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[[Image:SmithMachineBenchPress.JPG|thumb|300px|right|マシンウェイトを利用したトレーニングの例]]
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'''筋力トレーニング'''(きんりょくトレーニング)とは、[[骨格筋]]の出力・持久力の維持向上や{{仮リンク|筋肥大|en|Muscle_hypertrophy}} (Muscle hypertrophy) を目的とした運動の総称。目的の骨格筋へ抵抗(resistance)をかけることによって行うものは、'''レジスタンストレーニング'''とも呼ばれる。抵抗のかけ方にはさまざまなものがあるが、[[重力]]や[[慣性]]を利用するもの、ゴムなどによる[[弾性]]を利用するもの、油圧や空気圧による抵抗を用いるものが一般的である。重力による抵抗を利用する場合は特に、[[ウエイトトレーニング]]とも呼ばれる。
'''筋力トレーニング'''(きんりょくトレーニング)とは、[[骨格筋]]の出力・持久力の維持向上や筋肥大(''Muscle hypertrophy'') を目的とした運動の総称。目的の骨格筋へ抵抗(''resistance'')をかけること行うものはレジスタンストレーニングとも呼ばれる。抵抗のかけ方にはさまざまあるが、[[重力]]や[[慣性]]を利用するもの、ゴムによる[[弾性]]を利用するもの、油圧や空気圧による抵抗を用いるものが一般的である。重力による抵抗を利用する場合は特に、[[ウエイトトレーニング]]とも呼ばれる。
<!--基本骨格筋に日常生活以上の[[負荷]]をかけることで骨格筋を消耗させ、その後の[[ウエイトトレーニング#超回復|超回復]]によって筋力の発達を利用するものである。筋肉はたんぱく質が主成分であるため、その修復・強化には[[たんぱく質]]をはじめとする[[栄養素]]の摂取が不可欠であり、[[運動]]後には修復・強化されるための十分な休息(回復期間)が必要がある。-->
<!--基本骨格筋に日常生活以上の[[負荷]]をかけることで骨格筋を消耗させ、その後の[[ウエイトトレーニング#超回復|超回復]]によって筋力の発達を利用するものである。筋肉はたんぱく質が主成分であるため、その修復・強化には[[たんぱく質]]をはじめとする[[栄養素]]の摂取が不可欠であり、[[運動]]後には修復・強化されるための十分な休息(回復期間)が必要がある。-->


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== トレーニング方法の分類 ==
== トレーニング方法の分類 ==
=== 骨格筋の活動様式による分類 ===
=== 骨格筋の活動様式による分類 ===
骨格筋の活動様式は、骨格筋が長さを変えながら力を発揮する'''等張性筋活動'''(Isotonic muscle action)<ref name="Action">等張性筋収縮等尺性筋収縮という呼び名が広く使われているが、長さが短くならないケースもあることから、筋収縮ではなく筋活動という呼び名が使われ始めている。本記事では後者を採った。</ref>と等速性筋活動(Isokinetic muscle action)と長さを変えずに力を発揮する'''等尺性筋活動'''(Isometoric muscle action)<ref name="Action"/>に大別される<ref group="注">これらのほかに等速性筋活動(Isokinetic muscle action)があるが、コンピュータ制御の機器で速度を一定に保つものである。</ref>。等張性筋活動による運動をアイソトニック運動、等尺性筋活動による運動をアイソメトリック運動あるいは、簡略にアイソメトリクスと呼ぶ。
骨格筋の活動様式は、骨格筋が長さを変えながら力を発揮する等張性筋活動」(''Isotonic muscle action'')<ref name="Action">等張性筋収縮」「等尺性筋収縮という呼び名が広く使われているが、長さが短くならない場合もあることから、筋収縮ではなく筋活動という呼び名が使われ始めている。</ref>と等速性筋活動」(''Isokinetic muscle action'')長さを変えずに力を発揮する等尺性筋活動(''Isometoric muscle action'')<ref name="Action"/>に大別される<ref group="注">これらのほかに等速性筋活動(''Isokinetic muscle action'')があるが、コンピュータ制御の機器で速度を一定に保つものである。</ref>。等張性筋活動による運動をアイソトニック運動、等尺性筋活動による運動をアイソメトリック運動あるいは、簡略にアイソメトリクスと呼ぶ。


等張性筋活動、等尺性筋活動、等速性筋活動を考察するに当たっては「動き」だけでなく、「負荷」についても考慮に入れなくてはならない。等張性筋活動は「一定の負荷に対する運動」であるから、筋肉が負荷にあわせて速度・発揮する力を調整する。一方、等尺性筋活動は基本的には「動かない物に対する運動」であって動きはなく、負荷は「筋肉が発揮する力」に対応する。等速性筋活動は「運動領域において筋肉が発揮する力に対応した負荷がかかる運動」である。コンピューターで「運動速度」「負荷」をモニターしながら等速の運動となるように制御するマシーンによる、トレーニングが代表的である。必ずしも運動領域すべてについて等速ではないものの、空気シリンダーや油圧シリンダーによる「運動領域において筋肉が発揮する力に対応した負荷がかかる運動」も等速性筋活動としている。つまり、負荷の観点から言えば等張性筋活動は「一定の負荷に対し筋肉の方が発揮する力を調整する」のに対し、等尺性筋活動・等速性筋活動においては「負荷の方が筋肉が発揮する力にあわせる」のである。
等張性筋活動、等尺性筋活動、等速性筋活動を考察するに当たっては「動き」だけでなく、「負荷」についても考慮に入れなくてはならない。等張性筋活動は「一定の負荷に対する運動」であるから、筋肉が負荷にあわせて速度・発揮する力を調整する。一方、等尺性筋活動は基本的には「動かない物に対する運動」であって動きはなく、負荷は「筋肉が発揮する力」に対応する。等速性筋活動は「運動領域において筋肉が発揮する力に対応した負荷がかかる運動」である。コンピューターで「運動速度」「負荷」をモニターしながら等速の運動となるように制御するマシーンによる、トレーニングが代表的である。必ずしも運動領域すべてについて等速ではないものの、空気シリンダーや油圧シリンダーによる「運動領域において筋肉が発揮する力に対応した負荷がかかる運動」も等速性筋活動としている。つまり、負荷の観点から言えば等張性筋活動は「一定の負荷に対し筋肉の方が発揮する力を調整する」のに対し、等尺性筋活動・等速性筋活動においては「負荷の方が筋肉が発揮する力にあわせる」のである。


一例として、腕立て伏せや[[ベンチプレス]]は負荷が一定であり腕や胸の筋肉が伸び縮みするので、アイソトニック運動に分類される。腕立て伏せの姿勢で静止する運動(プランク、棒のポーズなどと呼ばれる)は動きがないため、アイソメトリック運動といわれることもあるが、(筋肉が負荷にあわせて発揮する力と動きを調整しており)負荷が筋肉が発揮する力にあわせていないため、負荷の観点から見るとアイソメトリック運動とは言いがたい。動かない物を動かそうとする運動、伸びないロープを引き伸ばそうとする運動、合掌した両手を互いに押し合う運動は「アイソメトリック運動」であり、動かない物が発揮している筋力に対応した負荷となっている。また、[[ばね]]やゴムチューブを最大限引き伸ばした状態で保持する運動は「アイソメトリック運動」である。筋力でばねやゴムチューブを引き伸ばしていくと張力が大きくなり、筋力と同じ張力になるとそれ以上引き伸ばせなくなる。この状態で保持すれば「アイソメトリック運動」となり、同様に圧縮ばねを最大限圧縮した状態で保持するのも「アイソメトリック運動」となる。この方法の長所は、ばね・ゴムの伸張・圧縮の度合いで筋力の大きさが分かることである。
一例として、腕立て伏せや[[ベンチプレス]]は負荷が一定であり腕や胸の筋肉が伸び縮みするので、アイソトニック運動に分類される。腕立て伏せの姿勢で静止する運動(プランク、棒のポーズなどと呼ばれる)は動きがないため、アイソメトリック運動といわれることもあるが、(筋肉が負荷にあわせて発揮する力と動きを調整しており)負荷が筋肉が発揮する力にあわせていないため、負荷の観点から見るとアイソメトリック運動とは言いがたい。動かない物を動かそうとする運動、伸びないロープを引き伸ばそうとする運動、合掌した両手を互いに押し合う運動は「アイソメトリック運動」であり、動かない物が発揮している筋力に対応した負荷となっている。また、[[ばね]]やゴムチューブを最大限引き伸ばした状態で保持する運動は「アイソメトリック運動」である。筋力でばねやゴムチューブを引き伸ばしていくと張力が大きくなり、筋力と同じ張力になるとそれ以上引き伸ばせなくなる。この状態で保持すれば「アイソメトリック運動」となり、同様に圧縮ばねを最大限圧縮した状態で保持するのも「アイソメトリック運動」となる。この方法の長所は、ばね・ゴムの伸張・圧縮の度合いで筋力の大きさが分かることである。

== 健康メリット ==
* [[長寿|より長く生き]]、[[クオリティ・オブ・ライフ|生活の質]]の向上<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=Ask the doctor: Want to live longer and better? Do strength training |newspaper=Harvard Health Publishing |url=https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/want-to-live-longer-and-better-strength-train}}</ref>
* 心臓の健康を改善<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=Strength training improves heart health, from the June 2015 Harvard Heart Letter |newspaper=Harvard Health Publishing |url=https://www.health.harvard.edu/press_releases/strength-training-improves-heart-health}}</ref>
* [[糖尿病]]リスクの軽減<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=News briefs: Strengthen your muscles to reduce diabetes risk |newspaper=Harvard Health Publishing|date=March 2014|url=https://www.health.harvard.edu/diseases-and-conditions/news-briefs-strengthen-your-muscles-to-reduce-diabetes-risk}}</ref>
* 健康上問題になる内臓脂肪を落とす<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=Add weight training to control belly fat, say Harvard researchers |newspaper=Harvard Health Publishing |url=https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/add-weight-training-to-control-belly-fat-say-harvard-researchers}}</ref>
* 認知症の前兆である軽度の認知障害を有する人々の[[記憶]]と[[推論]]の改善<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=Weight training may boost brain power |newspaper=Harvard Health Publishing|date=January 2017|url=https://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/weight-training-may-boost-brain-power}}</ref>
* 気分の改善、[[うつ病]]の症状の緩和<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=Strengthen your mood with weight training |newspaper=Harvard Health Publishing|date=October 2018|url=https://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/strengthen-your-mood-with-weight-training}}</ref>
* [[骨粗鬆症]]による[[骨折]]の予防<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=Strength training builds more than muscles |newspaper=Harvard Health Publishing|url=https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/strength-training-builds-more-than-muscles}}</ref>
* [[転倒]]の予防、モビリティの向上<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=Prevent falls and immobility: Start with these strength-training tips |newspaper=Harvard Health Publishing|date=July 2014|url=https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/prevent-falls-and-immobility-start-with-these-strength-training-tips-}}</ref>
* 慢性的な首の痛みを和らげる<ref>{{Cite news |author-link=Harvard Medical School |title=Strength training relieves chronic neck pain |newspaper=Harvard Health Publishing|date=April 2008|url=https://www.health.harvard.edu/pain/strength-training-relieves-chronic-neck-pain}}</ref>


== 運動強度と効果 ==
== 運動強度と効果 ==
レジスタンストレーニングで得られる効果は、[[運動強度]]より異なる。一般に、運動強度が高く繰り返し回数が少ない場合は筋力が、運動強度が低く繰り返し回数が多い場合は筋持久力が、それぞれ発達するといわれている<ref name="ACMS">アメリカスポーツ医学会『運動処方の指針(第6版)』{{要ページ番号|date=2016年2月}}</ref>。
レジスタンストレーニングで得られる効果は、[[運動強度]]より異なる。一般に、運動強度が高く繰り返し回数が少ない場合は筋力が、運動強度が低く繰り返し回数が多い場合は筋持久力が、それぞれ発達するといわれている<ref name="ACMS">アメリカスポーツ医学会『運動処方の指針(第6版)』{{要ページ番号|date=2016年2月}}</ref>。

ハーバード大学医学部によると、ガイドラインでは、主要な筋肉グループごとに2〜3セットの多関節運動が提案されている。多関節運動は、一度に複数の関節に作用する運動である。胸、背中、腕、肩、脚、ふくらはぎの6つの主要な筋肉グループの各トレーニングで6〜12回運動する<ref>{{Cite web|title=Resistance training by the numbers|url=https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/resistance-training-by-the-numbers|website=Harvard Health|accessdate=2021-03-16|first=Harvard Health|last=Publishing}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2022年7月21日 (木) 16:17時点における版

マシンウェイトを利用したトレーニングの例

筋力トレーニング(きんりょくトレーニング)とは、骨格筋の出力・持久力の維持向上や「筋肥大」(Muscle hypertrophy) を目的とした運動の総称。目的の骨格筋へ抵抗(resistance)をかけることで行うものは「レジスタンス・トレーニング」とも呼ばれる。抵抗のかけ方にはさまざまであるが、重力慣性を利用するもの、ゴムによる弾性を利用するもの、油圧や空気圧による抵抗を用いるものが一般的である。重力による抵抗を利用する場合は特に、ウエイトトレーニングとも呼ばれる。

筋力の出力

筋肉の収縮力は、筋肉の断面積と神経系の発達で決まる。筋力鍛錬はこのいずれか、もしくは両方を発達させる目的で行う。

トレーニング方法の分類

骨格筋の活動様式による分類

骨格筋の活動様式は、骨格筋が長さを変えながら力を発揮する「等張性筋活動」(Isotonic muscle action)[1]と「等速性筋活動」(Isokinetic muscle action)と、長さを変えずに力を発揮する「等尺性筋活動(Isometoric muscle action)[1]に大別される[注 1]。等張性筋活動による運動をアイソトニック運動、等尺性筋活動による運動をアイソメトリック運動あるいは、簡略にアイソメトリクスと呼ぶ。

等張性筋活動、等尺性筋活動、等速性筋活動を考察するに当たっては「動き」だけでなく、「負荷」についても考慮に入れなくてはならない。等張性筋活動は「一定の負荷に対する運動」であるから、筋肉が負荷にあわせて速度・発揮する力を調整する。一方、等尺性筋活動は基本的には「動かない物に対する運動」であって動きはなく、負荷は「筋肉が発揮する力」に対応する。等速性筋活動は「運動領域において筋肉が発揮する力に対応した負荷がかかる運動」である。コンピューターで「運動速度」「負荷」をモニターしながら等速の運動となるように制御するマシーンによる、トレーニングが代表的である。必ずしも運動領域すべてについて等速ではないものの、空気シリンダーや油圧シリンダーによる「運動領域において筋肉が発揮する力に対応した負荷がかかる運動」も等速性筋活動としている。つまり、負荷の観点から言えば等張性筋活動は「一定の負荷に対し筋肉の方が発揮する力を調整する」のに対し、等尺性筋活動・等速性筋活動においては「負荷の方が筋肉が発揮する力にあわせる」のである。

一例として、腕立て伏せやベンチプレスは負荷が一定であり腕や胸の筋肉が伸び縮みするので、アイソトニック運動に分類される。腕立て伏せの姿勢で静止する運動(プランク、棒のポーズなどと呼ばれる)は動きがないため、アイソメトリック運動といわれることもあるが、(筋肉が負荷にあわせて発揮する力と動きを調整しており)負荷が筋肉が発揮する力にあわせていないため、負荷の観点から見るとアイソメトリック運動とは言いがたい。動かない物を動かそうとする運動、伸びないロープを引き伸ばそうとする運動、合掌した両手を互いに押し合う運動は「アイソメトリック運動」であり、動かない物が発揮している筋力に対応した負荷となっている。また、ばねやゴムチューブを最大限引き伸ばした状態で保持する運動は「アイソメトリック運動」である。筋力でばねやゴムチューブを引き伸ばしていくと張力が大きくなり、筋力と同じ張力になるとそれ以上引き伸ばせなくなる。この状態で保持すれば「アイソメトリック運動」となり、同様に圧縮ばねを最大限圧縮した状態で保持するのも「アイソメトリック運動」となる。この方法の長所は、ばね・ゴムの伸張・圧縮の度合いで筋力の大きさが分かることである。

運動強度と効果

レジスタンストレーニングで得られる効果は、運動強度より異なる。一般に、運動強度が高く繰り返し回数が少ない場合は筋力が、運動強度が低く繰り返し回数が多い場合は筋持久力が、それぞれ発達するといわれている[2]

脚注

注釈

  1. ^ これらのほかに等速性筋活動(Isokinetic muscle action)があるが、コンピュータ制御の機器で速度を一定に保つものである。

出典

  1. ^ a b 「等張性筋収縮」「等尺性筋収縮」という呼び名が広く使われているが、長さが短くならない場合もあることから、筋収縮ではなく筋活動という呼び名が使われ始めている。
  2. ^ アメリカスポーツ医学会『運動処方の指針(第6版)』[要ページ番号]

関連項目