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利用者:大塚芳明

「マヽハヽノアマノイ井マトワセリ」の訳について[編集]

◆『善鸞義絶状』に「マヽハヽノアマノイ井マトワセリ」とあります。この「ノ」は格助詞であるので、「継母の尼が言い惑わせり」と訳すべきだと思うのですが、どなたかお教え頂けないでしょうか。

◆ちなみに〝善鸞は恵信尼の実子〟とする研究者は「(善鸞が実母である恵信尼を)継母の尼と言い惑わせり」と訳していますが、文法的に可能でしょうか?。できれば国語学者の方のアドバイスを望みます。--大塚芳明会話) 2015年5月3日 (日) 23:44 (UTC)大塚芳明


『親鸞聖人正明伝』は存覚上人真作                                   

『親鸞聖人正明伝(以下、『正明伝』)』は江戸時代中期、高田派学僧五天良空により開板され、存覚上人(以下祖師方の尊称を略す)作とされた。けれども当時の本願寺学僧達は、存覚に名を託し、良空一派が「専修寺を権威付けるため」偽作したものと批判した。結果、現在もそれが通説とされている。しかし近年、佐々木正氏『親鸞始記』や梅原猛氏『親鸞「四つの謎」を解く』等で、存覚真作説が見直され、『正明伝』は再評価されつつある。 ところで偽作説の主たる理由として、従来から次の点が言われている【㊟以下傍線は筆者による】。『正明伝』には、

〈去応長正中のころ、関東高田専空上人登られしに、洛の善法院並に河東岡崎の旧坊に於て、両度面謁し、祖師一生の事事具にこれを聞く。今此伝に戴ところ、恐は滅後展展伝聞の説にあらず。聖人面授の人の口説なり〉

とある。良空はこの記事を根拠に、専空を親鸞面授と判断して『高田開山親鸞聖人正統伝』を著した。それゆえ『正統伝後集』で専空の誕生を建暦元年、没年を康永二年、「凡年齢一百三十三歳」と記した。結果、この非常識な没年齢により、原史料たる『正明伝』まで非常に疑わしい、とされたのである。 良空が『正明伝』を見たのは間違いない。但し、高田派の学僧として自派に有利なように誤解釈してしまったため、矛盾・不都合が生じた。つまり「専空を親鸞面授」と〝思い込み〟したため偽作の謗りを受けることになったのである。

しかし筆者は以下のように読解すれば、矛盾なく存覚真作と判断できる【㊟( )内は筆者による】。

〈斯霊告(『磯長の夢告』)を(親鸞が)得たまふといへども、ふかくつヽしみて口外なかりき。唯その記文のみ御廟寺にあり。そもそも件の告命六句の文に就て、古来の口訣【註㋑】あること、予(存覚)これを聞けり。去応長正中のころ、関東高田専空上人登られしに、洛の善法院並に河東岡崎の旧坊に於て、両度(覚如に)面謁し、祖師一生の事事具にこれを聞く。今此伝(『正明伝』)に戴ところ、恐は滅後展展伝聞の説にあらず。聖人面授の人(如信)の口説なり【註㋺】。然に今の告令のことを懇に(専空が覚如に)問いしかば、「我(覚如)是を惜にはあらず、他聞を禁ずるの制あり」とて、(専空に)伝えざりき。其伝習はいまだこれを聞かずと雖も、彼(覚如[or専空]の)返答の余言を以て、ひそかに(存覚が)案ずるに、十九歳磯長の夢想と、二十九歳六角精舎の告命とは、大凡相似たる趣なりときこえたり。御廟寺の真筆は、かならず我(存覚)往て拝見せむ。専空和尚に(存覚)親聞しながら、此口授を漏しぬること、是余(存覚)が生前のうらみなり。後来の徒、ふかく尋ねて伝へずばあるべからず〉

と、冷静沈着に読めば良かったのである。

そもそも良空が『正明伝』を〝偽作〟するなら、ワザワザ批判を受けるような単純ミスを犯すはずがない。逆論すれば『正統伝後集』で、良空が〝非常識な専空没年齢〟を記載している事実こそ《良空の偽作に非ず=存覚の真作》の証拠であろう。つまり良空は、存覚真作『正明伝』を自派に有利なように誤解釈し、《専空を親鸞面授》と〝思い込み〟してしまった。結果「凡年齢一百三十三歳」と記述し、不審を招き偽書とされる原因を作ってしまったのである。筆者の感想であるが「専空を権威付けよう」などと思わず、もっと素直に読んでおれば、『正明伝』が今ほど〝冷遇=偽書扱い〟されることはなかったのではないか。

【註㋑】筆者は『教行信証』後序の元久二年七月二十九日〈又夢の告げに依りて綽空の字を改めて、同じき日、御筆を以て名の字を書か令めたまひ畢りぬ〉とある〝夢の告げ〟がこの〝口訣=口授〟と関係あるのではないか、と考える。 

【註㋺】覚如は如信に親鸞のことを色々聞いていることは『口伝抄』で明らかである。

以上の愚論は『中外日報』に3月17日投稿したものですが、5月5日現在掲載されていません。もし本ページをご覧になり興味を持たれた方は、ご意見ご感想をお寄せください。--大塚芳明会話) 2015年5月5日 (火) 00:46 (UTC)大塚芳明


◆上記「『親鸞聖人正明伝』は存覚上人真作」に関する資料謹呈します。120円切手同封の上 〒765-0033 善通寺市木徳町1049 大塚芳明宛 お申込み下さい。