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辺境警備

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辺境警備』(へんきょうけいび)は、紫堂恭子によるファンタジー漫画作品。『プチフラワー』(小学館1988年3月号から1992年5月号に連載された。

概要

中世ヨーロッパ風のファンタジー世界を舞台とした漫画。『指輪物語』の影響が強く、作中にも『指輪〜』を思わせる描写が見受けられる。また本作の背景世界は、作者の別作品『グラン・ローヴァ物語』や『東カール・シープホーン村 』と共通しており、登場人物のクロスオーバーなどが盛り込まれている。単行本は小学館プチフラワーコミックスから全6巻で発売されていたが絶版。その後、角川書店のファンタジーDX誌で発表された続編を含めた「決定版」が1997年から1998年にかけて全7巻で発売された。また2007年には、ホーム社漫画文庫から文庫版が全4巻で発売された。

ストーリー

ルウム王国の北西国境部、ドレングの町の辺境警備隊に新たな隊長さんが左遷されてきた。彼を取り巻くのは陽気な兵隊たちと、やはり都から赴任してきたという神殿の神官さん。辺境を舞台に、素朴だが少し神秘的で、どこか懐かしい日常が展開される。

主な登場人物

“隊長さん”サウル・カダフ
本作の主人公。兵法の教科書に載るほどの切れ者だったが、女性関係をこじらせて北西国境部のドレングへ左遷されてきた。「不良中年」を自称し、身を慎む様子も無く遊び歩き、ひっきりなしに「都へ帰りたい」とグチを漏らすが、本質的には達観した人物。若い頃は、現在からは想像も付かないほどの美形だった。30代半ばだが、ヒゲのせいか老けて見られがち。
“神官さん”ジェニアス・ローサイ
三年前に、ドレング神殿に赴任してきた美青年。頭がいいが生真面目で融通のきかないところがあり、隊長さんの言動にいちいち説教をする。辺境への赴任の裏には何らかの事件があったようだが、その点に関しては何も語らない。
カイル
レナンディの街に住んでいた呪術師(ドラティア)。神官さんとの喧嘩がきっかけでドレングに庵を構えることになり、辺境の人々からは“先生(マスター)”と呼ばれる。意地っ張りで天邪鬼だが、慈悲や友情をまったく解さないわけでもない。呪術の師でもあった祖父を尊敬しており、呪術を批判する神官さんには強い反発を示す。他人に勝手なあだ名をつける癖があるが、これは「呪術師はうかつに他人の本名を呼んではいけない」という祖父の教えを無意識に守っているから。
“背高さん”
神官さんが王都に栄転した際、後任の神官として現れた謎の人物。古びた黒ずくめの軍服に大剣を帯びた長身の男で、神官だけでなく軍人や賢者としての肩書きも持っているという。神官さんが子供の頃からの後見人であり、辺境の人々が彼を慕っていることに喜びを示す。隊長さんより年上のはずだが、見た目は20代半ば程度。
兵隊さん
辺境警備隊員で隊長さんの部下。組織は10人一組を最小単位とするという軍の規則により集められた、現地の次男坊や三男坊(あるいはもっと下)。軍事的な任務は無いに等しく、もっぱら家畜の世話や畑の手入れ、時には公共物の修理などが仕事である。名前はマルヴィル、ホブ、ノブ、ベン、クリス、ハル、フィン、マルト、フレックの9人だが、外見はそっくりで区別が付かない。

背景世界

神話によれば、遥か昔に神は9人の使徒と共に9つの星々を造り、それを通じて世界を創造した。しかし9つの星々の内「闇」は自分だけの世界を望んだため地に堕ちて、地の底で「冥王」を生み出した。そして今から1000年前、冥王の侵攻による「大暗黒」が訪れた。このとき、当時のルウム王の三男で、後に救世王と呼ばれるローランドと、風狩人の少年セルリオンが冥王を倒した。作中世界で使われている「ルウム復活暦」はこれを記念したものである。

本作の舞台は、ルウム復活暦1000年のルウム王国である。大暗黒時代に版図は縮小されたものの、長い時間をかけて国力は回復しつつあり、それと同時に東方諸国との軋轢が問題となっている。東方諸国のさらに東には、かつて冥王の領土だった「魔国」イドラグールの荒野が広がっている。また南東部には、運命の森の奥深く、大賢者グラン・ローヴァをはじめとした賢者を輩出する「東の学舎(フォアサイト)」があるとされているが、良からぬ望みを持つものは近づけないという。王国の北西部は、かつて存在した北方諸国との交流が完全に途絶えており、この地方の政治的・軍事的価値は限りなく低い。そのため、この地への赴任は左遷と見なされている。

単行本

小学館プチフラワーコミックス
全6巻。4巻末には同作者の短編『海から来た星たち』が収録されている(本作とは無関係の読みきり短編であり、以降の単行本シリーズには収録されていない)。
  1. ISBN 4091720714
  2. ISBN 4091720722
  3. ISBN 4091720730
  4. ISBN 4091720749
  5. ISBN 4091720757
  6. ISBN 4091720765
角川書店アスカコミックスDX
全7巻。小学館版6巻に『ファンタジーDX』誌に掲載された外伝を収録した巻が加えられている(この巻のみ、通し番号が振られていない)。また1 - 6巻にも、書き下ろしの短編が収録されている。
  1. 月夜の銀青草 ISBN 4048528068
  2. 懐かしいいたみ ISBN 4048528262
  3. 逢魔の山 ISBN 4048528602
  4. 故郷は遠く… ISBN 4048528769
  5. 過去からの呼び声 ISBN 4048529013
  6. 忘れられた英雄 ISBN 404852917X
ホーム社漫画文庫
全4巻。角川書店版に加えて、1 - 3巻には書き下ろしのあとがき漫画が収録されている。また『辺境警備プレミアムブック(関連書籍の項を参照)』に収録されていた短編や設定資料の一部が再録されている。
  1. ISBN 9784834273786
  2. ISBN 9784834273793
  3. ISBN 9784834273854
  4. ISBN 9784834273861

関連書籍

グラン・ローヴァ物語(潮出版社→角川書店)
『辺境警備』よりも前の時代、世界から精霊や神聖な獣が去っていく様子が描かれる。
東カールシープホーン村(角川書店)
『辺境警備』と同時代、別の地方の物語。一部に『辺境警備』の登場人物への言及がある。
辺境警備プレミアムブック 永遠の約束(角川書店) ISBN 4-04-852954-4
画集兼設定集。プチフラワー誌での連載以前に描かれた「第0話(連載版とは微妙に設定が異なる)」も収録されている。
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