秘密録音
秘密録音(ひみつろくおん)とは会話当事者の一方が相手方の同意を得ずに会話を録音すること。
概要
会話の内容が水掛け論になることがあるため、会話内容の保全のために秘密録音が行われることがある。対話者には内容を知らせる言葉を話している点で盗聴とは区別される。
しかし、秘密録音はプライバシー侵害にあたり憲法に規定された幸福追求権や人格権に反する違法行為であると指摘がなされることがある。一方で会話の内容を相手方に委ね、他人と会話する以上は相手方に対する信頼の誤算による危険は、話者が負担すべきとして合法とする意見もある。
日本の学説では秘密録音の適法性については、原則違法とはいえないとする無限定合法説、原則として許されないとする原則違法説があり、さらに無限定合法説と原則違法説の中間説として留保付合法説と利益衡量説がある。留保付合法説は会話当事者の秘密録音を原則として適法としつつも、一定の事情としては違法とする(違法とする一定の事情として、録音しない明示の約束がある場合、会話の内容や会話相手から判断して会話が録音されない合理的期待が認められる場合、相手方が当初から録音内容を悪用する目的で話を引き出した場合があげられている)。利益衡量説は会話当事者の秘密録音を原則として違法としながらも、秘密録音をする正当な事由があって会話からプライバシーがそれほど出ないと解されるときに例外的に許されるとする。
捜査機関が主導する秘密録音は刑事訴訟法も絡んでくる。原則違法説は秘密録音には裁判所の令状を必要とする立場であり、令状のない秘密録音は違法収集証拠排除法則から証拠から排除すべしとする。日本国内の過去の判例では捜査機関が主導する秘密録音は個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、相当と認められる限度においてのみ、秘密録音を合法として証拠能力を認めている。誘拐事件等における脅迫電話では秘密録音がよく行われ、情報収集のために脅迫電話をかけた犯人の声を公開することがある。
A・B間の会話の秘密録音には以下のものがある。
- AがBの同意を得ることなく録音する場合(当事者録音)
- 第三者がAだけの同意を得て録音する場合(同意盗聴)
録音
録音をする際には、アナログテープで録音することが望ましい。デジタル録音の場合、編集が容易であり、かつ声紋を変更できるために裁判で証拠として採用されない場合があるためである。秘密録音において相手方が自分の名前を名乗らない場合、話者を固定できる別の会話の録音して相手方の声紋を取る必要がある。
関連書籍
- 井上正仁「強制捜査と任意捜査」(有斐閣)