コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「音響パワー」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
音源を囲う音響パワーのみ音響出力と言う。ゆえに、音響パワーを常に音響出力とは言わない。
ベクトル量との誤解、音響出力との混同、音エネルギー流束の造語などに出典を用いて対応。
1行目: 1行目:
'''音響パワー'''({{lang-en-short|sound power}}<ref name="JIS Z 8000-8:2014、6頁">{{Cite jis|Z|8000-8|2014|name=量及び単位-第 8 部:音|page=6}}</ref>とは、[[物体]]により放出/吸収される音響エネルギの出力、またはある有限の検査面を通過する音波による音響エネルギー移送の強度であり、いずれもパワーすなわち[[仕事率]]である。SI単位は[W]([[ワット (単位)|ワット]]=<nowiki>[</nowiki>[[ジュール|J]]/[[秒|s]]])。音源から放される量については「音声パワー」とされることがある<ref name=JIS_Z_8106_2000>JIS Z 8106:2000 https://kikakurui.com/z8/Z8106-2000-01.html</ref>。ある検査面を通って伝わるベクトル量についていうときは'''音響エネルギー束'''('''音エネルギー流束'''、{{lang-en-short|sound energy flux|links=no}})と呼び<ref name="JIS Z 8106:2000">{{Cite jis|Z|8106|2000|name=音響用語}}</ref><ref>{{wikidata|label|linked|Property:P8855}} {{wikidata|properties|linked|P8855}}</ref>、音響エネルギー束の大きさは音響パワーである。
'''音響パワー'''(おんきょうパワー、{{lang-en-short|sound power}}<ref name="JIS Z 8000-8:2014、6頁">{{Cite jis|Z|8000-8|2014|name=量及び単位-第 8 部:音|page=6}}</ref><!--←この出典して参照されるJIS{{Oldid|101021254}}に付された英語表記を示すためのものであり、以下の定義文とは無関係。-->)とは、音場内のある面を単位時間に通過する[[音響エネルギー]]である{{Sfnp|『新版 音響用語辞典』|2003|p=51|loc=「音響パワー」}}{{Sfnp|阪上『建築音響』|2019|p=11}}。指定された面に垂直な方向の体積速度{{efn|振動している面上にとられた微小部分の面積とその面に垂直な粒子速度成分との積を、振動面全体にわたって積分したもの{{Sfnp|『新版 音響用語辞典』|2003|p=220|loc=「体積速度」}}。}}と[[音圧]]の同相成分の積の時間平均値で与えられる{{Sfnp|『新版 音響用語辞典』|2003|p=51|loc=「音響パワー」}}{{efn|「音響エネルギー束,面積要素を通過する音響パワー」対象とする面を通過する瞬時音圧と体積速度の同相成分の積の時間平均値。({{lang-en-short|sound energy flux, sound power through a surface element}}){{harv|JIS Z 8106:2000}} }}。{{要出典範囲|[[物体]]により放出/吸収される音響エネルギの出力、またはある有限の検査面を通過する音波による音響エネルギー移送の強度であり、いずれも}}パワーすなわち[[仕事率]]である。[[SI単位]]は[W]([[ワット (単位)|ワット]]=<nowiki>[</nowiki>[[ジュール|J]]/[[秒|s]]])。{{要典範囲|ある検査面を通って伝わるベクトル量についていうときは|title={{Oldid|102355184}}での変更による内容。対象となる面の法線ベクトルとの内積により求まるスカラー量であることからこの記述は誤り。ベクトル量は、音響エネルギー束密度である音響インテンシティ(音の強さ)のほうである。|date=2024年12月}}'''音響エネルギー束'''({{要出典範囲|'''音エネルギー流束'''|title=用語として見当たらない。sound energy flux を直訳した造語?|date=2024年12月}}、{{lang-en-short|sound energy flux|links=no}})と呼び<ref name=JIS_Z_8106_2000/><ref>https://www.electropedia.org/iev/iev.nsf/display?openform&ievref=801-21-37</ref>{{要出典範囲|、音響エネルギー束の大きさは音響パワーである。|title={{Oldid|102355184}}での変更による内容。|date=2024年12月}}{{efn|「音響エネルギー束」(sound energy flux)を見出しに掲げる『理工学辞典』においても、「ある面を単位面積に通る音響エネルギー。音響パワーともいう」とし、これをベクトル量としては説明していない<ref>{{cite|和書|title=理工学辞典|year=1996|isbn=4-526-03824-5|page=217|chapter=音響エネルギー束}}</ref>。}}


単位時間に音源が放射する音響エネルギーの総和を'''音響出力'''(おんきょうしゅつりょく、{{lang-en-short|sound power of a source}})といい、音源を囲む閉曲面を単位時間に通過する音響エネルギー、すなわち音源を囲む閉曲面を通過する音響パワーに等しい<ref>{{cite|和書|title=理工学辞典|year=1996|isbn=4-526-03824-5|page=217|chapter=音響出力}}</ref>。そのため、音響パワーの語を音響出力と同義に使う場合もある。JIS([[日本産業規格]])では、音源の音響エネルギーについては、「音源の音響出力」「音源の音響パワー」と「音源」の語を付して定義する<ref name=JIS_Z_8106_2000/>。音声源から放出される量については「音声パワー」とされることがある<ref name=JIS_Z_8106_2000>{{harvnb|JIS Z 8106:2000}} https://kikakurui.com/z8/Z8106-2000-01.html</ref>。
物理的にはエネルギーの時間微分であるが、実務上は、ある時間についてやりとりされるのエネルギーをその時間で除した値とされる<ref name=JIS_Z_8106_2000/>。


== 算出 ==
音響パワー''W'' [W] は'''音響インテンシティ'''('''[[音の強さ]]''') ''I'' を有限の検査面について積算した量であり、
音響パワー <math>W</math> <nowiki>[</nowiki>[[ワット|W]]] は'''音響インテンシティ'''('''[[音の強さ]]''') <math>\boldsymbol{I}</math> を有限の検査面について積算した量であり、
{{indent|<math>
{{indent|<math>
W = \int_{S} IdS
W = \int_{S} \boldsymbol{I} \cdot d\boldsymbol{S}
</math>}}
</math>}}
で定義され、音源を取り囲む閉曲面を通過する音響パワーを'''[[音響出力]]'''と呼ぶ<ref>{{cite|和書|author=阪上公博 編著|title=建築音響|year=2019|page=11|publisher=コロナ社|isbn=978-4-339-01363-4}}</ref>
で定義される。(なお、音源を取り囲む閉曲面を通過する音響パワーを'''[[音響出力]]'''と呼ぶ{{Sfnp|阪上建築音響|2019|p=11}}。


さて、ベクトル量である <math>\boldsymbol{I}</math> の大きさ <math>I</math> [W/m<sup>2</sup>]は、媒質中の単位体積に含まれる音波のエネルギーであるエネルギー密度''E'' (=''p''<sup>2</sup>/ρ''v''<sup>2</sup>)から、[[音圧]](実効音圧)''p'' [Pa]、媒質の密度ρ [kg/m<sup>3</sup>]、媒質中の音波の伝搬速度 ''v'' [m/s]を用いて、
音響パワーは、音響インテンシティと同様、[[音圧]] ''p''[Pa][[粒子速度]] ''v''[m/s] から得る場合がある<ref>Landau & Lifshitz, "Fluid Mechanics", Course of Theoretical Physics, Vol. 6</ref>。
{{indent|<math>
I = v E = \frac{p^2}{\rho v}
</math>}}
と表される<ref>{{cite|和書|title=理工学辞典|year=1996|isbn=4-526-03824-5|page=217|chapter=音響エネルギー密度、音響エネルギー密度レベル}}</ref>。

よって、密度 ''ρ'' の[[媒質]]中の[[平面波]]または[[球面波]]について、伝速度 ''v''、面積 ''A''、実効音圧 ''p'' ときの音響パワー ''W'' は、次式で与えられる。
{{indent|<math>
W = \frac{p^2}{\rho v} A\mathrm{cos}\theta
</math>}}
ここで、''θ'' は音の伝方向と検査面のなす角度であり、伝方向に直交する検査面のときに cos''θ''=1。

例えば、常温の[[空気]]中(''ρ''=1.2kg/m<sup>2</sup>,''v''=343m/s )にて85[[デシベル]]すなわち0.356[[パスカル (単位)|パスカル]]の音の音響パワーは、音の伝搬方向に直交する単位面積 ''A''=1m<sup>2</sup> あたり 0.3 mW となる。

== 粒子速度(または体積速度)による定義 ==
音響パワーは、音響インテンシティと同様、音圧 <math>p</math> と粒子速度 <math>\boldsymbol{u}</math> から得る場合がある<ref>Landau & Lifshitz, "Fluid Mechanics", Course of Theoretical Physics, Vol. 6</ref>。
: <math>
: <math>
W = \int (p\vec{v}) \cdot \mathrm{d}\vec{A}
W = \int (p\boldsymbol{u}) \cdot \mathrm{d}\boldsymbol{A}
</math>
</math>
これは、指定された面に垂直な方向の体積速度(振動している面上にとられた微小部分の面積とその面に垂直な粒子速度成分との積 <math>\boldsymbol{u} \cdot d\boldsymbol{A}</math> を、振動面全体にわたって積分したもの)と音圧 <math>p</math> の同相成分の積を表している。


{{要出典範囲|物理的にはエネルギーの時間微分であるが、実務上は、ある時間についてやりとりされるのエネルギーをその時間で除した値とされる<ref name=JIS_Z_8106_2000/>。|title={{Oldid|102378966}}により追加}}
密度 ''ρ'' の[[媒質]]中の[[平面波]]または[[球面波]]について、伝速度 ''v''、面積 ''A''、実効音圧 ''p'' ときの音響パワー ''W'' は、次式で与えられる。
: ''W'' = (''p<sup>2</sup>A'' / ''ρ v'') cos ''θ''
ここで、''θ'' は音の伝方向と検査面のなす角度であり、伝方向に直交する検査面のときに cos''θ''=1。

例えば、常温の[[空気]]中(''ρ''=1.2kg/m<sup>2</sup>,''v''=343m/s )にて85[[デシベル]]すなわち0.356[[パスカル (単位)|パスカル]]の音の音響パワーは、単位面積 ''A''=1m<sup>2</sup> あたり 0.3 mW となる。


== 音響パワーレベル ==
== 音響パワーレベル ==
{{also|音圧#音圧と音圧レベル}}
音響パワーの対数尺度であり、すなわち与えられる基準値の比の対数。通常、対数の底を10とした[[常用対数]]を10倍[[デシベル]] [dB]を単位として表す。特に指定のない限り、基準値となる音響パワーは 1 pW(=10<sup>-12</sup> [W])である<ref name=JIS_Z_8106_2000/>。
'''音響パワーレベル'''(おんきょうパワーレベル、{{lang-en-short| sound power level of a source}})は、音響出力(音源の音響パワー)の[[レベル表現|レベル表示]]であり{{Sfnp|『新版 音響用語辞典』|2003|p=51|loc=「音響パワーレベル」}}、すなわち与えられる基準値の比の[[対数]]。通常、対数の底を10とした[[常用対数]]を10倍し、[[デシベル]] [dB]を単位として表す。

すなわち、音響パワー''W''[W]をデシベルとして表す音響パワーレベル<math>L_W</math> [dB]は、
{{indent|<math>L_W=10 \log_{10}\frac{W}{W_0} </math> [dB]}}
と定義される。ここで、基準となる音響パワー''W<sub>0</sub>''は、特に指定のない限り、 1 pW(=10<sup>-12</sup> [W])である<ref
name=JIS_Z_8106_2000/>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
*{{Cite jis|Z|8106|2000|name=音響用語|ref={{SfnRef|JIS Z 8106:2000|}} }} https://kikakurui.com/z8/Z8106-2000-01.html
*{{cite|和書|author=阪上公博|title=建築音響|year=2019|publisher=コロナ社|isbn=978-4-339-01363-4|ref={{SfnRef|阪上『建築音響』|2019}} }}
*{{cite|和書|editor=日本音響学会|title=新版 音響用語辞典|year=2003|publisher=コロナ社|isbn=4-339-00755-2|ref={{SfnRef|『新版 音響用語辞典』|2003}} }}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
32行目: 59行目:
* [[音の強さ]]
* [[音の強さ]]
* [[放射束]]
* [[放射束]]
* [[エネルギー流束]]


{{DEFAULTSORT:おんきようぱわあ}}
{{DEFAULTSORT:おんきようぱわあ}}

2024年12月19日 (木) 10:01時点における版

音響パワー(おんきょうパワー、: sound power[1])とは、音場内のある面を単位時間に通過する音響エネルギーである[2][3]。指定された面に垂直な方向の体積速度[注釈 1]音圧の同相成分の積の時間平均値で与えられる[2][注釈 2]物体により放出/吸収される音響エネルギの出力、またはある有限の検査面を通過する音波による音響エネルギー移送の強度であり、いずれも[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。パワーすなわち仕事率である。SI単位は[W](ワット=[J/s])。ある検査面を通って伝わるベクトル量についていうときは[要出典]音響エネルギー束音エネルギー流束[要出典]、英: sound energy flux)と呼び[5][6]、音響エネルギー束の大きさは音響パワーである。[要出典][注釈 3]

単位時間に音源が放射する音響エネルギーの総和を音響出力(おんきょうしゅつりょく、: sound power of a source)といい、音源を囲む閉曲面を単位時間に通過する音響エネルギー、すなわち音源を囲む閉曲面を通過する音響パワーに等しい[8]。そのため、音響パワーの語を音響出力と同義に使う場合もある。JIS(日本産業規格)では、音源の音響エネルギーについては、「音源の音響出力」「音源の音響パワー」と「音源」の語を付して定義する[5]。音声源から放出される量については「音声パワー」とされることがある[5]

算出

音響パワー [W] は、音響インテンシティ音の強さ を有限の検査面について積算した量であり、

で定義される。(なお、音源を取り囲む閉曲面を通過する音響パワーを音響出力と呼ぶ[3]。)

さて、ベクトル量である の大きさ [W/m2]は、媒質中の単位体積に含まれる音波のエネルギーであるエネルギー密度E (=p2v2)から、音圧(実効音圧)p [Pa]、媒質の密度ρ [kg/m3]、媒質中の音波の伝搬速度 v [m/s]を用いて、

と表される[9]

よって、密度 ρ媒質中の平面波または球面波について、伝搬速度 v、面積 A、実効音圧 p ときの音響パワー W は、次式で与えられる。

ここで、θ は音の伝搬方向と検査面のなす角度であり、伝搬方向に直交する検査面のときに cosθ=1。

例えば、常温の空気中(ρ=1.2kg/m2,v=343m/s )にて85デシベルすなわち0.356パスカルの音の音響パワーは、音の伝搬方向に直交する単位面積 A=1m2 あたり 0.3 mW となる。

粒子速度(または体積速度)による定義

音響パワーは、音響インテンシティと同様、音圧 と粒子速度 から得る場合がある[10]

これは、指定された面に垂直な方向の体積速度(振動している面上にとられた微小部分の面積とその面に垂直な粒子速度成分との積 を、振動面全体にわたって積分したもの)と音圧 の同相成分の積を表している。

物理的にはエネルギーの時間微分であるが、実務上は、ある時間についてやりとりされるのエネルギーをその時間で除した値とされる[5][要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

音響パワーレベル

音響パワーレベル(おんきょうパワーレベル、: sound power level of a source)は、音響出力(音源の音響パワー)のレベル表示であり[11]、すなわち与えられる基準値の比の対数。通常、対数の底を10とした常用対数を10倍し、デシベル [dB]を単位として表す。

すなわち、音響パワーW[W]をデシベルとして表す音響パワーレベル [dB]は、

[dB]

と定義される。ここで、基準となる音響パワーW0は、特に指定のない限り、 1 pW(=10-12 [W])である[5]

脚注

注釈

  1. ^ 振動している面上にとられた微小部分の面積とその面に垂直な粒子速度成分との積を、振動面全体にわたって積分したもの[4]
  2. ^ 「音響エネルギー束,面積要素を通過する音響パワー」対象とする面を通過する瞬時音圧と体積速度の同相成分の積の時間平均値。(: sound energy flux, sound power through a surface element)(JIS Z 8106:2000)
  3. ^ 「音響エネルギー束」(sound energy flux)を見出しに掲げる『理工学辞典』においても、「ある面を単位面積に通る音響エネルギー。音響パワーともいう」とし、これをベクトル量としては説明していない[7]

出典

  1. ^ JIS Z 8000-8:2014「量及び単位-第 8 部:音」日本産業標準調査会経済産業省)、6頁
  2. ^ a b 『新版 音響用語辞典』 (2003), p. 51, 「音響パワー」.
  3. ^ a b 阪上『建築音響』 (2019), p. 11.
  4. ^ 『新版 音響用語辞典』 (2003), p. 220, 「体積速度」.
  5. ^ a b c d e JIS Z 8106:2000 https://kikakurui.com/z8/Z8106-2000-01.html
  6. ^ https://www.electropedia.org/iev/iev.nsf/display?openform&ievref=801-21-37
  7. ^ 「音響エネルギー束」『理工学辞典』1996年、217頁。ISBN 4-526-03824-5 
  8. ^ 「音響出力」『理工学辞典』1996年、217頁。ISBN 4-526-03824-5 
  9. ^ 「音響エネルギー密度、音響エネルギー密度レベル」『理工学辞典』1996年、217頁。ISBN 4-526-03824-5 
  10. ^ Landau & Lifshitz, "Fluid Mechanics", Course of Theoretical Physics, Vol. 6
  11. ^ 『新版 音響用語辞典』 (2003), p. 51, 「音響パワーレベル」.

参考文献

関連項目