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高密度焦点式超音波治療法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
HIFUから転送)

高密度焦点式超音波法(こうみつどしょうてんしきちょうおんぱりょうほう、High Intensity Focused Ultrasound)とは、超音波エネルギーを用いて、組織の治療を試みるものである[1]HIFU(ハイフ)と呼ばれる。

仕組み

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パラボラ形状の発振子から超音波を発生しその焦点領域の組織の治療を期待するものである。放射能治療でなく、外科的手術を行わずに組織の治療を行うとしている[1]。超音波画像診断機とは原理的に動作が異なり塩ビフイルムなどの超音波ウエルダーに近い加熱を人体深部で可能と称するものである。超音波は物理振動波であり防音ゴムと同じ弾性体である人体に対し体内深部で焦点を結ぶ事ができるという技術自体に物理の初歩的誤謬がある。ましては複雑に入り組んだ組織の中に到達して焦点を結ぶ事が出来ると考えるのは容易ではあるが技術的に現在ではほぼ不可能である。特にメーカーが展示会などで実機により水道水やアクリルブロック中で焦点を結ぶ実演を行っているがどちらも均一な非圧縮性体での実演であり実際に水中やアクリル片に対してパラボラ発振器の前に厚さ0.1mmのソーセージ片を置くと焦点は消失する。防音ゴム膜は可聴域の比較的波長の長いエネルギーの高い領域の音波を吸収するが携帯電波と同じように周波数が高くなるほど伝達エネルギーは逆に対数的に弱くなるため超音波は弾性体に強く吸収される性質を持つのである。

適応

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現在 日本国内で薬事承認されている適応は、前立腺肥大症、パーキンソン病に対してである。なお米国や英国においてあたかも医療機器として承認を受けたかのニュースが医療校閲者のいないような雑誌でくりかえし流され実際には治験申請制度(PMA)での承認申請書の提出を行ったことを承認を受けたとしているなどかなり際どい宣伝を行っているため米国NIHでは注意を喚起している。そのため法執行機関であるFDAは前立腺肥大症については不適応、また前立腺がんに対しても承認をしていない。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19963452/

臨床用高密度焦点式超音波 (HIFU) 装置に対する FDA の規制

英国NICEでも公式文書で治験方針を示しており現在において前立腺癌の治療には不適切であるとしている。また、以前の文書において前立腺肥大症について効果なし不適応としている。

https://www.nice.org.uk/guidance/ipg118

High-intensity focused ultrasound for prostate cancer

なお治験承認制度(PMA)には結果提出期限があり既にその期限を大きく経ているにもかかわらず提出できている会社はなく今後も承認の可能性はない。元々HIFU装置はごく小資本の企業の製品でありNIHの提示する治験条件を満たすのは困難であるのが理由と思われる。

アルツハイマー病

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ExAblate 2000(InsighTec.,)というMRI治療器でアルツハイマー病につて2017年にPMA(市場試験)が認められ2023年7月期限で正式承認への最終報告が求められている。

https://www.fda.gov/medical-devices/how-study-and-market-your-device/breakthrough-devices-program

類骨骨腫 (非癌性)の治療

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小児の下肢の長骨で成長する良性 (非癌性) の小さな腫瘍に対する治療についてFDAは条件付きでSonalleve MR-HIFUシステム(Profound Medical Inc.)を緊急承認した。

https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-device-treatment-osteoid-osteoma-extremities

美容

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顔のたるみに対し、美容目的での利用がおこなわれている[2]。美容目的のHIFUは、塩ビなど熱溶着フイルムで開発された特定厚みに対する特定周波数の超音波による共振で内部加熱を行う技術であるので焦点を結ぶものではない。そのためHIFUではなくHIRUあるいはHIUというべきもので1メガヘルツ程度の超音波を皮下組織に当てるとある特定厚みで共振を越し熱エネルギーとなり脂肪細胞を柔らかくする効果を期待するものである。[3][4]。しかし弾性のない硬い筋膜や骨格があると超音波は全く別の挙動を示し高熱となるため内部火傷を起こす。また超音波機器の基礎知識の低いものが発振器の取り扱いを誤って非接触を起こすと今度は発振器が加熱して表皮に強い火傷ダメージを与える事故が多数報告されている。顔面には多くの神経が存在し、また超音波発振機の照射対象内の硬い筋膜、神経鞘に火傷ダメージによる、神経障害を引き起こす可能性がある[5]。美容目的のHIFUについて、顔面のまひや視覚障害などの事故が相次いだため[5][6]、2024年に厚生労働省は医師以外の施術は医師法違反にあたるとする通知を出した[7][8]消費者安全調査委員会によると、解剖学的知識や機器の特性、適切な施術方法を熟知していない施術者による危険性が指摘されている[5]。事故発生場所は、エステサロンでの被害が多いが、医療機関での事故も報告されている[8][9]。しかし前立腺治療のHIFUを行っている医師に於いてみられるように超音波知識どころか基礎的な物理知識が欠如しているとしか思えないものが多数いるのも事実である。

超音波は弾性体では急速に吸収され熱となり吸収され焦点を結ぶことはない。無音室がゴムや木材で囲まれているのがその良い例である。英文のWIKIに記載されている数式は弾性体でなく水やアクリル樹脂など非圧縮性体で通用する学生試験で出るような初歩の熱工学の一般的な熱エネルギー伝搬方式であり特に超音波や物理振動波で使われるものではない。レーダー波のようなもっと短い波長でもレーダーに映らないようステルス機全体にゴム塗装が行われているのも同じ例である。なぜ関係ない式が記載されているかは読者の良識に任せたい。

前立腺に対するHIFU治療

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日本でも厚生労働省による薬事承認後ではあるが前立腺肥大症治療で追跡できた全症例でごく短期に再発症し結果として効能が疑問視されている。

日本泌尿器科学会発行の前立腺がん診療ガイドラインでもHIFUによるhockey stick ablation(n=29)後に国際前立腺症状スコア(IPSS),UCLAPCIのurinary functionとurinary botherを用いてQOLを評価した報告では,治療6カ月後,12カ月後にfocal therapy施行群と全体照射群の間で有意差を全く認めなかっ。前立腺癌に対する治療として、東海大 小路らのHIFUによる“がん標的局所治療”では治療前のPSA中央値は7.26ng/mLであったが、治療後には1.59ng/mLまで低下と報告され“集束超音波治療器を用いた前立腺がん局所焼灼・凝固療法”という名称で、2023年2月に、自費負担の先進医療Bとして承認された。

前立腺特異抗原PSA

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前立腺特異抗原(ぜんりつせんとくいこうげん prostate specific antigen : PSA)は、前立腺から分泌され精液中に含まれている分子量33-34kの単鎖状糖蛋白で、タンパク質分解酵素の一種。どういう機能を担っているのかは未解明であるが、健常成人の血清にも一定量含まれるため精漿の粘度を調整して精子の運動を助けているなど何らかの必要な補酵素として働いているのではないかと考えられている。

もともと前立腺組織が生成するたんぱく分解酵素であり前立腺癌組織が生成する癌特異抗原ではないことに注意すべきである。

PSAは早期前立腺癌において血清中の数値の変動が病勢と一致する例が多いため血清検査で腫瘍マーカーとしての特性を備えており、臨床的に広く使用されることとなった。多くの検査用キットでは4ng/ml以下が正常とされ、グレイゾーン(PSA値4-10ng/ml)の範囲で30%前後の確率(前立腺研究財団編:前立腺がん検診テキスト)で前立腺癌が発見される。しかし、言い換えればグレイゾーンでも70%前後は前立腺癌ではないことになる。「PSA高値イコール前立腺癌」という盲信が、一般の人間に限らず医師の間にも常識になっているので注意が必要である。

また炎症(前立腺炎)や、前立腺肥大症、加齢などでも上昇する。

前立腺肥大症でもPSA値は高くなる。PSA値を前立腺の体積で割ったPSA密度(PSA density)が0.15以上である場合、前立腺癌の可能性が高くなる

PSA値の経時変化を追い、PSA値の上昇の速度(PSA velocity)を測ることにより、癌のリスクを評価する。1年間に0.8以上上昇する場合には精査を勧める。

脚注

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文献

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  • 小路 直, 内田豊昭. 「高密度焦点式超音波療法(HIFU)」『放射線医科学』 医療科学社 2016年 p.173-175

関連項目

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外部リンク

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