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カーツウェル・K2600

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Kurzweil K2600から転送)

カーツウェルK2600とは、1999年に発売された、カーツウェルKurzweil )のシンセサイザーの商品・型番名である。

特徴

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V.A.S.T(Variable Architecture Synthesis Technology )という音源システムと、KDFXと呼ばれる独自のエフェクト機構を内蔵している。大きなリボンコントローラーが特徴で、多彩なエフェクトをコントロールできる。従来機であるK2500からの変更点としては、トリプルモード、KB3モード(ハモンドオルガンのシミュレート)の追加、ピアノROMの標準搭載、などが挙げられる。 本体カラーはの2種類が存在したが、現在は黒のみが流通している模様である。

  • V.A.S.T(Variable Architecture Synthesis Technology

V.A.S.Tでは、オシレータ、フィルター、アンプといったシンセサイザーの基本構成自体を「アルゴリズム」と呼ぶ。これを選択し、さらにアルゴリズム内で機能を選択することで、ある程度シンセサイザーとしての構成を変更することができる、セミモジュラーとも言うべき構造である。これにより、K2600シリーズでは複数種類のフィルターを切り替えたり同時使用したり、フィルター以外に倍音を加える機能を用いたり、同一のレイヤー内で信号をパラレル化して別々の処理(フィルター等)の後でミックスして出力するなど、多彩なプロセッシングが可能になっている。

例として、プリセット5番「Rock Grand」のレイヤー1はこのようになっている。

[PITCH] - [PARA TREBLE] - [LOPASS] - [AMP]  (アルゴリズム4番)

この中で「PITCH」「AMP」はすべてのアルゴリズムで共通だが、その間に挟まる機能とそのつながり方(直列・並列)はアルゴリズムによって異なる。

アルゴリズム4番では、[PARA TREBLE]の部分で[PARA BASS]、[PARA MID]、[2POLE LOPASS]、[2PARAM SHAPER]、[BANDPASS FILT]、[NOTCH FILTER]などを、

[LOPASS]の部分では[GAIN]、[SHAPER]、[DIST]、[SW+SHP]、[SAW+]などを選択して使用することができる。

たとえばSAW+はDSPによるオシレータの鋸波であり、48音という発音数とは別にオシレータを持っていて鳴らすことが可能になっている。

また、SHAPERは波形に対して倍音を付加し、クリップすると折り返し波形が加わるというものである。値を調整することでFM変調に近い効果が得られる。

V.A.S.Tの典型的な活用例として、アルゴリズム8番を使用した例を示す。

[PITCH] - [GAIN] - [SAW+] - [SHAPER] - [AMP]

この例では、キーマップで選択したPCM波形をモジュレータ、SAW+をSHAPERで加工した波形をキャリアとしたFMシンセサイザーを構築している。

このときSHAPERの値を1.000としておくことでSAW+の出力がサイン波となり、FMシンセサイザーとして最適な結果が得られる。

モジュレーションの量(モジュレータのアウトプットレベル)を[GAIN]で、周波数はキーマップとSAW+の音程でそれぞれ設定する。

基本的に1音色は3レイヤーで構成する。「ドラム・プログラム」に設定した音色では32レイヤーを扱うことができる。また、音色に使用する波形のセットを「キーマップ」と呼ぶが、K2600シリーズやその前身であるK2000、K2500シリーズではキーマップの段階で8段階までのベロシティ・スプリットを組むことができるため、強弱の音色変化が3段階しか設定できないわけではない。

  • トリプルモード

k2600シリーズで加わった新機能で、上記で解説したV.A.S.Tの3レイヤーを重ねるのではなく、横一列に並べることでより長大なアルゴリズムを構成し、複雑なプロセッシングを実現する。

  • KDFX

独自のエフェクターで、2つのパラメトリックEQを持った入力バスを4つ、それぞれに対するインサートバス、そしてAUXバスを持った仮想スタジオを構成して使用する。

インサートバスとAUXバスにはプリセットのほか、ユーザーが作成したエフェクトチェインを割り当てることができる。

高機能だが、構成上、日本製のDTM音源などに多く見られるMIDIチャンネルごとに異なるセンド量でのAUXワーク(例・パートごとにリバーブの量を変えるなど)は不可能となっている。

  • KB3

44ボイス分のDSPパワーを使用してHAMMOND B-3をエミュレートする仮想トーンホイール・オルガンともいうべき機能。

KB3では8つのスライダーとモジュレーションホイールをあわせて9本のドローバーに見立て、また、搭載されたスイッチを使用してビブラート/コーラス、レズリーのスロー・ファストのコントロールやパーカッションのオン/オフ、音程設定、ディケイの選択など、B-3に近いコントロールが可能。

また、トーンホイールに使用する波形を自由に選択できるほか、隣接するトーンホイールのサウンドが混ざってしまうリーケージノイズの具合なども設定することができる。

レズリースピーカーのシミュレーションはKDFXで行う。

KB3のプリセットを選んでもマルチティンバー音源として機能するため、ボイス数の制約はあるものの、KB3によるオルガンとベースを同時に演奏する等も可能になっている。

  • ピアノROM

K2500シリーズのオプションとして用意された4MBのステレオピアノROMを標準搭載している。このピアノサウンドは同社micro pianoと同一録音だが、micro pianoはモノラル、K2500/2600シリーズのものはステレオとなっている。(ただし、モノラルバージョンもROMに収録されており音色作りに活用することができる。)

  • サンプラー機能

K2600シリーズは、前身であるK2000、K2500同様にサンプラーでもある。サンプリングのための入力端子等はオプションだが、SIMMによりRAMを搭載することで、WAVファイル等を読み込んでプレイバック・サンプラーとして使用することは可能。また波形編集機能も搭載している。他社サンプラーフォーマットとしては、AKAI、ENSONQ、Rolandのものを読み込み可能となっている。

  • 外部ストレージ

K2600シリーズは2HD対応の3.5インチフロッピーディスクドライブを搭載している(K2661のみスマートメディア)。

また、D-SUB 25pin型のSCSI端子をもち、CD-ROMドライブ、HDD、MO、Zipなどのストレージデバイスを装着することができる。K2661以外では、HDDなどの内蔵も可能である。

ファイルシステムとしてはWindowsのFATと互換性があるため、Windowsで書き込んだフロッピー、MO等をそのまま利用できる。

この場合MOの種別は230MBのものが安全である。

ラインナップ

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  • K2600 - セミウェイテッド76鍵モデル
  • K2600X - フルウェイテッド88鍵モデル
  • K2600R - 3Uラックマウントモデル
  • K2661 - 61鍵モデル

音源部はいずれも同じ。

K2600,K2600Xはスライダーの数も同じで、違いは鍵盤数とその構造のみとなっている。

K2600Rはラックマウントモデルのため、スライダー、リボンコントローラ、ペダル入力、ブレス・コントローラ入力等を持たない。

K2661はリボンコントローラがオプションとなっているが、他モデルではオプションとなっているP/RAM(ユーザーが音色等を保存する領域を拡張するオプション)、

オーケストラROM、コンテンポラリROM、GMROM、ADAT出力をデフォルトで搭載している。ただしK2661のADATは、同期のマスターとしてしか機能しない。

また、初期状態でサンプリングオプションを搭載したバージョンがそれぞれK2600S、K2600XS、K2600RSとして発売された。

スペック

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  • 音源方式:V.A.S.T(Variable Architecture Synthesis Technology
  • 最大同時発音数 :48音(DSPによるオシレータを含めると、192オシレータ)
  • 波形メモリー容量:12MB(最大44MBまで拡張可能)
  • エフェクト部:KDFX
  • サンプルメモリ:4MB(最大128MB)
  • コントローラー:スライダー×8、モジュレーションホイール、ピッチベンダー、リボンコントローラー×2

オプション

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  • ROM-1 オーケストラROM : 8MBのオーケストラサウンドを追加。K2661には標準搭載。
  • ROM-2 コンテンポラリーROM : 8MBのエスニック、シンセ、ドラム、その他生楽器系のサウンドを追加K2661には標準搭載。
  • ROM-3 ステレオダイナミックピアノROM : 4MBのピアノを追加。本体のものに対する強弱の補完になっている。
  • ROM-4 ビンテージキーROM :8MBのビンテージエレピなどを追加。
  • ROM-5 GM ROM : GM音源に必要な波形を追加する。 ROM-4とROM-5は排他になっており、どちらか一枚しか搭載できない。(GMが標準搭載のK2661を除く)
  • ドーターボード RMB-26 : K2661を除く2600シリーズにサウンドROMを追加するためのドーターボード。
  • P/RAM : ユーザーによる保存領域を拡張するオプション。K2661には標準搭載。
  • スーパーリボンコントローラ : 60mmのリボンコントローラで、K2600X、K2600には標準搭載。K2661用。
  • サンプリングオプション SMP-26X : アナログ/デジタルの入力を追加するオプションで、これによりK2600シリーズは完全なサンプラーとして機能する。 入力信号をKDFXでプロセスするエフェクターとしても使用可能になる。 K2661用には、SMP-61が必要で互換性は無い。

そのほかにもデジタル入出力などのオプションが発売された。

使用していたミュージシャン

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