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WR 134

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
HD 191765から転送)
WR 134
WR 134[1]
Hα、O III、S IIフィルタで撮像されたWR 134(中央下の最も明るい白い星)(アマチュア天文家 Chuck Ayoub撮影)
OIIISIIフィルタで撮像されたWR 134(中央下の最も明るい白い星)(アマチュア天文家 Chuck Ayoub撮影)
仮符号・別名 HD 191765[1]
星座 はくちょう座
見かけの等級 (mv) 8.08[2]
7.990 - 8.090(変光)[3]
変光星型 EA/D/WR
分類 ウォルフ・ライエ星
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  20h 10m 14.1928045144s[4]
赤緯 (Dec, δ) +36° 10′ 35.070683391″[4]
固有運動 (μ) 赤経: -4.990 ミリ秒/年[4]
赤緯: -8.445 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 0.5247 ± 0.0177ミリ秒[4]
(誤差3.4%)
距離 6200 ± 200 光年[注 1]
(1910 ± 60 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -3.3[注 2]
WR 134の位置(赤丸)
物理的性質
半径 5.25 R[5]
質量 18 M[5]
スペクトル分類 WN6-s[5]
光度 407,000 L[5]
有効温度 (Teff) 63,100 K[5]
色指数 (B-V) 0.00[2]
色指数 (U-B) -0.44[2]
他のカタログでの名称
V1769 Cyg[1], BD+35 4001[1], HD 191765[1], HIP 99377[1], SAO 69541[1], Gaia EDR3 2059146654767199872[4]
Template (ノート 解説) ■Project

WR 134は、太陽系からはくちょう座の方向約6,200光年の距離に位置する、ウォルフ・ライエ星に分類されるアルゴル型食変光星。自身の強力な放射と恒星風によって吹き飛ばされた薄い泡状の星雲に覆われている。半径は太陽の約5倍だが、63,000ケルビン (K) を超える高い有効温度によって太陽の約40万倍の明るさで輝いている。

1867年に、同じくはくちょう座に位置するWR 135、WR 137とともに、連続スペクトル中に強烈な輝線を持つ珍しいスペクトルが発見された[6]。この特異な姿を発見したシャルル・ウォルフジョルジュ・ライエの二人にちなんで「ウォルフ・ライエ星」と呼ばれるようになった最初の星の1つである[6]。同時に発見された他の2星が炭素系列のWC型に分類されるのに対して、WR 134は窒素系列であるWN型に分類される。WR 134のスペクトルには、NVより2 - 5倍強い NIIIと NIV輝線HeIより1.25 - 8倍強いHeIIの輝線、HeIと同じくらいの強さのCIVの輝線が見られるという特徴から、「WN6」に分類されている[5][7]

変光星としてはアルゴル型変光星に分類され、V1769 Cygni と命名されている。変光の周期性はそれほど厳密ではなく、数時間から数日のタイムスケールで明るさが変動している。これまで伴星の検出が試みられてきたが、2020年現在発見されていない。

WR 134からは硬X線軟X線の両方が検出されているが、その発生機構は完全に解明されていない。この放出は、想定される単独星の表面温度とは一致せず、高温の2つの星の恒星風が衝突することで発生しているにしては十分でなく、中性子星白色矮星などのコンパクト星が軌道にあるとは考えづらい[8]

WR 134は、WR 135と1と離れておらず、同じ「はくちょう座OB3アソシエーション」に属し、太陽系からほぼ同じ距離にあると考えられている。一方あるいは両方の星が主系列星の段階にあったときに放出した物質によるものと思われる水素の殻の中に位置している。殻の幅は120光年以上で、約1,830太陽質量の水素が含まれている。2つの星のいずれが水素の殻を主に作ったのかは明らかとなっていない[9]

脚注

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

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  1. ^ a b c d e f g HD 191765 -- Wolf-Rayet Star”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2020年12月27日閲覧。
  2. ^ a b c Ducati, J. R. (2002). “VizieR Online Data Catalog: Catalogue of Stellar Photometry in Johnson's 11-color system”. CDS/ADC Collection of Electronic Catalogues 2237. Bibcode2002yCat.2237....0D. 
  3. ^ Samus’, N. N. et al. (2017). “General catalogue of variable stars: Version GCVS 5.1”. Astronomy Reports 61 (1): 80-88. Bibcode2017ARep...61...80S. doi:10.1134/S1063772917010085. ISSN 1063-7729. https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ5fe824df1a34&-out.add=.&-source=B/gcvs/gcvs_cat&recno=18744. 
  4. ^ a b c d e f Gaia Collaboration. “Gaia data early release 3 (Gaia EDR3)”. VizieR On-line Data Catalog: I/350. Bibcode2020yCat.1350....0G. https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ5fe81c6fb79f&-out.add=.&-source=I/350/gaiaedr3&-c=302.55910921257%20%2B36.17637099127,eq=ICRS,rs=2&-out.orig=o. 
  5. ^ a b c d e f Hamann, W.-R. et al. (2019). “The Galactic WN stars revisited. Impact of Gaia distances on fundamental stellar parameters”. Astronomy & Astrophysics 625: A57. arXiv:1904.04687. Bibcode2019A&A...625A..57H. doi:10.1051/0004-6361/201834850. ISSN 0004-6361. 
  6. ^ a b Huggins, William; Huggins, Margaret Lindsay (1997). “IV. On Wolf and Rayet's bright-line stars in Cygnus”. Proceedings of the Royal Society of London 49 (296-301): 33-46. doi:10.1098/rspl.1890.0063. ISSN 0370-1662. 
  7. ^ Smith, Lindsey F.; Shara, Michael M.; Moffat, Anthony F. J. (1996). “A three-dimensional classification for WN stars”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 281 (1): 163-191. Bibcode1996MNRAS.281..163S. doi:10.1093/mnras/281.1.163. ISSN 0035-8711. 
  8. ^ Gervais, Simon; St-Louis, Nicole (1999). “A Large H [CSC]i[/CSC] Shell surrounding the Wolf-Rayet Star HD 191765”. The Astronomical Journal 118 (5): 2394-2408. Bibcode1999AJ....118.2394G. doi:10.1086/301065. ISSN 0004-6256. 
  9. ^ Sitnik, T. G.; Lozinskaya, T. A. (2009). “Structure and kinematics of the interstellar medium around WR 134 and WR 135”. Astronomy Letters 35 (2): 121-131. Bibcode2009AstL...35..121S. doi:10.1134/S1063773709020066. ISSN 1063-7737. 

外部リンク

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