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標準特異点

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
端末特異点から転送)

数学では、標準特異点(canonical singularities)は、射影多様体の標準モデルの特異点として現れ、端末特異点(terminal singularities)は極小モデルの特異点として現れる特別な場合である。それらは Reid (1980) により導入された。滑らかな極小モデルは存在せず、従って、必然的に端末特異点である特異点を持たねばならないので、端末特異点は極小モデルプログラムで重要である。

定義

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Y を標準クラス KYQ-カルティエであるような正規多様体とし、f:X→Y が Y の特異点解消とすると、

となる。ここに和は既約な例外因子を渡るとし、ai は有理数で、ディスククレパンシー(discrepancy)と呼ぶ。

そのとき、Y の特異点を次のように呼ぶ。

全ての i に対し、ai > 0 のとき、端末(terminal)
全ての i に対し、ai ≥ 0 のとき、標準(canonical)
全ての i に対し、ai > −1 のとき、対数端末(log terminal)
全ての i に対し、ai ≥ −1 のとき、対数標準(log canonical)

性質

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射影多様体 V の特異点が標準的とは、多様体が正規英語版(normal)なとき、V の非特異部分の標準ラインバンドルのあるべきが、V 上のラインバンドルへ拡張され、V が任意の特異点の解消(resolution)と同じ多重種数を持つ場合のことを言う。V が標準特異点を持つことと、相対標準モデル英語版(relative canonical model)であることとは同値である。

射影多様体 V の特異点が端末的とは、多様体が正規英語版(normal)なとき、V の非特異部分の標準ラインバンドルのあるべきが、V 上のラインバンドルへ拡張され、Vm の任意の切断の引き戻しが、特異点の解消(resolution)の例外因子英語版(exceptional locus)の余次元 1 の成分に沿って 0 となるときを言う。

小さな次元での分類

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2次元端末特異点は滑らかである。多様体が端末特異点を持つと、特異点は少なくとも余次元 3 を持ち、特に、余次元 1 と 2 では端末特異点は滑らかとなる。次元 3 の場合は、端末特異点は孤立特異点であり、Mori (1985) で分類された。

2次元標準特異点は、デュヴァル特異点(du Val singularity)と同じであり、解析的には C2 を SL2(C) の有限部分群で割った商空間に同型である。

2次元の対数端末特異点は、解析的には C2 を GL2(C) の有限部分群で割った商空間に同型である。

2次元対数標準特異点は Kawamata (1988) により分類されている。

ペア

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より一般的には、Δ を有理数係数の素因子の形式的線型結合とするとき、ペア (X,Δ) のこれらの概念を定義することができる。ペアは次のように呼ばれる。

  • Discrep(X,Δ) > 0 のとき、端末(terminal)
  • Discrep(X,Δ) ≥ 0 のとき、標準(canonical)
  • Discrep(X,Δ) > − 1 かつ |Δ| ≤ 0 のとき、川又対数端末(klt)(Kawamata log terminal)
  • Discrep(X,Δ) > − 1 のとき、純粋対数端末(plt)(purely log terminal)
  • Discrep(X,Δ) ≥ − 1 のとき、対数標準(lc)(log canonical)

参考文献

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  • Kollár, János (1989), “Minimal models of algebraic threefolds: Mori's program”, Astérisque (177): 303–326, ISSN 0303-1179, MR1040578, http://www.numdam.org/item?id=SB_1988-1989__31__303_0 
  • Kawamata, Yujiro (1988), “Crepant blowing-up of 3-dimensional canonical singularities and its application to degenerations of surfaces”, Ann. of Math., 2 127 (1): 93–163, doi:10.2307/1971417, ISSN 0003-486X, JSTOR 1971417, MR924674, https://jstor.org/stable/1971417 
  • Mori, Shigefumi (1985), “On 3-dimensional terminal singularities”, Nagoya Mathematical Journal 98: 43–66, ISSN 0027-7630, MR792770, http://projecteuclid.org/euclid.nmj/1118787793 
  • Reid, Miles (1980), “Canonical 3-folds”, Journées de Géometrie Algébrique d'Angers, Juillet 1979/Algebraic Geometry, Angers, 1979, Alphen aan den Rijn: Sijthoff & Noordhoff, pp. 273–310, MR605348 
  • Reid, Miles (1987), “Young person's guide to canonical singularities”, Algebraic geometry, Bowdoin, 1985 (Brunswick, Maine, 1985), Proc. Sympos. Pure Math., 46, Providence, R.I.: American Mathematical Society, pp. 345–414, MR927963