 | |
次作 | 忍法創世記 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『海鳴り忍法帖』(うみなりにんぽうちょう)[1]は、山田風太郎の時代小説。1971年に発表された忍法帖シリーズの一作。シリーズ第25長編。
概要
剣より強い忍法を科学の力で打ち倒すという異色のテーマ。冒頭から剣士は忍者に蹂躙され全く相手にならないが、そのような超絶忍法も鉄砲にはかなわない。
1540年代には種子島に鉄砲が伝来し、日本国内でも実戦で使われていたとされる。そのような火縄式鉄砲の時代において、主人公は火打石式鉄砲、銃剣、連発銃、花火(照明弾)、棒火矢(ロケット砲)、手榴弾、地雷、大砲などを発明して戦争に投入する。
忍法帖シリーズの中でも敵忍者の数が最多。主人公は一人[2]、敵の根来忍法僧は三万人である[3]。近代兵器の力は、忍法僧のプライドを無慈悲に蹂躙する。前作『根来忍法帖(妖の忍法帖)』で正義サイドだった根来忍者は悪役となっている。
そして作中最大の怪物はカタリナ昼顔。兵器よりも恐ろしいものは女、というテーマになっている。
あらすじ
この時代の堺は東洋の自由都市、鉄砲と弾薬の最大の供給地でもある。
永禄8年(1565年)将軍足利義輝の御前試合にて、剣聖上泉伊勢守の弟子たちが、魔術を扱う根来忍者にいともたやすく敗れ去る。これを見た国友村の若き鍛冶職人・ミカエル厨子丸は、もはや剣の時代でないことを知る。
松永弾正の命で、一万二千の根来僧兵が将軍足利義輝邸を襲撃。将軍を殺して(永禄の変)、御台である夕子の方、愛妾昼顔御前を奪おうとする。呂宋助左衛門と曾呂利伴内は夕子の方を救出し堺に匿う。厨子丸の恋人鶯は、夕子の方と間違って捕らえられ惨殺されてしまう。
厨子丸は復讐を誓い、自ら開発した兵器の力で、松永弾正と三万の根来僧と戦う。だが籠城の堺は、昼顔の方によって内部崩壊してゆく。
登場人物
国友衆(鍛冶職人)
主要人物
- 足利義輝 - 室町幕府13代将軍。「公方さま」と呼ばれる。剣豪将軍として名高い。
- マルタ鵯(マルタ ひよどり) - 足利公方に仕える雑仕娘。20歳位。活発な性格。厨子丸を愛している。
- 鶯(うぐいす) - カタリナ昼顔に仕える娘。厨子丸の恋人。夕子の方の身代わりとして弾正に捕まり、根来僧たちに輪姦され殺される。
- 夕子の方(ゆうこのかた) - 足利公方の御台。「月光のような正夫人」と称される。公方邸襲撃で死んだとされるが、堺に匿われる。
- カタリナ昼顔(カタリナ ひるがお) - 足利公方の愛妾。「日光のようなご愛妾」と称される妖姫。厨子丸を愛しており、鶯に夕子の方を重ねて憎んでいる。公方邸襲撃の際、松永弾正に略奪され寵姫となる。さらに堺の色街でかつての大傾城「地獄太夫」と同じ名で呼ばれる遊女となり、堺を内部崩壊させてゆく。
- 呂宋助左衛門 - 堺の富豪・納屋衆の一人だが、見た目は町人というより「海の匂いのする野武士」。フロイスとは懇意。櫂を削った棒を武器に使う。夕子の方を匿い、慕うようになる。
- 曾呂利伴内 - 助左衛門の付き人。鞘作りの名人。落語の始祖で道化役。友人に木下藤吉郎がいる。
- ルイス・フロイス - ポルトガルの宣教師。「ぱあでれ」または「伴天連」と呼ばれる。『日本史』を執筆。
根来忍法僧
- 松永久秀 - 阿波と畿内の大大名・三好家の家老。商人上がりの武将で、根来僧を用いて堺の町獲得を狙う。56歳位。
- 油坂坊(あぶらざかぼう) - 根来忍者。瓢箪から液体をあおり、火の息を吐く。
- 多聞坊(たもんぼう) - 同じく根来忍者
- 阿含坊(あごんぼう) - 同上。
- 十輪坊(じゅうりんぼう) - 同上。根来西塔に属す。
- 騎西坊(きさいぼう) - 同上。根来北塔に属す。
- 牛頭坊(ごずぼう) - 喉や胸に短銃の弾を受けても怪我もせず死なない。
- 当麻坊(たいまぼう) - 髪の毛を編んだ紐を武器とする。
- 鳴輪坊(なりわぼう) - 鎌を武器とする。
- 葛間坊(かつらまぼう) - 鎖を武器とする。
- 猿丸坊(さるまるぼう) - 大唐傘を回し空に投げ、傘の上に乗り空中飛行をする。
- 斑鳩坊(いかるがぼう) - わらじの下に鞠をつけ、毬の回転で地上を走り滑る。
- 板曳坊(いたびきぼう) - 強靭な肉体を持ち、刀や銃弾もはね返す。
- 百首坊(ももくびぼう) - 革鞭を武器とする。
- 波切坊(なきりぼう) - 相手の影を斬ると、本体も斬られる。
- 穴川坊(あなかわぼう - 鳥黐で人間や馬も動けなくする[4]。
- 蓮華坊(れんげぼう) - 蓮の葉を投げ相手の顔に貼り付け、窒息死させる[5]。
- 雲取坊(くもとりぼう) - 息を吸うとかまいたちの真空を作り、相手を倒す。
- 烏帽子坊(えぼしぼう) - 竹筒の中に身を隠す。
- 梵梁坊(ぼんりょうぼう) - 体がひらべったくなり、一枚の皮のようになる。
- 西岳坊(さいがくぼう) - 掌の分泌物によって触れるものが鏡のようになる[6]。
- 霜寒坊(そうかんぼう) - 磁力を持つ鉄杖の使い手[7]。
- 赤麟坊(せきりんぼう) - 垂直な壁でも水平に、横になった状態で立つ[8]。
- 印空坊(いんくうぼう) - 敵の鼓膜や三半規管を破戒して平衡機能を狂わせる。
書誌情報
- 海鳴り忍法帖(角川文庫 1979年)
- 海鳴り忍法帖(講談社ノベルズ・スペシャル 1996年)