「ナイキミサイル」の版間の差分
表示
削除された内容 追加された内容
個別項目の充実に伴い曖昧さ回避ページへ変更。 |
|||
1行目: | 1行目: | ||
[[ファイル:Nike family 02.jpg|thumb|250px|ナイキ・ミサイル・ファミリー。左上から右下に向かって<br/>MIM-3 ナイキ・エイジャックス<br/>MIM-14 ナイキ・ハーキュリーズ<br/>LIM-49 ナイキ・ゼウス(スパルタン)]] |
[[ファイル:Nike family 02.jpg|thumb|250px|ナイキ・ミサイル・ファミリー。左上から右下に向かって<br/>MIM-3 ナイキ・エイジャックス<br/>MIM-14 ナイキ・ハーキュリーズ<br/>LIM-49 ナイキ・ゼウス(スパルタン)]] |
||
'''ナイキミサイル'''とは、[[アメリカ合衆国 |
'''ナイキミサイル'''とは、[[アメリカ合衆国]]製の[[地対空ミサイル]]である。名前の由来は[[ギリシャ神話]]の勝利の女神「[[ニケ]](Nike)」より。“ナイキ”は英語読みである。 |
||
名前の由来は[[ギリシャ神話]]の勝利の女神「[[ニケ]](Nike)」より。“ナイキ”は英語読みである。 |
|||
== 概要 == |
|||
「ナイキ」と呼ばれる[[ミサイル]]は、[[1953年]]から[[アメリカ合衆国]]の[[ウェスタン・エレクトリック]]・カンパニーなどで開発された高高度迎撃用地対空ミサイルである。'''MIM-3 ナイキ・エイジャックス''' (Nike Ajax) と、'''MIM-14 ナイキ・ハーキュリーズ''' (Nike Hercules) の2種類があり、[[アメリカ陸軍]]に配備された。高々度から飛来する[[ソビエト連邦]]の[[爆撃機]]に対する拠点防空を主目的とする2段式のミサイルであり、発射台から発射される。 |
|||
地上からの[[レーダー]]によって誘導される、セミ・アクティブ・レーダー・ホーミング方式である。 |
|||
=== MIM-3 Nike-Ajax === |
|||
[[ファイル:NikeAjax.jpg|thumb|250px|ナイキ エイジャックス<br/>[[ホワイトサンズ・ミサイル実験場|ホワイトサンズ・ミサイル実験場博物館]]の展示機]] |
|||
{{main|MIM-3 (ミサイル)}} |
|||
[[1953年]]末から[[1963年]]まで配備されていた初期型。旧称SAM-A-7。[[1945年]]の[[ベル研究所]]のレポートから開発が始まり、[[1951年]]には発射テストに成功している。 |
|||
高度20,000mへの到達は達成したが、射程が30マイルと短いという欠点があった。ブースターは、[[ロケットエンジンの推進剤#固体燃料ロケット|固体燃料]]だが、ミサイル本体は[[ロケットエンジンの推進剤#液体燃料ロケット|液体燃料]]を使用していた。弾頭は、先端・中間・末端の3カ所に炸薬が装備されていた。[[核弾頭]]装備型の計画もあったが、改良型のナイキ・ハーキュリーズが登場したため、計画のみで終了している。 |
|||
由来はギリシャ神話に登場する英雄、「[[大アイアス|アイアース]]」より。“エイジャックス(アジャックス)”は英語読みである。 |
|||
{{-}} |
|||
=== MIM-14 Nike-Hercules === |
|||
[[ファイル:NikeHercules.jpg|thumb|250px|ナイキ ハーキュリーズ<br/>[[ホワイトサンズ・ミサイル実験場|ホワイトサンズ・ミサイル実験場博物館]]の展示機]] |
|||
{{main|MIM-14 (ミサイル)}} |
|||
[[1953年]]より開発が開始され、[[1958年]]に完成した改良型。旧称SAM-A-25。1段目はナイキ・エイジャックスのブースターを4本を束ねた物で、大型化したものの、3倍近い射程延伸・到達高度の倍増・地上レーダーの改良により大幅な進歩をとげ、また、ブースター・ミサイル本体共に固体燃料となり安全性も増した。 |
|||
長射程を獲得したことにより、[[アメリカ空軍|空軍]]配備の[[ボマーク (ミサイル)|CIM-10A ボマーク]] (BOMARC) との任務重複が問題となったが、陸軍への配備が継続された。510kgの通常弾頭の他、[[W31 (核弾頭)|W31]]核弾頭3種(2kt(M-97)/20kt(M-22)/40kt(M-23))の使用が可能であった。このため日本では、「[[核ミサイル]]」として捉えられ、論議を呼んだ。 |
|||
[[1979年]]の[[フロリダ州|フロリダ]]を最後に、アメリカでの運用は終了したが、一部の国では配備が続けられている。しかし、老朽化は否めず、後継ミサイルの選定による引退の時期は迫っている。また、観測用[[ロケット]]として、一部が転用されている。 |
|||
由来はギリシャ神話に登場する英雄、「[[ヘラクレス]]」より。“ハーキュリーズ”は英語式の読みである。 |
|||
{{-}} |
|||
==== 地対空誘導弾 ナイキJ ==== |
|||
[[ファイル:Jasdf-NikeJ.jpg|thumb|250px|地対空誘導弾 ナイキJ<br/>航空自衛隊[[浜松広報館]]の展示機]] |
|||
[[日本]]の[[航空自衛隊]]では、[[ソビエト連邦]]の高高度[[戦略爆撃機]]の脅威から防衛するために、[[1970年]]([[昭和]]45年) MIM-14「ナイキ・ハーキュリーズ」を'''地対空誘導弾 ナイキJ'''として導入、[[三菱重工業]]によって[[ライセンス生産]]され、[[1994年]]([[平成]]6年)まで運用していた。 |
|||
基本的に原型のMIM-14と同じだが、弾頭には510kgの高性能[[炸薬]]のみ搭載可能である。 |
|||
導入に際しては「[[核兵器]]の搭載が可能」という点がマスメディア等によって強調されたため、[[革新政党]]と[[市民団体]]による反対運動が展開され、[[裁判]]により導入の是非が争われた([[長沼ナイキ事件]]を参照)。 |
|||
{{-}} |
|||
=== LIM-4 Nike-Zeus === |
|||
[[ファイル:Nike_family_01.jpg|thumb|250px|ナイキ ゼウスB<br/>[[ホワイトサンズ・ミサイル実験場|ホワイトサンズ・ミサイル実験場博物館]]の展示機]] |
|||
{{main|LIM-49 (ミサイル)}} |
|||
ナイキミサイル開発計画の一環として開発された[[弾道弾迎撃ミサイル|弾道ミサイル迎撃用ミサイル]]。当初「ナイキ ゼウス(Nike-Zeus)」の名称で開発され、後に「スパルタン(Spartan)と改称された。 |
|||
ナイキ エイジャックスの設計を発展させた3段式固形燃料ロケットミサイルで、5 [[核出力|Mt]]の[[W71 (核弾頭)|W71]][[核弾頭|熱核弾頭]]を搭載する。運用は地下[[ミサイルサイロ]]から発射する方式で行われ、無線指令誘導で飛行する。 |
|||
[[1972年]]に締結された[[第一次戦略兵器制限交渉]](SALT I)における「弾道弾迎撃ミサイル制限条約」によって運用が大幅に制限されることになり、少数が[[1975年]][[10月]]から数ヶ月だけ実戦配備された。 |
|||
由来はギリシャ神話の主神、「[[ゼウス]]」より。英語式の発音に基づき“ジュース(ズゥース)”とも呼称される。 |
|||
{{-}} |
|||
== 諸元 == |
|||
{| class="wikitable" align="none" cellpadding="5" style="background:#fff; text-align:center;" |
|||
|+'''ナイキミサイルの諸元''' |
|||
!!!MIM-3<br/>Nike-Ajax!!MIM-14<br/>Nike-Hercules!!XLIM-49<br/>Nike-Zeus A |
|||
|- |
|||
|全長||6.3m||8.1m||13.5m |
|||
|- |
|||
|ブースター込み||10.2m||12.3m||14.7m(XLIM-19A) |
|||
|- |
|||
|直径||30cm||75cm||91cm |
|||
|- |
|||
|全幅||1.2m||1.85m||2.98m |
|||
|- |
|||
|射程||40-48km||120-148km||320km |
|||
|- |
|||
|到達高度||18,000-21,000m||30,000-45,000m||280,000m(XLIM-19A) |
|||
|- |
|||
|} |
|||
== 配備国 == |
|||
; MIM-14 |
|||
{{col| |
|||
* {{USA}} |
|||
* {{JPN}} |
|||
: {{BRD}} |
|||
| |
|||
* {{ESP}} |
|||
* {{NOR}} |
|||
: {{BEL}} |
|||
| |
|||
* {{ROC-TW}} |
|||
* {{ITA}} |
|||
* {{KOR}} |
|||
| |
|||
* {{GRC}} |
|||
* {{TUR}} |
|||
}} |
|||
== バリエーション == |
|||
* [[玄武 (ミサイル)|玄武]](ヒョンム):韓国がナイキ・ハーキュリーズを基に開発した[[地対地ミサイル]]。 |
|||
== 登場作品 == |
|||
=== 映画 === |
|||
; 『[[地球防衛軍 (映画)|地球防衛軍]]』 |
|||
: ナイキミサイルに酷似した発射台固定式のミサイルが登場する。 |
|||
: ただし、劇中では[[オネストジョン]]と同時に宇宙人の要塞を攻撃する[[地対地ミサイル]]として描かれていた。 |
|||
=== 漫画 === |
|||
; 『[[沈黙の艦隊]]』 |
|||
: 第85話にて、[[東京湾]]に入港する[[原子力潜水艦]]「[[やまと (沈黙の艦隊)|やまと]]」から[[核ミサイル]]が発射された時に備えて、航空自衛隊のナイキJが[[館山市]]沿岸部に展開する。 |
|||
; 『[[右向け左!]]』 |
|||
: 主人公達が訓練を行う[[陸上自衛隊]]基地に隣接する航空自衛隊基地に配備されている描写がある。 |
|||
; 『[[ヨコハマ買出し紀行]]』 |
|||
: 第13話「鎌倉花火」にて、老朽化したものが[[打ち上げ花火]]として登場。花火大会の最後を飾る“大玉”として海上の台船に設置された発射装置から射出され、会場上空で炸裂して花弁のような爆炎を披露する。 |
|||
=== 小説 === |
|||
; 『タイムスリップ大戦争』 |
|||
: [[豊田有恒]]の小説。国防軍の装備として登場。19××年(昭和5×年)の日本列島が約30年前の[[1941年]]にタイムスリップした中、アメリカなどとの間に勃発した戦争にて、[[ベトナム]]に派遣されたものが[[B-17 (航空機)|B-17]]を撃墜している。また[[艦対艦ミサイル]]に改造され、[[護衛艦]]にも装備されている。 |
|||
; 『[[見知らぬ明日]]』 |
|||
: 航空自衛隊[[第1高射群]]のナイキ・ハーキュリーズが登場。[[入間郡]][[入間市|武蔵町]]の上空を通過した[[空飛ぶ円盤]]に対して、誤って2発が発射されたが、命中はしなかった。 |
|||
== 関連項目 == |
|||
{{commons|Project Nike}} |
|||
* [[アメリカ合衆国のミサイル一覧]] |
|||
{{ナイキロケット|state=expanded}} |
|||
{{weapon-stub}} |
|||
下記のようなミサイルが順次に開発されていった。また様々な観測ロケットなども派生している。 |
|||
* [[MIM-3 (ミサイル)]] - 愛称は「ナイキ・アジャックス」、旧称はSAM-A-7。 |
|||
* [[MIM-14 (ミサイル)]] - 愛称は「ナイキ・ハーキュリーズ」、旧称はSAM-A-25。MIM-3の発展型。 |
|||
* [[LIM-49 (ミサイル)]] - 愛称は「ナイキ・ゼウス」。MIM-14を発展させた[[弾道弾迎撃ミサイル]]。 |
|||
{{Aimai}} |
|||
{{DEFAULTSORT:ないきみさいる}} |
{{DEFAULTSORT:ないきみさいる}} |
||
[[Category:アメリカ合衆国の地対空ミサイル]] |
[[Category:アメリカ合衆国の地対空ミサイル]] |
||
[[Category:航空自衛隊のミサイル]] |
|||
[[it:MIM-3 Nike Ajax]] |
|||
[[tr:MIM-3]] |
2024年12月30日 (月) 03:34時点における最新版
ナイキミサイルとは、アメリカ合衆国製の地対空ミサイルである。名前の由来はギリシャ神話の勝利の女神「ニケ(Nike)」より。“ナイキ”は英語読みである。
下記のようなミサイルが順次に開発されていった。また様々な観測ロケットなども派生している。
- MIM-3 (ミサイル) - 愛称は「ナイキ・アジャックス」、旧称はSAM-A-7。
- MIM-14 (ミサイル) - 愛称は「ナイキ・ハーキュリーズ」、旧称はSAM-A-25。MIM-3の発展型。
- LIM-49 (ミサイル) - 愛称は「ナイキ・ゼウス」。MIM-14を発展させた弾道弾迎撃ミサイル。