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ポーランドボール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Polandballから転送)
ポーランドボールでのポーランド。実際のポーランドの国旗は赤が下で白が上だが、ポーランドボールにおいてはこのように描かれる事が多い。

ポーランドボールドイツ語: Polandball)は、国家を題材としたインターネット・ミームまたはそのキャラクター。主にそれぞれの国にまつわるクリシェ、国際関係、歴史上の出来事を表現するイラストレーション漫画、皮肉や風刺に用いられることが主である。「カントリーボール(Countryball)」とも称される。

歴史

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起源

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ポーランドボールの起源はdrawball.comとされており、ユーザーは「drawball」と呼ばれる円形のキャンバスに自由な絵を描くことができた[1][2][3]。2009年8月からwykop.plポーランド語版やPokazyWarkaなどの複数のウェブサイトからポーランドのネットユーザーが中央に「POLSKA」と入るようにポーランド国旗のイラストを大量に投稿し、文字通りの「ポーランドボール」となった[4][5]

他のユーザーは配色をモンスターボールにしたり、巨大な鉤十字ハーケンクロイツ)を描くなどしてアートワークを妨害しようとした[3][4][6]。また、同年8月18日にはハッカーがnk.plポーランド語版とwykop.plにサイバー攻撃を行った。サイバー攻撃に耐えることは成功したものの、同日中は動作が遅くなった[4]

ポーランドボールを用いた最初の漫画

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ウィキペディアを荒らし、イギリスにトイレ掃除を命じられるポーランドの様子を描いた漫画

現在のポーランドボールのフォーマットの作者はドイツの画像掲示板『Krautchan.net』のイギリス人投稿者である「Falco」とされており、2009年9月に /int/掲示板で投稿したとしている。ポーランドは逆さま(インドネシアモナコの国旗に類似)に描かれており、意図的かFalcoが間違いに気づいていないかといったことで議論がされている[3][7][8]

イギリスの雑誌、ショートリスト英語版イタリアのアニメーター、ブルーノ・ボゼット英語版政治風刺英語版作品の一つである「Europe VS Italy」の影響を受けた可能性が高いと指摘した[9]。しかし、政治的に作成されたものではなく、誤った英語英語版を話すWojak英語版というユーザーをからかうために作成されたものである[4][6][10]

最初の漫画が作成されてから、ポーランドボールを用いた漫画を作成することは掲示板のユーザー(特に複数のキャラクターを作成したロシア人のユーザー)にとって人気となり[4][10][11] 、2009年10月15日に新しいポーランドボールのコミュニティが作成された[12]。2010年4月10日に発生したポーランド空軍Tu-154墜落事故の際にも広がりを見せるようになった[10][13]

人気

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ポーランドボールはミームとして人気を博し、Reddit[11][14]Facebook[15]を始めとするプラットフォームにコミュニティを獲得した。ポーランドボールが人気な理由として、様々な文化をシンプルかつユーモラスに解説でき、短い漫画でも解説出来ることが挙げられている[7][16]。また、出来事によって変化する世界地図を含めた歴史改変SFも一般的とされている[17][18]

2015年7月時点でFacebookコミュニティには215,000人以上のメンバーがいるが[19]、メインコミュニティは鉤十字といったヘイトシンボルを頻繁に使用しているため、複数回禁止されている[20][21]r/polandballの登録者数は2024年までに65万人以上となった[7][22]。また、ファンダムPolandball wikiは、ファンダムによって削除されるまでに480,159回の編集があった[7]

テーマ

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"Poland cannot into space"(ポーランドは宇宙に行けない) 〔ママ〕 「ポーランドは宇宙に行けない」ことをテーマとした2012年の漫画。2012年にポーランドが欧州宇宙機関へ加盟したことに言及している。

ポーランド

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前提として、国やその歴史、外交関係、ステレオタイプを表現しており[10][23]、誇大妄想や国家コンプレックスに焦点を当てている[5][24]。また、英語圏以外のポーランドボールのセリフは誤った英語やインターネットスラングであることが多く、漫画の最後ではポーランドが泣いていることがある[4][5]。ポーランドボールにおけるポーランドの表現はステレオタイプに依存していることがあり、その例として「ポーランド人は英語が堪能ではない」「ポーランド自体が頭の固いカトリック教徒だらけの国」といったものが挙げられる[3]

ポーランドボールを用いた漫画の中には、「ある国は宇宙に行けるが、ポーランドは宇宙に行けない」といった前提で作成されたものがあり[25][26]、その一つとして地球が天体衝突に見舞われ、宇宙技術を持った国が地球の軌道に乗っている状況で始まるものがある。その漫画の最後では、地球にいるポーランドが泣いていて、「ポーランドは宇宙に行けない」と言う[注釈 1][10][29]。このジョークポーランド語版によって、他のボールは、ポーランド人との「どの国が優れているか」ということに関する議論を中止した[4][10][23]

その他の国

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2013年にユーロマイダンが行なった欧州連合・ウクライナ連合協定英語版を描いたポーランドボールのグラフィティアート

ポーランドボールにはポーランド以外の国も登場し、これらの漫画をポーランドボール漫画と呼ぶことがある[4]カントリーボールと呼ばれることも多い[11]。州や県といった行政区画や、国際機関(欧州連合北大西洋条約機構国際連合など)存在しない国家(ローマ帝国)などが使用される[30]。その他には、ロシア枢軸国を撃退したなどの過去の成功や出来事を回想していることが多い[31]

ポーランドボールの漫画には確立された描き方があり、イギリス紅茶を飲みながらモノクルシルクハットを着用しており[22][32]、アメリカは大きな黒いサングラスを掛けており、自己中心的なボールとして描かれている[32]

漫画によく登場するキャラクターの一つにドイツ帝国の国旗と無表情な白い点が描かれた長方形のライヒタングルがある。他の国々(特にポーランド)の後ろに立ち、「Guten tag(グーテンターク)」と言い、食べると脅して、他の国々を怖がらせることが多い[1][33]。公式では架空の「第4帝国」だが、漫画によってはドイツ軍またはドイツ帝国主義を抱えている[20]

ネパールアメリカ合衆国オハイオ州は旗の形に因んで、ギザギザの歯を持つ怪物(「rawrs」として知られいる)と描かれており[17]モンテネグロは、「Lazy Olympics(怠け者のオリンピック)」に因み寝ている怠け者として描かれることが多い[34]。国旗が存在しない場合はビリヤードボールとして描かれる[2]

ポーランドボールはシンプルであるため、国際的な出来事へのコメントも出来るミームとなっている[30]。ポーランドボールで取り上げられた後にメディアで取り上げられた例は尖閣諸島問題[35]2013年ローマ教皇選挙英語版[36]尊厳の革命[29][30][37]ロシアによるクリミアの併合[14]台湾のフィリピン労働者に関する問題英語版[38]などがある。

評価

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エストニア北欧諸国を風刺した漫画

Wojciech Oleksiakは、「culture.pl」(ポーランドの言語や文化を伝えるアダム・ミツキェヴィチ・インスティテュートポーランド語版内のプロジェクト)で、ポーランドボールを用いた漫画によって人種や宗教、歴史などに関する自分の主張を簡単に表現することできると指摘しているほか、ポーランドボールのことを「素晴らしいネットミーム」と評しているが、ポーランドボールを用いた漫画に対して「失礼、無礼、人種差別的、虐待的」などと否定的に評している。その一方で、政治的に正しくない性質がこのミームの魅力を挙げている要因ではないかと指摘している[39]

また、ポーランドボールを用いた漫画での「ポーランド人は英語が堪能ではない」「ポーランド自体が頭の固いカトリック教徒だらけの国」といったポーランド人に対する誇張した表現(ステレオタイプ)が頻繁に使用されていることも指摘しているが、ポーランド人が「ポーランドの輝かしい歴史」を語ることや「殉教にこだわる」といった一部の表現は事実と認めている。一方で、「ポーランド人は多くの国家コンプレックスを抱え、失敗の原因をその他の国家のせいにする英語版」といった固定概念に対しては事実ではあるが、ある程度は正当化されていると述べている。さらに、ポーランドボールからポーランド人は「長年の恨みをユーモアで学べる」と述べている[39]

大衆文化としての「ポーランドボール」

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Microsoft WindowsSteamにて2021年6月に『Countryballs: Modern Ballfare[40]、2021年11月に『CountryBalls Heroes』がリリースされた。このうち、『CountryBalls Heroes』はゲーム開発世界選手権2021(GDWC)の第38回ファンのお気に入り部門で優勝した[41]

脚注

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注釈

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  1. ^ ポーランド人ではミロスワフ・ヘルマシェフスキが宇宙飛行を行っており[27]ポーランド宇宙局英語版からはイーグルアイ英語版が打ち上げに成功している[28]

出典

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関連項目

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外部リンク

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