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白金ナノ粒子

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白金ナノコロイドから転送)

白金ナノ粒子(はっきんナノりゅうし、: platinum nanoparticles)は、白金の微粒子によって形成されたコロイドである。白金ナノコロイド(Colloidal platinum)、プラチナナノコロイドなどとも。

抗酸化作用があるとされ、健康食品や、化粧品成分として使われている[1]。水を電気分解するための触媒の金属に白金はよく用いられ、電気分解の際に白金が粒子状に微量に溶出する[2]燃料電池ではよく白金が使われているため、その粒子の状態は重要となる[3][4]。歯科でのレジンの接着時に用いられる[1]

燃料電池

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燃料電池、水素と酸素を反応させる発電機だが、その電極における白金は微粒子となっているが、発電に伴い白金微粒子が粗大化し性能が低下する[3]。原子が13個の白金粒子(Pt13)は、これまで有用とされてきたが最も活性が低く、最も高い活性があったのは原子が19個の白金粒子で、その4倍の活性を示した[4]

電気分解

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電気化学の教科書的な理解によると、様々な金属を使って水の電気分解による水素発生が調査されているが、白金は最も大きな反応速度を示す。電気分解によって目に見えるほど溶解する鉛や鉄と違い、腐食や溶解は起こらないとされる。電極表面の白金原子Ptは水素原子Hと結合し、水素原子と白金原子が結合しているPt-Hとなる。これは水素原子と水素原子が結合しやすい環境である、結合した場合、水素分子H2となり水素ガスが発生する。[5]

白金電極を持つバッチ式の電解装置で60分間電気分解した超純水を、分光器で測定したところ0.2ppbの白金ナノ粒子が含まれていた[2]。微量には溶出するとされる。

健康への影響

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有効性を唱う化粧品[6]や健康補助食品が市販されている[7]

国立健康・栄養研究所は「2008年」に人間を対象としたデータはみつからず、安全性について十分なデータがないとしている[8]

肝臓障害の可能性
摂食により一過性の肝臓障害を誘発する可能性が指摘されている[9][10]
有効性を示唆する研究

基礎研究では白金ナノ粒子には活性酸素除去があり、活性酸素、過酸化水素、フリーラジカルを減少させる[11][12][13]。同じく試験管での基礎研究では、活性酸素由来の炎症の抑制効果[14]、アテローム性動脈硬化症を抑制したり[15]、紫外線による皮膚炎を減少させ[16]、神経保護作用がある[17]。変形性関節症では現在の有害な化学試薬を使った治療法よりも、細胞毒性が生体適合性を示しているため将来性があり[18]、同様に抗腫瘍特性は肺癌の治療の選択肢のひとつであることを示している[19]

マウスを使った基礎研究では、脳梗塞の梗塞部位を縮小したり[20]、喫煙による肺の炎症を抑制したり[21]、マウスの耐糖能を改善した[17]

歯科では、歯とレジンを接着する際の接着強さは問題であり、歯を白金ナノコロイドで表面処理してからレジンを接着する方法が研究されている[1][22]

コロイドの分散粒子は半透膜を通らないことから、分散媒である白金が皮膚や腸から体内へ吸収されることはなく安全だと、多くの商品でうたわれている。この点について、東京大学教授の宮本有正は、「白金ナノコロイドは小腸からほとんど吸収されないことが分かってきていると述べており、腸管にて活性酸素を除去しているのではないかと考えられている」[23][24]とする主張もあるが、粒子径によっては経口摂取したものが尿中に排出されることが報告されている[25][13][9]

植物による合成

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植物のSinapis albaおよびLepidium sativumは、地中の白金を植物内へナノ粒子として集積する[26]。植物を使った白金ナノ粒子の合成は経済的で環境にやさしい[27]

製造方法

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「白金ナノコロイド溶液の製造方法」(国際公開番号:W02005/023467)がある。外部リンクに示した。他の方法でも製造される。

出典

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  1. ^ a b c 五十嵐豊, 付佳楽, 角田晋一, 田中享, 中沖靖子, 佐野英彦「プラチナナノコロイド象牙質処理が4-META/MMA-TBBレジンのサーマルサイクリング負荷前後の接着に与える影響」『北海道歯学雑誌』第32巻第2号、北海道歯学会、2012年3月、177-192頁、ISSN 09147063NAID 10030576347 
  2. ^ a b Ye, Jun; Li, Yuping; Hamasaki, Takeki; Nakamichi, Noboru; Komatsu, Takaaki; Kashiwagi, Taichi; Teruya, Kiichiro; Nishikawa, Ryuhei et al. (2008). “Inhibitory Effect of Electrolyzed Reduced Water on Tumor Angiogenesis”. Biological & Pharmaceutical Bulletin 31 (1): 19-26. doi:10.1248/bpb.31.19. "typically contains 0.2 ppb Pt Nps" 
  3. ^ a b トヨタ自動車、燃料電池の触媒「白金」の挙動をリアルタイムで観察できる新たな手法を開発”. TOYOTA Global Newsroom (2015年5月18日). 2017年6月15日閲覧。
  4. ^ a b 原子19個の白金粒子が最高の触媒活性を示す―燃料電池触媒の質量活性20倍、低コスト化に道―”. 東京工業大学 (2015年7月23日). 2017年6月15日閲覧。 Imaoka, Takane; Kitazawa, Hirokazu; Chun, Wang-Jae; Yamamoto, Kimihisa (2015). “Finding the Most Catalytically Active Platinum Clusters With Low Atomicity”. Angewandte Chemie International Edition 54 (34): 9810-9815. doi:10.1002/anie.201504473. 
  5. ^ 大堺利行、加納健司、桑畑進『ベーシック電気化学』化学同人、2000年、150-152頁。ISBN 9784759808612https://books.google.co.jp/books?id=0ByaMa8HTgkC&pg=PA150 
  6. ^ 宮本有正 ほか、「プラチナ・ナノコロイドの化粧品への応用 (特集 化粧品と材料--他分野との双方向の応用展開) -- (化粧品への応用技術)」 工業材料 54(8), 57-61, 2006-08, NAID 40007395223
  7. ^ 消費者製品等に含まれるナノマテリアル等の情報の収集 国立健康・栄養研究所 (PDF)
  8. ^ プラチナナノコロイド、白金ナノコロイド - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所) 2008年6月20日(閲覧日2018年9月26日)
  9. ^ a b Hiraoka Atsushi; Miyakawa Takashi; Shinohara Atsuko (2011). “Effects of Water Product Containing Platinum Nanocolloid in Humans”. Biomed. Res. Trace Elements 22 (4): 73-77. doi:10.11299/brte.22.73. https://doi.org/10.11299/brte.22.73. 
  10. ^ 平岡厚、「飲むと健康に良い」と宣伝されている諸水製品類の実態の検討 杏林医学会雑誌 Vol.43 (2012) No.3 p.17-26, doi:10.11434/kyorinmed.43.17
  11. ^ Hamasaki, Takeki; Kashiwagi, Taichi; Imada, Toshifumi; Nakamichi, Noboru; Aramaki, Shinsuke; Toh, Kazuko; Morisawa, Shinkatsu; Shimakoshi, Hisashi et al. (2008). “Kinetic Analysis of Superoxide Anion Radical-Scavenging and Hydroxyl Radical-Scavenging Activities of Platinum Nanoparticles”. Langmuir 24 (14): 7354-7364. doi:10.1021/la704046f. 
  12. ^ Watanabe, Aki; Kajita, Masashi; Kim, Juewon; Kanayama, Atsuhiro; Takahashi, Kyoko; Mashino, Tadahiko; Miyamoto, Yusei (2009). “In vitro free radical scavenging activity of platinum nanoparticles”. Nanotechnology 20 (45): 455105. doi:10.1088/0957-4484/20/45/455105. 
  13. ^ a b 下澤達雄、金子知代、上竹勇三郎ほか「2.動脈硬化と酸化ストレス」『日本老年医学会雑誌』第45巻第3号、2008年、287-290頁、doi:10.3143/geriatrics.45.287 
  14. ^ 長尾清香、佐藤拓也、加藤伸一、チェンリ、宮本有正「白金ナノコロイドによる過酸化水素由来細胞障害性の抑制」『日本口腔粘膜学会雑誌』第15巻第1号、2009年6月30日、29-36頁、doi:10.6014/jjomm.15.29NAID 10026398201 
  15. ^ Zheng, Wenfu; Huang, Rong; Jiang, Bo; Zhao, Yuyun; Zhang, Wei; Jiang, Xingyu (2016). “An Early-Stage Atherosclerosis Research Model Based on Microfluidics”. Small 12 (15): 2022-2034. doi:10.1002/smll.201503241. 
  16. ^ Yoshihisa, Yoko; Honda, Ayumi; Zhao, Qing-Li; Makino, Teruhiko; Abe, Riichiro; Matsui, Kotaro; Shimizu, Hiroshi; Miyamoto, Yusei et al. (2010). “Protective effects of platinum nanoparticles against UV-light-induced epidermal inflammation”. Experimental Dermatology 19 (11): 1000-1006. doi:10.1111/j.1600-0625.2010.01128.x. 
  17. ^ a b Shirahata, Sanetaka; Hamasaki, Takeki; Haramaki, Keisuke; Nakamura, Takuro; Abe, Masumi; Yan, Hanxu; Kinjo, Tomoya; Nakamichi, Noboru et al. (2011). “Anti-diabetes effect of water containing hydrogen molecule and Pt nanoparticles”. BMC Proceedings 5 (Suppl 8): 18. doi:10.1186/1753-6561-5-S8-P18. 
  18. ^ “A novel chondroitin sulfate decorated nano platinum for the treatment of osteoarthritis”. Mater Sci Eng C Mater Biol Appl 78: 452-456. (2017). doi:10.1016/j.msec.2017.04.028. PMID 28576008. 
  19. ^ “Biosynthesized Platinum Nanoparticles Inhibit the Proliferation of Human Lung-Cancer Cells in vitro and Delay the Growth of a Human Lung-Tumor Xenograft in vivo: -In vitro and in vivo Anticancer Activity of bio-Pt NPs”. J Pharmacopuncture 19 (2): 114-21. (2016). doi:10.3831/KPI.2016.19.012. PMC 4931296. PMID 27386144. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4931296/. 
  20. ^ Takamiya, M.; Miyamoto, Y.; Yamashita, T.; Deguchi, K.; Ohta, Y.; Abe, K. (2012). “Strong neuroprotection with a novel platinum nanoparticle against ischemic stroke- and tissue plasminogen activator-related brain damages in mice”. Neuroscience 221: 47-55. doi:10.1016/j.neuroscience.2012.06.060. 
  21. ^ Onizawa, Shigemitsu; Aoshiba, Kazutetsu; Kajita, Masashi; Miyamoto, Yusei; Nagai, Atsushi (2009). “Platinum nanoparticle antioxidants inhibit pulmonary inflammation in mice exposed to cigarette smoke”. Pulmonary Pharmacology & Therapeutics 22 (4): 340-349. doi:10.1016/j.pupt.2008.12.015. 
  22. ^ 星加修平, 佐野英彦「白金ナノコロイドによる歯質接着強さの向上 (特集 ナノテクノロジーの歯科応用)」『日本歯科理工学会誌』第34巻第1号、日本歯科理工学会、2015年1月、9-12頁、ISSN 1884-4421NAID 110009892361  (Paid subscription required要購読契約)
  23. ^ 宮本有正 教授/生命科学研究系 東京大学大学院新領域創成科学研究科 少なくとも2008年[リンク切れ]
  24. ^ 長尾清香, 佐藤拓也, 加藤伸一, チェンリ, 宮本有正「白金ナノコロイドによる過酸化水素由来細胞障害性の抑制」『日本口腔粘膜学会雑誌』第15巻第1号、日本口腔内科学会、2009年6月、29-36頁、doi:10.6014/jjomm.15.29ISSN 13417983NAID 10026398201 
  25. ^ 山口真奈美, 堤康央, 吉岡靖雄, 吉田徳幸, 宇治美由紀, 三里一貴, 宇高麻子, 森宣瑛, 角田慎一, 東阪和馬「サブナノ白金の経口曝露後動態に関する基礎解析」『日本毒性学会学術年会』第40回日本毒性学会学術年会セッションID: O-7、日本毒性学会、2013年、150207頁、doi:10.14869/toxpt.40.1.0.150207.0NAID 130004676627 
  26. ^ “Accumulation of Platinum Nanoparticles by Sinapis alba and Lepidium sativum Plants”. Water Air Soil Pollut 226 (4): 126. (2015). doi:10.1007/s11270-015-2381-y. PMC 4381038. PMID 25859065. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4381038/. 
  27. ^ Siddiqi, Khwaja Salahuddin; Husen, Azamal (2016). “Green Synthesis, Characterization and Uses of Palladium/Platinum Nanoparticles”. Nanoscale Research Letters 11 (1). doi:10.1186/s11671-016-1695-z. 

外部リンク

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