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微罪逮捕

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
赤軍罪から転送)

微罪逮捕(びざいたいほ)とは、通常では微罪として黙認や注意で終わるような犯罪行為に対して警察逮捕を行うこと。別件逮捕と同様、通常は微罪逮捕そのものが単独で行われることはなく、別に取り調べの必要な案件を持つ被疑者の身柄を手っ取り早く確保する目的で行われるので、微罪逮捕の理由となった事案が犯罪として立件されるかどうかには必ずしも注意が払われない。

日本における事例

1970年代の日本では新左翼の運動が盛んであり、連合赤軍によるあさま山荘事件東アジア反日武装戦線による連続企業爆破事件など、過激派によるテロ事件が続発していたため、警察当局はそれらに対して適法手段による徹底弾圧で臨んでいた。過激派を中心とする新左翼党派のメンバーは、路上で唾を吐いた(軽犯罪法違反)、赤信号で横断歩道を渡った(道路交通法違反)容疑などで逮捕されたり、捜査員が意図的にぶつかり、公務執行妨害で逮捕を行う転び公妨などに遭ったりすることが多々あった。赤軍メンバーの行為だけ逮捕につながっていることから、赤軍組織や当時の社会はこれを揶揄して「赤軍罪という罪名が存在する」などと評するほどであった[1]

1990年代においては、20世紀史上最悪と言われる一連テロ事件である、オウム真理教事件を引き起こしたオウム真理教の信者が数多く逮捕された[2]カッターナイフを所持していたために銃刀法違反、職務質問から逃げようとして公務執行妨害、マンションや東京ドームでのビラ配布で建造物侵入、ホテルの宿泊者名簿に偽名を記入したことによる旅館業法違反容疑、自動車の移転登録をしなかったために道路運送車両法違反容疑で逮捕などと通常では考えにくい微罪逮捕が行われ[2]、信者四百数十名が別件逮捕・微罪逮捕で拘束された[3]

2000年代においては、反戦ビラを防衛庁宿舎の各室新聞受けに配布したところ住居侵入罪で逮捕・起訴され(立川反戦ビラ配布事件)、微罪逮捕であるとして批判されたものの[4][5]最高裁において有罪が確定した。また、2008年10月に当時内閣総理大臣であった麻生太郎の私邸を見学するツアーを行ったところ、東京都条例違反(無届デモ)及び公務執行妨害の容疑で3人が逮捕、不起訴となり(麻生邸見学ツアー逮捕事件)、レイバーネット日本は微罪・別件逮捕、不当逮捕であると批判している[6][7]。この他に、アパートを借りる際に反戦運動をすることを告げずに受験勉強をするからとして賃貸契約したことが詐欺罪にあたるとして逮捕された事例などがある[5]

是非

オウム信者の微罪逮捕に対してマスコミが批判的な報道を行うことはあまりなかったが[8][9]、マスコミが権力チェック機能をきちんと果たしていれば警察でもここまで露骨なことはできなかったはずだという指摘がある[8]

脚注

  1. ^ 『若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』、「実録・連合赤軍」編集委員会+掛川正幸編、朝日新聞社、2008年
  2. ^ a b “[スクランブル]“奥の手”法令を駆使--オウム真理教信者の逮捕、次々”. 毎日新聞 東京夕刊 (毎日新聞社): p. 1. (1995年4月22日) 
  3. ^ 角田猛之「宗教と法をめぐる法文化比較 -天皇制とオウム真理教を手がかりに」『法哲学年報』、日本法哲学会、2002年、59-70頁、doi:10.11205/jalp1953.2002.59NAID 400059979962013年7月1日閲覧 
  4. ^ 田中祥貴 (2007). “「表現の自由」区分論と民主的過程” (pdf). 長野大学紀要 (長野大学) 29 (1): 19-31. NAID 110007028054. http://id.nii.ac.jp/1025/00000091/ 2013年7月1日閲覧。. 
  5. ^ a b 内田雅敏『これが犯罪?「ビラ配りで逮捕」を考える』岩波書店〈岩波ブックレット〉、2005年7月5日。ISBN 978-4000093552 
  6. ^ 佐藤隆 (2009年9月25日). “微罪逮捕国賠訴訟、高裁でも勝利判決”. レイバーネット日本. 2013年7月1日閲覧。
  7. ^ 11・6麻生邸リアリティツアーの不当逮捕に抗議する集会”. レイバーネット日本 (2008年10月30日). 2013年7月1日閲覧。
  8. ^ a b 森達也森巣博、2005、「第四章 懲罰機関化するメディア」、『ご臨終メディア--質問しないマスコミと一人で考えない日本人』第3刷、集英社集英社新書〉 ISBN 9784087203141 pp. 151-153
  9. ^ 河野義行 (28 November 2002). 松本サリン事件に遭遇して (pdf) (Speech). 2013年7月1日閲覧

関連項目