「花と乙女に祝福を」の版間の差分
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『'''花と乙女に祝福を'''』(はなとおとめにしゅくふくを、{{lang-zh-short|花與乙女的祝福}})は、株式会社ウィル(現[[ウィルプラス]])のゲームブランド[[ensemble (ゲームブランド)|ensemble]]より[[2009年]][[5月29日]]に発売された[[アダルトゲーム|18禁]][[恋愛ゲーム (ゲームジャンル)|恋愛アドベンチャーゲーム]]{{R|bugbug_200907|push_200904}}。本作は、病弱な双子の妹に成り代わりお嬢様学園に通う少年のドタバタ生活を描いた、女装主人公ものであり{{R|bugbug_200907|push_200904}}、ensemble「[[乙女シリーズ]]」の端緒を開いた作品であると同時に、同ブランドの処女作でもある{{R|bugbug_200907|push_200904|vfb_writer}}。略称は「花乙女」<ref name="staff_txt1"/>または「花乙」であり<ref name="staff_txt2"/>、いずれも「はなおと」と読む。 |
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[[2010年]][[1月29日]]には続編『'''花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ'''』が発売された<ref name="push_201003"/>。同年[[7月8日]]には登場人物とシナリオを追加し、続編の要素も取り入れた『'''花と乙女に祝福を -春風の贈り物-'''』が[[PlayStation 2]]版として発売された{{R|dps_20100409|gw_20100326|mantan_20100528}}。[[2011年]][[10月27日]]に発売された『'''花と乙女に祝福を -春風の贈り物- portable'''』はその[[PlayStation Portable]]移植版である{{R|ld_20111101|sony_psp}}。 |
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2011年には中国語翻訳版が制作され<ref name="FDM-019"/>、2015年から2018年頃にかけては[[iOS (アップル)|iOS]]/[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]版のサービスも提供されていた<ref name="sgi_20150402"/><ref name="4g_20150714"/>。 |
2011年には中国語翻訳版が制作され<ref name="FDM-019"/>、2015年から2018年頃にかけては[[iOS (アップル)|iOS]]/[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]版のサービスも提供されていた<ref name="sgi_20150402"/><ref name="4g_20150714"/>。 |
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⚫ | 本作のアイデアは、シナリオライターの「じんべい」が2007年以前から、双子の入れ替わりもので何か面白いことができないかと長期間温め続けていたものである。株式会社ウィルの夏月{{efn2|出典では「夏目」となっているが誤植と思われる。以下の本文中では「夏月」と記す。}}に提案したところ、好感触が得られたことから、2008年の年明けに本作企画として正式に立ち上がった<ref name="staff_txt2"/>。夏月は「ウィルの中に無いものをやりたい」とじんべいに話した。いわゆる「萌え」中心の作品が業界に増えていた中、当時のウィルには萌えを扱うブランドがまだなかったことが背景にある。萌えを扱う新ブランド「[[ensemble (ゲームブランド)|ensemble]]」が設立され、本作がその処女作として発表される運びになった<ref name="vfb_writer"/>。 |
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=== 開発 === |
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企画が立ち上がった時点でエンディングまでの明確なプロットが存在したのは聖佳だけであった。主人公の正体を知っていて協力者となる存在が要請され、都が加えられた。次いで志鶴が入り、さらに祈・薫・眞弥子と、キャラクター配分は素直に決まっていったという<ref name="vfb_writer"/>。 |
企画が立ち上がった時点でエンディングまでの明確なプロットが存在したのは聖佳だけであった。主人公の正体を知っていて協力者となる存在が要請され、都が加えられた。次いで志鶴が入り、さらに祈・薫・眞弥子と、キャラクター配分は素直に決まっていったという<ref name="vfb_writer"/>。 |
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前述の[[#広報の方針]]の結果として、ユーザーからは「思ったより百合ものだった」という感想が多く寄せられたという。女装ものだと理解して買ったユーザーが多数であったことが示されているわけである。これに対し夏月も、女装ものを欲したユーザーがそのような感想を抱くのは問題なく、狙いに対する否定的な意見としては受け止めていないと述べている<ref name="vfb_designer"/>。 |
前述の[[#広報の方針]]の結果として、ユーザーからは「思ったより百合ものだった」という感想が多く寄せられたという。女装ものだと理解して買ったユーザーが多数であったことが示されているわけである。これに対し夏月も、女装ものを欲したユーザーがそのような感想を抱くのは問題なく、狙いに対する否定的な意見としては受け止めていないと述べている<ref name="vfb_designer"/>。 |
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また、籐太の危惧したとおり([[#晶子のキャラクターデザイン]]を参照)、発売後のキャラクター人気投票「ルピナスのヒロインは私よ! 選手権」では晶子が |
また、籐太の危惧したとおり([[#晶子のキャラクターデザイン]]を参照)、発売後のキャラクター人気投票「ルピナスのヒロインは私よ! 選手権」では晶子がヒロイン達を差し置いて1位を獲得している。2位は彰であった<ref name="staff_txt2"/>。 |
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=== シリーズ化 === |
=== シリーズ化 === |
2021年3月6日 (土) 07:53時点における版
花と乙女に祝福を | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ジャンル | 学園ラブコメ、女装[注 1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ゲーム:花と乙女に祝福を | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ゲームジャンル | AVG[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
対応機種 | Microsoft Windows 2000/XP/Vista[3] (その後7/8/8.1/10にも対応[4][5]) iOS[6][7] Android[6][7] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
必要環境 |
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ゲームエンジン | 椎名里緒[9] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
開発元 | ensemble〈ウィル〉[10] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
発売元 | ウィル→ウィルプラス(PC[10]/DLsite[7]) 未来数位(PC中国語版)[11] ウィルプラス[6]→イーキューブ[12](Mobage) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ディレクター | じんべい[8] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キャラクターデザイン | 武藤此史[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
プロジェクト起案・原案 | じんべい[13] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シナリオ | じんべい、籐太[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
音楽 | BGM:ミリオンバンブー[8] 主題歌: 片霧烈火「Maiden's Garden」[10] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
メディア | DVD-ROM[3]、ダウンロード[14] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ディスクレス起動 | 可 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アクチベーション | なし(その後の版はあり[5]) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
プレイ人数 | 1人 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
発売日 | 2009年5月29日(PC)[3] 2011年2月18日(PC中国語版)[11] 2015年4月2日(Mobage)[6] 2015年7月14日(DLsite)[7] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
レイティング | EOCS:18禁(PC)[14] 全年齢(iOS/Android)[7][12] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キャラクター名設定 | 不可[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
エンディング数 | 8[注 2][15] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
セーブファイル数 | 通常セーブ90/オート5/クイック5 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
画面サイズ | 800x600以上の解像度 ハイカラー(PC)[2][8] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
全画面表示モード | あり[10] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
音楽フォーマット | Ogg Vorbis[10] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キャラクターボイス | フルボイス[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
その他 | CGモード:あり[2] 音楽モード:あり[2] 回想モード:あり[2] メッセージスキップ:全文/既読[2] オートモード:あり[2] 初回限定版付録:オリジナルサウンドトラック[16] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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関連作品 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
テンプレート - ノート | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
プロジェクト | 美少女ゲーム系 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ポータル | コンピュータゲーム |
『花と乙女に祝福を』(はなとおとめにしゅくふくを、中: 花與乙女的祝福)は、株式会社ウィル(現ウィルプラス)のゲームブランドensembleより2009年5月29日に発売された18禁恋愛アドベンチャーゲーム[3][2]。本作は、病弱な双子の妹に成り代わりお嬢様学園に通う少年のドタバタ生活を描いた、女装主人公ものであり[3][2]、ensemble「乙女シリーズ」の端緒を開いた作品であると同時に、同ブランドの処女作でもある[3][2][13]。略称は「花乙女」[41]または「花乙」であり[42]、いずれも「はなおと」と読む。
2010年1月29日には続編『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』が発売された[17]。同年7月8日には登場人物とシナリオを追加し、続編の要素も取り入れた『花と乙女に祝福を -春風の贈り物-』がPlayStation 2版として発売された[43][28][44]。2011年10月27日に発売された『花と乙女に祝福を -春風の贈り物- portable』はそのPlayStation Portable移植版である[45][24]。
2011年には中国語翻訳版が制作され[11]、2015年から2018年頃にかけてはiOS/Android版のサービスも提供されていた[6][7]。
歴史
- 2009年
- 2010年
- 2011年
- 2012年2月6日 - 『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』の繁体字中国語版が発売[21]。
- 2013年4月26日 - 『乙女達の恋物語 ensemble3本+1セット』発売。Windows 7/8に動作対応[4]。
- 2015年
- 2016年4月14日 - Mobageでのサービス提供を終了[49]。
- 2017年2月27日 - Mobageでのサービス提供を再開(発売元は株式会社イーキューブ)[12]。
- 2018年4月27日 - Mobageでのサービス提供を再び終了[50]。
- 2019年12月20日 - 『ensemble10周年記念 乙女シリーズ13本セット』発売。Windows 8.1/10に動作対応[5]。
2010年8月より本作を含む株式会社ウィルのアダルトゲーム事業は株式会社ウィルプラスに引き継がれている(ウィルプラスの項を参照)。
製品構成
製品毎の搭載内容を次表に示す。ここに、PC:Windows版『花と乙女に祝福を』 / RB:Windows版『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』 / PS2:PlayStation 2版 / PSP:PlayStation Portable版 の、それぞれ略称とする。
内容 | PC | RB | PS2 | PSP | 備考 |
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原作シナリオ | ○ | - | ○ | ○ | PS2/PSPは一部展開がPCと異なり、エッチシーンは描写されない。 |
アフターストーリー | - | ○ | △ | △ | PS2/PSPには「#兄さんは私の下僕?」シナリオのみ収録されている[28]。 |
追加シナリオ | - | - | ○ | ○ | |
新オープニング | - | - | ○ | - | #PS2版オープニングを巡るトラブルも参照。 |
システム
本作は、マウスクリックなどでテキストを読み進め、途中表示される選択肢から主人公の行動を選んでいくことで物語が分岐・進行する、オーソドックスな恋愛アドベンチャーゲームである[28][15]。
一度クリアするとタイトル画面の「おまけ[注 3]」メニューが開放される。「CG鑑賞」「シーン回想」機能でゲーム中で一度表示されたイベントCG・エッチシーンをいつでも鑑賞できるようになるほか、ゲーム中の楽曲を「音楽鑑賞[注 4]」機能で聴けるようになる[10][20][注 5]。PSP版では「プレイングログ」機能が新たに導入されており、ゲームの進行状況を随時確認できるようになっている[33]。
- 花と乙女に祝福を(春風の贈り物)
- マルチエンディング形式。いわゆる攻略可能なヒロインは6人(PS2/PSP版では8人)[28]用意されており、加えてバッドエンドも2種存在する[15]。ロックが掛けられているルート[注 6]が存在し、対応する別のヒロインを先に攻略することで進行できるようになる[15]。物語の時期は5月7日から6月6日までの1か月。「おまけシナリオ」が3つ用意されており、特定のヒロイン[注 7]をクリアした後にプレイできる[15]。
- ロイヤルブーケ
- 5本の後日譚シナリオから任意に選んでプレイする形式[20]。物語の時期は主に夏。
あらすじ
月丘晶子(つきおか あきこ)は生来病弱で、今度の入院も長引いていた[3][51]。出席日数が足りなくなり、学園からは留年を勧められるが、留年するくらいなら退学すると言って家族を困らせる[3][51]。晶子の双子の兄である月丘彰(つきおか あきら)は晶子を退学させないため、晶子に成りすまして名門お嬢様学園「聖ルピナス学園」に通うことにする[3][51]。
ルピナスの門をくぐった晶子(彰)は薔薇園で道に迷い、上級生に声を掛けて教室まで案内してもらう。この上級生は財閥令嬢で生徒会長の宝生聖佳(ほうしょう せいか)。物怖じせず自分に話しかけてきた晶子に興味を持つ[52]。一方、晶子と同じ園芸部に所属し、兄妹の幼馴染でもある名木城都(なぎしろ みやこ)はその日のうちに彰の女装を見破ると理由を聞く[3][53]。都は以前から彰に想いを寄せており[13]、学園生活のサポートを引き受ける[3][53]。
毎年6月に行われる「立藤(たてふじ)の会」は間近に迫っていた[3]。立藤の会では保護者・卒業生・学園関係者を招いて、茶話会で交流を図るほか、その年のテーマとなる花「プルミエール・フルール」にちなんだイベントが庭園や温室で開催される[28]。全校集会の席上、聖佳はその実行委員長に晶子を指名する[52]。立藤の会の実行委員長とは次期生徒会長のことであり、驚いた都は晶子には無理だと聖佳に反抗する[53][52]。園芸部と生徒会は来る立藤の会でそれぞれのプルミエール・フルールを決めてイベントを催し、晶子を賭け集客数で勝負することになる[3][53][52]。
(以下、大きく「園芸部ルート」と「生徒会ルート」に分かれる[15]。)
園芸部ルート
園芸部は聖佳との対決を回避したい上級生達が部を去り、都と部長だけになっていた。晶子は後輩2人と共に園芸部の活動を手伝う。プルミエール・フルールの選定に難航するが、全校生徒の好きな花をアンケートで調べた晶子が、回答にあった花を全部使うことを提案する。園芸部のプルミエール・フルールは題して「花と乙女の物語」。生徒たちの好きな花を、思い出と共に紹介することに決まる[53]。
- 名木城都ルート
- 立藤の会の準備が進む中、都の母親の弥生が病気で倒れたという連絡が入る[3][53]。実家の近い都が寮生活をしているのには理由があった。都は子供の頃に世話をしてくれていたばあやの影響で園芸を好きになった。ばあやは都のために立派な百合の花壇を作ってくれた。ところが、弥生はその花を全て切り落とした上、ばあやを屋敷から追い出したのだと都は主張する。弥生の病状は悪化していくが、親子の溝は中々埋まらない[53]。
- ついに弥生が重篤に陥ったとき、晶子達の前にばあやが現れ、真相を語る。実は都は重度の百合アレルギーで、ばあやの作った花壇のため命の危機に瀕したことがあり、責任を感じたばあやは自ら屋敷を去ったのだという。百合アレルギーは園芸家としては致命的なもので、園芸に本気で打ち込んでいた都に、弥生はそのことを告げられなかったのだ。真実を突きつけられた都はショックを受けるが、アレルギーと共存しながら改めて園芸の道を目指す決意を示す。立藤の会当日、都はアレルゲンとなる花粉を落とした百合の展示スペースに立ち、母親との思い出を語っていく。親子は和解を果たし、弥生の手術は成功する。彰と都は恋人になる[53]。
- 藍那祈・山本眞弥子共通ルート
- 藍那祈(あいな いのり)は友達ができず孤独だったが、晶子(彰)と出会ったことで山本眞弥子(やまもと まやこ)という親友を手に入れる[3][55]。晶子を慕って園芸部に入部した2人は、都から入部祝いとして日々草の苗を贈られる。花言葉は「生涯の友情」。2人は喜び合い、一緒に花畑を作ることを約束する。そんなある日、祈の父親が祈の対人恐怖症を治すため専門家を連れてこようとする。それをお見合いと勘違いした眞弥子が、双子の兄に祈の恋人役を演じてもらえないものかと晶子に相談する。見合い話は杞憂に終わったが、彰を見た眞弥子が彰に一目惚れしてしまい、一時退院した晶子と祈、彰と眞弥子でダブルデートをすることになる。大好きな晶子とのデートで幸せ一杯の祈だったが、晶子と彰が入れ替わっていることに気付いてしまう[55]。
- (以下分岐)
- 藍那祈ルート
- 晶子を親友の眞弥子に取られそうになる展開に祈は激しく動揺するが、晶子が気持ちを告げたのは眞弥子ではなく祈だった[55]。晶子の正体を知った眞弥子も親友と三角関係になったことで落ち込むが、祈が身を引こうとすると激しく怒り、「友達ならこの意味がわかるはずだ」と日々草の苗を祈に渡す[3][55]。祈は友情の証を突き返されたと嘆くが、それは入部祝いに贈られたものではなく、眞弥子が自分で殖やしたものだと気付く。眞弥子は2人の小さな約束をずっと覚えていてくれたのだ。眞弥子に祝福され、祈と晶子は恋人になる[55]。
- 山本眞弥子ルート
- 彰は眞弥子の告白に応える。ところが、眞弥子に本当の見合いの話が持ち上がっていた[3][56]。茶道家元山本家の眞弥子が見合いをする相手は財閥御曹司の三船千里(みふね ちさと)[56]。見合い会場に乗り込んだ彰は立藤の会で千里と利き茶対決をすることになる[3][56]。そして、眞弥子の出すサインで辛くも勝利を収める。ところが、眞弥子の婚約者としてルピナスにやって来た千里の本当の目的は別にあった。千里は、ルピナスの学園生で財閥令嬢の天法院綾音(てんほういん あやね)に結婚を申し込んでその場を驚かせる。ともあれ落着し、千里に勝利した彰は山本家から認められる[56]。
生徒会ルート
生徒会長の聖佳は学園で絶大なカリスマを誇っていたが、生徒会は活気がなかった。聖佳が自分にも他人にも完璧を求めるあまり、つい厳しい態度を取ってしまうためだった。聖佳は庭園を大量の薔薇の造花で埋め尽くし、その中に潜ませた一輪の本物を探す「百万本の薔薇」イベントを立案する。晶子の勧めもあり笑顔を振りまく聖佳のところへ、全校生徒が造花を作って運んでくる[52]。
- 宝生聖佳ルート
- 生徒会の仕事を手伝う晶子に聖佳は信頼を寄せていく[3][52]。晶子もまた変わるため努力を始めた聖佳に、憧れ以上の気持ちを抱くようになる。本物の薔薇の景品は宝生家招待券に決まるが、学園内の聖佳ファンの中から景品を狙って不正をはたらく者が出てしまう。聖佳は激怒して犯人にきつく当たってしまい、結局変われていなかったと自己嫌悪する[52]。さらに、逆恨みした生徒が聖佳の悪い噂を流したせいで、生徒達は聖佳を恐れて遠ざかっていく[3][52]。造花が集まらなくなり、立藤の会も絶望的になる中、晶子は誤解を解くため中傷も恐れず奔走を続ける[3][52]。見かねた聖佳が止めようとした拍子に、ウィッグが外れてしまい、正体が露見した晶子は生徒会を去る[52]。
- 数日後、立藤の会を諦めていた聖佳が庭園に足を運ぶとそこには百万本の薔薇が咲いていた。晶子は聖佳のために一生懸命造花を集め続けていたのだ。聖佳は2年の教室へ急ぐが、そこにいたのは彰ではなく退院した妹だった。そして迎えた立藤の会。「百万本の薔薇」は盛況だったが一番いて欲しい晶子の姿だけがなかった。聖佳が薔薇園で悲しみに暮れていると、「実は道に迷ったみたいで……」と出会った日のように彰が現れる[52]。
- 鹿島志鶴ルート
- 晶子と一緒に生徒会を手伝うことになった鹿島志鶴(かしま しづる)は晶子の匂いが以前と違っていることに戸惑っていた。画家でもある彼女は晶子に絵のモデルを依頼し、晶子がうたた寝している間にその唇を奪う。また晶子の汗を拭いたハンカチから性的刺激を得て自慰行為に及ぶ。到頭我慢できなくなり晶子を美術室に呼び出すと、自分は汗の匂いで興奮してしまう特殊な性癖なのだと告白し、晶子の下半身をまさぐりにかかる。すると入れ替わりが判明し、疑問も氷解してすっきりする[57]。
- 肉体関係を持ってしまった晶子は、なし崩しに志鶴の恋人になり、男の姿で街をデートしたところその場面を学園生に目撃されてしまう[3][57]。翌日登校すると晶子は男だという噂が流れており[3][57]、スクープを狙う新聞部員まで現れる[57]。噂が消えないことに業を煮やした聖佳は本物の薔薇の景品を「月丘晶子好き放題にできる券[58]」に定め、直接体を確かめさせようとする。本物の薔薇が新聞部員の手に渡ってしまい、絶体絶命の危機に陥るが、男装して彰となった晶子が助けに現れたことで疑惑は晴れ、一件落着となる[57]。
- 佐上薫ルート
- (聖佳ルート攻略後に聖佳ルートから分岐[15])
- 生徒会副会長の佐上薫(さがみ かおる)は京都の西陣織の元締めの家に生まれ、将来は後継者となることが定められている。ルピナスでは中性的な顔立ちと抜群の運動神経で人気を集め、下級生との過剰なスキンシップで現実から逃避する日々を送っていた。晶子に対してもスキンシップを図るが、跳ね返された腕力の意外な強さに疑念を抱き、これが後日の女装露見に繋がる[59]。やがて薫ファンの下級生が2つの勢力に分かれて抗争を始めると[3][59]、騒動を知った京都の祖母が薫を連れ戻しにやって来る[59]。
- 飄々と振る舞いつつ影から生徒会を支えていた薫を見直していた晶子は[60]、自分が薫を更生させると薫の祖母に宣言する[59]。薫も晶子の熱意に打たれ、学園に残りたいという意思を持ち始める[60]。2人は造花集めに難航していた生徒会を再び軌道に乗せ、立藤の会を成功へと導く。一部始終を見届けた祖母は薫の人生を伝統の犠牲にする必要はないと考え直すが、薫はたこだらけの手を恋人が褒めてくれたと言い、西陣織の後継者であることを誇れるようになったと答えるのだった[59]。
春風の贈り物
PS2版ではエッチシーンがカットされている都合上、原作と展開の異なる箇所があり、たとえば志鶴ルートでは、志鶴が彰のことを好きになる理由が匂いではなく目つきになるなどの改変がなされている[61]。追加ヒロインは園芸部ルートと生徒会ルートにそれぞれ1人ずつ配置されており、それぞれ次のような展開となる。
- 獅堂沙織ルート
- (園芸部ルートから分岐[25])
- 上級生の抜けた園芸部を、部長の友人の獅堂沙織(しどう さおり)が手伝うようになる。生徒会の青い薔薇に対抗するため、晶子が恋の話に関係した花を飾ることを提案し、学園生から恋の話を募ったところ、恋愛小説の若手作家「姫野くるみ」の作品が寄せられ、園芸部の催しは俄に注目を集める[62]。
- 姫野くるみには、作品の舞台や登場人物がルピナスに似ていることから、ルピナスの現役学園生だという噂があった。投稿には晶子と沙織しか知らないことが書かれており、晶子はくるみの正体が沙織だと知る。沙織は生徒会に勝つために使えるものなら何でも使おうと思ったのだと釈明する。ところが、姫野くるみが寄稿するはずがないと主張するファンの生徒が現れる[62]。
- 沙織は本当の恋をまだ知らなかった。本から得た知識で恋愛小説を書いてきた。偽物だと痛い所を突かれて筆を折ろうとするが、晶子がくるみの原稿をコピーして全校に配ると校内はくるみの作品に対する絶賛で溢れる。沙織は全校生徒を前に、自分こそが姫野くるみであると公表し、導いてくれた晶子に対する感謝の気持ちをスピーチする。立藤の会で本物の晶子から入れ替わっていた事実を教えられた沙織は、ルピナスを去ろうとしていた彰に追いつく。姫野くるみは本当の恋の物語を書き続けていく[62]。
- 朝霧七緒ルート
- (生徒会ルートから分岐[25])
- 1年生の朝霧七緒(あさぎり なお)は、自分の親友に辛く当たった聖佳を嫌っていた。すると晶子から聖佳を誤解しないでほしいと頼まれ、生徒会室に誘われる。聖佳の発案になる生徒会のプルミエール・フルールは「幸せの架け橋」。七色の加工品種の薔薇で庭園に虹を架けるという企画だった。七緒は生徒会活動を通じて晶子に惹かれていく[63]。
- 他方、七緒は別居中の両親のことで悩んでいた。昔、七緒の母親は青いカーネーションで立藤の会を飾って父親のハートを射止めたのだが、その後不仲になっていた。それを知った晶子は「幸せの架け橋」を成功させようと夜遅くまで作業し、2人の思い出の青いカーネーションも密かに準備する[63]。
- そんなある日、七緒は晶子が男の口調で電話しているのを聞いてしまう。退院してきたという病院の名前を晶子から聞き出すと、学園を休んでその病院へ向かう。そこで会った本物の晶子から、身代わりをしている彰は自分の気持ちを抑えているはずだと助言される。晶子の頑張りで実施にこぎ着けた生徒会の催しで、七緒の両親は仲直りに向けた一歩を踏み出す。七緒は黙って去ろうとする晶子を引き留めると勇気を振り絞る。青いカーネーションの咲く庭園で、若い2人も恋人になる[63]。
ロイヤルブーケ
- 夏だ! プールだ! お祭りだ!! 〜都のとても長い一日〜
- 彰と都は名木城邸のプールで泳いだ後[17]、神社の縁日で遊ぶ。帰り道、本当は彰を家に呼びたくなかったと都が打ち明ける。日本有数の名家である名木城家の婿になれば重圧やしがらみも付いてくる。プールのあるような豪邸を見て想像してしまったのではないかと都が不安いっぱいに尋ねると、彰はそんな問題があることは今知ったと白状し、都は力が抜ける[64]。
- 兄さんは私の下僕? 〜月丘晶子の優雅な一日〜
- ルピナスの生徒会長にしてしまったお詫びとして、彰は街へ出かける晶子の供をする[17]。買い物やボーリング・ラーメン屋など、夜遅くまでデートを楽しんだ2人はルピナス寮の晶子の部屋に泊まる。一緒に入浴し、同じベッドで眠りながら、彰はこれからも晶子を見守っていこうと胸に誓うのだった[65]。
- 彰・漢化計画 〜性を取り戻せ!〜
- 生徒会が勝利してひと月。彰は女装していた頃の癖が中々抜けず[17]、聖佳は恋人を「男の中の漢(おとこ)」に戻そうと、肉体改造や電気ショックを施していく。彰はついに怒り出すが、偶然出会った眞弥子から「仲直りができるお茶」(実は媚薬)を貰い、2人は仲直りする。聖佳は行為のときの彰を男らしかったと褒める[66]。
- 心は女。体は男?! 〜天法院綾音 華麗なる軌跡〜
- 物語は、心と体の性の不一致に苦しんできた天法院綾音が、初めてルピナスの制服に袖を通すところから始まる。周囲の友人に隠し続けたまま2年目の立藤の会を迎え[67]、三船千里からプロポーズされた綾音はどうすればいいのか迷う[68]。
- 薫・志鶴から会って話すことを勧められ、千里とデートする。デートの終わりに携帯電話をプレゼントされ、毎日メールを交換するようになる。千里に惹かれていくのを自覚した綾音は、嘘をつき続けることに耐えられず、ついに全てを告白する。千里は少し考えさせて欲しいと答えるが、本当に自分のことを女性だと思っているのか綾音に確認する。3か月後、南半球の島には婚約式を挙げる綾音と千里の姿があった[67]。
- 連夜連闘? 名木城家、愛のお泊まり会
- 都・志鶴・祈・眞弥子ら新生徒会メンバーがお泊まり会を開く。晶子は当日体調を崩してしまい、彰が入れ替わりで参加する[17]。ところが匂いで志鶴にばれてしまい、志鶴の喘ぎ声を聞かれて都にもばれ、さらに祈・眞弥子にもばれて次々に体を求められ、お泊まり会は連夜連闘の様相を呈していく[68][69]。
キャスト
※声はPC版 / PS2版の順。
主人公ヒロイン
|
PS2版追加ヒロインサブキャラクター
|
スタッフ
- 花と乙女に祝福を
- ロイヤルブーケ
- 春風の贈り物
主題歌
PC版の主題歌は全てロドリゲスのぶが楽曲を提供し、片霧烈火が歌唱を担当したものである[10]。その中で「Maiden's Garden」は作中で都が歌う場面があり、「まさか本当に歌うとは思っていなかった」都役の風音は、収録時最も印象に残ったこととして挙げている[74][注 9]。一方ではPS2への移植に際し、この曲の扱いを巡りトラブルが発生することとなった[76]。
一覧
映像外部リンク | |
---|---|
『花と乙女に祝福を』OPムービー - YouTube(「アップテンポな曲で作品の楽しい雰囲気が伝わるムービー[77]」。「Maiden's Garden」の1番。) | |
『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』OPムービー - YouTube(「Bloom of your dream」の1番。) |
- オープニングテーマ「Maiden's Garden」
- 作詞 - 不詳[注 10] / 作曲 - ロドリゲスのぶ / 編曲 - da2 / 歌 - 片霧烈火[10]
- エンディングテーマ「ひみつのストーリー」
- 作詞 - 秋元凛 / 作曲・編曲 - ロドリゲスのぶ / 歌 - 片霧烈火[10][20]
- ロイヤルブーケオープニングテーマ「Bloom of your dream」
- 作詞 - kimotto / 作曲 - ロドリゲスのぶ / 編曲 - da2 / 歌 - 片霧烈火[20]
- PS2版オープニングテーマ「Splendid Flowers」
- 作詞 - Eb/B / 作曲 - MAKIKO / 編曲 - 悠木真一 / 歌 - ARTERY VEIN[78]
収録メディア
「Maiden's Garden」「ひみつのストーリー」は本作初回限定版付録の#サウンドトラックに収められた[16]。「Bloom of your dream」は『ロイヤルブーケ』の購入者を対象にダウンロードで配信された[79]。2020年現在ではほかのアルバム(黙って私のムコになれ! ドラマCD「ライバルは義理の妹!?」[80]など)にも収録されている。
PS2版オープニングを巡るトラブル
アルケミストによるPS2版のオープニングは新規ヒロイン2人の切ない想いがイメージとなっており[78][29]、原作のオープニングとは雰囲気の異なるものとなった[29][注 11]。これに対し原作を手掛けたウィルは、2010年6月11日、「コンシューマ版『花と乙女に祝福を -春風の贈り物-』OP曲とOPムービーについて」と題し、要旨次のとおり声明を発表した[76][81]。
- PS2版『花と乙女に祝福を -春風の贈り物-』のオープニング曲・同ムービーは、ensembleが監修したものではない。
- 作品イメージから大きく乖離しており、PS2版の形で世に出てしまうのは残念である。
ガジェット通信はこの件を報じ、アルケミスト側がウィルからの改善要望を受け入れなかったことに起因するごたつきと推定した[76]。アルケミストは「アップテンポな曲で作品の楽しい雰囲気が伝わるムービー」としてPS2版公式サイトで原作オープニングを紹介し[77]、アスガルド[注 12]が制作したPSP版では原作のオープニングに戻されている。
サウンドトラック
初回限定版にはオリジナルサウンドトラック「花と乙女にサントラを」が付録されている。収録楽曲は以下のとおり[16]。
# | タイトル | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|
1. | 「Maiden's Garden」(歌:片霧烈火) | ロドリゲスのぶ | |
2. | 「山百合祝歌」 | ミリオンバンブー | |
3. | 「野薔薇の午後」 | ミリオンバンブー | |
4. | 「START DASH!」 | ミリオンバンブー | |
5. | 「ごきげんいかが?」 | ミリオンバンブー | |
6. | 「深緑」 | ミリオンバンブー | |
7. | 「急カーブ急ブレーキ急ストップ」 | ミリオンバンブー | |
8. | 「朝鳥におはよう」 | ミリオンバンブー | |
9. | 「Daily life」 | ミリオンバンブー | |
10. | 「瞼を閉じて」 | ミリオンバンブー | |
11. | 「小春日和と忘れ物」 | ミリオンバンブー | |
12. | 「どっちに行けばいいの!?」 | ミリオンバンブー | |
13. | 「夕焼け雲を眺めながら」 | ミリオンバンブー | |
14. | 「雨、冷たくなって」 | ミリオンバンブー | |
15. | 「Solitude」 | ミリオンバンブー | |
16. | 「アンビバレンツ」 | ミリオンバンブー | |
17. | 「沈黙の時間」 | ミリオンバンブー | |
18. | 「Crystal Garden」 | ミリオンバンブー | |
19. | 「花と乙女の祝日」 | ミリオンバンブー | |
20. | 「エンゲージ」 | ミリオンバンブー | |
21. | 「ずっと、ずっと……」 | ミリオンバンブー | |
22. | 「ひみつのストーリー」(歌:片霧烈火) | ロドリゲスのぶ | |
合計時間: |
制作
開発タイムライン | |
---|---|
2008年1月 | 『花と乙女に祝福を』企画開始[13] |
2008年2〜3月頃 | 原画担当に武藤の起用を決定[82] |
2008年5〜6月頃 | 武藤が作業に着手[82] |
2008年11月21日 | 公式サイトを開設[41] |
2008年12月28日 | コミックマーケット75でCM動画を発表[41] |
2009年3月30日 | 発売予定日の延期を告知[46][83] |
2009年4月24日 | (当初の発売予定日)[46][83] |
2009年5月13日 | マスターアップ[42] |
2009年5月29日 | 『花と乙女に祝福を』発売 |
2009年9月18日 | 『ロイヤルブーケ』制作発表[84] |
2009年12月29日 | コミックマーケット77でCM動画を発表[85] |
2010年1月18日 | マスターアップ[79] |
2010年1月29日 | 『ロイヤルブーケ』発売 |
企画
本作のアイデアは、シナリオライターの「じんべい」が2007年以前から、双子の入れ替わりもので何か面白いことができないかと長期間温め続けていたものである。株式会社ウィルの夏月[注 13]に提案したところ、好感触が得られたことから、2008年の年明けに本作企画として正式に立ち上がった[42]。夏月は「ウィルの中に無いものをやりたい」とじんべいに話した。いわゆる「萌え」中心の作品が業界に増えていた中、当時のウィルには萌えを扱うブランドがまだなかったことが背景にある。萌えを扱う新ブランド「ensemble」が設立され、本作がその処女作として発表される運びになった[13]。
じんべいが念頭に置いていたのはあくまで双子の入れ替わりであったが、入れ替わるシチュエーションの中で何か面白いことができないか検討を重ねた結果、「妹になるなら女学園に行ったほうが楽しい」と女装もののアイデアに偶然的に辿り着いた。女装ものは既にメジャーなジャンルであったが、じんべいは当時著名だった『処女はお姉さまに恋してる』の存在すら把握しておらず、女装して女学園に通う作品は初めてだろうとさえ考えたという[13]。
舞台となる学園のモデルには、少女小説『マリア様がみてる』のリリアン女学園が選ばれた。お嬢様学園を舞台とした理由は、せっかく女学園に通うなら、普通の学園よりも箱入りのお嬢様が通う学校にしたほうがいいと考えたためだという。さらに「お嬢さまといえば花だろう」という連想から園芸が物語の題材に選ばれた[注 14]。ただメインはあくまで女の子の話であるため、園芸に関しては深くは掘り下げないようにしたという[13]。
当初のアイデアはこうして、ヒロイン毎に花との繋がりを見せていく「花と乙女の物語」へと纏まっていった[13]。女装ものとして世に出た本作はヒット商品となり[86]、高い評価を受けることになる[87]。
開発
企画が立ち上がった時点でエンディングまでの明確なプロットが存在したのは聖佳だけであった。主人公の正体を知っていて協力者となる存在が要請され、都が加えられた。次いで志鶴が入り、さらに祈・薫・眞弥子と、キャラクター配分は素直に決まっていったという[13]。
夏月とじんべいは2人で原画家候補を出し合っていたが、最終的に本作の柔らかい世界観と絵柄の親和性を考慮し、武藤此史の起用を夏月が決定した。武藤にとって本作は2度目の美少女ゲームの仕事であり、メイン原画を担当した初めての作品となった。2008年の3月頃までに依頼を受けた武藤は6月頃までに着手し、およそ1年に渡って本作の制作に携わった[82]。
シナリオライターの籐太は正式開始に先立つ2007年の12月頃には、既にじんべいから声を掛けられていたという。籐太は本作の全個別シナリオ(加えて共通シナリオの一部)を担当し[13]、その執筆に当たっては地の文を増やす方針をとった[88]。これは、主人公の彰は女装しており、女の子を理解しなくてはならない状況下に置かれているはずであることから導き出された結論であり、彰の心理描写の中に「女の子らしさとは何か」を表現しようとしたものである[88]。
ensembleの命名者も籐太である。夏月は新ブランドの命名をじんべいと籐太に一任した。じんべいが籐太に向かい「ブランド名」と口にしたとき、籐太は何を相談されるかピンときたという。一般に美少女ゲームのブランド名は音楽用語から取ることが多かったといい、「何にする?」とじんべいが尋ね終わったときには、籐太は"ensemble"を思いついていたという[13]。
以下に、本作登場人物の開発コンセプトをスタッフインタビューを元に説明する。
- 月丘晶子(彰)
-
- 女装ものにおいては主人公はヒロインの一人でもある。その点で、彰には可愛らしさが求められていた。籐太は等身大の主人公を指向すべく、彰を超人としては描かなかったと述べ、「何の取り柄もないやつが一生懸命頑張っている」ところを彰というキャラクターの要点にしたという。じんべいもまた彰のことを「行き当たりばったり、何も考えずに生きているところがある」キャラクターであるとしている[13]。
- 妹の晶子は精神的には彰より大人だが、「所詮は彰の妹」としてデザインされている。兄には口うるさいが内弁慶というキャラクターで、じんべいの好みのタイプであった。執筆に当たった籐太は、攻略ヒロインよりも妹の晶子の方が可愛いと感じるときがあったといい、これはまずいと思ったと述べている[13]。
- 晶子(彰)のデザインコンセプトは「地味」。女装もののプレイ経験がなかった武藤は、主人公を目立たせようとは考えなかった。当初は兄妹を描き分けるつもりだったが、予想よりも彰は女々しく、晶子はしっかりしているキャラクターだと分かったため、同じように描いた[51]。女装もののエッチシーンでは主人公がカメラに入ってくるが、ヒロイン同様可愛らしく見せる工夫に頭を悩ませたという[57][88]。
- 女装時の彰はたとえエッチの最中であっても絶対に下着を見せないというルールがじんべいにより制定され、スタッフはこれを遵守した[注 15]。グッズなどでも、イラストに描かれているのが女装した彰なのか本物の晶子なのか区別できないというのは夏月・武藤らが意図したものである(#広報の方針、#ユーザーの感想も参照)[82]。
- 名木城都
-
- 上述したとおり、都は彰の事情を知る唯一の人物であり、女装生活の協力者だが、あまり協力的でも面白くないとじんべいは考えた。そこで性格を少し曲げて、彰のことが好きという設定になった。籐太は「奇をてらわない、わかりやすいツンデレ」が都であるとしている。最初の企画書ではメインのヒロインは聖佳になっていたが、その後都に変わる[13]。#都シナリオのプロットは難航したが[88]、ポイントとなる百合アレルギーという設定は、じんべいの弟がキウイアレルギーであったことに着想を得たという[13]。
- 武藤は都のデザインから着手したが、その過程でじんべいからは何度かリテイクが出された。髪型は、最初のラフではいかにもお嬢様然としたロングだったが、じんべいの指示もあり、大きなリボンをあしらったポニーテールに落ち着いた。武藤がイラストを担当していたライトノベルのキャラクターが元になっている[53]。
- 宝生聖佳
-
- 聖佳ありきで本作を企画したじんべいにとっては、聖佳のキャラクターコンセプトは『花と乙女に祝福を』という作品そのものであるという。晶子が彰として出会いを再現する#聖佳シナリオのラストシーンは構想の段階で固まっていた。籐太の解説によれば、彰と聖佳との出会いにより「晶子の物語」が「彰の物語」になる。晶子に扮した彰自身の話になるのだという[13]。
- デザインコンセプトは誰の目にも「わかりやすいお嬢様」。じんべいの指定ではユーザーが引くくらいの綺麗なキャラクターとなっていたため、武藤は自分の絵柄に照らし、澄ました顔とエッチシーンで喘ぐ顔のギャップを埋められるかプレッシャーを感じたと述べている[52]。聖佳に関しては、武藤は一貫して幻想的に描くことを心がけたというが、おまけシナリオでは遊びで眼鏡キャラクターにしている[82]。
- 鹿島志鶴
-
- キャラクターコンセプトは「変態」。お嬢様なのに淫乱というキャラクターはじんべいが約10年もの間温めていたものであり、「出すならこの作品しかない」として本作のヒロインに加えられた。籐太によれば、じんべいは「エロ担当キャラを一人置きたい、志鶴がいいと思うんだ」と力説した由であり、エッチシーンの数が他のヒロインと比較して非常に多くなっている[13]。
- 武藤はプロットを一読して年上のお姉さんとの印象を持ったが、年齢が同じだとわかり、おっとり系のデザインにした。緩やかなウェーブの髪は量が多く描くのに苦労したという。エッチシーンでは汗が多く描かれているが、これはエロさを醸し出す工夫だったとしている[57]。
- 佐上薫
- 藍那祈
-
- キャラクターコンセプトは「妹」。聖佳と晶子の関係を姉と妹に喩えるとすれば、祈と晶子はその逆の関係になる。籐太によれば、祈は無口なキャラクターであるため、主人公と2人きりの状況を書くのが難しかったという。じんべいは大人しめのヒロインから好意を持たれる状況に萌えるとしつつ、籐太の指摘した点は考慮してあり、無口な祈と元気な眞弥子は当初からセットで考えていたと述べている[13]。
- 武藤はデザインコンセプトについて「最初は長●有●のつもりで描きました〔ママ〕」と述べつつ、無口というよりは弱気なキャラクターとの印象を受けたことから、やや垂れ目に描いたという。かぶっている帽子は発注段階で指定されていたものだとしている[55]。
- 山本眞弥子
-
- 祈と対になる元気なヒロインとして考案された。キャラクターコンセプトは「元気っ娘」。ほかのヒロインには彰と晶子の入れ替わりがいずれ必ずバレることになるが、じんべいは眞弥子と彰を普通のカップルにしてみようと考えたという。途中で彰を登場させ、眞弥子をそちらに一目惚れさせることで、眞弥子シナリオは例外的に女装がバレない展開を実現した[13]。本作のお笑い担当とされており、ヒロインの中では唯一個別ルートに花が絡んでこない[88]。イメージの花(ヒマワリ)は一応設定されている[13]。
- 茶道山本流家元の孫娘でもあるところ、武藤は「和服」と「元気」のイメージを繋げられなかったこともあり、一番ピンとこなかったヒロインだったと述べている。(物語後半になり)和服姿を描いたところ思いのほかしっくりきたため、結果的には苦労のなかったキャラクターだったとしている[56]。
広報
経過
2008年11月21日にensembleのブランド公式サイトが開設され、本作の情報が公開された。12月に入り、サブキャラクターを担当したigulの作画による4コマ漫画の連載が始まる。そして、12月28日から30日にかけて行われたコミックマーケット75において、宣伝動画が発表された[41]。
3月6日、左右のパーツに分割された応援バナーが配布された。ユーザーが自由に組み合わせて遊べる作りになっており、ニュースサイトの「うらあきば.じぇいぴ〜」により、かなり変わったものとして取り上げられた[89]。3月11日にオープニングムービー[42]、3月13日に体験版が公開された[90][42]。また夏月は、個別ルートのあらすじを発売に先駆けて公表するというかなり異例の手段をとった[42][60][注 16]。しかし一方では開発が遅れ、3月30日に発売延期の告知を出すに至っている[46][83]。
4月21日からはエッチシーンボイスの公開が始まった。5月1日には宣伝動画第2弾が発表され、その動画中でエンディング曲の一部も披露された[42]。
方針
女装もの(主人公はあくまで男性)は百合もの(主人公は女性。エッチシーンは女性同士となる)と性質を異にする[82]。夏月によれば、本作は一定数存在する女装もののユーザーをあくまでターゲットに据えていたという。購買層に確実に訴求するため、ウィルの広報は本作が百合であるというイメージの払拭に努めた。女性同士にも見えるエッチシーン(#晶子のキャラクターデザインも参照)のサンプルを出すのは極力遅らせ、校正に上がってきたゲーム雑誌の記事に百合という言葉があれば消させるなど対策を徹底したと述べている[82]。
PS2版の販促活動
PS2版『春風の贈り物』の発売(2010年7月8日)に際しては、同年にアルケミストから出された女装ゲーム
- 乙女はお姉さまに恋してる Portable(2010年4月29日)
- 恋する乙女と守護の楯 Portable(2010年7月29日)
とのコラボレーション「男の娘ゲーム・キャンペーン」が実施され[92]、「DreamParty東京2010春」[93]、「DreamParty大阪2010春」などでチラシが配布された[94]。『春風の贈り物』を含む3作品を全て買うと原画家3人によるメモリアルポートレートが漏れなく当たるという企画であった[92]。各作品の主人公が互いの制服を交換したポートレートイラスト集であり、『春風の贈り物』の月丘晶子は『乙女はお姉さまに恋してる』の舞台である聖應女学院の制服姿で描かれている[92]。
反響
売り上げ
- 花と乙女に祝福を
- 本作は発売月(2009年5月)の売り上げにおいて、PCpressの集計では4位[95][注 17]、Getchu.comの集計では3位[96][注 18]、アダルトゲーム月刊誌『BugBug』の集計では3位[98]、同『PUSH!!』の集計では3位[99]を記録した。発売年(2009年)においては、Getchu.comの集計で上半期11位[100]、年間19位[101]であった。『BugBug』の集計では年間上位20位の圏外[102]であった。
- ロイヤルブーケ
- 続編の『ロイヤルブーケ』は、その発売月(2010年1月)の売り上げにおいて、PCpressの集計では7位[103][注 19]、Getchu.comの集計では2位[104]、『TECH GIAN』の集計では1位[105]、『BugBug』の集計では1位[86]、『PUSH!!』の集計では2位[106]を記録した。『PUSH!!』誌では事前予想でノーマークであった旨が語られている[106]。『Amazon.co.jp』の集計では圏外[105]であった。発売年(2010年)においては、Getchu.comの集計で上半期16位[107]、年間36位[108]であった。『BugBug』の集計では年間上位20位の圏外[109]であった。
- 春風の贈り物
- 2013年になり、アルケミストの広報担当がゲーム総合情報サイト「Gamer」のインタビューに答える形で2010年当時の状況を振り返っている[110]。広報担当は、この時期男の娘を特色としたタイトルが連続して出たことは偶然であったと断りつつ、「主人公が男の娘」というのは、各作品の世界観や雰囲気はまったく異なるものであったながら、共通してわかりやすいセールスポイントになったと述べている。#PS2版の販促活動の効果もあったとし、「すごく売りやすかったですし、結果もすごくよかった」と証言している[110]。
人気投票
部門名 | Getchu.com | TECH GIAN | BugBug |
---|---|---|---|
総合 | 圏外/15位 | 圏外/20位 | 31位/40位 |
シナリオ | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 28位/30位 |
グラフィック | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 部門なし |
音楽 | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 圏外/20位 |
システム | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 圏外/30位 |
ヴォイス | 部門なし | 部門なし | 圏外/20位 |
ムービー | 圏外/10位 | 部門なし | 部門なし |
エッチ | 圏外/10位 | 圏外/10位 | 圏外/40位 |
キャラクター | 0人/10位 | 0人/10位 | 0人/40位 |
- 花と乙女に祝福を
- 本作は発売月(2009年5月)のユーザー人気投票において、Getchu.comの2位[111]を獲得した。発売年(2009年)の人気投票においては、Getchu.comでは全部門で圏外[112]、『TECH GIAN』では全部門で圏外[113]、『BugBug』では総合31位[102]・シナリオ部門28位[102]を獲得し、その他の部門では圏外[102]であった(表:「2009年の美少女ゲーム人気投票における本作の位置」に一覧を示す。)。
- ロイヤルブーケ
- 続編の『ロイヤルブーケ』は、その発売月(2010年1月)のユーザー人気投票において、Getchu.comの4位[114]を獲得した。発売年(2010年)の人気投票においては、Getchu.comでは全部門で圏外[115]、『TECH GIAN』では全部門で圏外[116]、『BugBug』では全部門で圏外[109]であった(一覧表は省略する。)。
批評
専門家による批評
- 花と乙女に祝福を
- iNSIDEなどでテキストアドベンチャーゲームのレビュー記事を執筆している「いりえ」[117]が、本作PS2版のレビューを2020年に行っている[118]。
- いりえは、主人公が女性として入学するのではなく、既に在籍している双子の妹と入れ替わるという状況設定が、多くの女装潜入作品から本作を区別していると指摘する。中身が入れ替わることで周囲には雰囲気が違ったように感じられるため、突如として人望を集め出す展開を合理的に説明していると分析し、双子の設定が巧みに活かされていると評している[118]。
- システム面に関しては、特に目新しい試みはないとしているが、発売後約10年が経過した段階でのレビューとなったため、「ちゃんと選択肢が存在」し、「しっかり考え」なければならないゲーム性がある点に新鮮な感動を覚えた趣旨を述べている。また、本作にはどの答えを選んでも展開が変化しない選択肢があるが、最近(2020年)はこうした開発サイドの「遊び」を全く見なくなったと嘆いている[118]。
- シナリオ面では、主人公が噂話に翻弄される展開を否定的に評価している。本作の舞台は女子校であるため、生徒達は噂話を好むものとして描かれる。いりえは、多くのルートで終盤は極端な噂に振り回されたと感想し[注 20]、ハッピーエンドになるのはわかっていても単調なプレイにならざるを得なかったと指摘している[118]。
- 総合的には、本作の女装設定には確実に意味があるとし、先が読めてしまうベタな結末もあるものの、それはそれで女装作品の王道展開でもあるため不満には感じず、良作であったと評価したものである[118]。
- ロイヤルブーケ
- 『BugBug』2010年4月号に『ロイヤルブーケ』のレビューが掲載された[68]。『ロイヤルブーケ』は本編エンド後を描くアフターストーリー集であり、主人公の彰が女装する本来の理由は既に失われている。レビューはまずこの点について触れ、彰は『ロイヤルブーケ』でも色々な理由で再び女装させられることになるため、引き続き女装主人公ものの楽しさを味わえると注意している[68]。
- レビュアーは、お泊まり会に参加できなくなった晶子の代わりに彰が参加する「#愛のお泊まり会」シナリオにおける、本物の晶子だと思って接してくるヒロイン達とのスキンシップ・入浴などのスリリングの連続が、女装ものとしての本作の見所であった趣旨の感想を述べている。このシナリオでは正体のバレた彰が女の子達から攻めを受ける展開になるが、マゾ気質のあるプレイヤーにはたまらないともしている[68]。
- またレビュアーは、本編眞弥子ルートの後日譚「#心は女。体は男?!」において、性同一性障害の綾音が立藤の会で千里に告白されて答えを出すまでの葛藤が、彼女の過去を回想しながら描かれている点を評価している[68]。
- 春風の贈り物
- 「いりえ」のレビューは、PS2版の追加要素にも触れている。新規ヒロインと出会う選択をしてしまうと、その後選択肢が一切表示されなくなり、延々と読み進めていくだけになってしまう点を起伏がないと指摘し、減点対象であると評している[118]。
ユーザーの感想
前述の#広報の方針の結果として、ユーザーからは「思ったより百合ものだった」という感想が多く寄せられたという。女装ものだと理解して買ったユーザーが多数であったことが示されているわけである。これに対し夏月も、女装ものを欲したユーザーがそのような感想を抱くのは問題なく、狙いに対する否定的な意見としては受け止めていないと述べている[82]。
また、籐太の危惧したとおり(#晶子のキャラクターデザインを参照)、発売後のキャラクター人気投票「ルピナスのヒロインは私よ! 選手権」では晶子がヒロイン達を差し置いて1位を獲得している。2位は彰であった[42]。
シリーズ化
本作と本作に続くensembleの女装ゲームは後に「乙女シリーズ」を形成し、発展していった。シリーズ累計の販売本数は2016年の『乙女が彩る恋のエッセンス』の時点で8万本を突破[119]。2020年現在、ナンバリングタイトルとしては本作を含む7作品が制作されており、ファンディスク・派生作品まで含めると15作品を数えている。また、本作が処女作となって誕生したensembleブランド全体では、2020年現在、合計26作品[注 21]が制作されている。
なお、2019年に姉妹ブランドのensemble SWEETから発売された『乙女騎士♥いますぐ私を抱きしめて』は、本作広報の夏月がディレクターを務めた作品である。その内容は、月丘彰・晶子の従弟である主人公が、病弱な双子の姉のため女装して女学園に通うというものであった。
関連商品
書籍
ファンブック
2009年11月26日に彩文館出版から『花と乙女に祝福を ビジュアルファンブック』(ISBN 978-4-7756-0451-9)が発売された。内容は以下のとおり[47]。
- 版権イラストギャラリー
- 未公開ラフギャラリー
- キャラクター&ストーリーガイド
- クリエイターインタビュー
小説
2009年11月30日にハーヴェスト出版から『花と乙女に祝福を 短編集』(ISBN 978-4-434-13791-4)が発売された。著者は歌鳥、イラストはひなたもも・蜜キング[36]。以下の4話からなる短編集で、原作都ルートの後日譚[注 22]として描かれている。
- 花と乙女に声援を
- 立藤の会から数か月。青雲祭(一般の学校でいう秋の運動会)のグラウンドを花で飾ることになり、園芸部が作業にかり出される。生徒会の仕事もあり「体がふたつ欲しい」と愚痴をこぼす晶子に、都は彰を呼ぼうと提案する[120]。
- 夜の窓辺にともしびを
- 学生の身ながらプロの画家として数々の賞を受賞している志鶴の個人展が開かれた。魚好きの祈は、志鶴の個性的な魚の絵にショックを受け、魚恐怖症にかかってしまう[121]。
- 名残の頬にくちづけを
- 薫は下級生との付き合い方を聖佳から窘められるが、聖佳もまた晶子目当てで生徒会室に足繁く通っていた。次の標的を晶子に定めた薫が、寮の空き部屋に引っ越してくる[122]。
- 花の乙女に花束を
- ルピナスでは毎年10月、生徒会主催で演劇のチャリティー公演を行っている。晶子も生徒会長として出演することになったが疲労で倒れてしまい、入れ替わりで彰がやってくる。その彰が本番の舞台で滑稽を演じ、復帰した晶子はしばらくからかわれ続ける[123]。
ドラマCD
2009年8月14日にドラマCD「緊急開催! ルピナス・貧乳サミット!」[38]が、同年12月29日に同「限界突破!? 志鶴さんの我慢デート」[39][40]が発売された。また、録り下ろしドラマCDとして「部長の本気!? 名探偵宇佐見の挑戦!」[31]・「サクラソウの出会い 〜志鶴を変えた晶子の言葉〜」[34]が制作されている。
# | 発売日 | 収録作品(表題作は太字) | 収録時間 | 規格品番 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2009年8月14日 | 緊急開催! ルピナス・貧乳サミット! | 24:07 | Will-219D | コミックマーケット76 |
祈と眞弥子の、華麗なるカレーな御礼 | 29:42 | ||||
2 | 2009年12月29日 | 限界突破!? 志鶴さんの我慢デート | 24:07 | Will-219D2 | コミックマーケット77 |
宝生聖佳の恋のレッスン | 23:51 | ||||
3 | 2010年7月8日 | 部長の本気!? 名探偵宇佐見の挑戦! | 59:32 | - | PS2版録り下ろし |
4 | 2011年10月27日 | サクラソウの出会い 〜志鶴を変えた晶子の言葉〜 | 40:30 | - | PSP版録り下ろし |
その他
上述した小説・ファンブックやドラマCDのほかに、以下のグッズが製作されている。
- 聖ルピナス学園制服(コスプレ衣装メーカー「kiss」が製作・販売)[124]
- 月丘さん抱き枕カバー[38]
- 名木城都抱き枕カバー[125]
- おっぱいマウスパッドセット(鹿島志鶴&月丘さん)[125]
- 花と乙女に祝福をA1タペストリー[126]
- 花と乙女に祝福を ロイヤルブーケA1タペストリー[126]
また、以下の作品には本作主人公の月丘晶子(彰)が登場する。『乙女が彩る恋のエッセンス』にはヒロインの鹿島志鶴も登場している。
- 輝光翼戦記 銀の刻のコロナ
- 桜舞う乙女のロンド
- 乙女が奏でる恋のアリア
- 乙女が彩る恋のエッセンス
- 乙女が結ぶ月夜の煌めき
- 乙女騎士♥いますぐ私を抱きしめて
- シャイニー・シスターズ 〜女装主人公アイドルプロジェクト〜
脚注
注釈
- ^ Getchu.com商品ページの「カテゴリ」を参照した[1]。
- ^ a b バッドエンド2つを含む[15]。
- ^ PS2・PSP版では「ギャラリー」[32][33]。
- ^ PSP版では「ミュージック」[33]。
- ^ シーン回想機能は、PS2版では「映像鑑賞」機能となり、ゲーム中のムービーを再生するようになっている[32]。PSP版ではCG鑑賞と映像鑑賞の機能が統合され「アルバム鑑賞」機能となっている[33]。
- ^ 佐上薫ルート[15]。
- ^ 名木城都、宝生聖佳、藍那祈・山本眞弥子[15]。
- ^ ゲーム中では「みずき」と発音されており一貫しない。
- ^ 『花と乙女に祝福を ビジュアルファンブック』のインタビューの中でも収録時こぼれ話として触れている[75]。カラオケのシーンを録る時、スタジオのテンションはマックスでした。皆のあの顔、私は忘れません……。 — 風音、『ビジュアルファンブック』109頁
- ^ スタッフロールやユーザーズマニュアル、アルバムのブックレットなどにクレジットの記載がない。
- ^ オープニングが再生される箇所は2つあるが、ここではゲーム起動時のオープニングを指す。
- ^ かつてのウィルの子会社。この時点では新会社ウィルプラスの親会社。
- ^ 出典では「夏目」となっているが誤植と思われる。以下の本文中では「夏月」と記す。
- ^ じんべいの母親が園芸(イングリッシュガーデン)をやっていた縁もあった[13]。
- ^ なお、乙女シリーズの後年の作品では必ずしも徹底されていない。
- ^ 後年、シリーズ第2作の『乙女が紡ぐ恋のキャンバス』の発売に際し、夏月は「前回、色々な人に「あれはやりすぎじゃない?」って言われました」と打ち明け、『キャンバス』のあらすじはオブラートに包んだと述べている[91]。
- ^ 翌6月は26位、翌々7月は38位[95]。
- ^ 翌6月は18位[97]。
- ^ 翌2月は33位。1月度では本編同梱版も21位にランクインしている[103]。
- ^ この点は籐太も認識しており、ビジュアルファンブックのインタビューで志鶴ルートにおける噂の伝播速度が異常であったと反省の弁を述べている[13]。
- ^ グッズなどに付属するミニゲームは含まない。
- ^ ただしその内容は著者による独自の発想・解釈であり、公式の見解ではない旨の注意書きがなされている[35]。
出典
(18歳未満閲覧禁止のサイトを含みます)
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参考文献
雑誌
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- 『TECH GIAN』2011年6月号、エンターブレイン、2011年4月21日。
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- 『BugBug』2011年4月号、サン出版、2011年3月3日。
- 『PUSH!!』2009年4月号、マックス、2009年2月21日。
- 『PUSH!!』2009年9月号、マックス、2009年7月21日。
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- 『電撃PlayStation』2010年4月9日号、アスキー・メディアワークス、2010年3月26日。
書籍
- 若林健太、大用尚宏、清瀬大輝、塔下太朗 著、クリエンタ 編『花と乙女に祝福を ビジュアルファンブック』彩文館出版〈CREATIVE SERIES〉、2009年11月26日。ISBN 978-4-7756-0451-9。
- 歌鳥『花と乙女に祝福を 短編集』ハーヴェスト出版〈なごみ文庫〉、2009年11月30日。ISBN 978-4-434-13791-4。
- クリエンタ 編『花と乙女に祝福を〜春風の贈り物〜 マテリアルコレクション』アルケミスト、2010年7月8日。(非売品)
関連項目
外部リンク
- 『花と乙女に祝福を』公式サイト(18禁)
- 『花と乙女に祝福を ロイヤルブーケ』公式サイト(18禁)
- ensemble公式 (@will_ensemble) - X(旧Twitter)
- 『花と乙女に祝福を -春風の贈り物-』公式サイト - ウェイバックマシン(2016年3月11日アーカイブ分)
- 『花と乙女に祝福を -春風の贈り物- portable』公式サイト - ウェイバックマシン(2017年4月20日アーカイブ分)