ファイバーチャネル・オーバー・イーサネット
ファイバーチャネル・オーバー・イーサネット (英: Fibre Channel over Ethernet : FCoE) はファイバーチャネル(FC)を 10ギガビット・イーサネット上で使えるようにするための規格。ストレージエリアネットワーク (SAN)とLocal Area Network (LAN)をイーサネットで統合することを目的としたプロトコルで、ANSI T11委員会で標準化が完了している[1]。
概要
[編集]従来、大規模なシステムではイーサネットを使ったLANとFCを使ったSANの両方を構築せねばならずネットワークが複雑になっていた[2]。これを解決するために、イーサネット上でFCのフレームをカプセル化して通信出来るFCoEが考案された。
利点
[編集]従来はFC用にHost Bus Adapter(HBA)を、IP用にNetwork Interface Card (NIC)を別々に用意する必要があった。後述のConverged Network Adapter(CNA)を利用する事でこれらが集約される。
欠点
[編集]- 技術の普及と成熟度
- 投資保護・コストマッチ
- 管理組織間の調整
10ギガビット・イーサネットの低価格化も普及の鍵となる。また一般にLANを管轄するネットワーク部門とFCを管轄するストレージ部門は部署が異なるため、FCoEをどちらが管理するか調整が必要となる。
ハードウエア
[編集]FCoEに対応したカードであるConverged Network Adapter(CNA)とFCoE対応のスイッチが必要となる。これらを接続する事でIP網とSANへの接続が行われる。 CNAのメーカーにはブロケード、Emulex、インテル、QLogicがある。スイッチのメーカーにはブロケード、シスコシステムズなどがある。
プロトコル階層とフレーム構造
[編集]プロトコル階層
[編集]主に以下の6つの層がある。下位層から順に、
- CEEレイヤー1
- CEEレイヤー2
- FCoE
- FC-2
- FC-3
- FC-4
解説:
- CEEとはコンバージド・エンハンスド・イーサネットであり、FCoEの物理層及びデータリンク層ではCEEレイヤー1, 2をそれぞれ使う。なおCEEとDCE (Data Center Ethernet)はベンダーの独自用語であり、正式にはIEEE DCBと呼ぶ。
- FC-2以上はネイティブなFCプロトコル層がそのまま配置されるため、FCの知識をそのまま応用できる。
- MACアドレスで通信しInternet Protocolを利用しないので、ルーティングは出来ない。
- イーサネットのヘッダであるEtherTypeにはFCoEを示す「0x8906」が入り、それ以外はRFC3643に規定された送受信者のMACアドレス、VLANタグ、Start of Frame(SOF)、End Of Frame(EOF)などが入る。
- FCoEのカプセル化されたFCフレームはネイティブなFCのそれと同じである。
フレーム
[編集]下図の通りである[3]。
類似技術
[編集]イーサネットでSANを構築する手法としてiSCSIもある。技術的な違いはiSCSIはTCP/IPを利用するのに対してFCoEはこれを利用しない事や、iSCSIは1GbEが利用出来るのに対してFCoEは10GbEが必要であるなどである[4]。その他にもコスト・性能・既存インフラとの親和性等考慮すべき事は多いが、概してiSCSIはコストや使いやすさを重視する中小企業向け、FCoEはミッションクリティカルな大企業向けとされる事がある[5]。他にもRemote Direct Memory Accessの仕組みを利用してイーサネット上でSCSI通信を可能にするen:RDMA over Converged Ethernet(RoCE)もある。
用語集
[編集]- FCM (Fibre Channel Mapper)
- FCのフレームをイーサーネットのフレームにカプセル化/非カプセル化を行うための機能。
- ENode (FCoE Node)
- カプセリング化されたFCをIEEE DCBの物理層と通信ができるようにする機能。FCMを搭載したインタフェースとなる。主にCNAに該当する。
- FCF (FCoE Forwarder)
- FCMを実装したイーサースイッチでありFCとIEEE DCBの機能を提供する。FCoEスイッチに該当する。
- FPMA (Fabric Provided MAC Address)
- MACアドレスをFCoEスイッチ(ファブリック)側から割り当てるための方式
- SPMA (Server Provided MAC Address)
- MACアドレスの管理をENode(ホスト)側にて管理するための方式
- FIP (FCoE Initialization Protocol)
- IEEE DCB上でFCファブリックの検索やログインサービスを構成するプロトコル。Ethertypeとして「FIP(0x8914)」を使用する
動作概要
[編集]IEEE DCB上のFCoEデバイスがFCにログインするまでの動作概要は以下の通りである。
- ENode(ホストのCNAに相当)がイーサネットのマルチキャストを利用してFCF(FCoEスイッチ)を検索 。FIP Discoveryと呼ぶ。
- FCFはユニキャストでENodeに対しFCFのMACアドレスを返す。
- ENodeはFCFに対してMACアドレスで接続を行いログイン処理を行う。FIP FLOGIと呼ぶ。ログインによりFCoEの初期化が完了する。
- 初期化後はFCへのログインが行われ (FC PLOGIと呼ぶ)、通信が始まる。
ベンダー
[編集]以下の通りネットワーク/ストレージ・ベンダが規格化を支援している。また、IEEE標準化団体のData Center Bridging Task Groupが規格作成を推進している。
Absolute Analysis, BLADE Network Technologies、ブロードコム、ブロケード、シスコ (Nuova)、EMC、Emulex、Finisar、HP、IBM、インテル、日立データシステムズ、Mellanox、ネットアップ、PMC-Sierra、QLogic、サン・マイクロシステムズ.