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ジェームズ・バートリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
James Bartleyから転送)

ジェームズ・バートリー(James bartley, 1870–1909)は、19世紀後半にマッコウクジラに飲み込まれたという人物である。彼は数日後に捕獲されたクジラの胃の中で生きているのを発見された。

この話はアメリカミズーリ州セントルイスの新聞「セントルイス・グローブ・デモクラット」に匿名で掲載され、その後他の新聞にも「現代のヨナ」というタイトルで掲載された。 [1]

このニュースは「クジラの胃の中の男」という記事でアメリカ国外へも広まり、イギリスのグレートヤーマスの新聞である「ヤーマス・マーキュリー」では1891年8月22日号の8ページに「現代のヨナの救出」というタイトルで掲載された。 [2] [3]

あらすじ

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報道されているストーリーによると、1891年にフォークランド諸島沖でバートリーの乗る船が捕鯨を行っていた際に起きたとされる。捕獲したクジラが暴れた事でバートリーがクジラの口の中に入ってしまい、そのまま飲み込まれてしまう。

バートリーの仲間は彼がクジラの体内で生存しているとは思わず、捕獲したクジラの解体に取り掛かったところ、胃の中でバートリーが生存しているのを発見。36時間ぶりに助け出された。しかし胃液でバートリーの皮膚は漂白され、視力を失っていた。これほどのダメージを受けたが、3週間で仕事に復帰したとする説もある。

バートリーは事故から18年後に亡くなり、グロスターにある彼の墓には"James Bartley - a modern day Jonah."(ジェームス・バートリー 現代のヨナ)と書かれている。 [4] [5]

1896年、ニューヨーク・ワールド紙に「A Modern Jonah Proves his Story」と題した記事が掲載された。この記事はウィリアム・ジャスティン・ハーシャ牧師が語ったこの話の一部を引用し、いくつかの見解を述べている。 [6]これに続いてその1週間後、読者からの反響を簡単にまとめた記事が掲載され、[7]さらにウィリアム・L・ストーンが「巨大な人喰いザメ」にまつわる同様の話を紹介した記事を掲載している。 [8] [9]

フランスの科学者デ・パービルは、1914年に「Journal des Débats」にこの疑惑の事件を報告した。[2]

調査

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最近になって、歴史家のエドワード・B・デイビスが”現代のヨナ”の物語の事実を丹念に調べ、多くの矛盾点を指摘した。

物語に登場する船は「The Star of the East」だが、事件が起きたとされる時期に同名の英国船は存在しており、事件当時にフォークランド付近を航海していた可能性はあるが、当該船舶は捕鯨船ではなく、乗組員の中にバートリーは含まれていなかったという。 [2]

また、The Star of the East船長の妻であるジョン・キラム夫人は、

「クジラの話には一言も真実がない」

「私はずっと夫と一緒に船に乗っていたが、海に落ちた人は誰も居ない。」

という内容の手紙を書いている。

デイビスはこの話が、バートリーの事件の起きる少し前の1891年6月にグレート・ヤーマス付近で殺され大きな話題を呼んだ30フィートのロークォ―ル(クジラ)「ゴールストンクジラ」に触発されたのではないかと指摘した。 [10]

この話の信憑性には疑問が残るが、マッコウクジラが人間を呑み込む事は物理的に可能であり、ダイオウイカを丸呑みにすることも知られている。 [11]

しかし飲み込まれた人間はクジラの胃の中で押し潰されたり、溺れたり、窒息すると思われる。

なおマッコウクジラの胃は反芻動物と同様4つに分かれている。第1の胃は消化液を分泌せず、非常に厚い筋肉の壁で餌を押し潰し、飲み込んだイカの爪と吸盤の攻撃に対抗する(クジラは咀嚼できないため)。 第2の胃は第1の胃より大きく、消化液が分泌され、消化される。 [12]

文化的参照

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ジョージ・オーウェルは、1939年に発表した『Coming Up for Air』という小説でこの事件について2回言及している(ただし、1940年に発表したエッセイ「 Inside the Whale 」では言及していない)。

アーサー・C・クラークの小説『幼年期の終り』やJ.M. レッドガードの小説『Submergence』でも言及しているが、後者では飲み込まれた人物の名前を”John More”としている。 [13]

またクライブ・カッスラーは、小説『パンデミックを阻止せよ』(Medusa)の中でジェームズ・バートリーの話を紹介している。1965年に放送されたテレビドラマ「原子力潜水艦シービュー号」のエピソード「Jonah and the Whale」にも登場する。 [14]

脚注

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  1. ^ The Wheeling Daily Intelligencer, July 2, 1891 (Wheeling, W. Va.); The Wichita Daily Eagle, August 6, 1891 (Wichita, Kan.); The Morning Call, July 6, 1891; "The Modern Mr. Jonah" The Daily Independent, July 14, 1891 (Helena, Mont.); "A Real Living Jonah" Wood County Reporter, July 30, 1891 (Grand Rapids, Wis.); "Swallowed by a Whale" The Somerset Herald, August 19, 1891 (Somerset, Pa.) At the beginning of this article they wrote: "Correspondent from the veracious St. Louis Globe Democrat writes from New London, Conn., has just arrived..."; "A Living Jonah" St. Johnsbury Caledonian. September 17, 1891 (St. Johnsbury, Vt.) University of Vermont. At the end of this another article they wrote: (New London (Conn.) Cor. St. Louis Globe Democrat.
  2. ^ a b c Edward Davis, A Whale of a Tale: Fundamentalist Fish Stories. Perspectives on Science and Christian Faith 43 (1991): 224-37
  3. ^ Cited in Peggotty, "Army shot at lost whale, thinking it was German submarine, in River Yare," Great Yarmouth Mercury (6 May 2016): http://greatyarmouthmercury.co.uk/1.4524849 (Accessed 16 May 2016)
  4. ^ Robert B. Durham, "Modern Folklore", David Gunston, "The man who lived in a whale", Sunday Mail, May 12, 1985, page 15
  5. ^ Swallowed by a Whale”. Ycaol.com. 2018年8月14日閲覧。
  6. ^ Cited in "Personal," The New York Times (17 November 1896): https://www.nytimes.com/1896/11/17/archives/personal.html (Accessed 16 May 2016)
  7. ^ Cited in "Topics of the Times," The New York Times (25 November 1896): https://www.nytimes.com/1896/11/25/archives/topics-of-the-times.html (Accessed 16 May 2016)
  8. ^ Cited in "A Shark Story of Great Merit," The New York Times (4 December 1896): https://www.nytimes.com/1896/12/04/archives/a-shark-story-of-great-merit.html (Accessed 16 May 2016)
  9. ^ [The article "A Modern Jonah Proves his Story." appeared in the newspaper called New York World (April 12, 1896), and not in the New York Times as erroneously repeated in several investigations.
  10. ^ [Robert B. Durham, "Modern Folklore"]
  11. ^ Could a Whale Accidentally Swallow You? It Is Possible | Smart News | Smithsonian”. Smithsonianmag.com (2013年2月25日). 2018年8月14日閲覧。
  12. ^ Tinker, Spencer Wilkie (1988). Whales of the World. Brill Archive, p. 62, ISBN 0-935848-47-9
  13. ^ J. M. Ledgard (2013). "Submergence", p. 33-34. Coffee House Press, Minneapolis. ISBN 978-1-56689-319-0.
  14. ^ Robert B. Durham, "Modern Folklore"

関連項目

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外部リンク

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