τ (数学定数)
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τ(タウ)は、一部の研究者により、現在の円周率 π に代わるべき数学定数として提唱されている数であり、円の半径に対する周長の比として定義される定数である。その値は 2π に等しい。2015年現在、このような定数としての τ は論文等で一般的に使用されていない。
提唱者の主張
[編集]2001年、ユタ大学のBob Palaisがエッセイ "π is wrong!" の中で、π は円周率として採用するには不自然かつ分かり難い選択であり、円周率としてより自然な定義は半径に対する円周の長さの比であると主張した。Palaisの論文を受け、Michael Hartlは自身のウェブサイト "The τ manifesto" において、この定数の記号としてギリシア文字の τ を採用することを提唱した。さらにHartlは記号として τ を使用する他の定数や変数との混乱の可能性についても考察している。
Hartlは、π の代わりに τ を採用することによるいくつかの利点を挙げている。
例えば、三角関数の周期が 2π の代わりに τ になると
となり、オイラーの等式は
また、円の面積は
と表示されるが、これは運動エネルギーの式
や、自由落下する物体の移動距離
しかし、2011年現在、τ のこのような使用は、主流な数学の中では採用されていない[3]。
1958年に Albert Eagle は π の代わりに τ = π/2 を使うべきだと主張したが[4]、そのような著者は他にいない。
式 | πを使った場合 | τを使った場合 |
---|---|---|
円の1/4を成す角度 | ||
円周 | ||
円の面積 | ||
単位円周半径を持つ正n角形の面積 | ||
n球とn球の体積再帰関係 | ||
コーシーの積分公式 | ||
標準正規分布 | ||
スターリングの近似 | ||
πn乗根 | ||
プランク定数 | ||
角周波数 |
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b Palais (2001)
- ^ Abbott (2012)
- ^ Telegraph India (2011-06-30)
- ^ Eagle (1958, p. ix)
参考文献
[編集]- Eagle, Albert (1958). The Elliptic Functions as They Should be: An Account, with Applications, of the Functions in a New Canonical Form. Galloway and Porter, Ltd.. ASIN 0852500009. ISBN 978-0852500002
- Abbott, Stephen (April 2012). “My Conversion to Tauism” (PDF). Math Horizons (Washington, D.C.: MAA) 19 (4): 34. doi:10.4169/mathhorizons.19.4.34. ISSN 1072-4117. JSTOR 10.4169/mathhorizons.19.4.34. OCLC 28941388 .
- Palais, Bob (January 2001). “π is wrong!” (PDF). The Mathematical Intelligencer (Springer-Verlag) 23 (3): 7–8. doi:10.1007/BF03026846. ISSN 0343-6993 .
- “Life of pi in no danger – Experts cold-shoulder campaign to replace with tau”. Telegraph India (Calcutta: ABP Pvt. Ltd.). (2011年6月30日). OCLC 271717941 2015年1月10日閲覧。
- Michael Hartl (2013年3月14日). “The tau manifesto”. 2015年1月10日閲覧。
- Randyn Charles Bartholomew (2014年6月25日). “Why tau trumps pi”. Scientific American. 2015年1月10日閲覧。