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宮﨑徹
みやざきとおる宮﨑徹
生誕	1962年3月（62歳）; 日本・長崎県島原市
国籍	日本
研究機関	ルイ・パスツール大学（フランス語版）; バーゼル免疫学研究所（英語版）; テキサス大学; 東京大学大学院医学系研究科・医学部; AIM医学研究所
出身校	東京大学医学部医学科（学士）; 熊本大学大学院医学研究科（博士）
主な業績	AIMの発見、研究
影響を; 受けた人物	藤田恒夫; 山村研一; ダイアン・マティス; ジョーゼフ・ゴールドスタイン; マイケル・ブラウン
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宮﨑徹（みやざきとおる、1962年 3月 - ）は、日本の内科医、医学者、免疫学者。元・東京大学大学院医学系研究科・医学部教授。一般社団法人AIM医学研究所代表。

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 '''宮﨑 徹'''（みやざき とおる、[[1962年]][[3月]] - ）は、[[日本]]の[[内科学|内科医]]、[[医学|医学者]]、[[免疫学|免疫学者]]。元・[[東京大学大学院医学系研究科・医学部]]教授。[[一般社団法人]]AIM医学研究所代表。
-== 来歴 ==
-年、[[長崎県]][[島原市]]生まれ<ref>{{Cite web2 |url=https://bookpub.jiji.com/author/a249734.html |title=宮崎　徹 |work=[[時事通信出版局]] |df=ja |access-date=2023-08-04}}</ref><ref name="nippon">{{Cite web2 |author=板倉君枝 |url=https://www.nippon.com/ja/japan-topics/e00190/ |title=宮崎徹『猫が30歳まで生きる日』：腎臓病からアルツハイマーまで体内の「ゴミ掃除」で「治せない」病気を治す |work=nippon.com |df=ja |date=2021-10-21 |access-date=2022-12-23}}</ref><ref name="rikelab">{{Cite web2 |url=https://www.rikelab.jp/post/3267.html |title=ネコの腎臓病薬開発に挑む宮崎博士の創薬戦略。ヒトへの展開に期待 |work=[[パーソルテンプスタッフ|リケラボ]] |df=ja |date=2022-10-21 |access-date=2022-12-23}}</ref>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|p=38}}。実家は[[宮崎温仙堂商店]]<ref name="rikelab"/><ref name="m3">{{Cite web2 |author=賀来比呂美 |url=https://www.m3.com/news/open/iryoishin/983851 |title=親の勧めで東大理3に進学するも「指揮者になりたい！」‐宮崎徹・東京大学大学院医学系研究科教授に聞く◆Vol.2 |work=[[エムスリー|m3.com]] |url-access=registration |df=ja |date=2021-11-27 |access-date=2023-08-04}}</ref>。
-[[鹿児島県]]の[[ラ・サール中学校・高等学校|ラ・サール高等学校]]を卒業後、[[東京大学理科三類]]に入学<ref name="m3"/>。実家が薬問屋で自身は長男ということもあり、元々は医師を目指していたわけではなく、家業を継ぐものと考えていた{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=39-40}}。そのため、[[東京大学大学院薬学系研究科・薬学部|薬学部]]を目指して[[東京大学理科二類]]の受験を志望していたが、3年次の秋に父親から「理科三類を受けて医学部に進め」と突然言われ、理由を尋ねても答えてもらえなかったという。頑として譲らなかった父親に宮﨑が折れる形で出願先を変え、三類に合格した<ref name="rikelab"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=39-40}}。医師になりたいとは思っていなかったため、医学部の授業は宮﨑にとって面白いものではなく、出席しないことも多かった。一方で趣味の音楽に熱を注ぎ、[[指揮者]]に憧れ[[小澤征爾]]に直接電話をして弟子入りを願ったこともあった{{Efn|個人情報保護の概念がほとんどなかった時代であり、音楽好きの一大学生が世界的な著名人に直談判できてしまった。結局は弟子の弟子を紹介された。}}<ref name="rikelab"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=40-41}}。3年次の夏休みの1か月間、[[新潟大学]]の[[藤田恒夫 (解剖学者)|藤田恒夫]]のもとで研修を受けたことで基礎医学に興味を持ち、しかし東大に戻ると臨床実習が始まり、臨床医学へと気持ちが傾いた{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=42-44}}。
-年に[[東京大学大学院医学系研究科・医学部|東京大学医学部医学科]]を卒業<ref name="m3"/>。[[東京大学医学部附属病院]]の内科、[[公立昭和病院]]の内科および救命救急科で研修医として働き{{Efn|当時の東京大学では、1年目は東大病院に勤務するが2年目は外部の研修先を自身で選択することができた。}}、[[腎臓学|腎臓病]]や[[自己免疫疾患]]など「治せない病気」の多さに直面した{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=28-35}}。その経験から一度臨床の場を離れ、[[免疫学]]の基礎研究に取り組もうと、[[遺伝子工学|遺伝子改変技術]]において先進的な存在であった[[熊本大学]]の山村研一のもとで[[1型糖尿病|自己免疫性糖尿病]]の研究に励んだ<ref name="rikelab"/>。この研究の成果が集まったと判断した山村から[[論文]]の作成を指示され、山村研究室で多くの研究者が引き継いできた成果を論文としてまとめる筆頭著者として初の論文を執筆した{{Efn|一般的には筆頭著者は教授が務め、大学院1年生が担当することは異例である。自身が研究室を持ち学生を指導する立場となってからも、この山村の手法を踏襲した。}}。1990年、宮﨑が初めて執筆したこの論文は『[[ネイチャー]]』に掲載された<ref>{{Cite journal2 |author1=宮﨑徹 |author2=Masashi Uno |author3=Masahiro Uehira |author4=Hitoshi Kikutani |author5=Tadamitsu Kishimoto |author6=Masao Kimoto |author7=Hirofumi Nishimoto |author8=Junichi Miyazaki |author9=山村研一 |title=Direct evidence for the contribution of the unique I-A<sup>NOD</sup> to the development of insulitis in non-obese diabetic mice |journal=[[ネイチャー]] |language=en |volume=345 |df=ja |date=1990-06-21 |doi=10.1038/345722a0}}</ref>。その後も研究を続け、『[[米国科学アカデミー紀要]]（PNAS）』にも論文を発表し、より本格的な基礎研究のため海外への留学を志すようになった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=48-59}}。
-山村の推薦もあり、1992年7月から[[フランス]]・[[ストラスブール]]の{{仮リンク|ルイ・パスツール大学|fr|Université Strasbourg-I}}のダイアン・マティスのもと、[[博士研究員]]（ポスドク）として留学。事前に留学生として受け入れてほしい旨の手紙を送っていたが、マティスはネイチャーに掲載された論文を読んで宮﨑の名を知っており、「''Yes, I know you. Come! Diane''」とだけ書かれた了承の返事がすぐに届いた{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=60-64}}。マティスから与えられた研究テーマは、免疫で重要なはたらきを担う[[T細胞]]が成熟する過程でどのように選別されていくのかというものであった。これをテーマに3年間研究し、生体は{{仮リンク|HLA-DM|en|HLA-DM}}という分子のはたらきにより、役に立つT細胞だけを効率よく選別していることを究明した。免疫学において重要なテーマであったため競争も激しかったが、1996年の春に『[[セル (雑誌)|セル]]』と『[[サイエンス]]』に筆頭著者として論文を発表<ref>{{Cite journal2 |author1=宮﨑徹 |author2=Paula Wolf |author3=Sylvie Tourne |author4=Caroline Waltzinger |author5=Andrée Dierich |author6=Nicolas Barois |author7=Hidde Ploegh |author8=Christophe Benoist |author9=ダイアン・マティス |title=Mice Lacking H2-M Complexes, Enigmatic Elements of the MHC Class II Peptide-Loading Pathway |journal=[[セル (雑誌)|セル]] |language=en |volume=84 |issue=4 |df=ja |date=1996-02-23 |doi=10.1016/S0092-8674(00)81029-6}}</ref><ref>{{Cite journal2 |author1=宮﨑徹 |author2=Andrée Dierich |author3=Christophe Benoist |author4=ダイアン・マティス |title=Independent Modes of Natural Killing Distinguished in Mice Lacking Lag3 |journal=[[サイエンス]] |language=en |volume=272 |issue=5260 |df=ja |date=1996-04-19 |doi=10.1126/science.272.5260.405}}</ref>。当時の科学界では『ネイチャー』『PNAS』『セル』『サイエンス』の4大ジャーナルに筆頭著者として論文が掲載されることが「グランドスラム」とされており、宮﨑はこれを達成した{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=60-64}}。
-年の秋からは[[スイス]]の{{仮リンク|バーゼル免疫学研究所|en|Basel Institute for Immunology}}に主任研究員として招かれ、免疫学の研究に従事<ref name="rikelab"/><ref name="tokyo_u20181009">{{Cite web2 |author=小竹朝子 |url=https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00002.html |title=腎臓の働きを改善する遺伝子「AIM」でネコの寿命が2倍に!? |work=[[東京大学]] |df=ja |date=2018-10-09 |access-date=2022-12-23}}</ref><ref name="serai">{{Cite web2 |author=柿川鮎子 |url=https://serai.jp/living/1092480 |title=ネコを腎臓病から救う創薬を研究する宮崎徹氏が考える、新しい医療を実現するAIMの可能性 |work=サライ.jp |df=ja |date=2022-10-13 |access-date=2022-12-23}}</ref>。この研究所は、[[バーゼル]]に本社を置く製薬会社[[エフ・ホフマン・ラ・ロシュ|ロシュ]]が100%出資していたが、運営は完全に独立しており、30代から40代の免疫学者を40名ほど集めてそれぞれに研究室を持たせ、研究費は全額を研究所が負担し、研究対象も免疫学に関することであれば何をしてもよいという非常に恵まれた環境であった。1987年に[[ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した[[利根川進]]がかつて在籍しており、宮﨑に与えられた研究室は利根川が使用していた部屋で、利根川が使っていた実験道具なども残されていた{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=66-68}}。ここで宮﨑が最初に取り組んだのは、HLA-DMと似た分子を探し、それがT細胞の活性化などに関わっているかを調べることであった。あらゆる[[遺伝子]]の[[塩基配列]]情報が登録されたデータベースなど存在していない時代であり、特定の分子を見つけるには地道な作業を続けるしかなかった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=68-75}}。半年ほどこの作業を続けて4つの分子を見つけたが、そのうち3つは塩基配列がHLA-DMに似た既知の分子であった。残りのひとつはそれまで発見されていなかったものであったが、HLA-DMとは明らかに異なるものであり、これを調べてみると、血液中に多く存在するがHLA-DMとは無関係な[[タンパク質]]で、[[マクロファージ]]を長生きさせるらしいということがわかり、'''[[#AIM|AIM]]'''と名づけたが<ref name="tokyo_u20181009"/><ref name="sankei20220430">{{Cite web2 |url=https://www.sankei.com/article/20220430-WCK4426RMVOGNJJFEEDJJM3MQM/ |title=ネコの腎臓病薬、今年中にも治験開始　開発の東大教授は独立 |work=[[産経新聞]] |df=ja |date=2022-04-30 |access-date=2022-12-23}}</ref><ref name="felissimo">{{Cite web2 |author=[[浅野真澄|あさのますみ]] |url=https://www.nekobu.com/blog/2021/10/5-7.html |title=第5回【猫のまもりびと特別編】宮崎徹先生にインタビュー |work=[[フェリシモ|フェリシモ猫部]] |df=ja |date=2021-10-02 |access-date=2022-12-23}}</ref>、AIMを持たない[[ノックアウトマウス]]を作成して様々な実験を行ったものの、マクロファージが死ににくくなる以外のことはわからず、そのはたらきについては不明なままであった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=68-75}}。1999年にロシュの会長であった[[パウル・ザッハー]]が死去すると経営陣の方針が変わり、同社にとって不採算事業であったバーゼル免疫学研究所は2000年に閉鎖されることが決定した。このことはザッハーが病床にあった1998年末頃から宮﨑らすべての研究員に伝えられており、新たな研究拠点を探す必要があった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=76-78}}。
-この時点で日本への帰国は考えておらず、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で新たな拠点を探したところ、[[テキサス大学システム|テキサス大学]]から好条件のオファーがあり、2000年6月に渡米し免疫学准教授となった<ref name="nippon"/><ref name="serai"/>。スタートアップのため大学から5,000万円ほどの研究費が与えられた他、1年目に{{仮リンク|若年性糖尿病研究財団|en|JDRF}}や{{仮リンク|アメリカ肝臓財団|en|American Liver Foundation}}など、2年目には[[アメリカ国立衛生研究所]]からも研究費を得られ、体制を整えることができた<ref name="rikelab"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=78-79}}。しかし確たる成果は得られないが、何かが宮﨑の中で引っかかるという状況が続き、1999年の論文発表以降AIMに関心を持ち研究を始めた者も多数おり、AIMを持たないノックアウトマウスの提供や情報交換も行っていたが、成果が得られない状況は同じで、そのうち宮﨑以外の研究者たちはAIMから離れていった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=79-86}}。あるとき、[[マイクロアレイ]]による[[動脈硬化症]]に関する実験結果についての論文を読んでいたところ、実験で使われた遺伝子の一覧の中にAIMがあったことに目が留まった。また、同じくテキサス大学で教鞭を執っていた[[マイケル・ブラウン (遺伝学者)|マイケル・ブラウン]]や[[ジョーゼフ・ゴールドスタイン]]との立ち話からもきっかけを得て<ref name="rikelab"/><ref name="tokyo_u20181009"/>、動脈硬化を起こすよう遺伝子改変されたマウスを大学から入手し、[[東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部|東大農学部]]から大学院生として宮﨑のもとに来ていた新井郷子（現・AIM医学研究所副所長）とともに様々な実験を行い、マクロファージを長生きさせるAIMの性質が動脈硬化においてはむしろ悪化させてしまうことが2004年にわかり、翌年に新井を筆頭著者として『{{仮リンク|セル・メタボリズム|en|Cell Metabolism}}』に論文を発表した<ref name="cm2005">{{Cite journal2 |author1=新井郷子 |author2=John M. Shelton |author3=Mingyi Chen |author4=Michelle N. Bradley |author5=Antonio Castrillo |author6=Angie L. Bookout |author7=Puiying A. Mak |author8=Peter A. Edwards |author9=David J. Mangelsdorf |author10=Peter Tontonoz |author11=宮﨑徹 |title=A role for the apoptosis inhibitory factor AIM/Spα/Api6 in atherosclerosis development |journal=セル・メタボリズム |language=en |volume=1 |issue=3 |df=ja |year=2005 |doi=10.1016/j.cmet.2005.02.002}}</ref>。実験に用いるマウスは[[無菌|無菌状態]]で育てられるため、基本的には健康体であり、人為的に不健康にしたマウスとは大きく異なり、また実験に使うまでに何らかの病気になってしまう個体もいる。この生体が健康か不健康かの差が、長年感じていた違和感の原因であったと気がついた<ref name="rikelab"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=79-86}}。
-年6月、東京大学の教授に就任。テキサス大学での6年間を振り返り、論文はいくつか発表していたものの、AIMに関するものは最後の1本のみであり、しかし研究費を得られていたのは最後まで成果の出ていなかったAIMに対してであったことなどから、「もし日本で研究していたら、間違いなく研究費は得られず、AIMの研究から撤退せざるを得なくなっていただろう」と述懐しており、論文という成果が出た後に研究費がもらえる日本の体質を「重要な研究を芽が出ないうちに潰してしまっているかもしれない」と危惧している<ref name="nippon"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=86-87}}。また、何かの専門家として認知されると仕事がしやすくなる一方で、自然とその専門分野の観点からしかものが見えなくなり、免疫学の知見や常識に捉われていた結果、AIMのはたらきがわからなかった「専門性の弊害」も強く感じた<ref name="nippon"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=87-89}}。古巣への復帰は当初から望んでいたわけではなく、2004年に[[査証|ビザ]]の更新のため一時帰国していた際に、東大病院内科時代の先輩である[[永井良三]]のもとへ挨拶に行くと、「今度、医学部に疾患生命工学センターという新たな組織を立ち上げるので、そこの教授にならないか」と誘いがあり、当時はテキサス大学の環境が恵まれていたことや、自分にその立場はまだ早いという思いから一度は断ったものの、永井の強い勧めもあり面接を受けることとなり、後に「決まった」と連絡を受けてしまった。テキサス大学での研究が途中であったため、正式な異動は2006年まで待ってもらうこととなった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=90-92}}。復帰に際し「15年ぶりに日本に戻るのだから、研究室の立ち上げを記念して何かイベントをやろう」と考え、宮﨑が好んで聴いていた[[ピアニスト]]であり、ヨーロッパ時代に何度もコンサートに足を運んでいた[[クリスティアン・ツィマーマン|クリスティアン・ツィメルマン]]<!-- 著書中の表記 -->を招こうと模索し、帰国の前年からツィメルマンの日本でのマネジメント会社と連絡を取り準備を整え、[[安田講堂]]でコンサートとディスカッションが行われた<ref name="nippon"/><ref>{{Cite web2 |url=https://www.cdbim.m.u-tokyo.ac.jp/news/index.html |title=東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター分子病態医科学部門発足記念行事 “Music and Science” Krystian Zimerman氏（ピアニスト）を迎えての演奏会と討論会 |work=[[東京大学大学院医学系研究科・医学部|東京大学大学院医学系研究科・疾患生命工学センター]] |df=ja |date=2006-05-15 |access-date=2023-11-28 |archive-url=https://web.archive.org/web/20060525023735/https://www.cdbim.m.u-tokyo.ac.jp/news/index.html |archive-date=2006-05-25}}</ref><ref>{{Cite journal2 |author1=宮﨑徹 |author2=[[戸矢理衣奈]] |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/seisankenkyu/73/4/73_227/_pdf |title=フォーラム「音楽の可能性」を振り返る 「音楽と科学：絶対的な真理の探究とその表現」 |format=PDF |journal=生産研究 |volume=73 |issue=4 |pages=227-231 |df=ja |date=2021-08-01 |access-date=2023-11-28 |doi=10.11188/seisankenkyu.73.227 |crid=1390852327910345856 |issn=0037105X }}</ref>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=93-98}}。
-ルイ・パスツール大学に留学して以降、海外で15年に渡る研究生活を送ったが、かつて研修医時代に直面した「治せない病気」に対する状況は変わっていないか、[[アルツハイマー病]]などもそこに加わってきており、患者の数はむしろ増えていた。これらに何か共通点があって患者が増えているのではないかと考えを巡らせていたところ、腎臓病、自己免疫疾患、アルツハイマー病などの病気は外部から[[病原体]]が侵入して起こるものではなく、体内で発生したゴミが蓄積した結果として発症するということに気がついた{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=100-103}}。2006年に日本に戻ってからほどなく、当時[[CSK (企業)|CSK]]の副社長であった[[有賀貞一]]と話をする機会があり、宮﨑の考えに興味を持った有賀から「先生がおっしゃるゴミなんて太古から発生していたはずでしょう。ゴミが溜まって病気になるのなら、科学的な治療法などなかった時代を生存できなかったでしょう。だから、体には元々ゴミを掃除する力があるんじゃないですか?」とあり、これはもっともなことで、現代ではゴミが溜まるスピードが掃除のスピードを上回っているだけで、体内のゴミ掃除の能力を強化することができれば「治せない病気」は治せるはず、と考えた。これも宮﨑がかつて経験した「専門性の弊害」であり、医学の専門家ではない経済人の言葉から「元々備わっているゴミ掃除の機能を明らかにすればよい」と考え直した{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=108-113}}。その後、テキサス大学での動脈硬化に関する研究の経験から、AIMは免疫ではなく[[脂質]]や代謝系の病気と関連があるのではと考え、[[肥満]]との関連を調べ始めた。AIMを持たないノックアウトマウスを用いた実験で、AIMが抗肥満作用を持つことが実証できたが、その理由まではわからなかった。2008年、研究室にいた学生がAIMとは別のテーマで[[脂肪細胞]]を培養しており、それを目にして何気なく「脂肪細胞にAIMを振りかけてみて」と頼むと、数日後にその学生が「脂肪細胞がドロドロに溶けています」と報告に来た。これが転機となり半年ほど実験を重ね、脂肪細胞に溜まった余分な脂肪を取り除くというAIMの新たなはたらきを明らかにし<ref>{{Cite web |url=https://www.tbs.co.jp/yumetobi/backnumber/20101128.html |title=2010年11月28日の放送｜夢の扉 |work=[[TBSテレビ]] |df=ja |date=2010-11-28 |access-date=2023-11-29}}</ref>、2010年に『セル・メタボリズム』に論文が掲載された<ref>{{Cite journal2 |author1=Jun Kurokawa |author2=新井郷子 |author3=Katsuhiko Nakashima |author4=Hiromichi Nagano |author5=Akemi Nishijima |author6=Keishi Miyata |author7=Rui Ose |author8=Mayumi Mori |author9=Naoto Kubota |author10=Takashi Kadowaki |author11=Yuichi Oike |author12=Hisashi Koga |author13=Maria Febbraio |author14=Toshihiko Iwanaga |author15=宮﨑徹 |title=Macrophage-Derived AIM Is Endocytosed into Adipocytes and Decreases Lipid Droplets via Inhibition of Fatty Acid Synthase Activity |journal=セル・メタボリズム |language=en |volume=11 |issue=6 |df=ja |date=2010-06-09 |doi=10.1016/j.cmet.2010.04.013}}</ref>。2013年には、AIMと肥満に関する別の論文を『[[Cell Reports]]』で発表した<ref>{{Cite journal2 |author1=新井郷子 |author2=Natsumi Maehara |author3=Yoshihiro Iwamura |author4=Shin-ichiro Honda |author5=Katsuhiko Nakashima |author6=Toshihiro Kai |author7=Masato Ogishi |author8=Kumiko Morita |author9=Jun Kurokawa |author10=Mayumi Mori |author11=Yuji Motoi |author12=Kensuke Miyake |author13=Nobuyuki Matsuhashi |author14=山村研一 |author15=Osamu Ohara |author16=Akira Shibuya |author17=Edward K. Wakeland |author18=Quan-Zhen Li |author19=宮﨑徹 |title=Obesity-Associated Autoantibody Production Requires AIM to Retain the Immunoglobulin M Immune Complex on Follicular Dendritic Cells |journal=[[Cell Reports]] |language=en |volume=3 |issue=4 |df=ja |date=2013-04-25 |doi=10.1016/j.celrep.2013.03.006}}</ref>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=115-117}}。さらに研究を続け、[[脂肪肝]]が悪化して起こる[[肝癌]]をAIMで抑制できることも明らかにした<ref name="serai"/><ref>{{Cite journal2 |author1=Natsumi Maehara |author2=新井郷子 |author3=Mayumi Mori |author4=Yoshihiro Iwamura |author5=Jun Kurokawa |author6=Toshihiro Kai |author7=Shunsuke Kusunoki |author8=Kaori Taniguchi |author9=Kazutaka Ikeda |author10=Osamu Ohara |author11=山村研一 |author12=宮﨑徹 |title=Circulating AIM Prevents Hepatocellular Carcinoma through Complement Activation |journal=Cell Reports |language=en |volume=9 |issue=1 |df=ja |date=2014-10-09 |doi=10.1016/j.celrep.2014.08.058}}</ref>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=118-119}}。また、[[香川大学]]医学部で講演を行った際に、[[腎臓]]の研究者と知り合ったことがきっかけで腎臓病の研究にも取り組み、通常のマウスとAIMを持たないノックアウトマウスを用いた研究から、腎臓病に対しても効果があることを確認し『[[ネイチャー メディシン]]』や『[[Scientific Reports]]』に論文を発表<ref>{{Cite journal2 |author1=新井郷子 |author2=Kento Kitada |author3=Tomoko Yamazaki |author4=Ryosuke Takai |author5=Xizhong Zhang |author6=Yoji Tsugawa |author7=Ryoichi Sugisawa |author8=Ayaka Matsumoto |author9=Mayumi Mori |author10=Yasunori Yoshihara |author11=Kent Doi |author12=Natsumi Maehara |author13=Shunsuke Kusunoki |author14=Akiko Takahata |author15=Eisei Noiri |author16=Yusuke Suzuki |author17=Naoki Yahagi |author18=Akira Nishiyama |author19=Lakshman Gunaratnam |author20=Tomoko Takano |author21=宮﨑徹 |title=Apoptosis inhibitor of macrophage protein enhances intraluminal debris clearance and ameliorates acute kidney injury in mice |journal=[[ネイチャー メディシン]] |language=en |volume=22 |df=ja |date=2016-01-04 |doi=10.1038/nm.4012}}</ref><ref name="sr20170725">{{Cite journal2 |author1=Takako Tomita |author2=新井郷子 |author3=Kento Kitada |author4=Masashi Mizuno |author5=Yasuhiro Suzuki |author6=Fumiko Sakata |author7=Daisuke Nakano |author8=Emiri Hiramoto |author9=Yoshifumi Takei |author10=Shoichi Maruyama |author11=Akira Nishiyama |author12=Seiichi Matsuo |author13=宮﨑徹 |author14=Yasuhiko Ito |title=Apoptosis inhibitor of macrophage ameliorates fungus-induced peritoneal injury model in mice |journal=[[Scientific Reports]] |language=en |volume=7 |df=ja |date=2017-07-25 |doi=10.1038/s41598-017-06824-6}}</ref>。こうして、様々な病気に対してAIMが有効であることを明らかにし、多くの「治せない病気」の治療につながり得ることを示していった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=118-135}}。
-あるとき、ヒトやマウス以外のAIMはどうなっているのかと疑問を持ったことがあり、新井の同期であった[[獣医師]]から[[イヌ]]や[[ネコ]]などいくつかの動物の血液を譲り受け、[[ウェスタンブロッティング|ウェスタン・ブロット法]]で調べてみたが、他の動物ではヒトやマウスのように反応がある中で、ネコだけがまったく反応を示さなかったため、「ネコにAIMはないのか」と認識していた。2013年4月にAIMについての講演を行った際にそのことに軽く触れ、講演後に多くの参加者から質問を受けていると、その中にいた獣医師の[[小林元郎]]は「ネコにAIMはない」というコメントに驚いており、「ネコは腎臓病がとても多く、ほとんどのネコは腎臓病でなくなるのですが、その理由がわからず、治療法もないのです」という話になり、ヒトの腎臓病を研究していた宮﨑と意気投合し、協力することとなった<ref name="rikelab"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=153-158}}。ちょうどこのタイミングで[[獣医学部]]を卒業した大学院生が研究室に加わったこともあり、ネコに関する研究を進めると、ネコにはAIMがないのではなく、むしろヒトやマウスより高濃度で持っているが、[[免疫グロブリンM|IgM]]五量体から離れにくいことがわかった。さらに遺伝子組み換えにより「ネコ型のAIMを持つマウス」を作って腎臓病にさせる実験を行うと、AIMはIgMから離れないこと、このマウスに正常なマウスのAIMを注射すると症状が改善することがわかり、2016年に『Scientific Reports』で発表<ref>{{Cite journal2 |author1=Ryoichi Sugisawa |author2=Emiri Hiramoto |author3=Shigeru Matsuoka |author4=Satomi Iwai |author5=Ryosuke Takai |author6=Tomoko Yamazaki |author7=Nobuko Mori |author8=Yuki Okada |author9=Naoki Takeda |author10=山村研一 |author11=Toshiro Arai |author12=新井郷子 |author13=宮﨑徹 |title=Impact of feline AIM on the susceptibility of cats to renal disease |journal=Scientific Reports |language=en |volume=6 |df=ja |date=2016-10-12 |doi=10.1038/srep35251}}</ref>。後に、これはイエネコに限らずほとんどの[[ネコ科]]の動物に共通していることもわかった<ref name="tokyo_u20181009"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=158-165}}。またこの間、小林から紹介された獣医学界の各所と協力により、実際の腎臓病のネコの個体にAIMを投与する実験も始めており{{Efn|オーナーの了承を得て行う学術的なもので、正式な治験ではない。}}、2016年1月、末期の腎不全で余命1週間ほどと診断されていた15歳のネコにAIMを注射したところ、症状が劇的に改善したと入院先の獣医師から連絡を受けた<ref name="yomiuri20230808">{{Cite web2 |author=宮沢輝夫 |url=https://www.yomiuri.co.jp/life/nyancology/column/20230803-OYT8T50111/ |title=［猫学］ＡＩＭのメカニズムはオーケストラの演奏に似ている（前編） |work=[[読売新聞]] |df=ja |date=2023-08-08 |access-date=2023-11-30}}</ref>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=16-19}}。腎臓はほとんど死んでいる状態であり、死んだ細胞が生き返ることはなく、腎臓が機能しなくなったため血液中に溜まったゴミ（尿毒素）がAIMの投与で掃除された結果であった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=168-174}}。その後1か月から3か月の間隔でAIMの投与を続け、このネコは最初の投与から1年以上生きたが、他の個体にも同様の投与実験を行っていたこともあり、研究室で精製できるAIMの量には労力的にも費用的にも限界があった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=168-174}}。
-AIMでネコ用の薬を作りたいという宮﨑らの思いは共通していたが、[[化学合成]]で作れる一般的な薬とは異なり、タンパク質製剤であるAIMは製剤工程が複雑でコストも非常に高い。複数の製薬会社に話を持ちかけたが、引き受けてはもらえなかった。自ら起業することも難しく、投資会社と組んで出資者を募ろうともしたが、双方が納得するには至らなかった{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=188-192}}。しばらくの後、企業の創業者らが各界から講師を招いている勉強会でAIMの講演を行う機会があり、これに参加していたある企業の会長が特に強く関心を持ち、幾度か会って話を重ね、その企業がすべての資金を出資し、ネコ用の薬を作るためのベンチャー企業を立ち上げることが決まった<ref name="tokyo_u20181009"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=193-198}}。このベンチャー企業を中心としてネコ用の薬の開発を進め、2020年初旬には[[治験]]の準備段階まで辿り着いていたが、同じタイミングで[[コロナ禍]]に見舞われ、6月にはスポンサー企業が支援を続けられなくなるなど資金不足に陥り、ネコ用の薬の研究開発は難航。2021年7月に[[時事通信社]]がその状況を報じると、宮﨑を支援しようという愛猫家たちの動きが[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]で拡散され、東京大学が設置した基金にはわずか数週間で2億円近く<ref name="nippon"/><ref name="felissimo"/>、2022年1月の受付終了時には2億8,000万円を超える寄付があった<ref>{{Cite web2 |url=https://utf.u-tokyo.ac.jp/newslist/newsdetail/view_express_entity/146 |title=宮崎徹教授の猫の腎臓病治療薬研究への寄付受付終了について |work=東京大学基金 |df=ja |date=2022-01-11 |access-date=2022-12-23}}</ref>。資金面の目途が立ったこと、また「東大は恵まれた環境で、基礎研究は非常にやりやすいが、創薬という結果を早く出すのは難しい」という思いから東京大学を退職し、同年4月に一般社団法人AIM医学研究所を設立。東京大学の研究室の准教授や研究員ら20人全員がそのまま移籍する形となった<ref name="sankei20220430"/>。
-年にはネコ用治療薬の効果の確認が完了し、8月に治験や承認に向けた会社を設立<ref name="jbp20230928">{{Cite web2 |author=坂元希美 |url=https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/77196 |title=すべての愛猫家が待望、あの「画期的ネコの腎臓病治療薬」開発の現在 ネコの宿命である腎不全を克服できると期待される新薬、いよいよ治験に |work=[[日本ビジネスプレス|JBpress]] |url-access=subscription |df=ja |date=2023-09-28 |access-date=2023-12-02}}</ref>。またヒトの[[関節リウマチ]]の症状を改善させる効果も明らかにし、11月に『{{仮リンク|ジャーナル・オブ・オートイミュニティ|en|Journal of Autoimmunity}}』で発表した<ref>{{Cite web2 |url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2023113000778 |title=ＡＩＭタンパク質が関節リウマチに効果　既存薬剤が効きにくい症状改善に期待―宮崎徹氏の研究グループ |work=[[時事ドットコム]] |df=ja |date=2023-11-30 |access-date=2023-12-02}}</ref><ref>{{Cite journal2 |author1=Keisuke Yasuda |author2=Shieri Shimodan |author3=Natsumi Maehara |author4=Aika Hirota |author5=Ruka Iijima |author6=Akemi Nishijima |author7=Haruka Mori |author8=Ran Toyama |author9=Atsumi Ito |author10=Yuri Yoshikawa |author11=新井郷子 |author12=宮﨑徹 |title=AIM/CD5L ameliorates autoimmune arthritis by promoting removal of inflammatory DAMPs at the lesions |journal=ジャーナル・オブ・オートイミュニティ |language=en |df=ja |date=2023-11-25 |doi=10.1016/j.jaut.2023.103149}}</ref>。
-== AIM ==
-{{節スタブ|1=AIMについての科学的な解説}}
-スイスのバーゼル免疫学研究所時代に宮﨑が偶然に発見。マクロファージを長生きさせるらしいということから'''AIM'''（''Apoptosis Inhibitor of Macrophage''）と命名し、1999年に『{{仮リンク|ジャーナル・オブ・イクスペリメンタル・メディスン|en|Journal of Experimental Medicine}}』で論文を発表した<ref name="nippon"/><ref name="rikelab"/><ref>{{Cite journal2 |author1=宮﨑徹 |author2=Yumiko Hirokami |author3=Nobuyuki Matsuhashi |author4=Hisakazu Takatsuka |author5=Makoto Naito |title=Increased Susceptibility of  Thymocytes to Apoptosis in Mice Lacking AIM, a Novel Murine Macrophage-derived Soluble Factor Belonging to the Scavenger Receptor Cysteine-rich Domain Superfamily |journal=ジャーナル・オブ・イクスペリメンタル・メディスン |language=en |volume=189 |issue=2 |df=ja |date=1999-01-18 |doi=10.1084/jem.189.2.413}}</ref>。
-[[アミノ酸]]が団子状に3つ連なったような構造をしており、血液中に多く存在する。これが体内でどのように機能しているのか突き止めたのは、テキサス大学時代、学内でたまたま会ったジョーゼフ・ゴールドスタインやマイケル・ブラウンとの会話からきっかけを得た<ref name="rikelab"/><ref name="tokyo_u20181009"/>。ヒトでは男性よりも女性の方が血中濃度が高く、加齢によって減少することもわかっている<ref>{{Cite journal2 |author1=Tomoko Yamazaki |author2=Mayumi Mori |author3=新井郷子 |author4=Ryosuke Tateishi |author5=Masanori Abe |author6=Mihoko Ban |author7=Akemi Nishijima |author8=Maki Maeda |author9=Takeharu Asano |author10=Toshihiro Kai |author11=Kiyohiro Izumino |author12=Jun Takahashi |author13=Kayo Aoyama |author14=Sei Harada |author15=Toru Takebayashi |author16=Toshiaki Gunji |author17=Shin Ohnishi |author18=Shinji Seto |author19=Yukio Yoshida |author20=Yoichi Hiasa |author21=Kazuhiko Koike |author22=山村研一 |author23=Ken-ichiro Inoue |author24=宮﨑徹 |title=Circulating AIM as an Indicator of Liver Damage and Hepatocellular Carcinoma in Humans |journal=[[PLOS ONE]] |language=en |df=ja |date=2014-10-10 |doi=10.1371/journal.pone.0109123}}</ref>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=119-120}}。また、AIMを持つのは[[哺乳類]]のみである<ref>{{Cite book |和書 |author1=[[養老孟司]] |author2=宮﨑徹 |title=科学のカタチ |publisher=[[時事通信社]] |date=2022-08-30 |page=40 |isbn=978-4-7887-1850-0}}</ref>。
-様々な病気に対してAIMが効果を発揮するのは、根本的なメカニズムが共通しているためである。腎臓病であれば死んだ細胞、肝癌であれば癌細胞、肥満であれば余分な脂肪といったゴミが溜まってしまうのがその原因であるが、生体内にはそれらを食べてゴミ掃除の役目を果たす貪食細胞であるマクロファージが存在している。AIMはゴミに貼りつくことでゴミの存在をマクロファージに知らせ、マクロファージに食べさせてゴミの掃除を促す役目を担っている<ref name="nippon"/><ref name="tokyo_u20181009"/><ref name="yomiuri20230808"/>。AIMはゴミだけに貼りつくため、マクロファージが正常な細胞まで傷つけてしまうこともない{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=128-135}}。通常はIgM五量体と結合して存在しているが、ゴミを発見するとIgMから分離する。IgM五量体はサイズが大きいため[[糸球体]]濾過膜を越えて排泄されてしまうこともなく、分離すればAIM自体は小さなタンパク質であるため、自由に移動してゴミに貼りつくことができる。宮﨑はこれを[[航空母艦]]と[[艦上戦闘機]]に例えており、平時は待機しているが有事になると緊急発進して目標（ゴミ）に向かっていく。任務を果たすと自身もマクロファージに食べられるため帰投することはないが、戦闘機であるAIMは体内で作り続けられるため、すぐに補充される{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=136-147}}。また、IgM五量体は従来は五角形であると考えられていたが（免疫学の教科書にもそう記されていた）、実のところは六角形であり、空いているスペースにAIMが結合していた<ref>{{Cite web2 |url=https://www.jiji.com/jc/v8?id=20220922booknavi014 |title=養老孟司×宮崎徹　生命の不思議「ケムシとチョウは別の虫？」 |work=時事ドットコム |df=ja |date=2022-09-30 |access-date=2024-01-05}}</ref>。そしてAIMがIgM五量体との結合に使っている部分が、ゴミに貼りつく際にも使われる部分であった。これらは、2018年に『{{仮リンク|サイエンス・アドヴァンシズ|en|Science Advances}}』で発表された{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=136-147}}<ref>{{Cite journal2 |author1=Emiri Hiramoto |author2=Akihisa Tsutsumi |author3=Risa Suzuki |author4=Shigeru Matsuoka |author5=新井郷子 |author6=Masahide Kikkawa |author7=宮﨑徹 |title=The IgM pentamer is an asymmetric pentagon with an open groove that binds the AIM protein |journal=サイエンス・アドヴァンシズ |language=en |volume=4 |issue=10 |df=ja |date=2018-10-10 |doi=10.1126/sciadv.aau1199}}</ref>。
-先述の動脈硬化は[[コレステロール#悪玉コレステロールと善玉コレステロール|LDLコレステロール]]が血管壁に沈着することで発症するが、LDLコレステロールを食べて泡沫化したマクロファージをAIMが長生きさせることでLDLコレステロールを溜め込んでしまい、動脈硬化を悪化させる原因となっていた<ref name="cm2005"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=81-85}}。
-マウスやネコで実験を重ねた限りでは、AIM自体の副作用は確認されていない。人工的に合成した物質ではなく生体内に元々存在しているタンパク質であることと、ゴミ掃除に使われなかった分は短期間で尿として排泄されるため、体内に蓄積されないことがその理由と考えられる{{Efn|唯一、ネコの治療にはマウスのAIMを用いるため、種の違いからマウス型のAIMに対する抗体はできてしまう。}}{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=214-216}}。2018年5月には、[[ドリアン (果実)|ドリアン]]に含まれる物質にAIMを活性化させIgMから外す作用があることがわかり、11月にその成分を同定した<ref name="aim20220330">{{Cite web2 |author=宮﨑徹 |url=https://iamaim.jp/2022/03/30/aim%E6%B4%BB%E6%80%A7%E5%8C%96%E6%88%90%E5%88%86%E9%85%8D%E5%90%88%E3%81%AE%E3%83%9A%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%89%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/ |title=AIM活性化成分配合のペットフードについて |work=AIM医学研究所 |df=ja |date=2022-03-30 |access-date=2023-11-30}}</ref>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=231-232}}。
-ネコ科の動物もAIMを持っているが、先天的にうまく機能していない状態である<ref name="rikelab"/><ref name="serai"/><ref name="sankei20220430"/><ref name="felissimo"/>。IgMと結合する部分のアミノ酸配列が他の動物とは大きく異なっており、結びつきが強すぎて分離することができず、その結果、ゴミが溜まっていって病気を引き起こしてしまう<ref name="felissimo"/><ref name="sr20170725"/>{{Sfn|猫が30歳まで生きる日|pp=158-165}}。
-ネコの腎臓病治療薬の承認を2026年に目指しており<ref name="yomiuri20230808"/>、その先には人間の腎臓病治療薬の開発や他の病気治療への応用も視野に入れており<ref name="rikelab"/><ref name="tokyo_u20181009"/><ref>{{Cite web2 |url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2022100701019 |title=ＡＩＭが腎臓結石の成長を抑制、体外への排出促進　人間とネコの結石再発防止薬の開発も　ＡＩＭ医研・宮崎徹所長インタビュー |work=時事ドットコム |df=ja |date=2022-10-10 |access-date=2022-12-23}}</ref>、人間の場合は腎臓病が進行した状態であっても[[人工透析]]を行う必要をなくすことを目標としている<ref name="nw20231114">{{Cite journal |和書 |author=大橋希 |title=猫の腎臓病を治す「夢の薬」はもうすぐ |journal=[[ニューズウィーク|ニューズウィーク日本版]] |volume=38 |issue=40 |pullisher=[[CCCメディアハウス]] |date=2023-11-07 |page=34 |id={{JAN|4910252521139}}}}</ref>。ネコ用の薬は当面は日本でのみ使えるようにしたいと述べており<ref name="nw20231114"/>、ドリアン由来のAIMを活性化させる成分を配合した[[キャットフード]]はすでに商品化が実現している<ref name="serai"/><ref name="jbp20230928"/><ref name="aim20220330"/><ref>{{Cite web2 |url=https://www.inaba-petfood.co.jp/aim/ |title=for AIM |work=[[いなば食品|いなばペットフード]] |df=ja |access-date=2022-12-23}}</ref>。
-== 著書 ==
-* 『猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見』（2021年8月、[[時事通信社]]）{{ISBN2|978-4788717558}}
-* 『科学のカタチ』（2022年8月、時事通信社、[[養老孟司]]との共著）{{ISBN2|978-4788718500}}
-== 脚注 ==
-=== 注釈 ===
-{{Notelist}}
-=== 出典 ===
-{{Reflist|2}}
-== 参考文献 ==
-* {{Cite book |和書 |author=宮﨑徹 |title=猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見 |publisher=[[時事通信社]] |date=2021-08-12 |isbn=978-4788717558 |ref={{SfnRef|猫が30歳まで生きる日}}}}
-== 関連項目 ==
-* [[黒川清]] - AIM医学研究所名誉所長
-* [[利根川進]] - かつて利根川が使用していたバーゼル免疫学研究所の研究室を後に宮﨑が使用した
 == 外部リンク ==

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