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2021年6月14日 (月) 13:47時点における版

現代宇宙論
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ビッグリップ(: Big Rip)は、2003年に公表された宇宙の終焉についての仮説である[1]恒星銀河から原子亜原子粒子に至るまで、宇宙の全ての物質は、宇宙の加速のために未来のある時点でバラバラになる。理論的には、宇宙の計量は、有限な時間で無限大になりうる。

定義と概要

この仮説は、宇宙のダークエネルギーのタイプに決定的に依っている。重要な因子は、状態方程式パラメータで、この値は、ダークエネルギーの圧力とエネルギー密度の比である。<-1の時、宇宙は引き離される。このようなエネルギーはファントムエネルギーと呼ばれ、クインテッセンスの極端な形態である。

宇宙でファントムエネルギーが優勢な場合は、宇宙は速度を増しながら(=加速しながら)膨張する。しかし、これは、観測可能な宇宙の大きさが縮み続けることを意味し、あらゆる点から光速で遠ざかる観測可能な宇宙の端までの距離は、より近くなるはずである。観測可能な宇宙の大きさがどの特定構造よりも小さくなると、全ての基礎的な相互作用(重力電磁力弱い力強い力)が光速を超えてしまうためゲージ粒子が交換できずに力が働かない状態になるはずである。こうなると、構造は「バラバラになる」。このモデルでは、ある有限時間の後、「ビッグリップ」と呼ばれる、全ての距離が発散して無限となった最終的な単一状態が現れることを示唆している。

この説の提唱者であるダートマス大学のロバート・コールドウェルは、現在知られているエネルギーの形態で、現在から宇宙の終焉に至るまでの時間を計算した。

ここで、は、上で定義した値、H0ハッブル定数、Ωmは現在の宇宙の全ての物質の密度(密度パラメータ)である。

この論文では、著者は、=-1.5、H0=70 km/s/Mpc、Ωm=0.3として計算し、宇宙の終焉は現在から220億年後という結果を得ている。著者は、現在の研究によると、この宇宙のの値は-1に非常に近く、が式において優占的な因子になると記している。(1+)の値が0に近づくほど、分母は0に近づき、ビッグリップはより未来の出来事になる。もしがちょうど-1に等しければ、H0とΩmの値に関わらず、ビッグリップは起こらない。

=-1.5という著者のシナリオでは、銀河は最初は互いに遠ざかり、宇宙の終焉の約6000万年前に、重力は銀河系やその他の銀河を支えることができなくなるほどにまで希薄となる。宇宙の終焉の約3ヵ月前には、現在の太陽系のような星系は、重力で結びつけなくなる。最後の数分で、あらゆる星とそれを構成する目に見える物質は形状を保てなくなり、宇宙の終焉までの1秒間では分子や原子までが破壊される[2]

現在の最新の宇宙論でも、の値が-1より大きいか小さいかを決定するのに十分なデータは得られていない[3][4]

脚注

  1. ^ デジタル大辞泉の解説”. コトバンク. 2018年2月18日閲覧。
  2. ^ Caldwell, Robert R.; Kamionkowski, Marc and Weinberg, Nevin N. (2003). “Phantom Energy and Cosmic Doomsday”. Physical Review Letters 91 (7): 071301. arXiv:astro-ph/0302506. Bibcode2003PhRvL..91g1301C. doi:10.1103/PhysRevLett.91.071301. PMID 12935004. 
  3. ^ http://wmap.gsfc.nasa.gov/news/
  4. ^ Allen, S. W.; Rapetti, D. A.; Schmidt, R. W.; Ebeling, H.; Morris, R. G.; Fabian, A. C. (2008). “Improved constraints on dark energy from Chandra X-ray observations of the largest relaxed galaxy clusters”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 383 (3): 879. Bibcode2008MNRAS.383..879A. doi:10.1111/j.1365-2966.2007.12610.x. 

関連項目

外部リンク