陰謀論
陰謀論(いんぼうろん)とは、歴史上の出来事が、通説に反して何らかの陰謀、策謀のもとに起こったとされる考え、もしくは考え方。これから起こりうるとする出来事や、出来事自体が秘密にされているとするものも含む。
陰謀論の概要
「政府は国民に秘密で何事かを行っている」、「世界や国家は何らかの団体にコントロールされている」、「ある戦争や事件は一般に知られているのとは別の理由で起こったものだ」、などが代表的なものである。
また、流行や風俗・文化などにおいても陰謀論が語られることがある。「3つのS、スポーツ(sport)、セックス(sex)、スクリーン(screen=映画)は日本人を堕落させる為のアメリカの陰謀である」とするもの、「ルービックキューブ(あるいはテトリス)の流行は西側の生産力を低下させる為のソ連の陰謀である」などといったものがあげられる。また「外国産のタバコや清涼飲料水には男性の精力を減退させる成分が含まれていて、我々(国、民族)を衰退させようとしている」などというものもある。
陰謀論そのものを陰謀であると主張する陰謀論もある。たとえば「この事件はCIAの陰謀である」という陰謀論にたいして「その陰謀論はKGBが流布しているものだ」などというもの。
この語は往々にして否定的な文脈で使用される。これは陰謀論が唱えられることにより、その論で陰謀を企てているとされる団体や個人に対する激しい侮辱や攻撃、人種差別の温床となることがあるからである。
自身が起こした犯罪を隠蔽する為に陰謀論を主張することもある。オウム真理教による弁護士一家拉致殺害事件で「我々を陥れる為に公安(あるいは他の宗教団体)が仕組んだもの」などと主張したことがあげられる。
一般には、単なる妄想、風説、デマにすぎない。ジョークとして語られることもある。まれに、当初は陰謀論と考えられていながら、通説に応する異論のひとつにまでに至るものもあるが、真実性が証明されてしまえばそれは陰謀論ではなく、単なる事実となる。しかし、あいまいさ、根拠の不確実さ、証明が難しいことが陰謀論の陰謀論たるゆえんであり、大きな事件がおこるたびに、何らかの裏の理由、策謀があったするという考え方が止むことはない。
非存在証明の難しさ、つまり、存在を証明するには現物を見せれば良いが、その否定を証明することは非常に難しいこと(参考:悪魔の証明)が影響しているとも考えられる。
噂、都市伝説とも似ているが、陰謀論という場合には、より規模が大きく、通常一国もしくは複数の国がかかわる規模のものを指す。
著名な陰謀論の例
- 大日本帝国による中国、世界征服の陰謀
- 軍産複合体(諸説ある)が政治的な理由で暗殺したという考え。
- 太平洋戦争開始はアメリカの陰謀説
- アメリカ政府は事前に事件を察知していたが、なんらかの理由でその発生を見逃したとする考え。
- ダイアナ元英国皇太子妃暗殺疑惑
- イギリスのウィリアム王子の母であるダイアナ元皇太子妃が事故死したのは、彼女がアラブ人であるドディ・アルファイドと再婚するために改宗し、将来のイギリス国王の母親がイスラム教徒となる不名誉(及び国家機密の漏洩等)を未然に防ごうとしたイギリス情報局秘密情報部による暗殺との説。アラブ世界を中心に流布されたが、イギリス国内でも信じている者は多いとの調査結果がある。
- 宇宙人に関する陰謀論
- 地球には既に知的な宇宙人が到来しており、政府や団体が秘密裏に接触を行っているとする考え方。もっとも著名なものに、ネバダ州にあるアメリカ空軍の実験施設「エリア51(w:Area_51」)(かのステルス戦闘機、F117もここで開発された)に関わるものがあり、多数がおとずれる有名な観光名所となっている。「NASAは宇宙人の存在を隠している」と主張されることもある。
- グレイ、アトラン人、ニャントロ星人など具体的な名前があげられることもある。
- フリーメイソン陰謀論
- 石工ギルドから発展した親睦団体フリーメイソンが、実は世界中の戦争を引き起こしていたり、政治権力を操っていたとする考え。歴史上の重要人物にフリーメイソン所属者が多いため、最も人気の高い陰謀論である。
- ユダヤ陰謀論
- ユダヤ人が秘密結社を通じて手を結び、世界(ことに経済)に影響力を及ぼしているとするもの。昔から存在した陰謀論であり、日本ではユダヤ=フリーメイソンの陰謀が説かれることが多く、ユダヤ陰謀論を説いた本が海外で問題にされたこともあった。偽書とされる「シオン賢者の議定書(プロトコール)」が有名。
- ナチス陰謀論
- ナチス・ドイツの残党らが(南米あるいは南極に)逃げ延び、今も影響力を保持しているという考え方。これは人気が高く、ノンフィクション仕立ての関連本や、これを題材にしたフィクション(漫画ヘルシングなど)が発表されている。この説が唱えられた原因にはアイヒマン事件やアドルフ・ヒトラーの遺体発見を巡る謎などがある。
- アポロ陰謀論
- NASAのアポロ計画は実際には月に到達しておらず、月面上からの中継画像は地球上の特撮スタジオで撮影されたという考え。もともとはアメリカのキリスト教原理主義の一派である地球平面協会が人類が地球外に行けるはずが無いとして唱えた説が俗説化したものらしいのだが、21世紀に入ってからテレビ朝日系列のバラエティ番組「不思議どっとテレビ。これマジ!?」で取り上げられたことで、日本でも広く知られるようになった。
本当に陰謀だった陰謀論
- 松本市で多数の患者が発生したいわゆる松本サリン事件は当初は近所に住む農薬を所有者が妻を殺害する目的でサリンを撒いたとし、逮捕された。
- これで事件は解決したように見えたが、事件の半年後に、「某宗教団体が検察の官舎を狙った犯行」という陰謀論が出版されその分析の緻密さで一部で評判になっていた。
- その後1995年3月、東京の地下鉄駅にサリンが撒かれる事態になり(地下鉄サリン事件)、過去の松本サリン事件も、オウム真理教の犯行と明らかになった。
- 日本海沿岸の海岸その他各地で日本人が行方不明になる者が多いため、朝鮮民主主義人民共和国による犯行とささやかれていた。女子中学生が拉致されるに至り、拉致被害者の家族の運動により一部新聞が報道に踏み切ったが立ち消え、その後十何年もメディアなどで荒唐無稽な陰謀論として囁かれていたが、金正日主席は拉致を認め謝罪した。
陰謀論を扱った作品
あくまでフィクションとして扱うもの、アクセントのひとつとして取りあげたもの、単なる冗談であるものまで温度差がある。
- 『Xファイル』 (テレビ)
- 『メン・イン・ブラック』 (映画)
- 『未知との遭遇』 (映画)
- 『イルミナティ』 (カードゲーム)
- 『コンスピラシーX』 (テーブルトークRPG)