ディテュランボス
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酒神讃歌(dithyramb, ギリシャ語:Διθύραμβος)は、元々はディオニューソス神を称える古代ギリシアの讃歌のこと。ディテュランボス、ディシラム、ディテュランベとも表記される。その熱狂的な性格はしばしばアポローン神への讃歌(ピーアン)と対比される。アリストテレスによると、古代ギリシア劇の起源であるという。リチャード・ベントレーは酒神讃歌は古いバックス(バッカス)讃歌で相当古いものがあると書いている。
形式
酒神讃歌は最高50人の成人男子または少年からなるコロスによって歌われる。コロスは輪になって踊り、確かな証拠はないが、当初はサテュロスの扮装をしていたものと思われる。アウロスも持っていたかも知れない。酒神讃歌は基本的にディオニューソスの生涯に起きた事件を扱う。コロスのリーダーが主人公を演じ、抒情的なやりとりが彼と他のコロスとの間で繰り広げらる。
酒神讃歌合戦は、ディオニューソス祭やレナイア祭といった祭の重要な出し物だった。おのおおの部族から2つのコロス(1つは成人男子、もう1つは少年)が参加し、優勝を目指し競いあった。アテナイでの大会の結果は記録に残っていて、優勝チームと劇場の名前は書いてあるが、詩の内容までは書かれていない。劇場によっては、優勝者の勝利を後世に残すため記念碑を建てることもあっただろう。
歴史
最初の酒神讃歌は紀元前7世紀頃のアテナイで作られた。もしかすると作ったのはギリシャ人ではなかったのかも知れない。瞬く間に他のギリシアの都市国家に広まり、ケオス島のシモーニデース、ピンダロス、バッキュリデースといった詩人たちが歌を作った(このうち、バッキュリデースの歌だけが現存している)。後にはディオニューソス以外の神に捧げられることもあったが、酒神讃歌は(伝えられるところでは、アリオンによって)文学的な形式に発展していった。アリストテレスによれば、それはギリシア悲劇に進化し、しばらくの間、酒神讃歌はギリシア悲劇と並行して発達し続けた。原始「悲劇」としての酒神讃歌の最も端的な特徴は、それは既にギリシア悲劇が完成された後に作られたものであるが、バッキュリデースの酒神讃歌に見ることができる 1 2。それは1人の俳優とコロスとの対話から成り、アイスキュロスが2人目の俳優を登場させる以前の悲劇と相通じるものがある。しかし、紀元前4世紀になると、酒神讃歌はすっかり廃れてしまった。しかし酒神讃歌合戦は、ギリシアがローマ帝国に滅ぼされるまで続けられた。
英語で書かれた酒神讃歌は少ないが、ジョン・ドライデンの『アレクサンダーの饗宴 Alexander's Feas』(1697年)は有名である。なお、形容詞化した「dithyrambic」は、現在でも、熱狂的な話し方や書き方を表す時に用いられる。
脚注
- Works of Richard Bentley, p.252
参考文献
- Bentley, Richard, Works of Richard Bentley, originally written in 1699, and collected by Alexander Dyce, 1836. v. 1-2. Dissertations upon the epistles of Phalaris, Themistocles, Socrates, Euripides, and upon the fables of Aesop ; also, Epistola ad Joannem Millium -- v. 3. Sermons preached at Boyle's lecture ; remarks upon a discourse of free-thinking ; proposals for an edition of the Greek testament.
- Buckham, Philip Wentworth, Theatre of the Greeks, 1827.
- Pickard-Cambridge, Sir Arthur Wallace
- Dithyramb, Tragedy, and Comedy , 1927.
- The Theatre of Dionysus in Athens, 1946.
- The Dramatic Festivals of Athens, 1953.
- Sourvinou-Inwood, Christiane, Tragedy and Athenian Religion, Oxford University Press, 2003.
- Wiles, David, The Masked Menander: Sign and Meaning in Greek and Roman Performance, 1991.