次世代分隊火器プログラム
次世代分隊火器プログラム(じせだいぶんたいかきプログラム、Next Generation Squad Weapon、NGSW)とは、アメリカ軍に制式採用されているM4カービン銃およびM249軽機関銃(共に5.56mm弾薬を使用)ならびに7.62mmM240機関銃を、6.8mmの新型弾薬を使用する共通システムで更新し、さらには新型の小火器用射撃統制システムを開発することを目標として、2017年に開始されたトライアルである[1][2]。
防衛企業7社が本プログラムに参加し、うち5社が小火器を、うち2社が射撃統制装置を提案した[3]。2022年初頭、アメリカ陸軍は正式に結果を発表し、小火器部門ではSIG SauerのXM7ライフルとXM250分隊支援火器が、射撃統制システムではVortex OpticsのXM157が[3]、弾薬としてはSIG Sauerが設計し、Winchesterが製造する6.8mm弾が選定された[4][5][6]。本プログラムは、初年度に1,000万ドル、次の年に1億5,000万ドルの費用を要すると予想されていた[5][6][1]。
歴史
[編集]本プログラムは2017年に開始された。
これに先立ち、アメリカ合衆国議会は、既存のM4カービンをSOCOMのen:SOPMODフリーフローティングレールでアップグレードする必要性に関して評価を実施するようアメリカ陸軍に命令を出していた。M4カービンは依然として兵士らから好評であり、ストレス下でも優れた性能を発揮すると結論付けられた。給弾不良の問題等もあったが、弾薬とマガジンの改善により対策されていた。
2017年12月、米陸軍の兵士強化計画(Soldier Enhancement Program)の調査結果が公表され、M4をフリーフロートレールで改造するよりも費用対効果の高いソリューションとして、次世代分隊火器プログラムの推進が推奨された[7]。
M4の更新は以前も計画され、OICWプログラムなどが実施されたが、いずれも資金不足等の理由により成功しなかった[8][信頼性要検証]][9]。
本プログラムは、陸軍とアメリカ空軍のXM17モジュラーハンドガンシステムプログラムに続くものである。
プログラムコンポーネント
[編集]武器
[編集]2017年、米陸軍は次世代分隊火器の要求事項を公表した[6][1][2]。
本プログラムにおけるライフル(NGSW-R)には、特に6.8mm弾の採用等が求められた。
本プログラムにおける分隊支援火器(NGSW-AR)には以下の事項が求められた。
- 全長が35 in (890 mm)を超えないこと
- アタッチメント込みの重量が12 lb (5.4 kg)を超えないこと
- 3,900 ft (1,200 m)先の目標を制圧できること
- 2,000 ft (610 m)先の目標に命中すること
- 小火器用射撃統制システムを利用可能であること
2022年4月19日、27か月間にわたる試作と評価を経て、陸軍は、SIG Sauerが契約を獲得し、今後10年間、M4カービンとM249の後継銃を製造すると発表した[10]。XM7と命名された新しいライフルは同社のSIG MCX SPEARライフルを基にしており、XM250と命名された新しい分隊支援火器は同社のSIG MG 6.8を基にしている[11]。
同社は、低率初期生産として、25丁のXM7および15丁のXM250ならびに各銃のテスト用および生産ラインの微調整用の「大量の」弾薬を、計1,040万ドルで受注した[12]。
米陸軍のプレスリリースによれば、これらの新武器は「精度、射程および総合的な致死性において大幅な能力向上をもたらすだろう。軽量であり、より高威力の弾薬を発射し、反動を軽減し、銃身の性能を向上させ、統合型のサプレッサーを備えている」とのことである[4]。
選定:
- SIG Sauer: SIG MCX SPEARライフル(XM7)およびSIG LMG 6.8(XM250)ベルト給弾機関銃(カスタム6.8×51 SIG FURY真鍮・鉄ハイブリッド薬莢弾使用)
敗退:
- Lone Star Future WeaponsおよびベレッタUSA: RM-277RブルパップライフルおよびRM-277AR機関銃(True Velocity .277 TVCMポリマー薬莢弾使用)[13][14][15][16]
- PCPTactical: デザートテック MDR[17]ライフル兼軽機関銃(PCP Ammunition製6.8mm複合素材薬莢弾使用)
- FNアメリカ: HAMRライフルおよびFN EVOLYS軽機関銃(フェデラル・カートリッジ製6.8mm弾使用)[18][19][20]
- テキストロン: Textron CT SystemライフルおよびLSAT軽機関銃(Olin Winchester CT 6.8mm ポリマー薬莢テレスコピック弾使用)[21]
射撃統制システム
[編集]本プログラムの一部として、小火器用の新しい射撃統制システムの競作も行われた。Vortex OpticsとL3ハリス・テクノロジーズの2社が参加し、両社とも要求事項に従ってレーザー距離計、直視光学スコープ、デジタルオーバーレイおよび弾道計算システムを採用した統合型射撃統制システムを設計した[22]。2022年1月下旬、米陸軍はVortex Opticsの製品を選定し、XM157射撃統制システムと命名した[22][23]。
弾薬
[編集]NGSWでは、各ベンダーが官給品となるべき6.8mm汎用弾薬の候補を設計し評価を受けた。2022年1月、ウィンチェスターが弾薬製造の契約を獲得した。2022年4月、True Velocityのポリマー薬莢弾ではなく、SIG Sauerの金属ハイブリッド薬莢弾が選定された[4]。
選定:
- SIG Sauer: 6.8×51mm FURY金属ハイブリッド薬莢弾
敗退:
- True Velocity:True Velocity .277 TVCM ポリマー薬莢弾
関連項目
[編集]脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c “Army is saying goodbye to the M249 Squad Automatic Rifle after thirty years”. Popular Military (2018年7月12日). 2018年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月20日閲覧。
- ^ a b “Next Generation Squad Weapons (NGSW)” (英語). United States Army Acquisition Support Center. 2022年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月7日閲覧。
- ^ a b Moss (2022年1月7日). “Vortex Win US Army Next Generation Squad Weapons - Fire Control Contract -”. The Firearm Blog. 2022年6月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ a b c U.S. Army Public Affairs (2022年4月19日). “Army awards Next Generation Squad Weapon contract”. United States Army. 2022年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月19日閲覧。
- ^ a b Cox (2018年12月20日). “Army to Seek Prototypes for M4/M249 SAW Replacements in Early 2019” (英語). Military.com. 2022年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月20日閲覧。
- ^ a b c Woody (2017年6月12日). “The Army wants to ditch the M249 SAW and give the infantry more firepower” (英語). Business Insider. 2022年5月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月20日閲覧。
- ^ “S. Rept. 115-262 - THE JOHN S. McCAIN NATIONAL DEFENSE AUTHORIZATION ACT FOR FISCAL YEAR 2019 - THE JOHN S. McCAIN NATIONAL DEFENSE AUTHORIZATION ACT FOR FISCAL YEAR 2019”. Congress.gov. Library of Congress (2018年6月5日). 2019年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月3日閲覧。
- ^ Winward (2000年5月27日). “Objective Infantry Combat Weapon”. Tango Fox. 2000年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月21日閲覧。
- ^ Cox (2017年10月31日). “Army: Gun Makers Didn't Meet Reliability Standard” (英語). Military.com. 2013年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月21日閲覧。
- ^ Beinart (2022年4月19日). “Sig Sauer Wins 10-Year Deal To Deliver Army's Next-Gen Squad Weapons” (英語). Defense Daily. 2022年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月25日閲覧。
- ^ Beynon. “Army Picks Its Replacement for the M4 and SAW” (英語). Military.com. 20 May 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月2日閲覧。
- ^ Kenney (20 April 2022). “Soldiers Will Have to Wait Until Next Year for New Rifle, Ammo” (英語). Defense One. 18 May 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月22日閲覧。
- ^ “US Army Grants NGSW Novation from General Dynamics-OTS, Inc to LoneStar Future Weapons”. Soldier Systems Daily (1 September 2021). 14 December 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ Moss (14 April 2021). “NGSW: LoneStar Future Weapons Forms Strategic Alliance with True Velocity in Place of General Dynamics”. The Firearm Blog. 20 May 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ Moss (10 November 2021). “True Velocity Acquires LoneStar Future Weapons”. The Firearm Blog. 20 May 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ Moss (19 January 2022). “[SHOT 2022 Beretta & True Velocity Confirm Partnership & Announce Civilian RM277]”. The Firearm Blog. 1 May 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ “The Desert Tech Next Generation Squad Weapons Prototypes”. Soldier Systems Daily (10 March 2020). 22 March 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ “FN to produce two prototypes for the Next Generation Squad Automatic Rifle program”. all4shooters.com (1 August 2018). 16 December 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ “NGSW: Future Infantry Weapons?”. Finabel (14 August 2019). 16 December 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ “FN Down-Selected to Produce Two Prototype Options for U.S. Army Next Generation Squad Automatic Rifle Program”. FN America (16 July 2018). 16 December 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ Moss (18 November 2021). “Is Textron Out of the NGSW Program?”. The Firearm Blog. 17 May 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
- ^ a b Keller (2021年2月2日). “This could be the Army's next-generation rifle optic of choice” (英語). Task & Purpose. 5 June 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月6日閲覧。
- ^ “Vortex Optics to Produce Next-Gen Fire Controls Under $2.7B Army Follow-On OTA”. GovConWire (10 January 2022). 16 February 2022時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。