きつね (麺類)
そば・うどんにおいてのきつねとは、かけうどんに「甘辛く煮た油揚げ」を乗せたものであり、一般的に「きつねそば」「きつねうどん」と呼ぶが、地方によっては違いがある(「#各地方の特色」を参照)。
概要
稲荷寿司と同様、キツネの好物が油揚げだとされていることに由来する。また油揚げの色(きつね色)・形がキツネがうずくまる姿に似ているからだともいう。
地方によっては違いがあるが、使用する油揚げは、まず湯で油抜きをして、砂糖・醤油・みりんなどを使用し、しっかりと煮て甘辛く味付けをする。麺のダシ(つゆ)も濃口醤油と鰹節主体の強めのものである。かけうどんのような熱いつゆ以外にも、冷やしや鍋物のメニューにも存在する。きつねと言えば、基本的にはきつねうどんを指すが、関東の様に、同油揚げをかけそばにのせ、きつねそばと呼んでいる地域もある。
歴史
きつねうどんがいつできたかについては諸説ある。1893年(明治26年)創業の大阪市船場のうどん屋「松葉家」が稲荷寿司から着想を得て考案したという説[1]、江戸時代に大阪で作られたという説[2]、明治10年代に大阪で誕生したという説もある[3]。文献によれば、江戸で油揚げを種にした蕎麦があり、大阪より古い[4][5]。
各地方の特色
東京
1806年の船頭深話に、ネギと油揚げをあしらったそばが記述されるなど歴史が古い。夜そば売りの種物としても出ている。「南蛮」にも油揚げを入れる店も多い。杉浦日向子は、江戸・東京では単品で食べられる事が多いと解説している。カップ麺「どん兵衛」の東版では、西版よりシットリしており味もコッテリしている(東京の揚げ物はごま油を使用し色よく揚げるのが主流)。
名古屋
信太の葛の葉狐にちなんで「しのだうどん」「しのだそば」とも呼び、名古屋などでは一般的な名称である。店にもよるが、刻んだアゲが入った物を「しのだ」、刻んでない煮アゲが入ってる物を「きつね」と言う。
京都
京都の方言では、けつねとも発音する[6][7]。伝統的には、味付けをしていない(もしくはほとんど味付けをしていない)刻んだ油揚げを具としたもの(きざみうどん)を指すことが多い。日本全国で一般的な甘く煮た油揚げの載ったものを「甘ぎつね」と呼ぶこともある。
関西
大阪を中心とした関西では、醤油と砂糖で甘辛く煮た薄揚げを乗せたうどん料理を「きつね」、そば料理を「たぬき」と呼ぶことが一般的である[8]。「たぬきうどん」は存在しない。関西において、一部に前述の京都の様に、同じ名称でも出される物が異なることがあるため、注文の際には注意が必要である。けつねなどと訛って発音する者もいるが、多くの場合は軽いジョークの様なノリで、わざとそう呼んで注文している場合である。[9][10]。
『芦屋道満大内艦』に描かれた泉州の信太の森の葛の葉狐にちなんで「しのだ」と呼ばれることもある[11]。「きつね」と「しのだ」を両方出す店舗では、「きつね」は油揚げを1枚、「しのだ」は油揚げを2枚乗せて提供される場合が多い。
インスタント
カップ麺としては、日清食品の「どん兵衛 きつねうどん」が全国的に発売された後に、東洋水産が「赤いきつねうどん」「紺のきつねそば」を全国に発売している。エースコックの「天ぷらきつねそば」は、そばの上に天ぷらと煮つけた揚げが乗っている。
脚注
関連項目
参考文献
- 宇佐美辰一(述)『きつねうどん口伝』筑摩書房、1991年11月、ISBN 4480813012、ちくま文庫: 1998年10月、ISBN 4480034250