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「DNSサーバ」の版間の差分

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== 端末で指定する「DNSサーバ」 ==
== 端末で指定する「DNSサーバ」 ==
PCに搭載される[[Microsoft Windows|Windows]]や[[macOS]]、携帯端末に搭載される[[IOS (Apple)|IOS]]や[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]をはじめとする、ネットワーク通信可能なオペレーティングシステムには、ネットワーク関連の設定に「DNSサーバ」のIPアドレスを指定する項目がある<ref>Windowsでは、[[コントロールパネル]]のネットワーク設定、macOSでは「システム環境設定」の「ネットワーク」、Unix系では<tt>/etc/resolve.conf</tt>など</ref>。一般に gethostbyname(3) といったようなライブラリ関数による処理の中で<ref>「オペレーティングシステムが名前解決を必要とした際」ではない。</ref>、これらの設定に従い、DNSキャッシュサーバへの問い合わせ等が行われる。
PCに搭載される[[Microsoft Windows|Windows]]や[[macOS]]、携帯端末に搭載される[[iOS (Apple)|iOS]]や[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]をはじめとする、ネットワーク通信可能なオペレーティングシステムには、ネットワーク関連の設定に「DNSサーバ」のIPアドレスを指定する項目がある<ref>Windowsでは、[[コントロールパネル]]のネットワーク設定、macOSでは「システム環境設定」の「ネットワーク」、Unix系では<tt>/etc/resolve.conf</tt>など</ref>。一般に gethostbyname(3) といったようなライブラリ関数による処理の中で<ref>「オペレーティングシステムが名前解決を必要とした際」ではない。</ref>、これらの設定に従い、DNSキャッシュサーバへの問い合わせ等が行われる。


これらの情報は、DHCPによる管理下にあるネットワークでは、[[DHCP|DHCPサーバ]]から(割当IPアドレス情報とあわせて)受け取ることが可能である場合もある<ref>DHCPサーバから得た情報で設定する場合の指定項目は「DNSサーバのアドレスを自動的に取得する」などと表現されている。</ref>。管理ポリシーによっては、それに従うよう要求されている場合もある。
これらの情報は、DHCPによる管理下にあるネットワークでは、[[DHCP|DHCPサーバ]]から(割当IPアドレス情報とあわせて)受け取ることが可能である場合もある<ref>DHCPサーバから得た情報で設定する場合の指定項目は「DNSサーバのアドレスを自動的に取得する」などと表現されている。</ref>。管理ポリシーによっては、それに従うよう要求されている場合もある。

2021年5月23日 (日) 03:19時点における版

DNSサーバ(ディーエヌエスサーバ)は、コンピュータ・ネットワークにおいて、Domain Name System(DNS)の「名前解決」機能が実装されたサーバである。

概要

DNSサーバには、後述するように2種類があり、それぞれ全く異なる働きをするので、「DNSサーバはこのようなことを行う」と説明することはできない。そのためここでは、Domain Name Systemの役割をまず説明する。

インターネットでの通信に際し、URLの中やメールアドレスの中などでの相手先は、IPアドレスが直接指定されることはまず無く、ドメイン名などといった「名前」が使われている。そういった名前から、IPアドレスなど[1]を得る「解決」を行うシステムがDomain Name Systemである。

あるコンピューターが他のコンピュータとインターネットプロトコル(IP)を介して通信する際には、通信の相手となるコンピュータに付与されたIPアドレスを知る必要がある。一方、URLなどには(IPアドレスを、直接指定することもできるが)、もっぱらドメイン名を使って対象を記述する。ドメイン名から、IPアドレスなどといった必要な情報を得る(名前を解決する)ために、ネットワーク上で情報を提供する仕組みがDomain Name Systemであり、それを担う各サーバがDNSサーバである。

DNSサーバは分散型データベースの1ノードとして機能している。DNSサーバには以下の2種類がある。

  • #DNSコンテンツサーバ - 自らの「ゾーン」(ドメイン名空間)について、情報を管理し問い合わせに回答する。独自のドメイン名をドメインレジストラで登録する際、「そのドメイン名を管理するDNSサーバ」として指定するのがDNSコンテンツサーバである。
    • 社内専用など、一般に公開しないゾーンを管理するコンテンツサーバというようなものもある。当然ながら、レジストラへの登録の必要はない。
    • コンテンツサーバについては、「権威DNSサーバ」という用語もある。コンテンツサーバという語は上記のような役割のサーバ全般の総称であるのに対し、権威DNSサーバは例えば「wikipedia.orgドメインの(wikipedia.orgドメインが管理・委譲している情報を持っている(それに関して権威がある))権威DNSサーバ」といったように、個々のドメインとの関係を意味する。
  • #DNSキャッシュサーバ - 依頼された問い合わせに応じて、コンテンツサーバへ必要な問い合わせを行い、結果を依頼元に返す。結果を再利用できるよう、一定期間自らキャッシュする。
    • フルリゾルバ・フルサービスリゾルバ・キャッシュDNSサーバとも呼ばれる。

DNSサーバが持つ「ゾーン情報」(ゾーンファイル)を他のDNSサーバから取得し、同期する仕組みを「DNSゾーン転送」と言う。

コンテンツサーバとキャッシュサーバ

DNSサーバは、ドメインの持ち主が情報を提供するための「DNSコンテンツサーバ」と、ネットワークの利用者(ドメイン名システム(DNS)の利用者)が名前解決に利用するための「DNSキャッシュサーバ」の2種類に大別できる。

両者は全く違うものなので混同してはならないし、そもそもDNSサーバと総称すること自体に問題がある。[要出典]コンテンツサーバはドメインの持ち主が管理することもできるが、多くの場合、プロバイダやレンタルサーバ業者などが提供しているものを利用する[2]。キャッシュサーバは、接続プロバイダなどがほとんどの場合に用意しており、「インターネットを利用するための機器の設定」にその設定が含まれていたり、あるいはDHCPでIPアドレス等と一緒に自動的に設定してしまうことが専らであるが、ユーザのLAN内に(あるいは端末自身の中のサーバとして)用意して、そちらを使うこともできる(分散システム的な観点からは、そのほうが望ましい)。DNSの仕組み上キャッシュすることが前提の設計になっているため、キャッシュを持っていて「キャッシュサーバ」と専ら呼ばれるのであるが、中継するのみでキャッシュしない、いわゆるプロキシ的な動作をするものもある。

DNSコンテンツサーバ

DNSコンテンツサーバの役割は、Domain Name Systemにおいて、ドメインの管理情報、すなわち、自ゾーンの管理するサーバのIPアドレスなどの各種リソースレコード(RR)と、ドメインの委任に関する情報を保持し、問い合わせ要求があったときに応答することである。

DNSサーバが保持する「ゾーン情報」(ゾーンファイル)内のリソースレコード(資源レコード)の種類の例を以下に示す。

リソースレコードの例
  • Aレコード
名前に対するIPv4アドレス
  • AAAAレコード
名前に対するIPv6アドレス
  • PTRレコード
逆引き(IPアドレスに対する名前)たとえば 198.51.100.234 というIPアドレスを逆引きするには 234.100.51.198.in-addr.arpa という名前のPTRレコードを問い合わせればよい
  • NSレコード
そのゾーンの権威あるDNSコンテンツサーバの名前
  • MXレコード
そのゾーンのメールサーバの名前
  • SOAレコード
ゾーンそのものの情報
  • CNAMEレコード
 その名前に対する別名
  • TXTレコード
テキスト情報
  • DNSKEYレコード/RRSIGレコード
DNSSECのための公開錠/署名

など。

wikipedia.orgのDNSコンテンツサーバの例
このDNSコンテンツサーバは、ja-two.iwiki.icuやwww.wikipedia.orgなどwikipedia.orgゾーンの各種リソースレコードを保持している。ただし、orgゾーンに保持されているIPアドレスは知らない(間違った設定によってorgのNSレコードをキャッシュで答えてしまうサーバも実際には多く存在する)。このDNSコンテンツサーバは、ja-two.iwiki.icuのIPアドレスを教えるよう要求を受けると、自らが保持しているコンテンツから、ja-two.iwiki.icuのIPアドレスを探し、その情報を含めた返答を返す。

なお、ドメイン名からIPアドレスを検索する事を正引きと呼び、反対にIPアドレスからドメイン名を検索することを逆引きと呼ぶ。

プライマリサーバとセカンダリサーバ

コンテンツサーバの役割での「プライマリサーバ」と「セカンダリサーバ」は、マスタとスレーブの関係にある。類似の用語である、オペレーティングシステムのネットワーク構成で指定する「DNSサーバ設定」の「優先」「代替」とは全く無関係であり、混同しないよう注意したい(#OSで指定する「DNSサーバ」)。

プライマリサーバ
ゾーン情報を自ら管理し、自らのゾーン情報に関する問い合わせに回答したり、セカンダリサーバへ配信したりする。Windows Server同梱のDNSサービスにある動作モード「Active Directory統合ゾーン」は、プライマリサーバとしての役割に機能拡張[3]がされたものである。
セカンダリサーバ
担当するゾーンに関する問い合わせに回答するが、自らはゾーン情報を管理せずプライマリサーバから受け取ったゾーン情報を保持している。

セキュリティ

DNSサーバが応答不能になれば、管理しているゾーン内のコンピューターが提供しているサービスを利用できなくなり、誤った情報を回答するとクライアントコンピューターは意図していないノードにアクセスしてしまう[4]ことになる。

健全な利用環境を確保するために、DNSサーバのリソースレコードの改ざんやDoS攻撃を防ぐよう、DNSサーバソフトウエアおよびOSの設定やセキュリティ更新プログラムの適用、コンテンツサーバの多重化(セカンダリサーバを公開し、プライマリサーバは非公開とするなど)、ファイアウォール侵入防止システムの導入などにより対策を講じる必要がある。

電子署名を用いてDNSの応答が正しいことを検証する「DNSSEC」機能が提供されている。

KSKロールオーバー問題

DNSSECにおいて、電子署名の正当性検証に使われる最上位の暗号鍵である「ルートゾーンKSK」を更新する際に、EDNSによるIPフラグメンテーションが発生するほどのサイズの応答データが発生するが、通信設定が対応できていないDNSで通信ができず、DNSSECによる正当性検証ができなくなり、インターネットの利用に問題が発生する。

これは、「ルートゾーンKSK」が2016年まで更新されてこなかったために問題になっていなかったが、2016年10月から2018年3月にかけて、 順次変更を行うことになったために顕在化した問題である。特に2017/09/19、2017/12/20、2018/01/11から始まる更新では、IPフラグメンテーションが発生しない1280bytesを超える1414~1424Bytesの応答データが発生するために、問題が発生する。

基本的には、DNSの運用責任者がソフトウェアのアップデートや設定変更で対応すべきものであるが、一般消費者向けのルータに内蔵されているDNS Proxyでも問題が発生する可能性があり、インターネットの利用に問題が発生する場合がある。

DNSキャッシュサーバ

DNSキャッシュサーバの役割は、DNSクライアント(ウェブブラウザなど、ドメイン名を利用する何らかのアプリケーション等)からの再帰的問い合わせによって名前解決の依頼を受け、非再帰的問い合わせを行い名前を解決することである。たとえば、Webブラウザで、www.wikipedia.orgなどを入力した際、そのコンピュータがまず名前解決しに行くのがDNSキャッシュサーバである。

DNSキャッシュサーバ自身については、直接なんらかの方法でそのIPアドレスを設定する。近年のLinux環境などでの典型としては、ネットワークインタフェースの立ち上げ時に、DHCPによって受け取ったかネットワーク設定スクリプトに書き込まれているものが、設定ファイル(典型的には /etc/resolv.conf )に書き込まれる。あるいは古典的には /etc/resolv.conf は静的な設定ファイルであった。

再帰的問い合わせと非再帰的問い合わせ

名前解決における問い合わせには、再帰的問い合わせと非再帰的問い合わせ(反復問い合わせ)の2種類がある。典型的で単純な例で説明すると、ユーザプログラムからlibcの gethostbyname (3) を通して、/etc/resolv.conf で設定されたDNSキャッシュサーバへの問い合わせが再帰的問い合わせで、キャッシュサーバが行う、DNSコンテンツサーバ群への繰返しの問い合わせが非再帰的問い合わせである。

再帰的問い合わせ
名前解決がされたのであれば、その完全な結果を、できなかった場合は「存在しない」とするやはり完全な結果を求める問い合わせである。ユーザのパーソナルコンピュータなどといった端末から、DNSキャッシュサーバに対して送られる。
非再帰的問い合わせ
反復問い合わせとも。この問い合わせを受けたDNSコンテンツサーバは、自分自身が持っている情報であればそれを、委任している情報であればそのこと(委任情報)を返す。DNSキャッシュサーバはその内容に応じて次々と問い合わせを反復する(一般的にはルートサーバから順にドメインツリーをたどる)。

実装

代表的なDNSサーバソフトウエアは次のものがある。 DNSサーバの中には、DNSコンテンツサーバとDNSキャッシュサーバが別々になっているものもあれば、両方機能を搭載するものもある。

端末で指定する「DNSサーバ」

PCに搭載されるWindowsmacOS、携帯端末に搭載されるiOSAndroidをはじめとする、ネットワーク通信可能なオペレーティングシステムには、ネットワーク関連の設定に「DNSサーバ」のIPアドレスを指定する項目がある[5]。一般に gethostbyname(3) といったようなライブラリ関数による処理の中で[6]、これらの設定に従い、DNSキャッシュサーバへの問い合わせ等が行われる。

これらの情報は、DHCPによる管理下にあるネットワークでは、DHCPサーバから(割当IPアドレス情報とあわせて)受け取ることが可能である場合もある[7]。管理ポリシーによっては、それに従うよう要求されている場合もある。

大抵、複数のDNSサーバを指定可能になっている。DNSサーバへ問い合わせる際に優先順位の高い順に行い、応答がない場合(該当DNSサーバが停止、通信経路で障害発生など)に次位(代替)以降のDNSサーバへ問い合わせを行うようになっている。

脚注

  1. ^ MXレコードなどはIPアドレス以外に解決される。他にも近年はメイルの返信元の真正性確認などに使われるTXTフィールドなどがある。設計上は任意の拡張が容易なように作られている(たとえば、IPv6のために追加されたAAAAレコードなど)。
  2. ^ 特に、可用性を上げるためのセカンダリサーバは、上流のネットワークなどができるだけ別系統であることが望ましく、2系統のネットワークを持たない場合などには外部に出すのが現実的なことが多い。
  3. ^ http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/cc731204.aspx
  4. ^ フィッシングサイトなど悪意のあるウェブサーバへ誘導されてしまったり、メールの転送先を変更され窃取されたりすることになる。
  5. ^ Windowsでは、コントロールパネルのネットワーク設定、macOSでは「システム環境設定」の「ネットワーク」、Unix系では/etc/resolve.confなど
  6. ^ 「オペレーティングシステムが名前解決を必要とした際」ではない。
  7. ^ DHCPサーバから得た情報で設定する場合の指定項目は「DNSサーバのアドレスを自動的に取得する」などと表現されている。

外部リンク

関連項目