「マードックからの最後の手紙」の版間の差分
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|特筆性=2014年5月 |
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|一次資料=2014年8月 |
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2021年8月4日 (水) 13:56時点における版
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マードックからの最後の手紙(マードックからのさいごのてがみ)とは、樽屋雅徳作曲の吹奏楽曲である。
タイタニック号に乗船していた、一等航海士のウィリアム・マクマスター・マードックとタイタニック号沈没事故をモチーフにした曲である[1]
構成
最初はテンポ50という遅さであり、伸ばしから始まる。4/4拍子。 『空虚五度』といわれる変ロとへの和音を低音ダブルリード主体で奏でる。 そこからBグループが主題を提示しトライアングルの音で次の展開へと移る。メロディーは、ホルンを中心にクラリネットとアルトサックスの編成。
Aは再現。フルートや金管が足され対旋律が強くなる。
Bは一拍目にバスドラムとティンパニーが変ロで入り、テンポが60になって音量も推進力も増す。 もう一度一拍目に打楽器が入り、この曲のメロディーとの掛け合いとなっている。 そして静かに木低音によりデクレシェンドが掛けられやがて音が消えゆく。サックスやホルンによる対旋律が加わる。
Cからは、テンポが上がり拍子も6/8に変わることで一気に現実感が発生する。 この部分からは『乗客達で賑わう船上の様子』であり、タイタニック号が出港した場面であることがわかる。 アイリッシュ調の音楽が使われており、船がアイルランド周辺を航行している場面である。 アイルランドの民族楽器ボーランとタンブリンが基本リズムを奏でる。 打楽器のイントロが4小節で終わると、クラリネット・フルートがやはりアイルランド系の主題を奏で始める。 スラーやスタッカート、アクセントなどの記号を上手に活用して歌うことが大切である。
Dは再現。 アルトサックス・ピッコロが加わり、Cよりも音量は上がるがEに向けて温存するためやりすぎないことが大切である。
Eはメロディーが変化し、6/8の部分のクライマックスである。対旋律が発生し、音量も上がる。 特に対旋律は主旋律とぶつかりにくいため、音量をしっかりと出すと少人数でも迫力が増す。 そして最後の一小節で急激にデクレシェンドが掛けられる。金管楽器の旋律と木管楽器の旋律の掛け合いでメロディーが成される。
Fではテンポが落ち着き、ピッコロやテナーサクソフォーンなどの中低音、オーボエ、クラリネットが異なる旋律を受け継いでいく。
Gは再びゆっくりな場面で、ホルン、アルトサクソフォーン、続いてクラリネットが穏やかなメロディーを奏でる。
Hは、ピアノ伴奏でフルートのソロがある。
Iは雰囲気が一変して、金管、打楽器が主に激しく歌い続いてJは木管も加わり、さらに激しさを増す。
Kは木管が細かく動く。次いでLは打楽器のソロである。
Adagio ♩=50
バスクラリネットとファゴットらの木管低音による緩やかなベースライン、そのなかへしっとりと流れ込むクラリネットの穏やかな歌い出しによって、曲は幕を開ける。
トライアングルの一打を経て、旋律はフルートやオーボエをはじめとする高音楽器を加えてより厚みを増していき、バリトンサックスらのオブリガードとともに海への賛歌を歌い上げる。
やがて、リタルダンドの緩まりを挟んだ曲はテンポをほんの少しだけ巻き上げ(♩=60)、トランペットをはじめとする高音域の金管楽器やサックス、ホルンらの中音域のフレーズが、これから始まるであろう航海に向けて大きな期待を寄せていく。
第2主題
Piu mosso ♩.=112 8分の6拍子
北大西洋を渡り、ニューヨークを目指して航海を続けるタイタニック号の船上での出来事を、一枚一枚の「手紙」のように綴(つづ)っていく。
タンバリンによって提示されるリズムとともに曲調はがらりと変化し、装飾音符を効かせた木管楽器とボーラン(アイルランドの打楽器)によって、軽快な北欧系の民族舞踊風のメロディが奏でられていく。ホルンらによる力強いオブリガードも流れ込んでさらなる盛り上がりを見せると、ピッコロなどの木管楽器が橋渡しを行いながら次第に静かな雰囲気へと切り替わっていく。
♩=72の穏やかなテンポの上で、ファゴットとバスクラリネットのユニゾン、オーボエやクラリネットをはじめとする木管楽器群がワルツ調のフレーズを歌い継ぎ、豪華客船の優雅な航海の様子を描きながら緩やかに終息を見せていく。
Adagio ♩=60
静まった雰囲気のなか、ホルンとアルトサックスのフレーズが柔らかく響き渡り、その余韻をたどるようにクラリネットが暖かみのある中音域で旋律を紡いでいく。
やがて旋律はピアノの伴奏を伴ったフルートのソロに移り、家族への気遣いや航海の安全を祈るマードックの優しさが垣間見えるような美しい調べを響かせていく。
シップスベルが打ち鳴らされ、航海が順調に進んでいくように思われていたその矢先、不穏と危難の兆候が終息の和音のなかから顔を覗かせる。
第3主題
Allegro ♩=144 4分の4拍子
金管楽器の不協和音とトランペットの激しいメロディにより、突然のアクシデントの発生と混迷する船内の様子を描く。
静寂を打ち破ったパニックは瞬く間に曲全体を支配し、タムのリズムとシンバルの強打に乗ってアップテンポのメロディが大混乱の様相を呈しながら襲いかかっていく。
やがて、体制を整えたマードックをはじめとする乗組員は乗客たちの避難誘導を開始し、刻々と迫る沈没へのタイムリミットに駆られる様子を確固としたスネアドラムのリズムとクラリネットの正確無比なフレーズの掛け合い(Poco Meno Mosso ♩=136)によって表していく。
その流れがタムによる激しいリズムの提示を残していったん途切れると、スネアドラムを引き連れたホルンの力強いフレーズが代わって現れ、徐々に船尾を持ち上げながら沈み始めるタイタニック号の姿を示す。アッチェレランドの指示による目まぐるしい展開で緊張感はピークに達し、最後に残された低音楽器とフルートがタイタニック号の沈没によるすべての終焉(しゅうえん)を暗示する。
第4主題
♩=60 4分の4拍子
ピアノのソロによる海の泡の描写、深く暗く沈み込んだムードのなかから、フルート、クラリネット、ホルンらによる静かなフレーズが現れ、タイタニック号の悲劇に立ち会った人々の万感の想いを優しくかつ力強く込めて歌いだす。その時々にオーボエやトランペット、アルトサックスなどのさまざまな楽器のソロを織り交ぜながら歌われるメロディは、去りし人々に対する哀悼(あいとう)、そしてそれを受け入れて前を向こうとする各々の想いの強さを秘めながら盛り上がっていく。
やがてクレッシェンドとともに冒頭の主題が再現され、高らかに響き渡るファンファーレ、大らかに力強く奏でられるメロディがマードックたちの”最後のメッセージ”を綴っていき、満ちあふれる想いを輝かしく放ちながらエンディングへと突き進んでいく。