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=== 学生サークル === |
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東大入学後、つばさは同じ理科I類の学生ら4人と親しくなる。いずれも都内か地方の進学校から入学してきた学生たちだった。つばさは、この4人とともに「星座研究会」なるものを立ち上げる。表向きの活動内容は、喫茶店や居酒屋に集まって星座を話題のきっかけに懇談することだが、実際の目的は「東大男子と親しくなりたい女子学生を募ること」だ |
東大入学後、つばさは同じ理科I類の学生ら4人と親しくなる。いずれも都内か地方の進学校から入学してきた学生たちだった。つばさは、この4人とともに「星座研究会」なるものを立ち上げる。表向きの活動内容は、喫茶店や居酒屋に集まって星座を話題のきっかけに懇談することだが、実際の目的は「東大男子と親しくなりたい女子学生を募ること」だった。 |
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SNSで小規模に宣伝するだけだったが、しだいに参加する女子学生が増えてくる。のちに公判で法廷に立たされたさい、つばさは「ぼくに近づいてくる女性は、ぼく個人を好いてくれているのではなく、親の勤務先やぼくの学歴を見て下心で近づいてきていると思えていました」と供述することになる。 |
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=== 二人の出会い === |
=== 二人の出会い === |
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美咲は、この「星座研究会」にいた友人を通じて、偶然つばさと知り合う。 |
美咲は、この「星座研究会」にいた友人を通じて、偶然つばさと知り合い、ひかれあう。しかし時を経ずして、つばさは美咲に興味を失う。家柄がよい和泉摩耶と祖母を通じて知り合ったからだ。 |
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しかし時を経ずして、つばさは美咲に興味を失う。家柄がよく、[[東京女子大学|東京女子大]]に通う和泉摩耶に出会ったからだ。父親が歯科大の教授で、容姿がよく、カナダに留学して英語が堪能な彼女とは、家族ぐるみの交流が始まる。「気どらなくて、すなおで、Gカップでつばさのギャグにはなんでも笑いころげる」美咲は、つばさの意識からこぼれ落ちる。どうしても和泉摩耶の身体への欲情を押さえられなくなったときには、美咲を呼び出し、会話もそこそこにラブホテルへ連れ込んで美咲を抱く。美咲の気持ちを思いやるような感情は、つばさにはもともとなかった。 |
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一方、「星座研究会」の活動はエスカレートしてゆく。つばさ以外のメンバーたちはつぎつぎに他大学の女子学生を性欲のはけぐちとして使い、その一部を説得してヌードを撮影、アダルトサイト業者へ販売した臨時収入をメンバー内で分配するまでになっていた。 |
一方、「星座研究会」の活動はエスカレートしてゆく。つばさ以外のメンバーたちはつぎつぎに他大学の女子学生を性欲のはけぐちとして使い、その一部を説得してヌードを撮影、アダルトサイト業者へ販売した臨時収入をメンバー内で分配するまでになっていた。 |
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=== 事件 === |
=== 事件 === |
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あるとき、メンバーは飲み会をセッティングする。「盛り上がってたのしく飲もうというだけの、それだけの目的のもの」だった。つばさは、この飲み会を盛り上げようと美咲を呼び出すことにする。 |
あるとき、メンバーは飲み会をセッティングする。「盛り上がってたのしく飲もうというだけの、それだけの目的のもの」だった。つばさは、この飲み会を盛り上げようと美咲を呼び出すことにする。美咲は、様子をみて二人になり、つばさに最後の別れの挨拶をしようとやってくるが、そこでおぞましい「わいせつ事件」が起こる。隙を見て逃げ出した美咲は警察に保護される。 |
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男子学生たちは、美咲の容姿や身なりの素朴さを内心であざ笑い、「このヒトはネタ枠ですね」という感想をLINEグループトークでシェアしあう。異性として性的に接触するようなものではなく、ネタ枠、つまりおもしろおかしく嘲弄するだけの対象だと。 |
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自分が抱いた女をメンバーが「ネタ枠」と笑ったことはつばさのプライドをひどく傷つけ、つばさは美咲を仲間のおもちゃとして突き放す。メンバーらは美咲を無理に酒で酔いつぶし、近くに住むメンバーのマンションへ移動。意識が朦朧となった美咲の服を剥ぎ取って全裸にしたうえ、執拗に暴行・蹂躙を加えてゆく。 |
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美咲はあまりのことに声を失い、うずくまって嘲弄に耐えるばかりだったが、すきをみて半裸で部屋を飛び出す。偶然たどりついた公衆電話が警察へつながり、近くからかけつけた警官に美咲は保護された。 |
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=== 逮捕 === |
=== 逮捕 === |
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東大生5人逮捕のニュースが大きく報じられると、ネット上には美咲を非難するコメントがあふれかえっ |
東大生5人逮捕のニュースが大きく報じられると、ネット上には美咲を非難するコメントがあふれかえった。 |
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逮捕された5人の東大生の親たちは、誰も事件を理解しなかった。「ウチはむしろ被害者」「いまのご時世だから、すぐに[[セクシャルハラスメント|セクハラ]]と怒る女子学生から感情的に訴えられた」と嘆いた。 |
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弁護士を通じていっせいに示談を申し込んできた親たちに美咲側が出した条件は一つだけで、男子学生らが東大を自主退学することだった。逮捕された5人のうち2人は即座にこの条件をのんだ。2人ともすでに大学院生になっていて、東大卒の肩書きに変わりはないからだ。この二人と美咲側は和解が成立し、2人とも不起訴となる。 |
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逮捕された5人の東大生の親たちは、誰も事件を理解せず、弁護士を通じていっせいに示談を申し込んできた。親も学生もそろって「強姦しようとか、そんな気持ちは皆無だった。ふざけただけ。痛飲により、ふざけの度合いが過ぎた」と思っていたから、美咲側の示談条件をこばんだ。 |
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残る3人の親たちは単に悪ふざけの程度が過ぎただけで罪になるはずはないと信じていたから、自主退学の要求を拒んだ。母親の一人は著名なTVコメンテーターで、息子はハーバードかイェールの公開講座でほとぼりをさまして、帰国したらハニートラップに掛かったと自虐ネタでバラエティにでも出ればよい、と笑った。 |
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=== 判決後 === |
=== 判決後 === |
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しかし判決は、3人とも有罪となっ |
しかし判決は、3人とも有罪となった。3人は執行猶予つきの有罪判決を受け、後にいずれも東京大学を退学処分となる。 |
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短期間ながら美咲と恋愛関係にあったつばさは、判決を受けたのち、人目を避ける暮らしの中でときおり美咲のことを思い出す |
短期間ながら美咲と恋愛関係にあったつばさは、判決を受けたのち、人目を避ける暮らしの中でときおり美咲のことを思い出すが……。 |
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== 評価・反響 == |
== 評価・反響 == |
2024年12月28日 (土) 07:41時点における版
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彼女は頭が悪いから | |
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作者 | 姫野カオルコ |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 長編小説 |
発表形態 | 単行本 |
刊本情報 | |
出版元 | 文藝春秋 |
出版年月日 | 2018年7月 |
ウィキポータル 文学 ポータル 書物 |
『彼女は頭が悪いから』は、作家の姫野カオルコが2018年に発表した小説。2016年に起きた東京大学学生による集団強制わいせつ・暴行事件に着想を得た作品で、当時の報道や公判記録などが利用されているが、登場人物を含めすべて作者の創作として書かれている。題名は、被害者女性を暴行した心情について問われた際、加害者学生のひとりが公判で実際に口にした言葉から取られているという[1]。
概要
この小説の題材は、2016年の5月、東京大学工学部の学部生・大学院生ら5人が他大学の女子学生に対する強制わいせつ・暴行で逮捕された事件である[2]。
作者の姫野は、この報道に接した際、過去に起きた有名大学の学生による性的事件とは異なるものを感じ、またニュースを見聞きした大勢の人々の反応にも「自分とは大きくちがうものを感じた」という[1]。このときの違和感、「いやな気分といやな感情」を探る創作小説として本作は執筆され、事件にいたるまでの加害者・被害者の生い立ちや心情の変化、事件後に起きた被害者女性へのバッシングなどを克明に描いている[3]。
とりわけ姫野が執筆のきっかけになったと述べるのは、ある加害者の「サークル活動で知り合った他大学の女子学生たちに対して、彼女たちは頭が悪いから見下していた」という証言である。
姫野は、自分が「何かの店の店員だったり公共施設職員だったりすれば、あるいは (…) 何かのはずみで私の略歴を見たりすれば、彼らは私のことも同じように見下すのだろうと思い、自分もまた彼らと同じような見くびりを他人に対してしているのだろう」と感じたという[1]。
これをきっかけとして姫野はジャーナリストらの協力も得て事件の報道や公判記録を収集・取材、およそ2年かけて本作を執筆する。作中の登場人物はすべて架空で、姫野は、この作品は「事件のノベライズ」ではなく、東京大学の設備や学生をレポートするものでもない、と繰り返し明言している[1]。
あらすじ
被害者と加害者
中心となる登場人物は東京都内の女子大に通う「神立美咲」と、東京大学学生の「竹内つばさ」である。
神立美咲は、東急田園都市線あざみ野駅からかなり歩いたところに家がある。父親は給食センターで働き、母親は地元のクリーニング店でパートとして働いている。地元では「県下トップとはいわないまでも青葉区辺りでは進学校」に通って平凡な高校時代をすごし、河合塾の偏差値ランキングで下位に位置する「水谷女子大学」に入学する。
一方の竹内つばさは、「生徒全員が東大を目指すのがデフォルトのような進学高校」である横浜教育大学附属高校から、東京大学理科I類に進学した。父親が農林水産省の官僚で、家族が暮らす官舎は有栖川宮記念公園そばの閑静な一角にあった。
この二人がのちに強制わいせつ事件の被害者・加害者となる。
学生サークル
東大入学後、つばさは同じ理科I類の学生ら4人と親しくなる。いずれも都内か地方の進学校から入学してきた学生たちだった。つばさは、この4人とともに「星座研究会」なるものを立ち上げる。表向きの活動内容は、喫茶店や居酒屋に集まって星座を話題のきっかけに懇談することだが、実際の目的は「東大男子と親しくなりたい女子学生を募ること」だった。
二人の出会い
美咲は、この「星座研究会」にいた友人を通じて、偶然つばさと知り合い、ひかれあう。しかし時を経ずして、つばさは美咲に興味を失う。家柄がよい和泉摩耶と祖母を通じて知り合ったからだ。
一方、「星座研究会」の活動はエスカレートしてゆく。つばさ以外のメンバーたちはつぎつぎに他大学の女子学生を性欲のはけぐちとして使い、その一部を説得してヌードを撮影、アダルトサイト業者へ販売した臨時収入をメンバー内で分配するまでになっていた。
事件
あるとき、メンバーは飲み会をセッティングする。「盛り上がってたのしく飲もうというだけの、それだけの目的のもの」だった。つばさは、この飲み会を盛り上げようと美咲を呼び出すことにする。美咲は、様子をみて二人になり、つばさに最後の別れの挨拶をしようとやってくるが、そこでおぞましい「わいせつ事件」が起こる。隙を見て逃げ出した美咲は警察に保護される。
逮捕
東大生5人逮捕のニュースが大きく報じられると、ネット上には美咲を非難するコメントがあふれかえった。
逮捕された5人の東大生の親たちは、誰も事件を理解せず、弁護士を通じていっせいに示談を申し込んできた。親も学生もそろって「強姦しようとか、そんな気持ちは皆無だった。ふざけただけ。痛飲により、ふざけの度合いが過ぎた」と思っていたから、美咲側の示談条件をこばんだ。
判決後
しかし判決は、3人とも有罪となった。3人は執行猶予つきの有罪判決を受け、後にいずれも東京大学を退学処分となる。
短期間ながら美咲と恋愛関係にあったつばさは、判決を受けたのち、人目を避ける暮らしの中でときおり美咲のことを思い出すが……。
評価・反響
この小説は、2018年7月の刊行直後からさまざまな一般メディアで論評の対象となり、大きな反響を呼ぶ[6]。翻訳家の鴻巣友季子は、本作を「少なからず家庭環境と階層で」学歴が決まる日本の構造を皮肉った、徹底した「学歴社会批評小説」と評した[7]。
12月には東京大学で姫野を招いたイベントが開かれたが[8]、ここでは一部の東京大学教員らから「三鷹寮など作中に登場する施設の描写が事実と異なる」「現実の東大生はここに書かれているほど挫折を知らない学生ばかりではない」といった批判も行われた[8]。
しかし本作はその後も多くのメディアに取りあげられ、翌2019年には、第32回柴田錬三郎賞を受賞。この選評では、作中のリアルな人物描写や「勧善懲悪でも、単なる告発糾弾でもない」構成が、総じて高く評価されている[1]。作家の桐野夏生が「女たちの憂鬱と絶望を、優れたフィクションで明確に表した」と評したほか、同じく作家の林真理子は「平成における最も重要な本の一冊」と絶賛している[1]。
同2019年4月の東京大学入学式では祝辞に招かれた上野千鶴子が本作のきっかけとなった事件に言及、この小説は東大男子学生に対する世の中の見方をうかがわせると述べている[9]。
出典
- ^ a b c d e f 姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』文春文庫、2021
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2016年10月27日). “【東大生強制わいせつ事件】発端は「誕生日研究会」と称するサークルだった…東大院生に有罪判決 法廷で明らかになった犯行の全容(1/3ページ)”. 産経ニュース. 2024年2月25日閲覧。
- ^ “『彼女は頭が悪いから』作者・姫野カオルコさんインタビュー 小説に込めた思いとは - 東大新聞オンライン”. www.todaishimbun.org (2019年2月6日). 2024年2月25日閲覧。
- ^ “The Woodman’s Daughter”. Google Arts & Culture. 2024年2月26日閲覧。
- ^ Chatfield, Stephanie (2017年4月30日). “The Woodman's Daughter The Pre-Raphaelite Sisterhood Blog” (英語). Pre-Raphaelite Sisterhood. 2024年2月26日閲覧。
- ^ “姫野カオルコ作品の書評紹介(彼女は頭が悪いから/文藝春秋社)”. himenoshiki.com. 2024年2月25日閲覧。
- ^ “「大学生5人による強制わいせつ」を基に“学歴社会”を皮肉る | レビュー”. Book Bang -ブックバン-. 2024年2月25日閲覧。
- ^ a b “「姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』ブックトーク」レポート ~「モヤモヤ」とともに振り返る~ - 東大新聞オンライン”. www.todaishimbun.org (2019年2月5日). 2024年2月25日閲覧。
- ^ “平成31年度東京大学学部入学式 祝辞”. 東京大学. 2024年2月25日閲覧。
書誌
- 姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』文藝春秋、2018.7 ISBN 9784163908724
- 姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』文春文庫、2021.4 ISBN 9784167916701
関連項目
- 東京大学誕生日研究会レイプ事件(本作のきっかけとなった事件。項目名はレイプ事件となっているが、逮捕容疑・判決とも強制わいせつ及び暴行である点に留意)
- 不同意性交等罪(2023年7月施行の改正刑法で新設された罪名)