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いただきストリート 〜私のお店によってって〜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
いただきストリート
〜私のお店によってって〜
ジャンル ボードゲーム
対応機種 ファミコン(FC)
開発元 アスキー
デザイナー 堀井雄二[1]
プログラマー 大森田不可止[1]
音楽 上野利幸[1]
美術 荒井清和[2]
人数 1 - 4人(対戦)
発売日 1991年3月21日[2]
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いただきストリート 〜私のお店によってって〜』(いただきストリート わたしのおみせによってって)は、アスキー1991年3月21日に発売したファミコン用ボードゲーム。本作は堀井雄二ら『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』のスタッフを中心に作られたボードゲームであり、のちにいただきストリートシリーズとしてシリーズ化された[2]。ルールはアナログボードゲーム『モノポリー』からの影響を受けている一方、株取引といった独自要素もある[3]

登場キャラクター

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早瀬 まりな(はやせ まりな)
15歳、高校1年生。ロマンチストで世話好きな明るい性格。
CPUキャラクターの一人だが、ゲームの案内や進行役も務める。対戦相手としてはサラリー狙いのみでインサイダーや5倍買いなどの行動はほとんど行わない、いわゆる初心者向けキャラクター。
高杉 ともみ(たかすぎ ともみ)
18歳、OL。素直で大人しい。
5倍買いや取引には消極的なものの、手堅く、セオリー通りの戦い方をしてくる。
水沢 けいこ(みずさわ けいこ)
21歳、コンパニオン。目立ちたがりで派手好き。
5倍買い[1]や取引などの攻撃的な戦略を積極的に行ってくる。
藤森 さゆり(ふじもり さゆり)
19歳、女子大生。理知的な性格。
状況の判断力に優れ、危険な行動は行わず的確な手を打ってくる。
南条 ひろし(なんじょう ひろし)
17歳、高校2年生。正義感が強く、曲がった事が嫌い。
着実に資産を増やしてくる一方、一気に大儲けすることはあまりない。
三本松 しょうた(さんぼんまつ しょうた)
13歳、中学1年生。ひょうきん者。
いちかばちかの大胆な行動を打ってくる。成功することは少ないが、はまると大勝ちすることも。
佐竹 たかゆき(さたけ たかゆき)
20歳、大学生。打算的で嫌味な性格。
勝つ為には手段を選ばず、他人の嫌がらせをよくしてくる。

マップ

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STREET1 おのころ島
目標10000G
STREET2 マハラタ諸島
目標15000G
STREET3 アメリカ大陸
目標20000G。マハラタ諸島で優勝すると解放される。
STREET4 右半球
目標20000G。アメリカ大陸で優勝すると解放される。
STREET5 宇宙星雲
目標20000G。右半球で優勝すると解放される。

開発

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1987年秋、『ドラゴンクエスト2』の開発を終了した堀井雄二と「ファミコン通信」の副編集長であった塩崎剛三が、6月に発売になった「オホーツクに消ゆ」の次回作として何を作ろうかということで会議を重ね、モノポリーをベースにした戦略性の高いボードゲームを作ろうということになった。当初は2人だけの開発メンバーだったが、栁澤健二(メッセージ担当)、松本常雄(マップ担当)、大森田不可止(プログラム担当)の3名を加え、約3年間の開発期間で完成させた[1][4]。また、グラフィックの荒井清和と、音楽の上野利幸はいずれも「ファミコン通信」および「ログイン」ゆかりの人物であり、堀井と塩崎のファミコンゲーム開発プロジェクトにおいて、前作の『オホーツクに消ゆ』に続く連続起用となった[2]

ただし、初期のスタッフは堀井以外にゲームの経験者がほとんどいなかった[1]。その後、遠藤雅伸率いるゲームスタジオにオファーが寄せられたものの、引き受けられない彼らの紹介で、ファミコン版『ギャラガ』のプログラムを組んだ経験を持つ大森田不可止がプログラマーとして起用された[1]。最初にアメリカ大陸のマップができたものの、そこから先に進まなくなったため、大森田がPC-9801のBASICで仮組みしたプログラムを試遊する形で開発を進めていった[1]。大森田は自宅で作業していたものの、忙しくなるにつれ、アスキーに出向いて作業するようになった[1]。ファミコンソフト開発用のICE(In-Circuit Emulator)は使わなかったものの、RAMをROMの代わりに使うことで作業効率を上げた[1]

その後、ピンチヒッターとして遠藤本人もかりだされた[1]

AI構築・セッティング

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堀井や大森田によるモノポリーの研究をもとに、6か月かけてAIが構築され、以降は大森田が試遊しながら調整していった[1]。その中で大森田は本当に面白いのかわからなくなったが、ある日遊んだらその面白さに気づき、それが自信につながったと2021年のインタビューの中で振り返っている[1]。 登場人物のセッティングは大森田が担当した[1]。荒井によるデザインは個性的だったため、CPUが先生役になれるようにする観点から、容姿からの想像で性格付けしていった[1]。たとえばコンパニオンの「水沢 けいこ」には、「5倍買い」を多用するプログラムを組み込んだ[1]。AIおよび思考ルーチンの構築に際しては、まずベースとなる数式を作り、パラメーターを変える形でキャラクターの個性を作り出した[1]。ただし、株の売買など計算で表現できない部分については、開発スタッフによる試遊を基にしたプログラムが組まれた[1]。また、バランスを重視しすぎると行動の差がなくなってしまうため、前述の「5倍買い」などバランスを無視した仕組みも取り入れられた[1]。CPUのAIや思考ルーチンは最終的に堀井が試遊してチェックすることになっており、特に文句は出なかったと大森田は2021年のインタビューの中で振り返っている[1]

CPUの行動決定プログラムは、支払い期待値を下げる作戦を取りやすくするための優先順位をつける方針が取られた[1][注釈 1]ただし、ファミリーコンピュータは8ビット機であることに加え、掛け算ができないため、足し算で計算させるための対数表を用意するなど様々な工夫が必要だったと大森田は述懐している[1]。また、大森田は学生時代にニューラルネットワークについて多少勉強しており、本作においては対戦を通じて学習するAIの構築も考えたことがあったが、ファミリーコンピュータの仕様では不可能だったため、見送った[1]。もし、アスキーのデータレコーダー「ターボファイル」を使った場合は、開発、とりわけデバッグが厳しくなるという問題があった[1][注釈 2]

他のスタッフによる試遊からバグを洗い出す形でデバッグすることになっていたものの、大森田はあまりそのようなことはしなかったと2021年のインタビューの中で振り返っており、その理由としてナムコにいたころから自分のプログラムはバグが少ないことで評判だったことを挙げている[1]

スタッフ

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反響

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アスキー営業活動の不調により、販売成績は22000本という絶不調の本数に終わる。 この低成績により、堀井と塩崎は次回作『いただきストリート2』より発売元を一新する考えを持つようになる[5]。そして、『いただきストリート2』はエニックス(のちのスクエア・エニックス)から発売され、以降このシリーズの発売元となった[1]

忍者増田は、2017年に「Akiba PC Hotline!」に寄せた記事の中で、個性的なキャラクターが当時としては画期的であり、コンピュータ相手に遠慮なく非情な仕打ちをできる点や、プレイヤーによって苦手なキャラクターが分かれる点が面白かったと評している[3]

他作品への影響

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大森田は、1993年にファミリーコンピュータ用ソフト『モノポリー』のプログラミングも担当しており、本作の経験が生きたと2021年のインタビューの中で振り返っている[1]

ガイドブック

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  • 『いただきストリートのすべてがわかる本』(アスキー出版局)

脚注

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注釈

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  1. ^ たとえば、高額物件が現れた場合、そこを通過することを優先する[1]
  2. ^ 大森田はその理由として低確率で起こるイベントはデバッグが難しいことを挙げており、別会社のシミュレーションゲームにおいて、そのようなイベントを組み込んだところ、一度も発生しなかったと語っている[1]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj 大森田不可止氏が語る『いただきストリート』に実装されたキャラクターAI:懐ゲーから辿るゲームAI技術史vol.3”. モリカトロンAIラボ (2021年4月28日). 2024年12月25日閲覧。
  2. ^ a b c d 『いただきストリート』が発売された日。堀井雄二氏がゲームデザインを務めたボードゲームで戦略性が高く、株取引や5倍買いなどの要素が刺激的だった【今日は何の日?】”. ファミ通.com (2024年3月21日). 2024年12月25日閲覧。
  3. ^ a b 『いたスト』の魅力はまりなの……いや、「キャラ」と「株」でござる”. AKIBA PC Hotline!. 株式会社インプレス (2017年2月7日). 2024年12月25日閲覧。
  4. ^ 『198Xのファミコン狂騒曲』198Xのファミコン狂騒曲」212ページ
  5. ^ 『198Xのファミコン狂騒曲』198Xのファミコン狂騒曲」225ページ