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枝角

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鹿茸から転送)
成熟したアカシカ, Denmark (2009)

枝角(えだつの、Antler)またはアントラーは、シカ科である。軟骨、線維組織、皮膚神経血管で構成される単一の構造で、一般的にオスにのみに見られる(トナカイ [1]を除く)。枝角は毎年落ちて再成長し、主に性的ディスプレイとして、またハーレムを制御するためのオス間の戦いの武器として用いられる。

構造

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アカシカの角。ベルベットが成長中の角を覆ってい、酸素と栄養分を供給する血液が流れる。

枝角はシカに固有のものである。枝角は、角座骨(pedicle)と呼ばれる頭蓋骨の先端から成長する。枝角が成長している間、それはベルベットと呼ばれる血管の多い皮膚で覆われ、成長している骨に酸素栄養素を供給する[2]。枝角は、動物界で雄の第二次性徴の最も誇張されたケースの1つと見なされており[3]、他の哺乳類の骨よりも速く成長する[4]。成長は先端で起こり、最初は軟骨であり、後に骨組織に置き換わる。枝角がフルサイズに達すると、ベルベットが失われ、枝角の骨が死ぬ。この死んだ骨の構造が成熟した枝角である。ほとんどの場合、根元の骨は破骨細胞によって破壊され、枝角はある時点で脱落する[2]。ほとんどの北極および温帯の種では、枝角の成長と脱落は一年生であり、日光の長さによって制御される。枝角は毎年再成長するが、そのサイズは多くの種で、齢によって異なり、最大サイズに達するまでは数年にわたって毎年増加する。熱帯の種では、枝角は一年中生え換わる可能性があり、サンバーなどの一部の種では、枝角は複数の要因に応じて一年の異なる時期に生え換わる。赤道域に分布する一部のシカは、枝角が生え換わらない。枝角は、支配と性的ディスプレイとして機能し、オス間の闘争の武器として、時には相手に深刻な傷を負わせることもある[4]

機能

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性選択
ほとんどの種で、枝角の進化の主な手段は性淘汰であり、これは雄同士の競争(行動的、生理学的)と雌の配偶者選択という2つのメカニズムを介して機能する[3]
外敵からの防御
イエローストーン国立公園オオカミは、枝角のないオスのヘラジカ、または少なくとも1匹のオスが枝角のないヘラジカの群れを攻撃する可能性が3.6倍高いという結果がある[5]
雪かき
トナカイは、枝角を使用して雪を取り除き、下の植生を食べることができる。これは、トナカイの雌が角を進化させた理由の一つとされる[2]
聴覚アンテナ
ヘラジカでは、枝角は大きな補聴器として機能する場合がある[6]

多様性

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枝角、体の大きさ、牙の多様化は、生息地と行動(戦いと交尾)の変化に強く影響されてきた[7]

シカ亜科

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オジロジカ亜科

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枝の相同性と進化

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枝角の系統進化

現在発見されている最古の枝角の化石記録は、約1,700万年前の中新世初期である。初期の枝角は小さく、2分岐であった[8] 。枝角が進化するにつれて、長くなり、多くの枝を獲得し、より複雑になっていった[8]。枝の相同性は1900年代以前から議論されている[9][10][11]が、最近、枝の分岐構造と相同性を記述する新たな方法が考案された[12]

枝角と動物や人間の関わり

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動物
生え落ちた角にはカルシウム、リン、その他のミネラルが含まれているため、リス、ヤマアラシ、ウサギ、マウスなどの小動物が摂取する。特にミネラルが土壌に少ない場所では顕著である[13]
人間
生え落ちる角を犬を使って探索したり、餌と網などを使った罠で収集したりする[14]。また、奈良公園では人間や他の鹿に怪我をさせないよう、一年に一度切り落としを行う[15]。それとは別に、トロフィーハンティングとして鹿を仕留めた景品として切り落とされる。
アメリカでは販売が許可されているが[16]、カナダでは自然で消費される物資とみなされ、取引すると罰せられる[17]
人間が手に入れた角は、道具、武器、装飾品、おもちゃを作るための材料とされる[18]。ヨーロッパの後期旧石器時代の歴史資料として発見され、後の時代には象牙の代替品として利用された。
アジアでは伝統医学や栄養補助食品とされた(漢方薬の鹿茸、鹿角など)[19]。ヨーロッパでも気付け薬などの材料とされた[20]

関連項目

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  • 骨角器
  • 鹿角霜
  • 袋角英語版 - 春から夏にかけて角を覆い成長させる皮膚。体温調節機能がある。漢方薬では鹿茸と呼ばれる。

脚注

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  1. ^ Arctic Wildlife - Arctic Studies Center”. naturalhistory.si.edu. 1 May 2018時点のオリジナルよりアーカイブ。1 May 2018閲覧。
  2. ^ a b c Hall, Brian K. (2005). “Antlers”. Bones and Cartilage: Developmental and Evolutionary Skeletal Biology. Academic Press. pp. 103–114. ISBN 0-12-319060-6. https://books.google.com/books?id=y-RWPGDONlIC&pg=PA103 2010年11月8日閲覧。 
  3. ^ a b Malo, A. F.; Roldan, E. R. S.; Garde, J.; Soler, A. J.; Gomendio, M. (2005). “Antlers honestly advertise sperm production and quality”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 272 (1559): 149–57. doi:10.1098/rspb.2004.2933. PMC 1634960. PMID 15695205. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1634960/. 
  4. ^ a b Whitaker, John O.; Hamilton, William J., Jr. (1998). Mammals of the Eastern United States. Cornell University Press. p. 517. ISBN 0-8014-3475-0. https://books.google.com/books?id=5fVymWAez-YC&pg=PA517 2010年11月8日閲覧。 
  5. ^ Metz, Matthew C.; Emlen, Douglas J.; Stahler, Daniel R.; MacNulty, Daniel R.; Smith, Douglas W. (2018-09-03). “Predation shapes the evolutionary traits of cervid weapons”. Nature Ecology & Evolution 2 (10): 1619–1625. doi:10.1038/s41559-018-0657-5. PMID 30177803. 
  6. ^ Bubenik, George A.; Bubenik, Peter G. (2008). “Palmated antlers of moose may serve as a parabolic reflector of sounds”. European Journal of Wildlife Research 54 (3): 533–5. doi:10.1007/s10344-007-0165-4. https://engagedscholarship.csuohio.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1221&context=scimath_facpub. 
  7. ^ Gilbert, Clément; Ropiquet, Anne; Hassanin, Alexandre (2006). “Mitochondrial and nuclear phylogenies of Cervidae (Mammalia, Ruminantia): Systematics, morphology, and biogeography”. Molecular Phylogenetics and Evolution 40 (1): 101–17. doi:10.1016/j.ympev.2006.02.017. PMID 16584894. 
  8. ^ a b Heckeberg, Nicola S. (2020-02-18). “The systematics of the Cervidae: a total evidence approach” (英語). PeerJ 8: e8114. doi:10.7717/peerj.8114. ISSN 2167-8359. PMC 7034380. PMID 32110477. https://peerj.com/articles/8114. 
  9. ^ Garrod, A. Notes on the visceral anatomy and osteology of the ruminants, with a suggestion regarding a method of expressing the relations of species by means of formulae. Proceedings of the Zoological Society of London, 2–18 (1877).
  10. ^ Brooke, V. On the classification of the Cervidæ, with a synopsis of the existing Species. Journal of Zoology 46, 883–928 (1878).
  11. ^ Pocock, R. The Homologies between the Branches of the Antlers of the Cervidae based on the Theory of Dichotomous Growth. Journal of Zoology 103, 377–406 (1933).
  12. ^ Samejima, Y., Matsuoka, H. A new viewpoint on antlers reveals the evolutionary history of deer (Cervidae, Mammalia). Sci Rep 10, 8910 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-64555-7
  13. ^ Dennis Walrod (2010). Antlers: A Guide to Collecting, Scoring, Mounting, and Carving. Stackpole Books. p. 46. ISBN 978-0-8117-0596-7. https://books.google.com/books?id=Qu_11ACcw4YC&pg=PA47 
  14. ^ Dennis Walrod (2010). Antlers: A Guide to Collecting, Scoring, Mounting, and Carving. Stackpole Books. pp. 44–52. ISBN 978-0-8117-0596-7. https://books.google.com/books?id=Qu_11ACcw4YC&pg=PA47 
  15. ^ 奈良)鹿の角きり始まる 追い込む姿に歓声も 朝日新聞 更新日:2018年10月7日
  16. ^ Dennis Walrod (2010). Antlers: A Guide to Collecting, Scoring, Mounting, and Carving. Stackpole Books. pp. 46–47. ISBN 978-0-8117-0596-7. https://books.google.com/books?id=Qu_11ACcw4YC&pg=PA47 
  17. ^ Susan Quinlan (18 November 2011). “Parks Canada reminds visitors you can look, but don't touch”. Prairie Post West: p. 3. オリジナルの6 February 2015時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150206135357/http://content.yudu.com/Library/A1uowk/PrairiePostWestNovem/resources/3.htm 5 December 2011閲覧。 
  18. ^ Bauer, Erwin A.; Bauer, Peggy (2000). Antlers: Nature's Majestic Crown. Voyageur Press. p. 7. ISBN 978-1-61060-343-0 
  19. ^ Velvet Antler - Research Summary”. www.vitaminsinamerica.com. 18 October 2017時点のオリジナルよりアーカイブ1 May 2018閲覧。
  20. ^ McCrory, P (2006). “Smelling Salts”. British Journal of Sports Medicine 40 (8): 659–660. doi:10.1136/bjsm.2006.029710. PMC 2579444. PMID 16864561. http://bjsm.bmj.com/cgi/content/full/40/8/659 2009年1月3日閲覧。.