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「エルミート形式」の版間の差分

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エルミート半双線型形式は複素数体 {{math|'''C'''}} 上で意味を成す概念である(実数体 {{math|'''R'''}} 上では任意のエルミート半双線型形式が[[対称双線型形式]]になる)。複素線型空間(あるいは複素[[ヒルベルト空間]])上の[[内積]](エルミート内積)は非退化正定値のエルミート半双線型形式である。
エルミート半双線型形式は複素数体 {{math|'''C'''}} 上で意味を成す概念である(実数体 {{math|'''R'''}} 上では任意のエルミート半双線型形式が[[対称双線型形式]]になる)。複素線型空間(あるいは複素[[ヒルベルト空間]])上の[[内積]](エルミート内積)は非退化正定値のエルミート半双線型形式である。


より一般に、[[環上の加群]] {{mvar|M}} に対して、係数環 {{mvar|R}} 上定義される任意の[[対合]]的{{仮リンク|反自己同型|en|antiautomorphism}} {{mvar|σ}} に関する半双線型形式 {{math|&lang;,&rang;: ''M'' &times; ''M'' → ''R''}} がエルミートであるとは、{{math|1=&lang;''x'', ''y''&rang; = &lang;''y'', ''x''&rang;{{msup|σ}}}} を満たすことを言う。さらに、{{mvar|ε}} は係数環の[[環の中心|中心元]]として、{{mvar|ε}}-エルミートであるとは {{math|1=&lang;''x'', ''y''&rang; = ''ε''&lang;''y'', ''x''&rang;{{msup|σ}}}} となるときに言う<ref>{{Literatur|Autor=[[Nicolas Bourbaki]]|Reihe=Éléments de mathématique|Titel=Algèbre|Kapitel=9|Seiten=49|ISBN=3-540-35338-0|Ort=Berlin|Verlag=[[Springer Science+Business Media|Springer]]|Jahr=2007}}</ref>。
より一般に、[[環上の加群]] {{mvar|M}} に対して、係数環 {{mvar|R}} 上定義される任意の[[対合]]的{{仮リンク|反自己同型|en|antiautomorphism}} {{mvar|σ}} に関する半双線型形式 {{math|&lang;,&rang;: ''M'' &times; ''M'' → ''R''}} がエルミートであるとは、{{math|1=&lang;''x'', ''y''&rang; = &lang;''y'', ''x''&rang;{{msup|σ}}}} を満たすことを言う。さらに、{{mvar|ε}} は係数環の[[環の中心|中心元]]として、{{mvar|ε}}-エルミートであるとは {{math|1=&lang;''x'', ''y''&rang; = ''ε''&lang;''y'', ''x''&rang;{{msup|σ}}}} となるときに言う<ref>{{citation2|surname1=[[Nicolas Bourbaki]]|title=Algèbre|series=Éléments de mathématique|publisher=[[Springer Science+Business Media|Springer]]|publication-place=Berlin|year=2007|at=p.&nbsp;49|contribution=9|isbn=3-540-35338-0|language=de
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== エルミート二次形式 ==
== エルミート二次形式 ==

2021年4月16日 (金) 09:38時点における版

数学線型代数学におけるエルミート積 (Hermitian product), エルミート半双線型形式 (Hermitian Sesqui­linear form) あるいは単にエルミート形式(エルミートけいしき、: Hermitian form)は、シャルル・エルミートに名を因む特別な種類の半双線型形式で、対称双線型形式の複素版にあたる。

複素線型空間 V とその上のエルミート形式 ⟨,⟩ との組 (V,⟨,⟩), あるいは同じことだが対応する「二次形式」Q(z) = ⟨z, z との組 (V, Q)エルミート空間(あるいはエルミート二次空間)と呼ぶ。

定義

V複素数 C 上のベクトル空間とすると、エルミート半双線型形式とは、写像 ⟨,⟩: V × VC で以下を満たすものを言う: x, y, zV および aC は任意として

  1. 偏線型性: x, ay + z⟩ = ax, y⟩ + ⟨x, z
  2. 偏半線型性: ax + y, z⟩ = ax, z⟩ + ⟨y, z
  3. エルミート対称性: x, y⟩ = y, x

ここに、上付きの横棒 複素共軛をとる演算を表す。

  • 引数の一方が線型で他方が半線型となるが、線型と半線型は上記と逆に仮定する流儀もある。
  • 条件 1, 2 はこの写像が半双線型となることを言うものであるが、実は条件 3 の仮定のもと 1 から 2, あるいは 2 から 1 が導かれるから、一方の条件は不要である。ここでは明確化のために両者を掲げてある。

エルミート半双線型形式は複素数体 C 上で意味を成す概念である(実数体 R 上では任意のエルミート半双線型形式が対称双線型形式になる)。複素線型空間(あるいは複素ヒルベルト空間)上の内積(エルミート内積)は非退化正定値のエルミート半双線型形式である。

より一般に、環上の加群 M に対して、係数環 R 上定義される任意の対合反自己同型英語版 σ に関する半双線型形式 ⟨,⟩: M × MR がエルミートであるとは、x, y⟩ = ⟨y, xσ を満たすことを言う。さらに、ε は係数環の中心元として、ε-エルミートであるとは x, y⟩ = εy, xσ となるときに言う[1]

エルミート二次形式

エルミート半双線型形式に対しても極化恒等式が適用できる。従って、エルミート半双線型形式は対角成分における値 Q(z) = ⟨z, z のみによって他の全ての値も決定される。この「二次形式」Q が常に実数値であることに注意せよ。実は与えられた半双線型形式がエルミートであることと、対応する二次形式が実数値であることとは同値になる。

標準形式

複素数ベクトル空間 Cn における

標準エルミート形式あるいは標準エルミート内積と呼ぶ。

関連項目

参考文献

  • 佐武, 一郎『線型代数学』裳華房、1974年。 

注釈

  1. ^ Nicolas Bourbaki (2007), "9", Algèbre, Éléments de mathématique (ドイツ語), Berlin: Springer, p. 49, ISBN 3-540-35338-0

外部リンク