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汚れた英雄

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汚れた英雄』(よごれたえいゆう)は、大藪春彦1969年に発表した長編小説。角川映画により映画化され、1982年12月18日に公開された。フィクションであるが、生沢徹田中健二郎高橋国光など実在の人物も登場する。

小説は現在は角川文庫徳間文庫より全4巻が刊行されている。

なお、1960年に製作されたイタリア映画に、同じ邦題が付けられた作品があるが、本作とは関係がない。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


ストーリー

生まれた直後に父を、第二次世界大戦中に母を亡くし、戦災孤児となり母方の叔父の実家が経営するオートバイ屋に引き取られた主人公・北野晶夫。しかし晶夫はライダー・メカニックの両面で天才的な才能を持っていた。

晶夫はライダーとして生計を立てることを望み、いわゆる浅間高原レースを皮切りに本格的にレーシングライダーとしての活動を開始。その後アメリカ西海岸での活動を経て最終的にヨーロッパに渡り、MVアグスタワークス・チーム入りしてロードレース世界選手権(WGP)を制覇するまでに至る。

一方で晶夫は、生まれ持った美貌と肉体で次々と女を自分のものにしていき、一財産を築く。その稼ぎはライダーとしての収入とは比較にならないぐらい莫大なものだった。

晶夫はライダー生活も晩年にさしかかり、最終的に4輪レーシングドライバーへの転向を試みることになるが…。

映画

概要

本作は角川春樹による監督作品第一作である。本来角川はプロデューサーであり監督は別に計画されていたが人選が難航、結果的に角川が自ら演出することとなった。

演出経験を持たない角川は、脚本の丸山昇一と相談し極力セリフを削ることで映像の持つ迫力を前面に出す演出を心がけた。これについては当時、最低限のものだけを残しギリギリまで削り込む俳句の技法を応用したとの発言を残している。

また、物語は原作小説とはまったく異なるものである。脚本の丸山は当時のインタビューで、2時間弱の映画の中では原作の一部分しか描けず、また終戦後から始まる原作では当時の時代背景から描かねばならないことなどから、当初から原作のストーリーから離れて現代を舞台にすることとしたという。丸山は原作の中の「物語」ではなく、「キャラクターの生きざま」を描こうとしたといい、「北野晶夫ライブ」という表現を用いている。

制作にあたりヤマハ発動機の全面的な協力が得られたことから、現代のロードレースシーンを描くことに成功している。

物語

全日本ロードレース選手権、国際A級500ccクラスは、ヤマハのワークスライダー大木圭史とプライベートの北野晶夫の熾烈な争いが展開され、第8戦までで二人は同点に並んでいた。ワークスチームはその組織力で最終戦に向けて調整を進めていく。

一方北野はその天性の美貌を活かし、上流階級の女性をパトロンとすることでレース参加にかかる莫大な費用を捻出していた。

いよいよ最終の第9戦、様々な人々の思惑が交錯する中で菅生サーキットでの熱い戦いが始まる。

出演

スタッフ

主人公のモデル

『汚れた英雄』小説版の主人公の主なモデルとなった人物として、当時主にヤマハに所属していた、WGPライダーの伊藤史朗の名が挙げられることがある。小説には伊藤自身も登場しており、浅間高原レースやWGP等で晶夫と伊藤が競い合うシーンも多数書かれている。なお伊藤はレース以外の事で道を踏み外し、その後の消息は不明である[1]

ただし作者の大藪自身は、あとがきで「北野晶夫にはモデルはありません」とモデルの存在を否定している。大藪によれば、晶夫のレース成績の面ではゲイリー・ホッキングマイク・ヘイルウッドタルクィニオ・プロヴィーニジャコモ・アゴスチーニを参考にしているほか、女性遍歴についてはアリ・ハーンポルフィリオ・ルビロサ等の経歴を参考にしているという[2]

映画に於いて晶夫のレースシーンスタントを担当した平忠彦は当時国際A級500ccクラスにステップアップしたばかりの若手ライダーだったが、長身で風貌も草刈によく似ていたために異例の抜擢となった。その後平は全日本選手権500ccクラスを3連覇を達成、世界GPフル参戦をも果たし資生堂の男性化粧品イメージキャラクターを長年務めるなど、作品さながらの活躍をみせていった。

参考文献

脚注

  1. ^ 『サーキット燦々』p.250
  2. ^ 『汚れた英雄』角川文庫版・第4巻 pp.423 - 427
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