フラッシュバルブ (栓)
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フラッシュバルブ(英:Flush valve)は、水などの流体における圧力・流量の出力を制御するバルブの一つで、バルブ操作後、内部に仕込まれたピストンバルブの昇降動作によって、一定量、一定時間(約10秒)水が流れて自動的に止まる機能を持つ自閉式のバルブで、主に水洗便器に洗浄水を供給する機器として使用される。このためにフラッシュバルブの末端は給水洗浄管を介して水洗便器に繋がっている。
主な用途
水洗式便所での便器への給水方式の1つで、フラッシュバルブは洗浄給水管を介して水洗便器に繋げられて、便器に供給する洗浄水の水圧力や流量などの流水(水流)の出力を制御するバルブとして使用される。
高水圧の水道管に直接取り付けられたバルブであり、タンクが不要のため、省スペースでの設置が可能、瞬間的に高水圧(強い水勢)水を吐出して便器洗浄が出来ることから便器の詰まりや汚物付着や尿素からの黄ばみ、尿石の付着も少なく、連続使用が可能という利点があるため、デパート、ホテル、オフィス、複合商業施設、駅などの商業施設や工場、複合ビル、あるいは学校、病院、公園など不特定多数の人が利用する非住宅の水洗便所で多用されている。
しかし25A以上の給水管径が必要で、使用水量は約2.5L/sと大水量であり、給水圧力が0.07MPaより低いと正常に作動しないため、住宅での採用は少ない。多くは、屋上などに受水槽からの高置水槽を設置し給水管径と水圧を確保できる集合住宅や寮、社宅、官舎、鉄筋コンクリート造の店舗兼住宅に採用される。例外的に給水管・給水圧力が確保された一部の戸建住宅に採用されることがある。また、25A以上の給水管を要しない完全な水洗式の小便器や簡易水洗便器(小便器を含む)の場合は、住宅であってもフラッシュバルブを用いることがある。
また給水圧力が0.07MPaを満たさない場合でもブースターポンプ(直結増圧式給水装置)を設置することでトイレの洗浄をフラッシュバルブ給水化されることもある。
構造と作動原理
構造
一般的な手動フラッシュバルブの場合、給水側から順に止水栓・開閉弁部(ストップバルブ)、本体部、バキュームブレーカ部の順で構成されており、便器への給水圧は開閉弁のスピンドルで調整する。本体部にはフラッシュバルブの心臓部であるピストンバルブが内蔵されており、フラッシュバルブを起動させるレバーペダル棒や押しボタンなどの起動弁部が本体側面部に組み込まれており、その起動弁内部にピストンバルブを起動させるバネ圧の押し棒部が内蔵されている。本体上部には流量調整ネジが付いており、ピストンバルブの昇降ストローク量により流量が変動し、ネジを開けると吐水量が増え、ネジを閉め込むと吐水量が減る仕組みになっている。
本体に組み込まれているピストンバルブはバルブ上部外周にわん皮パッキンまたはUパッキンが巻かれ、側面中央部にストレーナー(フィルター)の濾し網があり、下部には案内羽根が付いており、その案内羽根内径中心部にリリーフバルブ先端の起動羽根が突出している。ピストンバルブ上部の中心部には逃し弁の穴が開いており、その中にはリリーフバルブと押えバネが仕込まれている。一次側(給水口側)と二次側(便器に繋がった洗浄管側)とはわん皮パッキン(Uパッキン)で仕切られ、パッキン上部が圧力室部であり、ピストンバルブ上部の圧力室側になる一次側と二次側の間には針先程の小穴が開いておりストレーナーを経て繋がっている。この小穴によって圧力室に水を送り、フラッシュバルブの閉止動作を行う部位でもあるため、ストレーナーは小穴が詰まらないよう細かい濾し網になっている。ピストンバルブの弁座部にはシートパッキンと呼ばれる中央部にストレーナーが付いたパッキンが組み込まれている。ピストンバルブのUパッキンはバルブの溝に材質の合成ゴムの弾力ではめて締め付けられているのに対し、わん皮パッキンは皮革パッキンをパッキン押え部位にて固定されている。
バキュームブレーカ内には吸気弁と給水塞止弁(逆止弁)が内蔵され、てこの原理を応用した構造になって、ネジで止められた支点軸棒を境に片側に吸気弁が、もう一方の片側に給水塞止弁が内蔵されている。吸気弁側の方が重くできており、吐水中以外の待機中は自重で吸気弁側が開放された状態で下降位置にあり、一方、支点の反対側の給水塞止弁は上昇位置でバキュームブレーカ以前の管路を閉塞した状態が待機中の定位置となっている。
作動原理
閉止時(待機時)においては、圧力室の水圧でピストンバルブが押し下げられ、バルブの下方に取り付けられたシートパッキンとシーリングされて弁を閉じている。レバーペダル棒や押しボタンなどの起動弁を操作すると、バネ圧の起動用の押し棒が出ることにより、ピストンバルブの起動羽根が押され、リリーフバルブの逃し弁が開き、ピストンバルブ上部の圧力室部に溜まっていた高水圧の水がピストンバルブ内の軸部の案内羽根内径中心部にある管路を経由して給水洗浄管を経て便器に流れ抜ける。圧力室の圧力がゼロになることから、給水圧力によりピストンバルブが押し上げられ瞬時に上昇し案内羽根部を介して吐水(便器への給水)が始まる。
吐水開始と同時にバキュームブレーカ内の給水塞止弁が動水圧(吐水された水の接触)により下降するとともに、支点の反対側の吸気弁のゴムパッキンが押し上げられて上昇して吸気口が閉塞される。レバーペダル棒や押しボタンなどの操作部から手を放すと起動押し棒がバネ圧により戻り、リリーフバルブの逃し弁もバネ圧により閉塞され、ピストンバルブは圧力室上壁部まで上昇到達し便器への吐水は全開状態になり吐水のピークとなる。同時にピストンバルブのストレーナー(フィルター)の濾し網から小穴を経て圧力室に水が徐々に入ると共にピストンバルブは徐々に降下する。圧力室部が満水になると水圧によりピストンバルブが押し下げられて完全に下降し、弁座部のシートパッキン部に着地することで、自動的に水が止まり吐水が終了する。
吐水終了と同時にバキュームブレーカ内の給水塞止弁への動水圧が無くなることから、吸気弁の重量で吸気弁は下降すると共に給水塞止弁は定位置まで上昇してピストンバルブ以前の管路を閉塞すると共にウエイト水として、ごく少量の水が給水塞止弁上部に残留する。止水と同時にバキュームブレーカからの吸気により、フラッシュバルブから便器に至る洗浄給水管内および便器内の管路の残水は、バキュームブレーカからの「ズリュズリュズリュ・・・」という吸気音を伴いながら便器の吐水口から排出される。また床下給水和風便器のような残水穴がある便器では管路内の残水が残水穴から排出される。吸気により給水管内の残圧が破壊されて大気圧状態に戻り、フラッシュバルブの1サイクルの動作が終了する。
1回操作する度に内部のピストンバルブが上下に1往復のピストン運動をすることにより1回分の洗浄水を吐水する。 また、フラッシュバルブは瞬間的に高水圧で便器に吐水することからも独特な洗浄流水音が特徴である。さらにタンク式洗浄でみられる便器の水封の水溜り部、封水トラップの隅部や底面に発生する汚物の付着や黄ばみ付着は殆ど発生しない。 フラッシュバルブにバキュームブレーカ設置が義務付けられ前に設置された古い施設ではフラッシュバルブにバキュームブレーカが無く、フラッシュバルブ閉止後、フラッシュバルブから便器へ繋がる配管が負圧(真空)状態になり、便器の吐水口から空気が逆流して配管内に空気が入り込む状態となり、このため配管内が大気圧状態に戻るまでは便器の吐水口から「トクントクントクントックントックン・・・」と配管への逆サイホンによる空気逆流音が聞こえると同時にフラッシュバルブから便器に至る配管からも「チョロチョロチョロ・・・」と逆サイホンによる空気の流入と共に水の落下音がする現象が発生する。
分類
節水式フラッシュバルブ
節水式のフラッシュバルブはピストンバルブの起動羽根がスライド伸縮式の二重構造になっており、一度の操作で1回分の吐水しかしないノンホールディング機能を持ち、起動後のピストンバルブ上昇時スライド伸縮式起動羽根は起動押し棒部より高い位置まで上昇するためレバーペダル棒や押しボタンなどの起動弁を押し続けても二重になった起動羽根が押し棒部上面に乗り上げるのでピストンバルブが上昇位置のままで保持されずピーク時の持続(全開状態のまま)になるのを妨げ、下降閉止動作をする機能を持ち、さらに、圧力室に水を流入させる小穴も通常のストレーナー(フィルター)からの小穴の他にリリーフバルブ部上面にも存在する伸縮式の羽根の付いたバルブからによる二重流入構造になっており、フラッシュバルブ流水ピーク時に至るまでは通常の小穴以外のピストンバルブ部上面に存在する伸縮式の羽根の付いたバルブの小穴部からも圧力室部に水が流入させる機能を併せ持っており、フラッシュバルブ起動開始直後からは伸縮式の羽根の付いたバルブの弁上部の羽根が飛び出た状態になり圧力室に水が流入し、フラッシュバルブのピーク時にピストンバルブが最上昇点に至るとピストンバルブ部上面の伸縮式の羽根の付いたバルブの羽根部は圧力室の上壁面に接触して押し込まれ閉鎖される、以後は圧力室に溜まっていく水の水圧により羽根が飛び出ることなく、通常の小穴のみから圧力室部に水が流入し、ピストンバルブの下降動作が始まり、ピーク時の全開状態の時間を短くして吐水を節水制御する機能になっている。また一度の操作で1回分の吐水しかしないため起動弁ペダルを操作し続けても1回分の洗浄で止水することで大幅な節水となる。
電装式フラッシュバルブ
電装式フラッシュバルブ(自動フラッシュバルブ)はフラッシュバルブ本体に人感センサやスイッチが組み込まれたオールインワン式と、人感センサーやスイッチを離れた場所に設置して信号線を介して自動フラッシュバルブと配線接続して起動させるコンビネーション式がある。 作動方式は、押し棒駆動式とドレン管式があり、押し棒駆動式は手動フラッシュバルブをモーターによるギアとカムの駆動でレバーハンドル起動弁を押し下げてて作動させ起動する方式と、起動押し棒を電磁弁(ソレノイド)駆動で突出させてピストンバルブの起動羽根が押されリリーフバルブ逃し弁が開いてピストンバルブ上昇により吐水が開始されるで手動フラッシュバルブのメカニズムを電動で作動させる方式。
ドレン管式は一次側(圧力室)と二次側(便器給水管側)の間に電磁弁を介したドレン管によるバイパス管路が組み込まれ、センサーやスイッチでの起動信号が入ると、電磁弁が開き一次側の圧力室部に溜まった高水圧の水が電磁弁の作動によりドレン管(バイパス管部)を介して二次側(便器への給水管)に排水させることで、圧力室の圧力をゼロにさせピストンバルブを上昇作動させることでフラッシュバルブを起動させる方式となっている。
ドレン管式は、逃がし弁による排水動作は必要なくリリーフバルブを介せずピストンバルブの作動を起動させるためにリリーフバルブ部の故障が少なく、押し棒等可動部の故障が少ないメリットがあることから電装式フラッシュバルブの主流となっている。ドレン管式にはドレン管が露出している機種と自動フラッシュバルブの本体ケース内に内蔵されている機種が存在する。
手動フラッシュバルブの場合、不特定多数の各々の利用者によって起動レバー弁の操作力や操作時間、手での操作や足での操作等の操法や扱い方が各自異なり、様々で雑多な操作をされるためにピストンバルブの昇降動作も一定しないために便器に吐水する流水の出力や流量にばらつきがでるが、電装式の自動フラッシュバルブでは、手かざしセンサーや薄型のタッチスイッチにより電気信号で起動するために、ピストンバルブの昇降動作は一定で誰が操作しても出力や洗浄水量がばらつくこともなく常に安定した洗浄水を便器に供給する。
また、電装式フラッシュバルブは何れの方式も側面には停電や電池切れの時用に手動ボタン弁が付いており、手動ボタン弁で操作した場合は手動フラッシュバルブと同じ原理で作動する。
電装式フラッシュバルブの電源はAC100V(一部AC200Vのものも存在)の他に乾電池式がある他、最近では自動フラッシュバルブ内に発電用水車が内蔵され、水勢を利用して水力発電をして自らの制御電力に使用する機種が主流になりつつある。
手動フラッシュバルブ
手動フラッシュバルブの場合、レバーペダル棒や押しボタンなどの起動弁の操作を一瞬で終えてしまうと、リリーフバルブから圧力室の水が完全に抜けきらないことにより、ピストンバルブが最上昇点まで上昇到達しないまま下降したり上昇途中で下降してしまう動作をしてしまい、この場合便器に吐水される水は少量の水が出てすぐに閉止して止水してしまう動作をするために流水量不足により汚物の洗浄に支障をきたすために起動弁は便器への吐水が開始され流水が安定するまでの間(約1.5~3秒間)操作することが必要である。
ただし、大便器用フラッシュバルブは住宅での採用は少ないものの集合住宅や一部の戸建住宅でフラッシュバルブ給水で施工されている場合もあり、大便器用手動フラッシュバルブは基本的に大洗浄吐水するために洗い出し式の和式便器や大小両用和式便器では小洗浄時には和式便器の金隠し前方、あるいは和式便器の横壁に設置されているフラッシュバルブの起動弁の手動操作をわざと極短時間のみかつ確実に起動を開始させる巧みな操法にて(ピストンバルブが最上昇点まで上昇到達しないまま下降したり上昇途中で下降してしまう動作を利用して)トラップ(便器内の封水)に尿水とトイレットペーパーが、残留しない程度に便器への吐水量を減らして節水させようとする場合もある。ただし高水圧、大水量を必要とするブローアウト式やサイホン式、サイホンゼット式便器の場合この手法は使えない。
またフラッシュバルブの吐水終了間際に起動弁を再び操作した場合、圧力室内に流入する水により止水に至ろうとする降下途上のピストンバルブの動作中に再操作でピストンバルブの起動羽根が押され再びリリーフバルブが開かれると、再操作のタイミング次第で圧力室の水圧の増減とピストンバルブの動作に支障が発生し、タイミングにより降下途上のピストンバルブが再上昇して最上昇部まで到達し、再びフラッシュバルブのピーク吐水に達し一連の動作の末に止水に至る。もう一度通常の吐水が繰り返される場合と、降下途上のピストンバルブが一瞬のみ上昇するも圧力室の水圧により即降下して閉止してしまう動作をする場合があり、この場合、便器の流水は止水直前の流水状態から再操作後一瞬のみ高圧な水が再吐出した直後に即 吐水が急閉止される現象となる等、ピストンバルブの降下途上の閉止直前の再操作はピストンバルブの動作が不安定になり異動作になる等の支障をきたすことがあることから、再洗浄する場合は一度吐水が終了した後に改めて起動弁を操作することがメーカーでも推奨されている。
近年では、手動フラッシュバルブであったトイレにおいても衛生面や節水面の他、操作レバーペダルを足で踏まれて操作されることが多く、故障や汚損の原因になったり、操作時間不足での洗浄不良等があるため、後付けの自動フラッシュバルブに換装される場合が多く、特に新設されるトイレにおいては手動フラッシュバルブの採用は減っている。
翼車回転式フラッシュバルブ
その他に最近ではピストンバルブを使用しない羽根車式の翼車式フラッシュバルブもあり、構造は機器内部に電磁弁と回転式の翼車(羽根車)と水量カウントセンサーが内蔵されており、洗浄スイッチセンサーから信号が送信されると電磁弁が開き通水が開始され、内部のカウンターが付いた翼車が水の勢いで高速回転し、翼車の回転数を水量カウントセンサーが読み取り、設定した水量カウント数(大用、小用)を読み取ると給水停止信号を送信し電磁弁が閉まり止水する。
このためにピストンバルブ式のフラッシュバルブのように流水ピークから徐々に流水が弱まる仕組みではなく、終始常時流水のピークの流水が便器に供給される。
また翼車回転式フラッシュバルブでは各便器の利用人数や各便器に流した積算水量、及び利用者1人当たりの洗浄操作回数もデーターによる検証も可能なシステムで、利用者の滞在時間や利用頻度で大用、小用の流水量の流し分け機能、設備保護洗浄機能や擬音装置の他、長時間滞在警報、機器異常警報を監視室などに異常信号を発報する機能と、利用者が入室した直後の機器操作説明音声ガイダンス機能を併せもっている。
操作方法
手動フラッシュバルブ
従来からの一般的にレバーペダル棒や押しボタンの起動弁を手動で操作して起動させる方法がであるが、主流のレバーペダル棒式では操作の際、レバーペダルを足で踏まれて操作されることが多く、足での操作は「蹴る」動作にもつながり、手でよりは格段の応力がかかり器具の傷みを早めて漏水などの故障や内部のピストンバルブの破損や故障にもつながる。床の水分や漏水で汚損や器具の錆びによる緑青により汚損がひどくなり、不潔なイメージから余計に足で操作される原因になるために、足で操作されないように、フラッシュバルブを壁の高い位置に配して、便器とは配管で結ぶという施工が採用される場合がある。
手動フラッシュバルブの場合、レバーペダル棒や押しボタンなどの起動弁の操作を一瞬で終えてしまうと、リリーフバルブから圧力室の水が完全に抜けきらないことにより、ピストンバルブが最上昇点まで上昇到達しないまま下降したり上昇途中で下降してしまう動作をしてしまい、この場合便器に吐水される水は少量の水が出てすぐに閉止して止水してしまう動作をするために特に大洗浄の場合流水量不足により汚物の洗浄に支障をきたすために起動弁は便器への吐水が開始され流水が安定するまでの間(約1.5~3秒間)操作することが必要である。
近年では、手動フラッシュバルブであったトイレにおいても衛生面や節水面で、後付けの自動フラッシュバルブに換装される場合が多く、特に新設されるトイレにおいては手動フラッシュバルブの採用は減っている。
リモコンフラッシュバルブ
便器から離れた場所や壁内にフラッシュバルブを設置し、便器付近の壁に押しボタン弁や床に足踏み弁を設け、この弁からリモコン用の導管となる配管を介して水圧によりフラッシュバルブの水圧ピストンを遠隔操作でピストンバルブのリリーフバルブを押し込んで起動させるリモコン型フラッシュバルブがある。
起動は水圧ピストンによりピストンバルブのリリーフバルブを押す以外は手動フラッシュバルブと同じ起動方法であり、手動フラッシュバルブ同様に足踏み弁や押し釦弁等の起動弁は便器への吐水が開始され流水が安定するまでの間(約1.5~3秒間)操作することが必要である。
リモコンフラッシュバルブの起動水圧ピストン部には逃がし用の小さな穴が開いており、押し釦弁や足踏み弁を操作による起動時の導管からの水圧でピストンバルブのリリーフバルブ押し込み時には逃がし穴から導管の一部の水が便器洗浄管に流れ込む。
このリモコンフラッシュバルブは壁に設置された押しボタン弁や床に埋め込まれた足踏み弁とフラッシュバルブを結び、起動させる水圧導管となる配管はφ9.5銅管を壁内や便器廻りの床下に複雑に配管しなけれなならず、さらに足踏み弁の場合は給水導管に直角に水抜きのドレンを設けて排水が必須でドレン排水管も配管施工が必要で別途ドレン排水の管路を設ける面倒な施工方法を強いられる。 (ドレン排水を便器の排水管に接続する場合もある)
このことから最近ではフラッシュバルブを遠隔操作する場合リモコンフラッシュバルブの施工物件は少なくなり、電気配線のみで簡単に施工できる後述の電装式フラッシュバルブにて施工される事例が多くなっている。
電装式フラッシュバルブ
近年では人感センサで人体を感知して使用後に自動で起動する「自動フラッシュバルブ」や、「手かざしセンサー」や薄型のタッチスイッチにより電気信号で電磁弁を作動させ起動する電装式のフラッシュバルブが主流になって衛生面や節水面、さらに足での操作防止による故障防止から採用が増えている。
赤外線人感センサの自動フラッシュバルブや電磁スイッチタイプの電装式のフラッシュバルブには、便器の使用時間や使用頻度を感知し自動的に大洗浄、小洗浄の流し分け判定機能が搭載され規定時間以内(機器内部のスイッチで120秒か150秒設定可能)では小洗浄で洗浄起動し小洗浄が数回繰り返された場合便器の保護も兼ねて自動的に大洗浄で起動されるなど起動毎に適量の洗浄水を吐水し便器に供給する。また電装式フラッシュバルブは一度洗浄をすると次回の洗浄まで数秒間(機器内部のスイッチで各々秒数設定可能)は起動しない仕組みになっており排泄音の音消しの連続洗浄を防止もするので大幅な節水が可能となっている。
自動フラッシュバルブや電磁スイッチタイプの電装式のフラッシュバルブには設備保護洗浄機能が搭載されており、長時間使用(便器への通水)がない場合、便器の排水トラップ内の封水が蒸発により内部の水が減少、乾きからの破封を防止するための設備保護タイマーにより、最後の洗浄から(大便器用では最後の大洗浄から)24時間周期で自動的に1回分の洗浄を行う機能を搭載し、さらに大便器用では、小洗浄が連続した場合、排水管つまり防止のため、小洗浄判定時間内であっても使用状況に応じて自動的に大洗浄を行う機能も搭載している。
電装式の自動フラッシュバルブには便器の機種や設置状況にあわせて水量切り替えや大小流し分け機能有りと大洗浄のみの切り替え設定、手かざしセンサー感知の起動時間切り替え設定、人感センサセンサー感知から起動までの時間設定、小洗浄判定時間の設定、人体からの距離人感センサのセンサー感度の設定などのさまざまな設定が、機器内部のスイッチにより切り替え機能が搭載されている。
また、最近の自動フラッシュバルブの一部は発電用水車が内蔵され、水勢を利用して水力発電をして自らの制御電力に使用する機能を搭載した機種も存在する。
最近では0.04MPa程度の給水圧でも正常に作動するフラッシュバルブも開発されており、この場合、専用の便器との組み合わせが必須である。
人感センサは赤外線以外にマイクロ波を利用した人感センサが搭載された機種もあり、この場合センサーの小窓が無く、よりスッキリとした印象に仕上がっている。 人感センサは赤外線以外にマイクロ波を利用した人感センサが搭載された機種もあり、この場合センサーの小窓が無く、よりスッキリとした印象に仕上がっている。
用途別及び他の機能搭載
低水圧用
通常のフラッシュバルブの設置されている施設の屋上階や最上階などにおいて最低必要水圧(流動時)0.07MPaを確保できず、0.04MPa以上の水圧があるトイレ用として低圧型フラッシュバルブが存在する。
ピストンバルブは通常の縦方向の上下動作式とは異なり、横方向に左右に動作するスライド式でピストンバルブのリリーフ弁、圧力室側にはにリリーフ弁押さえ兼復帰用のバネを配し、洗浄終了時におけるバルブ閉止時の復帰には圧力室にストレーナー(フィルター)から小穴を経て入水する水圧と共に、ピストンバルブに付帯する復帰バネのバネ圧で補助して閉止する構造になっている。
このことから本体の形状は起動弁(起動レバー棒)から横方向奥に膨らんでおり、その内部には横方向にピストンバルブと復帰バネが内蔵されている。その一番奥の先端には圧力室の蓋を兼ねた復帰バネとピストンバルブの取り出し口部となっている。
便器に流れる流水も一般型のフラッシュバルブより吐水圧が低いことから流水時間が長くなる仕組みになっている。
低圧型フラッシュバルブの場合、使用できる便器の機種も制限され、一定以上の水圧を必要とするブローアウト式便器やサイホン式便器、サイホンゼット式便器(一部の機種を除く)との組み合わせは出来ない。
耐海水用・再生水用
便器の洗浄水に海水を使用する船舶関係では、海水の塩分による腐食防止を対策をした耐海水用フラッシュバルブが使用される他、便器の洗浄に雨水や井戸水の他、再生水、中水道や工業用水道などを使う場合も腐食対策対応の再生水用フラッシュバルブが使用される。
これらの腐食防止対策をしたフラッシュバルブは、部材に高耐食性材質や材料が使われ、高耐食めっきがされている。
耐海水用フラッシュバルブについては通常の上水用フラッシュバルブとは違いバキュームブレーカの設置義務は無い為に、バキュームブレーカは取り付けられていないことがある。
寒冷地用
フラッシュバルブ本体側面または背面に凍結防止弁があり、凍結防止弁はピストンバルブ部を介さないバイパス管路になっており、凍結のおそれがある冬場に凍結防止弁を開いて常に一定量の水を流動させ便器に排出させることで、フラッシュバルブ本体や給排水管、便器内、便器のトラップの凍結、破損を防止する流動式フラッシュバルブで、各機器の凍結を予防する、 寒冷地用(不凍結タイプ)大便器フラッシュバルブの場合、凍結防止弁を開いている時に流れる水の量は水圧0.2MPa(流動時)の時に、約15L/時(約250cc/分)程を常に少量の水を便器に流動させる。
大小切り替え用
かつて販売されていたフラッシュバルブで手動フラッシュバルブの洗浄起動レバー棒を下向けに操作すると大洗浄、上向けに持ち上げ操作すると小洗浄となり下向けと上向けで吐水洗浄水量が変動するフラッシュバルブであり、洗浄レバー棒の袋ナット部には〔↓大・↑小〕の表示刻印がなされていて、低圧でも作動可能なように低圧型フラッシュバルブと同構造であり、小洗浄の機会が多い女性トイレで節水が期待されたが、一般的に周知がなされていないのと、不潔な印象なある洗浄起動レバー棒を手で上に手で操作して小洗浄する利用者も少なくあまり普及しなかった。またこの機種は低圧型フラッシュバルブを基本にしているためにブローアウト式便器やサイホン式便器、サイホンゼット式便器(一部の機種を除く)の洋式便器には使用出来ず。和式便器が主流の時代に開発され主に和式便器に組み合わせるのを想定していたことから洋式便器普及と和式便器衰退もこの機種が普及しなかった一因ともなった。その後現在では大小切り替えは電装式のセンサーによる滞在時間、洗浄回数による大小判別センサー洗浄により大きく普及している。
擬音装置搭載
電装式のフラッシュバルブには便器洗浄機能以外に擬音装置が内蔵され機種もあり、赤外線人感センサで大便器の個室内で人体を感知すると自動的に擬音装置が作動して、不必要に音消しだけの為にフラッシュバルブを操作させなくして水の無駄遣いを防止する。
この装置が設置されているトイレには、マスキングのために水を流すのをやめるよう、啓蒙用表示の掲示やポスターなどが貼ってあることもある。
薬剤供給機能搭載
フラッシュバルブ式のトイレではタンク式のように便器洗浄薬剤や消毒剤などを容易に投入できないことから、衛生面や快適性を重視する施設の水洗トイレでは、小便スラッジからなる悪臭や汚れを防止するために便器や排水管への尿石付着防止の消毒洗浄芳香薬剤を一定量、一定濃度に生成して便器に供給する水洗便器用薬剤供給装置があり、薬剤供給装置をフラッシュバルブから便器に至る洗浄管に組込み(連結)され便器に薬剤を供給されるが、最近では薬剤供給装置自体を手動フラッシュバルブや大洗浄、小洗浄の流し分け判定機能による水洗時間と流量、頻度を自動制御する自動フラッシュバルブ本体に内蔵したビルトインタイプの薬剤供給装置が大便器用、小便器用共に存在し、これらの自動薬剤供給装置はタッチレスによるクリーンさと使用頻度を認識。頻度に応じて水洗量を最適に自動調整し内蔵タイマーとセンサーにより効率的に便器に薬剤を供給し、大便器用では、内蔵タイマーとセンサー使用状況に応ずる適量の薬剤の自動滴化だけでなく、検知した使用時間に応じて排水量をコントロールして大小を自動判定洗浄するので節水効果が高く節水に役立てている他、一部のビルトインタイプの薬剤供給装置は壁内に設置された機器や便器内に内蔵された機種も存在する。これらの薬剤供給装置は便器への流水が終了する間際にフラッシュバルブ本体に内蔵された薬剤供給装置からフラッシュバルブの流水が閉止する寸前に常に一定量の薬剤量及び薬剤濃度の薬剤を溶解した薬剤水溶液が便器に供給され、便器から出てきた薬剤により便器表面がコーティングされると同時に消毒、脱臭、尿石の付着防止、便器や排水管の詰まり、防汚を防止する
フラッシュバルブの保守、点検
本体部、ピストンバルブ部
フラッシュバルブの多くが不特定多数の人が使用するトイレに設置されており、故障防止や機能低下防止の為に日常の定期点検が必要で、本体に内蔵されているピストンバルブの小穴の詰まりを防止するストレーナー(フィルター)の濾し網や小穴自体が水垢や水中に含まれる塵やカルシウムなどの異物が詰まるとピストン弁の下降動作となる復帰に時間を要し、便器に供給される水が止まらなくなったり、極端に吐出する水量が増えたり、流れなくなる他、小穴が完全に詰まると便器の水が出っ放しで止水しなくなるトラブルが発生する。ピストンバルブはフラッシュバルブ起動毎に高圧で上下にピストン運動を繰り返す為に外周のわん皮パッキン(Uパッキン)が摩耗する場合があり、摩耗や劣化が進み少しでも亀裂が入ると、起動弁を操作しても起動弁が押されている時だけしか水が流れなくなるれなくなったりするトラブルが発生することから、月/1回ピストンバルブを取り出してストレーナー(フィルター)の濾し網や小穴の清掃と、パッキン類の摩耗や劣化を点検をする事をメーカーでは推奨している。ピストンバルブのストレーナーの濾し網部の清掃はブラシなどで、小穴の清掃は荷札の針金のような細い針金で行うように推奨されている。
わん皮パッキン(Uパッキン)のみ交換される場合は近年の製品は合成ゴム製のUパッキンのためにピストンバルブの溝にはめ込むためにゴムの弾力により容易に交換できるが、牛革をなめし加工した皮革パッキンが使用された旧型ピストンバルブではわん皮パッキン押さえ開閉工具を用いてパッキン交換が行われるが常時フラッシュバルブ内の水中に納まっていることから酸化や水中のカルシウム分固着によりパッキン押さえが固着している事が多く交換に困難を要する他、皮革パッキンのピストンバルブは月/1回ピストンバルブを取り出して皮革パッキン部に保革油を給脂して革に柔軟性を与え、革の割れを防止する定期メンテナンスが必須で、この場合皮革パッキン部に保革油を給脂した直後及び暫くは給脂箇所から滲み出た油脂成分が便器から出て来て便器内のトラップ等の溜水部に油膜が張ったり溜水部に張った油膜が薄膜干渉により虹色に見える虹彩現象が起こる場合がある。このことから皮革パッキン製の旧型ピストンバルブにおいては困難なパッキン押さえ開閉工具を用いてのメンテナンスや保革油による定期的な給脂を簡略にするため及び給脂後に便器から出て来る油脂成分による便器内の汚損防止から近年では旧型ピストンバルブ用の合成ゴム製のUパッキンが使用された互換品も発売されている。
フラッシュバルブが多く設置されている施設においては、故障を未然に防ぐ為に、あらかじめ新品及び、ストレーナーと小穴を清掃、パッキン類は摩耗があれば交換し、リリーフ弁などの可動部をグリスなどの潤滑剤で給脂した点検、メンテナンス済の予備のピストンバルブをストックしておき、定期的にピストンバルブを交換される場合が多い。
交換したピストンバルブはメンテナンスした上で次回の交換時に使用され、ローテーションを繰り返し使用されるが、ピストンバルブは同型品であっても各々が個性的な動作をする事があり、ピストンバルブ交換後、便器の水の流れ方が変わったり、吐水量が変わり、汚物が流れきれなくなる場合や、逆に吐水量が必要以上に増えたりする場合があるので、交換後は便器の吐水状況を確認し、本体上部にある流量調整ネジなどで水の出力を調整する。この流量調整ネジは時計回りに回すと洗浄水量が減少し、反時計回りに回すと洗浄水量が増加する。手動フラッシュバルブの起動レバーペダルは手で操作することが前提に設計されている部品であるが、不衛生のイネージや位置的に足蹴りで操作されることのほうが多いが、足で操作されると手でよりは格段の応力がかかり器具の傷みを早めて漏水などの故障につながり、ピストンバルブ破損や起動押し棒部破損など故障の原因となることが多く、予備のピストンバルブをストックすることが必須となる。
ピストンバルブの下部のシートパッキンの細かな網部に異物が詰まったり、網部が傷つくと止水不良で少量の水が流れっぱなしになるので、ピストンバルブ取り出し時にシートパッキンの網部の点検も必要であると共に網部の損傷を考慮してシートパッキンもストックされる場合が多い。
またフラッシュバルブの配管に空気が混入した場合圧エアー混入により、エアーハンマーによる次回フラッシュバルブ作動時に便器の水が飛び散るトラブルや管内に圧力変動が伝播し、配管の振動を引き起こし、急激な圧力によりフラッシュバルブが破損してしまう場合があり、さらに酷い急激な圧力が発生すると場合によってはフラッシュバルブを通り越してフラッシュバルブと繋がっている便器の通水路内に供給され便器自体までも突然破裂し破損してしまう事が起こってしまうために空気混入の恐れのある配管にフラッシュバルブを設置する場合は必ず空気抜き弁を設ける。
バキュームブレーカ部
さらに、汚水の逆流防止のための負圧破壊装置であるバキュームブレーカが故障すると負圧が発生した時に汚水が逆流する恐れと吸気弁に異物が付着すると水漏れが発生する恐れがある為に、定期的にバキュームブレーカの吸気蓋を取外した上で、フラッシュバルブ を操作して水を流して、吸気弁の開閉動作の作動状況を確認し、吸気時に空気に混じった埃などの吸気弁パッキンへの付着した異物の清掃と吸気弁からの水漏れが無いかを点検する必要がある他、概ね年に1回オーバーホールを行い分解して可動部にグリスのなどの潤滑剤により給脂を行い、吸気弁が摩耗している場合水漏れの原因にもなるため、吸気弁のパッキン部を交換する必要がある。
ピストンバルブのパッキン類やバキュームブレーカの吸気弁のパッキンやピストンバルブの下部のシートパッキンなどの消耗品も交換用のストックを持つことでトラブル時の迅速な補修が可能となる他、定期的にリリーフ弁や押し棒部などの可動部への定期的なグリスなど、潤滑剤により給脂を行う。 給脂した直後及び暫くは給脂箇所から滲み出た油脂成分が便器から出て来て便器内のトラップ等の溜水部に油膜が張ったり溜水部に張った油膜が光の薄膜干渉により虹色に見える虹彩現象が起こる場合がある。
薬剤供給装置との協調
フラッシュバルブから便器への配管に水洗便器用薬剤供給装置が取り付けてある便器においては、ピストンバルブ交換により便器への水の流れ方が変わったり、吐水量が増減した場合、連通管を介して薬剤供給装置に流入する水量や水勢が変動して、吐水量が減ったり水圧が低い場合、サニタイザー内に規定量まで流入しない不具合や水勢が高い場合、内部に仕込まれたフロート(浮き)が、上昇しても、洗浄水の勢いにより弁体やフロートが振動し続け、連通孔であるフロート弁が閉じずに、洗浄水の流入が適正なタイミングで止まらず、薬剤供給装置本体から洗浄水から希釈された薬剤の溶液が溢れてしまう可能性の他、内部のフロート弁が高水圧により急閉止して規定量まで流入しない不具合が発生し、フラッシュバルブ起動毎に薬剤供給装置に一定量の水が入水し薬剤と混ざり、一定量に溶解した溶液が便器に注ぎ込まれて出て行く、一連の作動状況や機能に影響が出て、薬剤供給装置から便器に供給される薬剤の溶液の量や濃度が変わってしまい、薬剤供給装置の薬剤生成機能が著しく低下したり損なわれてしまう為、ピストンバルブ交換後はフラッシュバルブの操作により便器に流れる水量と、流水の強さが一定した状態が繰り返されるように調整した上で、機器内部のフロート弁の浮力による昇降動作を安定させて洗浄動作毎に安定した一定量の薬剤の溶液が(便器の、トラップなどの便器内に滞留する溶液の濃度は100ppm)便器に供給されるようにフラッシュバルブの出力と薬剤供給装置の動作が協調するように調整が必要となる。 また、フラッシュバルブの水勢が高い場合は連通管に減圧弁を設置して調整される場合もある。
保守、点検前後の止水、試運転
マイナスドライバーなどを使用して止水栓を閉める(節水形フラッシュバルブは止水栓カバーを取り外すと止水栓がある)起動レバー棒などの起動弁を操作してフラッシュバルブの機器内の残圧を便器に抜いて便器から完全に水が出なくなることを確認した後、モーターレンチやスパナ、あるいはモンキーレンチを使って本体蓋など分解を始め、保守、点検、部品交換を行う。
(旧型バキュームブレーカ付きの場合ピストンバルブから給水塞止弁の間に残圧により給水塞止弁上に水が残留しているが点検でピストンバルブを抜き取ることで空気が入り込み給水塞止弁上に残留していた水が便器から出て来る。一方、バキュームブレーカが付いていないフラッシュバルブの場合フラッシュバルブの機器内だけでは無く、フラッシュバルブ~便器吐水口に至る給水管路及び便器内の管路にも残圧が残っているためにフラッシュバルブ本体蓋を開きピストンバルブを抜き取ると空気が入り込み管路内の残水が便器から出て来る)
保守、点検、部品交換が完了すると本体蓋などを元に戻してレンチなどで完全に締め付けた後、止水栓を開けて加水(給水状態)して本体に水を供給し、加圧状態に戻して起動レバー棒などの起動弁を操作して試運転を行い、便器の洗浄状態を確認して流水の水勢(水圧)は止水栓の開閉で行い、流水時間は本体上部にある流量調整ネジで行う(量調整ネジ部にあるピストンバルブは昇降ストローク量により流量が変動することから、ネジを開けると吐水量が増え、ネジを閉め込むと吐水量が減る仕組みとなっている)。
フラッシュバルブ給水用便器
便器の種類によっては一定以上の水圧が必要な機種やフラッシュバルブの吐水性能に特化した特性の便器が存在し、フラッシュバルブ専用便器、フラッシュバルブ給水を推奨したフラッシュバルブ用便器が存在する。
フラッシュバルブ給水用洋式(腰掛)便器
強力な水勢のゼット孔をトラップ底面から排出口へ向かって設け、もっぱらその噴出力で汚物を排水路へ吹き飛ばし排出するブローアウト式便器は一定以上の水圧が必要なので、洗浄方式はフラッシュバルブに限られる。また、サイホンゼット式フラッシュバルブ専用便器がある。
また乾式工法のトイレ施工として、あらかじめ工場生産された部材を搬入・ 組み立てするライニングフレーム枠にパーティション板や木目や石目などに装飾された板などを使用した前板と上部に甲板がある壁内にフラッシュバルブ、給排水管、換気装置を組み込み、専用便器でユニットを配したライニングユニット便器があり、壁内の専用フラッシュバルブとライニングユニット専用便器があり、これらの便器は壁給排水が可能で清掃も容易な片持ちタイプの壁掛け式の便器が使用される。水まわり空間を合理的に構築するシステム工法で、これらのライニングユニット便器ではフラッシュバルブが内蔵されている付近の壁が点検を容易にできるように脱着可能なようにできている他、壁部にフラッシュバルブ点検口が設けられる場合もある。
フラッシュバルブ給水用和風(和式)便器
和風便器においてもブローアウト式はフラッシュバルブ給水専用とされているほか、床下給水和風便器がフラッシュバルブ用として多く施工されている。
床下給水和風便器
床下給水和風便器は給水口が金隠し部の床下にあり地中に埋め込まれた給水管と接続され、給水管が露出せずフラッシュバルブを壁や便器から離れた場所、壁内などのフラッシュバルブを邪魔にならない自由な場所に設置出来、美観面にも優れ、フラッシュバルブの吐水性能と相性が良く、デパート、ホテル、オフィス、駅など非住宅のパブリックな空間で床下給水式和風便器はフラッシュバルブと組み合わせられることが大半を占めている。
またフラッシュバルブ給水用と位置づけされる床下給水和風便器は、給水口が便器の通水部(リムの下部)より低い場所にあるため、便器内通水路部の残水を排出する排出用の米粒大の小穴が設けられている。この小穴は冬場の残水凍結による破損防止する目的がある。
機能の応用と便器洗浄以外の使用例
フラッシュバルブの構造、機能は、シスタンバルブにも応用されており、シスタンバルブとは天井に近い位置にタンクを置き、タンクから伸ばされた給水管と床面の便器への中間部に低圧型フラッシュバルブと同仕様、同構造のバルブを組み合わせた給水装置であり、主に公衆便所の大便器の給水方式として多用されている他、過去には一部の古い戸建住宅でも採用された。フラッシュバルブと同じ操作方法、同じ作動原理でありながらタンク式であるために連続洗浄は不可能でタンクが満水になるまで次の洗浄が出来ない欠点がある。(満水になる前に洗浄すると汚物やトイレットペーパーが完全に流れきれない場合がある)タンク下部からはバルブ本体に繋がった洗浄管とオーバーフロー管が接続されオーバーフロー管は洗浄管より細目の配管でバルブ本体下部に接続して配管され、これは万一ボールタップが故障した場合、タンクの外へ水が溢れるのを防ぐためのもので、タンク内の規定水位を超えると、この管から便器へ水を逃がす役割がある他、バルブ閉止後、洗浄管の管路内および大便器の吐水口までの便器内の管路は吸気弁より空気を取り入れ、大気圧状態にしてサイホン状態になるのを防止する。 最近は新規施工例が減っている。 フラッシュバルブの水洗便器洗浄以外の設置例として、病気や事故などにより消化管や尿管が損なわれた、腹部などに排泄のための開口部(ストーマ(人工肛門・人工膀胱))を造設した人の人工肛門保有者・人工膀胱保有者のオストメイト対応の汚物流しの洗浄や、病院での検便、検尿後の検査で残った汚物を流す汚物流しの洗浄にも使用され、それらの汚物流しは殆どが汚物処理室やトイレの一角に設置されている他、過度の飲酒による嘔吐物洗浄の汚物流しの洗浄用として規模の大きい居酒屋や酒場のトイレの近辺に設置されている例もある。 トイレ内の手洗い器で押し釦弁を操作すると水が出て自動で止まる手洗い衛生フラッシュ弁と呼ばれる自閉式水栓はフラッシュバルブと同じ作動原理のである。
また、銭湯の給湯栓や水栓などで多く設置されているバルブを押すと一定時間、湯や水が流れて閉止するオートストップ湯屋カランと称され、ボタン等のバルブを1回押すと、洗い桶1杯分の約3リットルで自動的に止まる。特に銭湯、ホテルやサウナ、ゴルフ場などパブリックな浴室における流し放しを防止でき、お湯のムダ使いも防止できる。これらの自動水栓も、ピストンバルブ昇降による作動で、フラッシュバルブと同じ作動原理が応用されている。特に温調整機能付きオートストップ湯屋カランで普通水栓とシャワー水栓の両方が付いている機種はそれぞれの各機能に対応した2種のピストンバルブが内蔵されている。