Synchronous Digital Hierarchy
TCP/IP群 |
---|
アプリケーション層 |
|
トランスポート層 |
カテゴリ |
インターネット層 |
カテゴリ |
リンク層 |
カテゴリ |
SONET/SDH(Synchronous Optical NETwork, 同期型光ネットワーク および Synchronous Digital Hierarchy, 同期デジタルハイアラーキ)は、光ファイバ通信のプロトコルの1つ。同期方式を用いた通信プロトコルで、以下の2つの規格の総称として用いられる[1]。
これらの前身にPDH (plesiochronous digital hierarchy, 「準同期型デジタル階層網」の意)があり、当時は日本では一次群・二次群、アメリカではT1・T2、ヨーロッパではE1・E2などの異なる通信方式が普及していた。このように地域によって異なっていたPDHの仕様を世界的に統一する目的でSONETは規定された[3]。
標準化規格は2015年を最後に更新されておらず[4]、運用普及においてもOTNや広域イーサネットなどの別の通信技術に差し替えられている。
種類と用語
[編集]SONET/SDH には伝送速度に基づいて下表のような系列がある[5]。
名称 | 伝送速度 [Mbps] | ||
---|---|---|---|
SDH | SONET | フレーム全体 | コンテナ |
STM-0 | OC-1 / STS-1 | 51.84 | 49.536 |
STM-1 | OC-3 / STS-3 | 155.52 | 149.76 |
STM-4 | OC-12 / STS-12 | 622.08 | 599.04 |
STM-16 | OC-48 / STS-48 | 2488.32 | 2396.16 |
STM-64 | OC-192 / STS-192 | 9953.28 | 9584.64 |
STM-256 | OC-768 / STS-768 | 39813.12 | 38338.56 |
- OC (Optical Carrier): 光信号の仕様・回線速度
- STS (Synchronous Transport Signal): SONETのフレーム書式
- STM (Synchronous Transport Module): SDHのフレーム書式と光信号の仕様
SONET と SDH とでは異なる用語で同じ仕様・機能を指すことがしばしばあるが、いくつかの相違点はあるものの基本的には SDH は SONET を包含すると考えてよい。ANSI側のSONET規格文書は、ATIS (Alliance For Telecommunications Industry Solutions)がITU側のSDHと整合を図っている[6]。
フレーム構造と特徴
[編集]SONET/SDHでは、固定長のフレームを125μs(マイクロ秒)おきに送る。フレームは以下の2つから構成される[7]。
- TO (Transport Overhead, 伝送オーバヘッド): 制御用データを格納する。
- VC (Virtual Container, 仮想コンテナ): ユーザデータを格納する。
フレームはコンテナの途中にオーバヘッドを挿入する形をとり、TO、VC、TO、VC... という順でフレームを送る。例えば、
- STS-1 または STM-0 では810バイトの固定長フレームを送る。オーバヘッド3バイトおよびコンテナ87バイトを交互に送り、これを125μs間に9回繰り返す。
- STS-3c[注釈 1] または STM-1 では、2430バイトの固定長フレーム長を送る。オーバヘッド9バイトおよびコンテナ261バイトを交互に送り、これを125μs間に9回繰り返す。
これらのフレームは下図のように一般に90×9バイトや270×9バイトなど、N列9行の配列として表し、オーバヘッド(TO)とコンテナ(VC)が整列するように表現される。
また、ユーザデータの量を増やすために多重化が行われ、例えば STM-256 は STM-1 フレームを256波長の波長分割多重で送受するなどして実現している。フレームにはユーザデータ以外の管理データとして以下のものが付加されている。
- セクションオーバーヘッド(Section Overhead, SOH, SO)- 網管理に用いる。
- 管理ポインタ(Administrative Unit Pointer, AUPtr)- 周波数・位相同期に用いる。
- パスオーバーヘッド(Path Overhead, POH, PO)- コンテナに配置し、各パスの識別に用いる。
多重化ではこのフレーム構造を用いることで、次のような機能を実現している。
- 制御用データがユーザデータに挿し挟まれる形であるため、ユーザデータから独立したネットワーク管理情報を持つことができ、信頼性の高い通信が可能である。
- AUポインタを利用して周波数・位相の同期をとるため、機器間のずれ補正が容易で高速な通信に対応できる。
- AUポインタやPOHを利用して、低速チャネルから高速ハイアラーキへの多重化や、高速ハイアラーキから直接チャネルごとの情報を取り出すことができる(仮想コンカチネーション)。
脚注
[編集]- ^ 末尾のcはコンカチネーション(結合)を意味する。STS-3は単純にSTS-1を3フレーム集めたものであるが、STS-3cではコンテナのサイズやオーバヘッドをそれぞれ3倍したものとして扱う。
出典
[編集]- ^ “SONET技術概要”. シスコ・システムズ テクニカルノーツ (2005年6月14日). 2024年9月1日閲覧。
- ^ ITU G.783 (1990-12-14). Characteristics of synchronous digital hierarchy (SDH) equipment functional blocks
- ^ 石田修(NTT未来ねっと研究所) (2003年5月2日). “SAN/WANにも広がるイーサネット”. @IT. 2024年9月1日閲覧。
- ^ Recommendation G.783 (2006) Corrigendum 1 (01/15). ITU-T. (2015-01-13)
- ^ Michael Yan (Exar Corporation). SONET/SDH Essentials. MaxLinear, Inc.
- ^ Alliance For Telecommunications Industry Solutions. ATIS-0900105.2008: SONET - Basic Description Including Multiplex Structure, Rates, and Formats
- ^ Section 2.4. STS-3c Framing Format and Higher Rate STS-Nc