鎖を解かれたプロメテウス
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(縛を解かれたプロミーシュースから転送)
『鎖を解かれたプロメテウス』(Prometheus Unbound )は、パーシー・ビッシュ・シェリーの劇詩、クローゼット・ドラマ。1820年ごろの作品。4幕物。ギリシャ神話に着想を得ている。
主な登場人物
[編集]あらすじ
[編集]プロメテウスは、神が独占していた火を人間にもたらしたことで、ジュピターを怒らせ、インドのコーカサスで鎖に縛られ永遠の苦痛を与えられていたが、その一方でジュピターの未来を知っていた。ジュピターはセーティス(テティス)と結婚し、プロメテウスの予見どおりに、自分の息子デモゴーゴンに座を奪われる。そして、ハーキュリーズがプロメテウスを解放する。
第1幕
[編集]- 鎖につながれたプロメテウスと、敵対関係にあるマーキュリー、フリアイ(エリーニュス)のやりとり。前者は心情的にはプロメテウスに共鳴しており、自分の立場を辛いものと見ている。
- パンシャとアイオーニ、大地、精霊などがコロス的な役割をする。
第2幕
[編集]- 谷で待っていたエイシヤとパンシヤが会い、デモゴーゴンの洞窟に行く
第3幕
[編集]- デモゴーゴンがジュピターに王座を下りるように勧告。
- 河洋神とアポロのやりとりによって、ジュピター没落が明示される。
- ハーキュリーズによってプロメテウスが解放される。
第4幕
[編集]- エイシャ、パンシヤ、アイオーニ、月と大地、そしてデモゴーゴンらによって、凱歌が歌われる。
特徴
[編集]- 主要人物であるプロメテウスやジュピターの出番は少なく、脇役たちの台詞が多い。クローゼット・ドラマであるため、「大地」「月」などが擬人化されないまま、登場人物として台詞を与えられている。
- ギリシャ神話や聖書では悪魔のように扱われてきたデモゴーゴンに肯定的な意味を与えている。岩波文庫版訳者の石川重俊の註釈によると、シェリーはデモゴーゴンを「創造や法則の中に隠れて存在し、あらゆる生命と進歩の根源の力であり、それ自らが必然で自由なもの」とみなしていたらしい。ワーズワースやコールリッジもそう考えていたという。
註釈・翻訳
[編集]- 土居光知 註釈・解説『《研究社英文学叢書》PROMETHEUS UNBOUND』(研究社、1931年)
- 石川重俊 訳『鎖を解かれたプロメテウス』(岩波文庫、2003年改訳)・・・1957年初版時の訳題は『縛を解かれたプロミーシュース』
- 原田博 訳『プロミーシュース解放 およびその他の詩集/附「改革への哲学的見解」』(音羽書房鶴見書店、2017年)
関連項目
[編集]- アイスキュロス……『縛られたプロメテウス』を書いた。
- マンフレッド……交友があったバイロンによるクローゼット・ドラマ
- ファウスト 第二部……ゲーテのレーゼドラマ。神話上は、プロメテウスの予言によってテティスはゼウスと結婚せず、人間ペレウスと結婚する。その結婚式で起こった「パリスの審判」事件の顛末が『ファウスト 第二部』と交錯する。